聴く音楽って何年か経つと飽きたり求める音が変わったりして
えーい!こんなんもう聴かねー!売り飛ばしちまえ!・・・ってありますよね。
僕は一時期アイリッシュ・トラッドを聴きまくっていた時期があったのだけど
当時聴いていたアイリッシュ・トラッドのアルバムの多くは今や
売り飛ばし処理したり何年も聴かずに眠っている状態なのですよ。
でもアイリッシュ・トラッドを聴くきっかけとなったアルバムは今でもよく聴きます。
それらの作品を並べてみたら全部1988年作品で・・・なんか凄いです。
この時期ロック界全体がアイルランドへ向かっていたのですかねぇ。



FishermansBlues.jpg
THE WATERBOYS
「FISHERMAN'S BLUES」 (1988)
英 ENSIGN CHEN 5 (LP)


   RoomToRoam.jpg
   THE WATERBOYS
   「ROOM TO ROAM」 (1990)
   英 ENSIGN CHEN 16 (LP)
A1 Fisherman's Blues
 2 We Will Not Be Lovers
 3 Strange Boat
 4 World Party
 5 Sweet Thing
B1 And A Bang On The Ear
 2 Has Anybody Here Seen Hank ?
 3 When Will We Be Married ?
 4 When Ye Go Away
 5 Dunford's Fancy
 6 The Stolen Child
 7 This Land Is Your Land
   A1 In Search Of A Rose
    2 Song From The End Of The World
    3 A Man Is In Love
    4 Kaliope House
    5 Bigger Picture
    6 Natural Bridge Blues
    7 Something That Is Gone
    8 The Star And The Sea
    9 A Life Of Sundays
   B1 Islandman
    2 The Raggle Taggle Gypsy
    3 How Long Will I Love Love You ?
    4 Upon The Wind And Waves
    5 Spring Comes To Spiddal
    6 The Trip To Broadford
    7 Further Up, Further In
    8 Room To Roam


フィッシャーマンズ・ブルース! 1988年といえばやっぱりこれなんです。
このウォーターボーイズの大傑作4thはすでに第5号で紹介済みなので
こちらも大傑作の次作「ルーム・トゥ・ローム」もあわせて載せてみました。

「フィッシャーマンズ・ブルース」はロックの興奮とカントリーののどかさと
アイリッシュ・トラッドの哀しみを併せ持ったスンバラシ過ぎの作品ですよ!
A面とB面では録音時期が違い ロックなA面 トラッド色強いB面となっています。
ロックなA面もメインに使う楽器がアコギにマンドリンやフィドルなもんで
ロックの興奮といってもエレキ・ギターでロックなのとはちょっと違います。
ボブ・ディランやパティ・スミスからの影響大と思われるバンドの中心人物
マイク・スコットの語り系のくせに力強いヴォーカルがまた素晴らしいし
ぜひ大音量で聴いて興奮しまくって欲しい失禁アルバムです。

5th「ルーム・トゥ・ローム」は「フィッシャーマンズ・ブルース」のB面の世界を
更に追求した内容でトラッド〜カントリー寄りの音にはなっていますが
ロックっぽさもあります。 A9なんかエレギ・ギターがギュンギュンうなるしねぇ。
そしてアコーディオン奏者シャロン・シャノン嬢の加入も効いていて
アコーディオンが感情たっぷりに泣くインスト曲B6とか・・・うぇーん もう絶品!

ロック&トラッドといえば1970年代のエレクトリック・トラッドが思い浮かぶけど
こちらには70年代エレクトリック・トラッドとは又違った明るさや楽しさがあり
フェアポート・コンヴェンションやスティーライ・スパンにある緊張感は無いので
誰でもすんなりと入っていける聴きやすさがありますね。
同じトラッドでもアイルランドとイングランドの違いっていうのもありますけどね。
なお「ルーム・トゥ・ローム」収録のトラッド曲はA6とB2の2曲でAB面共最後に
これもトラッド曲と思われる曲名表記の無いシークレット曲入りです。

バンドはこの後解体し中心人物のマイク・スコットはひとりでウォーターボーイズを
名乗り活動しますがこの素晴らしいアイルランド期の音では無くなってしまい失速。
うーん残念・・・てな所へ登場した2003年作「ユニバーサル・ホール」は
フィドルのスティーヴ・ウイックハムが復活していて中々良いアルバムでした。
今後ウォーターボーイズはかつての勢いをとり戻せるのかなぁ。 頼むぜ!

