1970年代シンガー・ソングライター全盛の時代のシンガー・ソングライターって
皆さん地味ですが なぜ地味かって だって地味でフォーキーじゃないと
シンガー・ソングライターの括りで語りにくいじゃないですか!
もちろん自作曲を自分で歌うソロ・アーティストは全員シンガー・ソングライターだけれども
やっぱりシンガー・ソングライターと言われてイメージするのは地味でフォーキーな音ですよねぇ。
つまり宇宙からのメッセージによると 地味でフォーキーならシンガー・ソングライターで語れ!という事で
 わたくし そんな宇宙からのメッセージ しかと受信いたしました。 はい。
そんなんで 地味でフォーキーな英国シンガー・ソングライターを語らなければいけないようです。


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CAT STEVENS 「MONA BONE JAKON」 (1970)
独 ISLAND 85 687 (LP)
A1 Lady D'Arbanville
 2 Maybe You're Right
 3 Pop Star
 4 I Think I See The Light
 5 Trouble
 B1 Mona Bone Jakon
  2 I WIsh I Wish
  3 Katmandu
  4 Time
  5 Fill My Eyes
  6 Lilywhite

1960年代 王子様ファッションに身を包みポップ・ロックをやっていたキャット・スティーヴンス。
そう 王子様ファッションといえば ジュリーと及川光博とTMレヴォリューションと髭男爵の緑の服の人で
ここに1960年代のキャット・スティーヴンスが並んでもいっさい違和感が無いとも言われています。
ん? そんな事言われているか? そんな話聞いた事無いけれど とにかく このままいつまでも
王子様ファッションのアイドル路線でいける訳が無い!って事で1970年代に入り彼はイメチェンしました。

そんなイメージ・チェンジ第一弾のこのアルバム。 ジャケットのゴミバケツの絵からしてアイドル度低いし
裏ジャケのヒゲをたっぷりと蓄えた風貌も脱アイドルな 地味で素敵なシンガー・ソングライター作品です。

まあ ギターやピアノによる弾き語りを基調にしていますが どフォークでは無く その他の楽器も入ります。
ドラムスが入ってリズミカルな曲もあるし キャット・スティーヴンスのヴォーカル自体に存在感があるので
実は聴いていて地味な音では無いです。 ただこのアルバムの次の2枚「Tea For The Tillerman」と
「Teaser And The Firecat」が決定的な名曲満載の作品なので その2枚と比べると地味なんだよねぇ。

しかし本作も決定的な名曲への伏線とも言えるドラムレスで迫るA面2曲目やB面5曲目などの
素敵な曲が並んでいて 最後のB面6曲目なんかもストリングスが入って盛り上げてくれてとても良いです。
またプロデュースはポール・サミュエル・スミスだったり ギター&フルートで幻想的に流れるB面3曲目の
フルートはピーター・ゲイブリエルだったりして そこら辺の人脈もけっこう華々しい事になっています。

そしてシンプルでわかりやすい曲を強引に複雑に聴かせてます的な展開をみせるのも彼の楽曲の特徴で
軽快なピアノ・ロックのA4なんかが象徴的。 演劇的なヴォーカルが暴れて聴きやすいんだか何だか・・・
そう この人 押さえて歌う時はいいけど 気合い入るとゲロゲーロのカエル声になるので注意が必要です。
つまりゲロゲーロといえば青空球児・好児なので 青空球児・好児とキャット・スティーヴンスが
並んでもいっさい違和感が無いとも言われているのです。 ん? そんな事言われているか?
そんな話聞いた事無いけれど 当然 青空球児・好児のファンの人も必聴なのは言うまでもないですよ!

「Teaser And The Firecat」のレヴュー・・・第140号 2008/6/19 珈琲貴族でフォーキー貴族を
キャット・スティーヴンスをチラリと語った文章・・・2005年3月19日更新の表紙
 


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RICHARD DIGANCE 「TREADING THE BOARDS」 (1975)
英 TRANSATLANTIC TRA 306 (LP)
A1 The Midnight Windmill
 2 Money Machine
 3 Will We Ever See Them Again ?
 4 Game Of Chess
 5 Man Of Many Words
 B1 The Red Lights Of Antwerp
  2 Rosemary McLaren Of The Strand
  3 As Far As The Eyes Can See
  4 Time Passes On / Song For Charlie
  5 Final Bow

