巣鴨駅近くにあるシャンデリアと赤絨毯のゴージャスかつ下品・・・いや高貴な雰囲気の
喫茶店の店名をずーっと「珈琲貴族」という喫茶店チェーンだと思っていたのですが
あれは「伯爵」という店だという事が先ほど判明! うわぁ これはマズいぞ!
店名を間違えるなんて「珈琲貴族」「伯爵」の両店に多大な迷惑をかけてしまったので
地面に頭をグリグリ押し付けて土下座して謝るくらいの勢いです・・・まあ謝らないけどね。
ん? 珈琲貴族?・・・コーヒー貴族?・・・フォーキー貴族じゃないですか!!!
なーる程 この店名の間違いは「フォーキー貴族」というキーワードを導き出すために
天が与えてくれた試練だったのか! よーし! 英国フォーキー貴族を聴いて恩返しです。
こうなったら珈琲貴族の店内BGMもフォーキー貴族にしたらいいさ。 ああそうしたらいいさ。
さあ珈琲貴族でフォーキー貴族を!



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AL STEWART 「MODERN TIMES」 (1975)
CBSソニー 15AP 631 (LP)

A1 Carol
 2 Sirens Of Titan
 3 What's Going On ?
 4 Not The One
 5 Next Time
 B1 Apple Cider Re-Constitution
  2 The Dark And The Rolling Sea
  3 Modern Times


スコットランド出身のアル・スチュワートは貴族家の血筋だという文章を以前どこかで読んだ覚えがあり
正しく英国フォーキー貴族な人ですが 血筋の話は僕のあいまいな記憶なので本当の所は知りません。
いやしかしアル・スチュワートを聴いているとどこか貴族的な雰囲気を感じるというのは事実ですね。

何か庶民の生活感みたいな物が希薄な上流階級的なメロディー・ラインがフォーキー貴族だし
線が細めで神経質そうでありながらもスタイリッシュさがあるヴォーカルもフォーキー貴族です。

そんな彼の作品は1970年代前半までのフォーク色強い作品が最もフォーキー貴族しているのですが
その時代のアルバムは地味な楽曲ばかり並んでいて印象が薄くて とっつきにくくもあります。
本作は1975年というビミョーな時代の作品で フォークから脱却してポップ度の増した内容ですが
決して内容は悪くなく いやむしろフォーク時代の作品よりも聴きやすくて僕はけっこう好きですねぇ。

しかし英国オリジナル盤ならともかく こんな日本盤LPだとカス盤コーナーで頻繁に見かける1枚で
カス盤コーナーで300〜500円・・・いやヘタすると100円で購入できるワンコイン・アルバムです。
おかげでダン・フォーゲルバーグやワム!のLPと共にカス盤としての風格(?)も漂いますよ。

ビブラストラップがカアァーと入るA1 カスタネットがタカタンと入るA2 ギロがギーギーと入るA3と
出だしの3曲のフォーク・ロック曲がスピード感たっぷりに迫ります。 ゆったりと穏やかなA4も良いし
A5はテクニックを感じさせるアコギがバート・ヤンシュの如くなドラムレスのフォーク・ブルースな曲です。

彼の作る曲はマイナー調ばかりだなぁという印象があるけれどB1は明る目のフォーク・ロックですね。
ちょっとトラッドっぽさがありスコティッシュを感じるB2も効いているし 最後のB3は得意技の長尺曲。
・・・てな具合で プロデュースはアラン・パーソンズだわジャケットはヒプノシスだわ
ビミョーな時代の作品ではありますが実はかなり英国臭を放っている作品ですね。

これは傑作だ!とはいきませんがこんなフォーキー貴族のアルバムがワム!の「メイク・イット・ビッグ」と
一緒にカス盤コーナーに放り込まれていていいのか?と考えさせられる1枚なのでさっそく珈琲貴族で
カス盤について考えながら聴かないといけないでしょう・・・さあ珈琲貴族でフォーキー貴族を!
 



