スフィアン・スティーヴンス関連作品の怒涛のリリース・ラッシュもひと段落したようなので
ほっと胸を撫で下ろしています。 何にほっと胸を撫で下ろしているかといったら
彼のレコードはやたら幅が太いので棚に収まらなくなってきたからなのです。
今のところ何とか収納できているので リリースが止まり ほっと胸を撫で下ろしたのです。
なお今回登場させた5枚を並べて計ってみたら4・5センチもありましたねぇ。
レコード棚の別の所で4・5センチで何枚あるか数えてみたら13枚収納できていて
いかにスフィアンのレコードの背文字部分が太いかおわかりいただけると思います。
そして幅も太いけど 内容も収録時間も凄いヴォリュームありますよー。


TheAgeOfAdz.jpg TheAgeOfAdzInner.jpg
SUFJAN STEVENS 「THE AGE OF ADZ」 (2010)  米 ASTHMATIC KITTY AKR 077 (LP)
A1 Futile Devices
 2 Too Much
 3 Age Of Adz
 B1 I Walked
  2 Now That I'm Older
  3 Get Real Get Right
  4 Bad Communication
 C1 Vesuvius
  2 All For Myself
  3 I Want To Be Well
  4 no credit
 D Impossible Soul

スフィアン・スティーヴンス2010年最新作の「ジ・エイジ・オブ・アズ」。 CDはどうなのかわかりませんが
LPには楽曲についてのクレジットは「All songs by Sufjan Stevens」と印刷されているだけなのですねぇ。
録音スタジオだとか演奏参加メンバーだとかのクレジットが無いので徹底的な情報不足に陥っております。
これは情報が無いと不安・・・誰かと繋がっていないと不安・・・という現代の若者への挑戦です・・・かね?

クレジットが無いのはすべてひとりで作り上げたからなのかもねぇ。 確かにこのアルバムのサウンドは
コンピューターを使って作ったようなエレクトリカな音で ひとりで全部やっていてもおかしくない音です。  

エレクトリカといっても記号化されたような音が並んで「曲」と言っていいのか?というタイプではなく
ちゃんとメロディーがあり歌があり 1曲1曲を印象的な「曲」として聴かせてくれるので大丈夫!
ただ バンジョーによる弾き語りなど アコースティックなスフィアンを聴きたい人にとっては厳しいかなぁ。
僕も最初聴いた時は えっ?何これ? 騙された!金返せ! 俺の青春を返せ! と思いましたもん。

ところがガマンして何度か聴いていたら 哀しみを纏った感動的なメロディーの連発である事に気付き
気合い入れて作ったらこうなっちゃったんだろうなぁと思わせる 気合いの入った傑作に響き出しました。

気合い入っているので5〜6分の長い曲が多くなっていて 特に20分を超えるD面がハイライトです。 
この「インポッシブル・ソウル」はさすがに20分以上もあると当然曲が進むにつれ曲調も変わったりして
前半の暴力的なエレキ・ギターと 後半のプリンスかの如くなダンサンブルなソウル感覚が印象的です。

全曲中唯一フォーキーな感触のC4はタイトル表記が無いですが 実は「インポッシブル・ソウル」の
最後のパートです。 収録時間の関係でこのパートだけC4に無理矢理ブチ込んだのでしょうか。
ダウンロード・コード付きLPなのでダウンロードした音源を聴いていたらあれ?・・・と判明しました。

でもダウンロードした音源で最初から最後までノンストップで聴いてたら疲れてイヤになってきてねぇ・・・
LPだとそんな事無いので 盤を裏返して流れが途切れるのが良いのか アナログの音のまろやかな
感じが良いのか理由はわかりませんが 僕の腐った耳にはこのアルバムはLPが正解です。 
元々1枚モノのCDを無理矢理2枚にしたLPですが フツーに2枚組みLPのヴォリュームがありますしね。
 


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SUFJAN STEVENS 「ALL DELIGHTED PEOPLE EP」 (2010)  米 ASTHMATIC KITTY AKR 075 (12"×2)
A1 All Delighted People (original version)
 2 Enchanting Ghost
 3 From The Mouth Of Gabriel
 B1 The Owl And The Tanager
  2 All Delighted People (classic rock version)
  3 Arnika
 C1 Heirloom
  2 Djohariah
 D no credit