リチャード・ディギャンスのトランスアトランティック時代の作品ってCD化されているのでしょうか?
ベスト盤CDは2種類見た事がありますが それぞれのアルバム単品でのCDは見た事が無いので
「CD化されていない」に1票! 権利問題とかマスター紛失などで未CD化なのかも知れませんが
地味なシンガー・ソングライターなので売上げを期待できず「CD化するつもりが無い」にも1票です。

いやホント聴いていると 楽曲もアコースティックな響きのリラックスしたフォーク・ロック曲が中心で
ストリングスやコーラス隊なども入るものの いっさい特別な事が無い素直な展開の曲ばっかりだし
あまり上手く無いヴォーカルも そこら辺のアンちゃんが歌ってる的でいっさい特別な事が無いです。
とにかくいっさい特別な事が無く では一体このアルバムの売りは何なんだ?と問われれば
「いっさい特別な事が無い地味でフォーキーな英国シンガー・ソングライター作品」である事が売りです。

まあ実際1970年代シンガー・ソングライター全盛の時代のシンガー・ソングライターはこテの人が多く
聴いて一発でガツンとインパクトは無いけど じんわりと良さが滲み出てくるタイプの人が多いですよ。
このアルバムなんか正にその通りで 今までも今後も 名盤!傑作!と騒がれる事は無さそうですが
聴けば聴くほどじんわりと良さが滲み出す 地味な英国シンガー・ソングライター作品になっています。

A1 A5 B1〜B4はドラムレスだけれど ピアノを基調にした曲やストリングスなどが入る曲や
コーラス隊が入って盛り上げる曲などポップさも併せ持っているのでフォーク・フォークはしていません。
おかげでこれだけドラムレスの曲が入っていますがフォーク作品という印象は薄く またマイナー調の
トラッド風味の曲なんかも無いので英国臭は香らない・・・かと思うと ほんのり英国臭が香ってきます。

ドラムスが入る曲は リズミカルで楽しげなポップ・ロックA2 大らかなフォーク・ロックのA3 A4 B5で
これらもとても良いですねぇ。 うーん これは地味で売上を期待できなくてもCD化しないといけません。
もしCD化するならトランスアトランティック・レーベルから出ていた4枚は全部お願いしますよ! 
・・・って誰にお願いしているのかわかりませんし 僕が知らないだけで既にCD化済みかも知れません。
そしてCD化を待っている内にCDというメディアの時代が終わってしまいそうな昨今でもあるのです。
 


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RALPH McTELL 「STREETS...」 (1975)
英 WARNER BROS. K56105 (LP)
A1 Streets Of London
 2 You Make Me Feel Good
 3 Grande Affaire
 4 Seeds Of Heaven
 5 El Progresso
 B1 Red Apple Juice
  2 Heron Song
  3 Pity The Boy
  4 Interest On The Loan
  5 Jenny Taylor / Je N'Etais La
  6 Lunar Lullaby

ラルフ・マクテルは前項のリチャード・ディギャンスと似ていて 素直な展開のフォーク〜フォーク・ロックをやるし
あまり上手くないヴォーカルもそこら辺のアンちゃん的でリチャード・ディギャンスと同傾向の地味な人ですねぇ。

そんなラルフ・マクテルですが 本作の冒頭に収録された彼の代表曲であり屈指の名曲「Streets Of London」は
シングル・ヒットもしていて それを受けて発表されたこのアルバムも彼の最も売れたアルバムらしいですよ。
彼のキャリアの中でも最も華々しい時代のアルバムなので そうなると地味なシンガー・ソングライターから
脱却したか・・・というと脱却しておらず 内容は至って地味なシンガー・ソングライター作品で安心して聴けます。

名曲A1は過去の楽曲の再録音で 1969年の「Spiral Staircase」に入っていた弾き語りヴァージョンと比べると
ハーモニカと聖歌隊風コーラスが入り彩りを与えてくれています。 適度なポップさが良い加減ですねぇ。
アルバム全体でも適度なポップさのある大らかなフォーク・ロック曲が中心に並んでいて心地良く響きますが
やはりとりたてて何か凄い!という事は無く そこがもうどうしようもなくラルフ・マクテルらしい所なんだよねぇ。
トロピカルな趣のA5 B5 なんてのもあり そういう曲が入るとシティ・ポップ〜AOR方面に傾きがちだけど
この2曲も他の曲と一緒に違和感無く収まっていて やはり地味なシンガー・ソングライター作品なのです。