プロモーション盤(だと思う)の「Windmill Lane Sessions」・・・第40号
スティーヴ・ウイックハム参加の「The Connacht Ramblers」・・・第12号
 



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THE POGUES 「IF I SHOULD FALL FROM GRACE WITH GOD」 (1988)
英 POGUE MAHONE NYR 1 (LP)

A1 If I Should Fall From Grace With God
 2 Turkish Song Of The Damned
 3 Bottle Of Smoke
 4 Fairytale Of New York
 5 Metropolis
 6 Thousands Are Sailing

 B1 Fiesta
  2 Medley
    a) The Recruiting Sergeant
    b) The Rocky Road To Dublin
    c) Galway Races
  3 Streets Of Sorrow / Birmingham Six
  4 Lullaby Of London
  5 Sit Down By The Fire
  6 The Broad Majestic Fire
  7 Worms


ポーグスはパンキッシュにアイリッシュ・トラッド風味の曲をやるバンドですが
ジャケットでメンバーが抱える楽器を見ればだいたい音は分かるかな?
のどかな音を出す楽器を抱えてるくせにメンバーの風貌はワルで盗賊団ですねぇ。
そしてこの3rdからあのテリー・ウッズが加入して盗賊団の仲間入りだし
ヴォーカルのシェインの声は酔っ払いでヤクザだし・・・うーんポーグス最高!

ポーグスの基本サウンドはブッ飛ばしのドタバタ・ソングがアコーディオンや
ティン・ホイッスルなどの楽器と共に迫って来る感じで 曲の合間に入る
ウギャーとかギョエーといった叫び声の合の手(?)がまた興奮させてくれますよ。

A4はカースティー・マッコールがシェインとデュエットするクリスマス・ソング。
これはホントに名バラードでシングル・ヒットもしていてポーグスの代表曲ですねぇ。
途中にホーンが入りスパイ映画の挿入曲の如く響くインストのA5がまた面白いし
ギターのフィリップ・シヴェロン作のA6がまた切ないんだぁー。 大名曲。

ホーン・セクションが大活躍のB1は運動会の徒競走のバックに流さなければ
いけないレベルのブッ飛ばしの乱痴気騒ぎソングなので さあ運動会で流せ!
B2はトラッド曲3曲のメドレー。 B7もトラッド曲って表記だけど・・・何じゃこれ?

テリー・ウッズが1曲だけ楽曲提供&自ら歌うB3の前半「Streets Of Sorrow」が
地味で真面目なフォーク曲で これがアルバム中異質で浮いていますねぇ。
やっぱり僕はその後のポーグスの失速はバンドに「渋さ」を持ち込んだ
テリー・ウッズが原因だと思っているのだけど・・・皆さんいかがなモンでしょう?

A1は映画「ストレート・トゥ・ヘル」のサントラ盤にのどかなカントリー風味の
別ヴァージョンが入っていて映画自体にもポーグスの面々が出演しています。
彼らはワルな風貌を生かした演技をかましていましたが その他の出演者も
エルヴィス・コステロ ジョー・ストラマー コートニー・ラヴ・・・などもう無茶苦茶。
ああそうだアル・ヤンコヴィックも出ていたぞ! ファット!

ポーグスのラスト・アルバム「Pogue Mahone」・・・第5号
 



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VAN MORRISON & THE CHIEFTAINS 「IRISH HEARTBEAT」 (1988)
英 MERCURY MERH 124 (LP)

A1 Star Of The County Down
 2 Irish Heartbeat
 3 Tá Mo Chleamhnas Déanta
 4 Raglan Road
 5 She Moved Through The Fair

 B1 I'll Tell Me Ma
  2 Carrickfergus
  3 Celtic Ray
  4 My Lagan Love
  5 Marie's Wedding


ウォーターボーイズとポーグスは1980年代に登場したバンドですが
1960年代から活動するヴァン・モリソンも1988年にこの傑作アルバムを発表。
ヴァンにはこれ以前にもトラッドの香りを漂わせた曲がポツリポツリとあったけど
こちらも1960年代から活動する息の長い重鎮アイリッシュ・トラッド・グループの
チーフタンズと組んでアルバム丸ごとトラッドに取り組んだからさあ大変。
傑作傑作と連発し過ぎだけどこれもどーしよーもなく傑作で・・・凄いぜ1988年!