これは「ジ・エイジ・オブ・アズ」の後に出た作品ですが 元々は「ジ・エイジ・オブ・アズ」の前に配信のみで
発表されていた物で ディスコグラフィー的にもレコード番号的にも「ジ・エイジ・オブ・アズ」の前の作品ですね。

タイトルに「EP」と入っていて 表題曲が A1 B2 と2ヴァージョン入っている事だし まあEPなんだろうけど
1枚のアルバムと同じくらいのボリュームがありますよ。 いやいや 1枚のアルバムどころではありません。

クレジットはC面までしか無いけれど実はD面にはピアノによるインスト曲が11曲も入っているのですよ。
1曲が1〜2分程度でミニマル・ミュージック風でもあり エリック・サティの曲ようでもあり とても美しく流れて行く
この素敵なD面も追加するとEPと言いながらフツーに2枚組みアルバムのボリュームがあります。 凄いです。

2枚組みアルバムのボリュームがあると感じるのは長尺曲が多く いきなりA1から11分を超えているし
クラッシック・ロック・ヴァージョンのB2も8分超えでこの表題曲2曲がハイライトなのかと思いきや C2は17分あり
鋭いエレキ・ギターが炸裂して 宇宙サウンドなエフェクトで宇宙の彼方へズドドドドーン!な展開を見せます。

尺が長い A1 B2 C2 以外はすべてドラムレスになっており フォーキーなシンガー・ソングライター方面の
静かなる闘志フォークのスフィアンを味わえます。 どの曲にも もの哀しく美しいメロディーがあって沁みますし
「ジ・エイジ・オブ・アズ」のエレクトリカな音に盛り上がれない人は このEPを聴いて盛り上がっちゃいなよ!

「ジ・エイジ・オブ・アズ」と同様に楽曲についてのクレジットは「All songs by Sufjan Stevens」とあるだけで
この作品もひとりで作り上げたのか EP扱いなのでクレジットが印刷されていないのか よくわかりません。
そう シングル盤やEP盤っていうのは たいがいクレジットが印刷されていない場合も多いですからね。

なおCDとは曲順が違っているようで D面のピアノ・インストはどうやらCDには入っていないらしいです。
つまり 最大級に盛り上がりたい場合はCDでは無くこの12インチ2枚組みを購入して盛り上がりましょう。
レコード・プレイヤーを所有していないという方も 盛り上がるためにとりあえず購入して盛り上がっちゃいなよ!
そして買ったけど聴けないし持っていても意味無いので 結局売り飛ばすという顛末もまた一興です・・・かね?
 


TheBQE.jpg
SUFJAN STEVENS 「THE BQE the original motion picture soundtrack」 (2009)
米 ASTHMATIC KITTY AKR 278 (LP)
A1 Prelude On The Esplanade
 2 Introductory Fanfare For The Hooper Heroes
 3 Movement I: In The Countenance Of Kings
 4 Movement II: Sleeping Invader
 5 Interlude I: Dream Sequence In Subi Circumnavigation
 6 Movement III: Linear Tableau With Intersecting Surprise
B1 Movement IV: Traffic Shock
 2 Movement V: Self-Organizing Emergent Patterns
 3 Interlude II: Subi Power Waltz
 4 Interlude III: Invisible Accidents
 5 Movement VI: Isorhythmic Night Dance With Interchanges
 6 Movement VII (Finale): The Emperor Of Centrifuge
 7 Postlude: Critical Mass

こちらは映像のサウンドトラック盤でヴォーカルは入っておらずオーケストラが大活躍するインスト作品です。
クルクルと回転するような細かい譜割りでクラリネットやフルートやホーン類なんかが入る特徴的なフレーズは
「イリノイ」でも頻繁に登場していましたが ここでも頻繁に登場しスフィアン・サウンドを作り上げています。