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CAT STEVENS 「TEASER AND THE FIRECAT」 (1971)
キング AML-105 (LP)

A1 The Wind
 2 Rubylove
 3 If I Lough
 4 Changes IV
 5 How Can I Tell You
 B1 Tuesday's Dead
  2 Morning Has Broken
  3 Bitterblue
  4 Moonshadow
  5 Peace Train


キャット・スティーヴンスという人は貴族家の血筋では無いと思うのだけれど 1960年代のアルバム
「ニュー・マスターズ」が貴族な王子様みたいな服装でジャケットに写っているのがとっても印象的で
彼にはフォーキー貴族のイメージがあるのですよ。 いや「ニュー・マスターズ」ってアルバムは
割とどーでもいいようなポップス路線でイマイチだったので処分してしまい今手元に無いですけどね。

で その王子様の服装だけでフォーキー貴族入りしてしまうのか?というと そうではありません。
この「Teaser And The Firecat」は出てくる音もスタイリッシュで貴族的なのでフォーキー貴族ですねぇ。
ただヴォーカルは力強く歌う部分はゲロゲーロなカエル声になってしまいフォーキー貴族でいいのか?
とも思いますがゲロゲーロなカエル声でも あまり庶民的な響きは無く 彼はフォーキー貴族なのです。

1970年代初頭のシンガー・ソングライター全盛の時代らしい穏やかな内容で アコギとその他の
楽器が適度に絡む程度のフォーク曲と ドラムスなども入ったロックっぽい曲とがバランス良く入り
どの曲もヒジョーにセンスの良いフォーキー貴族曲! 本作での彼の作るメロディーは
「誰もが思いつくようで実は中々思いつかない感」があり 分かり易いようで複雑にも感じますね。
そこら辺がフォーキー貴族のセンスだよなぁ。 そしてプロデュースはポール・サミュエル・スミスです。

出だしのA1からメアリ・ホプキン様もカバーした素敵なフォーク曲なモンでいきなり興奮するし
10,000マニアックスもカバーしたフォーキー名曲B5ではハンドクラップも活躍して興奮するし
無国籍感漂いワールド・ミュージックのさきがけのようでもあるA2やB1とか聴き所は色々あるけれども 
やはり誰もがどこかで1度は耳にした事があるであろう決定的な名曲のB2で決まり!ですね。
コロコロと回るピアノが印象的で 穏やかで美しいキャット・スティーヴンスの美学が炸裂する1曲です。

またこの時代の英国シンガー・ソングライターって内容と売り上げが伴っている人はあまりいないですが
本作は商業的にも成功したアルバムで英国シンガー・ソングライターの名盤の内の1枚ですねぇ。

彼は1970年代後半にゲーノー界を引退して聖職者に転職しますが近年別名で活動を絶賛再開中。
近年の彼の曲は聴いた事が無いけれども・・・どうして再びゲーノー界に復職したのか考えながら
近年の作品も珈琲貴族でじっくり聴かないといけませんね・・・さあ珈琲貴族でフォーキー貴族を!
 



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DUNCAN BROWNE 「DUNCAN BROWNE」 (1973)
欧 EMI 7243 5 35623 2 8 (CD/2002)

1 Ragged Rain Life
2 Country Song
3 The Martlet
4 My Only Son
5 Babe Rainbow
  6 Journey
  7 Cast No Shadow
  8 Over The Rainbow

  9 My Old Friends
 10 Last Time Around
 additional recordings
 11 In A Mist (b side to Journey)
 12 Send Me The Bill For Your Friendship (single a side)
 13 Guitar Piece (previously unreleased)
 14 Mignon (previously unreleased)


このダンカン・ブラウンの2ndもフォーキー貴族という言葉が良く似合う素晴らしきアルバムです。
いや彼が貴族家の血筋かどうかは未調査だけども クラシカルで高貴に優しく美しく響くナイロン弦ギター
(クレジットではスパニッシュ・ギター)を使っていて このギターの響きがフォーキー貴族しています。

数曲ドラムスやベースやエレキ・ギターが入る曲がありますが 基本はナイロン弦のギターやキーボードの
弾き語りに近いかたちの伴奏に ちょっとつぶやき系の優しげな彼のヴォーカルが乗っかります。
弾き語りに近いかたちだと地味なフォークの印象になりがちで 実際地味な曲も多く入っていますが
アルバムを最後まで聴き通すと あまり地味なフォークの印象が無いという不思議なアルバムでもあります。

これはナイロン弦のギターの音色が時にクラシカルに 時にフラメンコな雰囲気を放つのでフォークという
言葉が似合わないのと キーボードの入り方がフォークにならないように上手ーく入っているからかな?
そんなこんなでフォーキー貴族で このサウンドを仕掛けたプロデューサーはミッキー・モストです。

1 10 曲目は宇宙サウンドなキーボードがギュイーンで ドラムスも入ってプログレのようでもありますが
それ以外の曲はホント優しげでクラシカルな響きのある素敵なフォーキー貴族サウンドですねぇ。 

どこまでも優しさ溢れる 4 8 曲目 アシッド臭も漂うつぶやき系の美しい 5 9 曲目あたりが真骨頂で
シングル・ヒットもしたという6曲目はクラシカルな響きのフォーキー貴族曲ながらハンド・クラップが入って
ポップになるかと思いきや それ程ポップには響かないという面白い曲・・・うーんこれがヒットしたんだ。
そしてピアノをバックに歌い上げる7曲目なんてのも入っていて変化をつけてくれています。 

ボーナス曲は 11 14 曲目が本編と同様の優しげなフォーキー貴族サウンドになっています。
12曲目がハンドクラップ入りのポップなフォーク・ロックで 13曲目はギターのインスト。 上手い!