演奏陣は ロッド・クレメンツ ダニー・トンプソン デイヴ・ペグ・・・などなど けっこう有名人が揃っています。
他にもコーラスでマディ・プライアがB6に参加しているし B4のマイク・ピゴットのフィドルなんかも効いています。
また「The Goldrushers」とクレジットされているコーラス隊はプレリュードの事らしく ニール・ヤングのカバー
「After The Goldrush」プレリュード・ヴァージョンのヒット直後だったのでこの名義になったのでしょうかねぇ。

しかしラルフ・マクテルは熱心に追いかけてはいないのですが気がついたら1960年代〜1970年代中頃までの
アルバムはLPとCD合わせて7枚も所有していました。 うーん どれを聴いても中々地味で・・・さすがです。
これはシンガー・ソングライターらしいシンガー・ソングライターの英国代表格と言っても構わない地味さなので
地味でフォーキーな英国シンガー・ソングライターといえば? というお題が出されたら0.01秒で迷わず
ラルフ・マクテルと答えましょう。 そして彼の鋭利なもみあげが放つオーラについては言うまでもありませんね。

ラルフ・マクテルのレヴュー
「Spiral Staircase」・・・第59号 2002/10/20 まだまだ期待してるぜ!ウーデン・ヒル・レーベル
「You Well-Meaning Brought Me Here」・・・第92号 2004/11/19 もみあげ業界は今後伸びるので・・・
「Not Till Tomorrow」・・・第112号 2006/3/23 メアリ・ホプキン様を無理して探せ! 
 


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JIMMY CAMPBELL 「JIMMY CAMPBELL'S ALBUM」 (1972)
英 ESOTERIC ECLEC 2108 (CD/2009)
1 By The Light Of A Lamp
2 Salvation Army Citadel
3 Snow Covered Street
4 Paris, You're In Paris
5 Darling Sweetheart
6 April Morning
  7 Something In The Wind
  8 Maudie
  9 Baby, Walk Out With Your Darling Man
 10 It's Just Like A Girl
 11 It Never Rains But It Pours
 12 When You're Coming Home

ジミー・キャンベルの作品は2009年にチェリー・レッド傘下のエソテリックから3枚がCD化されました。
これは3rdアルバムですが 2ndの「Half Baked」が男女のピエロが森に佇む素敵なジャケットなだけに
この気持ち悪いジャケットとのギャップがズシーンとのしかかってきてホント気持ち悪くていけません。
ちなみにジャケット・デザインは2ndも3rdも 英国ジャケット業界ではファンの多いキーフという人です。

まあジャケットはこんな事になっていますが内容は中々良くて ナイロン弦の柔らかなギターの音色と
そこに邪魔にならない程度に被さる他の楽器の按配が程良い地味なシンガー・ソングライター作品です。
彼は1971年にロッキン・ホースというバンドでもアルバムを出していて この3rdの程良い按配の演奏は
そのロッキン・ホースのメンバーで ギター基調の曲が大半ですがピアノを基調にした曲も少々あります。

英国臭も香る雰囲気バツグンの切なきフォーキー・ソングの3曲目とか11曲目とか聴いていると
そのテの音が好きな人から大騒ぎされてもおかしくない要素が詰まっているのですが
CD化されても大騒ぎされた様子は無く これは彼のヘッタクソなヴォーカルが原因なのですかねぇ。
音程が不安定でヨレヨレでもそれがまた魅力な人もいるけど彼の場合は何か間抜けに聴こえちゃって・・・。
このヴォーカルだと 楽曲提供やギター演奏で音楽活動すべきで歌を歌うべき人では無かったのかも。

・・・と勝手な事を言っていますが 少なからず彼の音楽キャリアを終わらせた要因のひとつに
ヘッタクソなヴォーカルもあったのでしょう。 この3rdが彼の最後のアルバムになってしまいました。
この後 レコード契約の無いままひっそりと活動していたのか 完全に音楽業界から引退してしまったのか
わからないけれど 確かな事は音楽キャリアの終了どころか 彼は人生のキャリアも終了しています。

そう 彼は2007年に亡くなってしまいました。 しかしこれが地味でフォーキーなシンガー・ソングライター
ジミー・キャンベルの成れの果てなんて言ったら悲しいので CD化されて手軽に聴けるようになった
幸せを噛み締めながら彼の残してくれた音楽を聴きまくって追悼ですよっ! 彼の事を勝手に色々と
想像して聴いていると間抜けなヴォーカルも美しく響き ふっと涙が溢れ・・・ああ泣きながら聴いています!
 

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