本当にオーケストラによる演奏が主体なので フォークやロックっぽい部分は無く 1stの「ア・サン・ケイム」や
その後の「ミシガン」「セブン・スワンズ」「イリノイ」あたりのサウンドを期待して聴くと ああ!間違った!となり
金返せコノヤロー!レベルの作品に赤丸急上昇ですが ガマンして聴いていると段々金返せ!と思わなくなり
全編スフィアンらしさが漂う素敵な作品として アンタのヒット・チャート上で赤丸急上昇して行く事でしょう。

特にこの曲がたまらん!だとか 特にこのフレーズがたまらん!だとか強烈に耳に残る事は無いけれども
どこを斬っても完璧主義か?潔癖症か?と思わせる 細部まで配慮の行き届いたスフィアン・サウンドですよ。
全体的な印象は「イリノイ」からヴォーカルを抜いてロックっぽさを無くすとこうなる・・・と そんな印象で
エレクトロニカな部分も時折顔を覗かせ これが「ジ・エイジ・オブ・アズ」へ繋がっていくんだなぁ。

なお本作の映像の方もスフィアンが製作しているので 当然映像も併せて見てこそより一層楽しめますね。
DVD付きのCDも販売しているので はっきし言ってLPで聴くよりもDVD付きCDの方が楽しめるのです。
つまりこれから購入予定なら LPよりDVD付きCDの方が絶対オススメです・・・と テキトーに言っておきます。
当然映像は見ていないので「より一層楽しめる」とか「絶対オススメ」とか 本当に酷いテキトー発言なのです。

ただLPにはオマケのコミックが付いているので オマケが付いているというだけで何だかワクワクしてしまい
無駄に嬉しくなってしまうというような おめでたい輩はちょいと試しにLPで購入してみるのもオツですよ!
そのオマケと幅の太さについて語ったおめでたい輩の文章はこちらです。・・・2009年12月2日更新の表紙 
 


RunRabbitRun.jpg RunRabbitRunInner.jpg
OSSO performs SUFJAN STEVENS 「RUN RABBIT RUN」 (2009)  米 ASTHMATIC KITTY AKR 049 (LP)
A1 Year Of The Ox
 2 Enjoy Your Rabbit
 3 Year Of The Monkey
 4 Year Of The Tiger
 B1 Year Of The Dragon
  2 Year Of The Snake
  3 Year Of The Horse
 C1 Year Of The Sheep
  2 Year Of The Rat
  3 Year Of The Rooster
 D1 Year Of The Dog
  2 Year Of The Boar
  3 
Year Of The Lord

気付いたらスフィアンのアルバムは2nd「エンジョイ・ユア・ラビット」以外は全部手元にありましたよ。
「エンジョイ・ユア・ラビット」を入手していない理由は 記号のような音が並んだエレクトロニカ作品だからで
購入しても聴かない率80パーセント・・・いや90・・・いやいや95パーセントなので入手を躊躇しています。

ところがその「エンジョイ・ユア・ラビット」をストリング・カルテットで再演したこの作品は購入してしまってねぇ。
別にストリング・カルテットが好きな訳でもないし だいたいスフィアン自身は演奏に参加していないし・・・
スフィアンも演奏していると思って購入したのですが 間違ってしまいました。 手遅れになったら大変なので
必死に購入した結果がこの有様です。 そして当然無駄に幅も太く 自分のダメさに泣きそうです。

で 出てくる音は最初から最後までずーっと本当にストリング・カルテットのみのストリング・カルテット作品で
レコード屋のロック〜ポップスのコーナーよりも クラッシックのコーナーで販売した方がしっくりきそうです。
元曲がエレクトリカな記号のような音の為 メロディアスでは無いので メロディーを追って聴けませんし
かといって魅力的に響く室内楽といった感じでも無く これは手強いです。 ホントどうしてくれましょう!

・・・と どうしてくれましょうと言いながらすんなりと聴いてしまっている自分が・・・これはいけません。
もし僕が18歳の時だったら 何だ!こんなレコード許さん!と得意のチョップで盤を割っていましたね。
いや盤を割った事は無いけど 18歳の時はチョップで何でも割ってしまう位のギラギラした気力はありました。
ああ老いたなぁ・・・よーし! あのギラギラした気力を取り戻すために思い切ってチョップしてみるかぁ?