なお彼は1993年に若くして亡くなってしまいました・・・合掌。 1968年の1st「Give Me Take You」も
ビミョーにサウンドは違うけれど本作と同様の美学を放つ名盤だし 彼の美学とは何だったのか?と
考えながら珈琲貴族でダンカン・ブラウンを聴きまくらないと・・・さあ珈琲貴族でフォーキー貴族を!
 



NorthCountryMaid.jpg

MARIANNE FAITHFULL 「NORTH COUNTRY MAID」 (1966)
ユニバーサル・ミュージック UICY-3298 (CD/2002)

1 Green Are Your Eyes
2 Scarborough Fair
3 Cockleshells
4 The Last Things On My Mind
5 The First Time Ever I Saw Your Face
6 Sally Free And Easy
7 Sunny Goodge Street

8 How Should I Your True Love Know
  9 She Moved Thru' The Fair
 10 North Country Maid
 11 Lullaby
 12 Wild Mountain Thyme
 bonus tracks
 13 The Most Of What Is Least
 14 Come My Way
 15 Mary Ann


マリアンヌ・フェイスフルは本当に貴族家の出身でこれは彼女の3rdアルバム。 けっこう有名な
フォーク曲を歌っていて貴族家の血筋の人がフォーク曲を歌ってしまうという真のフォーキー貴族ですよ!

ギターとダブル・ベースをバックに歌うというのが基本路線で 1曲目からバート・ヤンシュ作の
暗めのフォーク・ソングが登場して 2曲目は定番のスカボロー・フェアときたモンだ。
イワン・マッコールの5曲目があってペンタングルもやっていた6曲目があって ドノヴァンの7曲目があり
大定番のアイリッシュ・トラッド9曲目・・・と英国臭もプンプン漂う選曲で とにかくフォーキー貴族です。
バックの演奏もシンプルだし楽曲のメロディーも暗めのヤツが多いのでポップ度は低くなっています。

6曲目なんかはダブル・ベースがブンブン唸りパーカッションも暴れてカッチョ良いし
虚ろに漂うようなドノヴァンの7曲目はやっぱり名曲だし シタールの伴奏で歌いサイケ色を感じる
9曲目もイケているし バーズもやっていた12曲目にもシタールが入ってイケてますねぇ。

・・・と しかしこれが聴いているとフォーキー貴族という言葉があまりしっくりこないのですよねぇ。
おかしいなぁ・・・1960年代作品独特のエコー感と 彼女の細かく震える歌声のせいなのでしょうか。
でも本作はフォーキー貴族である事に間違いは無いので とにかくフォーキー貴族なのです。

でも どうなんだろう 1960年代の彼女にはもう少しポップな味付けがあった方が良いんだよなぁ。
本編よりも少々ポップさがあって歌謡フォークなボーナス曲部分を聴くとそう感じてしまいますね。
そのボーナス曲の13曲目はドノヴァンの曲で1965年のEP収録曲。 14曲目と15曲目は1964年の
アルバム「Come My Way」に収録されていた曲の別ヴァージョンになっています。

同じような楽器を使って 同じような選曲でも もしこれが1970年作のアルバムだったら 徹底した
フォーキー貴族な音になるのだろうけど 本作にはどーしよーもなく1960年代の空気感が漂います。
まあ時代の空気感を感じるアルバムっていうのは その時代にしか生まれなかった音であり
それはそれで魅力的ですけどね。 いや 考えてみたらマリアンヌ・フェイスフルって
いつの時代のアルバムもそれぞれの時代の空気感を漂わせているじゃないですか!
その音の好き嫌いは別にしても マリアンヌ・フェイスフルの時代感って凄いと思いはじめてきましたよ。
これは珈琲貴族で1960年代 1970年代 1980年代 1990年代 2000年代 と全時代の
マリアンヌ・フェイスフルを聴きまくらないと!・・・さあ珈琲貴族でフォーキー貴族を聴くぞ!

「Come My Way」のレヴュー・・・第13号 2000/5/1 そそるジャケットに社会復帰不可能状態
 


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