ジャケットは全員そこら辺のオヤジなルックスでハゲ率も高くスター性全く無し!
ヴァンのしている毛糸の手袋は指先が出ているタイプで何か凄いし
チーフタンズのリーダーのパディ・モロニー(座っているオヤジ)の髪型は
ドリフのバカ兄弟の影響受けまくりで・・・ダメだこりゃ!いかりやさんに合掌。
つまり(?)ヴァン・モリソンそしてチーフタンズの歴史の中でも重要な作品です。

イーリアン・パイプやフィドルやフルートやハープによるバックの演奏なのに
なぜかバリバリのトラッド・アルバムという感じも無くすんなりと耳に入ります。
一部の曲にベースやドラムス(ヴァンが叩いている!)が入るからかなぁ。

ヴァンのソウルフルでアクの強いヴォーカルは感情豊かに絶好調に歌いまくり
リズミックで楽しげな曲とゆったりと美しい曲のバランスもいいですねぇ。
そして何といっても懐かしくて哀しいアイリッシュ・メロディーが胸に染みますよ。
8曲がトラッド曲でA2とB3だけヴァン作で彼が過去に発表した曲の再演です。

一緒に歌い踊ってしまいたくなる最後の楽しげなダンス曲B5ではコーラスで
メアリ・ブラック モーラ・オコンネル ジューン・ボイスが登場して大盛り上がり。
でも聴き終わってふと哀しい・・・というアイリッシュ特有の感覚もありますねぇ。

ヴァン・モリソンのレヴュー「TUPELO HONEY」 (1972)・・・第41号
「NO GURU, NO METHOD, NO TEACHER」 (1986)・・・第76号
「POETIC CHAMPIONS COMPOSE」 (1987)・・・第26号
  



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ENYA 「WATERMARK」 (1988)
英 WEA WX 199 (LP)

A1 Watermark
 2 Cursum Perficio
 3 On Your Shore
 4 Storms In Africa
 5 Exile
 6 Miss Clare Remembers

 B1 Orinoco Flow
  2 Evening Falls...
  3 River
  4 The Longships
  5 Na Laetha Geal M'óige


で 驚愕の1988年 これを忘れていました。 エンヤの2ndです。
これは大ヒットアルバムだし エンヤは年間にCDを4〜5枚しか買わないような
あまり音楽に興味の無い人でも「よく耳にする音楽だから」「癒し系だから」
なーんて理由で買っちゃうようなタイプの人になってしまいましたねぇ。

僕はエンヤは次の3rd「シェパード・ムーンズ」までしか購入していないのだけど
色々な場面で流れてくるその後の彼女の曲を耳にする限りでは
相変わらず本作と同じような音づくりですね。 なる程どのアルバムを聴いても
エンヤ・サウンドという物が確立されていてこれはとても凄い事ですよ。

・・・と凄さは認めた上で今回久々に聴いた本作・・・うーんイマイチでした。
多重録音によるヴォーカルやエコー感に現実を忘れさせてくれる美しさがあるし
凍てついた冬のアイルランドの大地を思わせてくれるメロディーも綺麗で
おっ!と思う瞬間はあるのだけど・・・あまりにも綺麗に作り過ぎなのかなぁ。

もしエンヤがこのアルバム1枚で消えていたらまた印象も違うのかもね。
いやホントにこれで消えていたら美しく儚い音として響くのかも知れません。

まあBGMに流しておくにはいいよね。 激しいロックを聴くのに疲れたらどうぞ。
そしてアイリッシュ・トラッドへの入り口の入り口としても有効・・・なのかな?

しかしこの1988年という時期 U2はもちろんシンニード・オコナーも登場して
やっぱりロック界全体がアイルランドに向いていたんだよなぁ。
あ あと1988年にはホットハウス・フラワーズのデビュー作もあったね。
ホットハウス・フラワーズは持っていないのだけど・・・聴きたくなってきたぞ。
カス盤LPコーナーによく転がっているので300円持って出動してこようかしら。
でもホットハウス・フラワーズのヒット曲のタイトルが確か「Don't Go」なので
出動するな!と言われている気もするし・・・ダメだこりゃ!いかりやさんに合掌。
 


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