なおスフィアンはクレア&ザ・リーズンズの1st「ザ・ムービー」で1曲ゲスト・ヴォーカルで参加していましたが
オッソの4人のメンバーの内3人は「ザ・ムービー」でストリングスを担当していた人物になっております。
ヴァイオリンを弾いているオリヴィエ・マンションはクレア&ザ・リーズンズの音楽的リーダーでもあるし
スフィアン・スティーヴンスのファンと共に クレア&ザ・リーズンズのファンも要注目の作品ではありますね。

Clare And The Reasons 「Arrow」・・・第161号 2010/3/31 CDWOW!による深刻な資金不足解消法
 


WelcomeToTheWelcomeWagon.jpg WelcomeToTheWelcomeWagon2.jpg WelcomeToTheWelcomeWagonBack.jpg
THE WELCOME WAGON 「WELCOME TO THE WELCOME WAGON」 (2008)
米 ASTHMATIC KITTY AKR 045 (LP)
A1 Up On A Mountain
 2 Sold! To The Nice Rich Man
 3 Unless The Lord The House Shall Build
 4 He Never Said A Mumblin' Word
 5 Hail To The Lord's Anointed
 6 But For You Who Fear My Name
 B1 American Legion
  2 You Made My Day
  3 Half A Person
  4 Jesus
  5 I Am A Stranger
  6 Deep Were His Wounds, And Red

スフィアン・スティーヴンスを聴いてみようと思うのですがオススメはどれですか? という質問が来たら
とてつもなくビューティフルで劇的に素晴らしいクリスマス・アルバム(CD5枚組!)をオススメしますが
そのクリスマス・アルバムで何曲かメイン・ヴォーカルを務めていたヴィト・アユート(読み方適当)と
妻のモニーク(読み方適当)の男女デュオがこのウェルカム・ワゴンです。 スフィアンがプロデュースして
演奏にも参加し スフィアン色はかなり濃く 涙が溢れ出そうになる感動を運んでくれる傑作ですよ。

ジャケットがラグビー・ボール型に切り抜きされていて インナーを引っぱり出すとキリストの図柄が登場!
そんなジャケットもそうだし楽曲のタイトルにも「Lord」とか入っていてジーザス度高くなっています。
なお まんま「ジーザス」というB4はヴェルヴェット・アンダーグラウンドの名曲のカバーですよー。

A1から優しく切なく紡がれるアコースティック・ポップで 儚くて愛らしいモニークの歌声に全員卒倒!
ロック色が強いA2だとか またもやモニークの歌声に卒倒してしまうA1と同傾向のA5だとか
ゴスペル色強いA6に カントリーでポップスのB2に なぜかスミスの地味な曲のカバーB3があって
ヴェルヴェッツのB4は讃美歌かのように響き フォーク度高い最後のB6まで もうとにかく素晴らし過ぎ!

男性のヴィトのヴォーカルも優しげで スフィアンに似ているというか 影響を受けているのでしょうか?
いや実はスフィアンの方がウェルカム・ワゴンから影響を受けていたりしてね。 そう ウェルカム・ワゴンを
聴いているとスフィアンが教会音楽からいかに影響を受けているかがわかったような気になります。

そんなんでスフィアン自身の作品では無いけど スフィアン関連作の中でもこれは重要作だし
スフィアンがどーのこーの関係無しに感動を運んでくれる名作なので そこのアナタも是非1枚いかが?

なお前項までの4枚は全部見開きジャケットで幅は激太派ですが 本作はシングル・ジャケットで
幅は普通で薄いですよ。 そんな観点からも(?)そこのアナタもウェルカム・ワゴンは入手しないとね!

スフィアンの事を書いたページ
Sufjan Stevens 「Seven Swans」・・・第98号 2005/4/2 ヤング芸人のアルバムをゲットでハンサム気取り
とてつもなく素晴らしかったスフィアンの来日公演を観て書いた文章・・・2008年1月23日更新の表紙
 

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