ヴァン・モリソンの最新作「Keep It Simple」をLPで購入したら
CDには収録されていない曲が入っていて これが2008年1月のライブ録音ときたモンだ。
ちっきしょー! ヴァン・モリソンのライブ見てぇー! でも来日する事はないんだろうなぁ。
そう・・・ヴァン・モリソンこそ来日していない最後の大物にして最後の頑固オヤジだもんなぁ。
しかしこんな頑固オヤジのくせに近年でも活動ペースを落とさずコンスタントに新作を出すし
またその作品の素晴らしさったらアンタ! こんな極度の頑固オヤジ他にいないって!
いや 実際のところヴァンがどれ程の頑固オヤジなのか知っている訳はないけれど
アルバムを聴いていると強烈な頑固オヤジ臭が放出されて やはりヴァン・モリソンこそ
最後の頑固オヤジとしか言いようがありませんね!・・・それにしてもライブ見てぇー。



KeepItSimple.jpg

VAN MORRISON 「KEEP IT SIMPLE」 (2008)
米 LOST HIGHWAY/EXILE/POLYDOR B0010658-01 (LP)

A1 How Can A Poor Boy ?
 2 School Of Hard Knocks
 3 That's Enterainment
 4 Don't Go To Nightclubs Anymore
B1 Lover Come Back
 2 Keep It Simple
 3 End Of The Land
 4 Song Of Home
 C1 No Thing
  2 Soul
  3 Behind The Ritual

 recorded live 2008
 D1 Blue And Green
  2 Little Village
  3 And The Healing Has Begun


これがD面に2008年1月のライブを収録した噂の最新作「Keep It Simple」のLPだ!
キャリアを重ねて歳をとって丸くなる事も無く 2008年のアルバムでこのふくれっつらジャケットだぁ!
こんなふくれっつらは最後の頑固オヤジどころか もう最後の江戸っ子と言ってしまってもいいですよ。

そんなふくれてばかりいるジャケットが多いヴァン・モリソンのアルバムってゆーのは
基本のリズム&ブルースがあってソウルがあってジャズがあって たまにフォーク・ロックっぽかったり
たまにAORっぽかったりトラッドっぽかったりして そこにフェイクも多用してソウルフルで存在感のある 
頑固オヤジ・ヴォーカルが乗っかってヴァン・モリソン節が炸裂するというものです。

アルバム毎にリズム&ブルース色が強いとか ジャズ色が強いとか トラッド風味の曲が多いとか 
ビミョーにそのバランスが違って 登場する楽器類もビミョーに違うけれど 1960年代のゼムの時から
40年以上のキャリアのどの時代の作品も硬派な頑固サウンドが貫かれていて・・・江戸っ子ですよ!
特に1990年代以降はもう同じような曲がたくさんあって どの曲がどのアルバムに入っているかなんて
本人もわかっていないんじゃないか?というくらい同じようなヴァン節な曲がたくさんあって困りますね。

本作はトラッド風味の曲は入っていなくて ブルース色とソウル色とカントリー色が強いかなぁ。
ヴォーカルの気張りやフェイクが抑え気味なので彼の作品の中では地味なタイプの方でしょうかねぇ。
・・・と地味なアルバムではあるけれどこれが凄く良いのです! 各曲のインパクトは薄いけれど
スティール・ギターが入りカントリー風味を感じる B4 C1 あたりの曲が心地良くて効いているし
ゆったりと流れるソウルフルなフォーク・ロックの名曲C2がまた良い! タイトルもズバリ「ソウル」って!
この「ソウル」って曲が最も象徴的ですが 他の曲名もサラッとテキトーにつけちゃった感じがあります。
いやぁ余裕綽々(?)ですねぇ。 アルバム全体のサウンドもサラッとした聴きやすさがありますねぇ。

D面のライブの曲はどれも 果たしてこの曲はどのアルバムに入っていた曲なんだ?タイプの
ヴァン・モリソン節な曲が3曲!・・・っつーかホントにどのアルバムに入っていた曲かわかりましぇーん。
新曲ではないよねぇ。 このライブの3曲にもスティール・ギターが入って本編と同様の心地良さと
サラッとした聴きやすさもありますが ヴォーカルの気張りは力が入っていてライブならではですね。

最近のステージではこのスティール・ギターが流行りのようなので 今すぐ来日してくれたら
スティール・ギターが入るライブが見られるのだろうけど 今すぐ来日は無いし来日自体しないよなぁ。
来日拒否は最後の頑固オヤジだから仕方ないけど でもヴァンのライブが見たい!すっげー見たい!
 



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VAN MORRISON 「PAY THE DEVIL」 (2006)
米 LOST HIGHWAY/EXILE/POLYDOR B0005968-01 (LP)

A1 There Stands The Glass
 2 Half As Much
 3 Things Have Gone To Pieces
 4 Big Blue Diamonds
 5 Playhouse
 6 Your Cheatin' Heart
 7 My Bucket's Got A Hole In It

 8 Back Street Affair
 B1 Pay The Devil
  2 What Am I Living For ?
  3 This Has Got To Stop
  4 Once A Day
  5 More And More
  6 Till I Gain Control Again


これが最近のスティール・ギター・ブームはここから始まった!と噂の2006年作「Pay The Devil」だ!
スティール・ギターやフィドルが全編に入る カントリーのカバー曲を中心にしたアルバムですが
そのサウンドは古臭い「どカントリー」を感じてしまう音で へぇーヴァン・モリソンはこーゆー
古いカントリー・ソングも好きだったのかぁ・・・と ちょっと以外でびっくりなアルバムですよ。

いや実はヴァン・モリソンのカントリー風味の曲っていうのは1970年代中頃のアルバムには数曲
ロック色もあるカントリー・ロックな曲が収録されていたし リンダ・ゲイル・ルイスとの2000年作の
デュオ・アルバム「You Win Again」にも古臭い「どカントリー」が何曲か入っていたけどね。
ただアルバム丸ごとカントリーをやっているのでびっくりしてしまったという訳なのです。 

いや古いカントリー・ソングとか言ってるけど ほぼ原曲を知らないので最近のカントリーのカバーも
入っているかも知れないなぁ・・・でもハンク・ウイリアムスのA2とA6は知っていたぜ!

そんな「どカントリー」なカバー曲の中にヴァンの自作曲が3曲 A5 B1 B3 と入っているけれど
何の違和感も無く「どカントリー」な曲に混じって流れて行き 埋もれんがばかりですねぇ。
・・・と思っていたけれど 何度か聴いていたらヴァンの自作曲は古いカントリー・ソングとは
ちょっと違った感触に聴こえてきましたねぇ・・・これがヴァン・モリソン節っつーヤツですかねぇ。 

ヴォーカルはフェイクや崩しは控え目で割とちゃんとメロディーを追いかけて歌っている感じですね。
カバー曲なので控え目なのかな? ただヴォーカルが暴れないからといって気合いが入ってない
訳じゃ無く むしろ ふてくされながらも楽しそうに歌っていて すっげーノリノリじゃないですか!

本作はヴァンのアルバムの中では異色だし そんな古臭いカントリーなんか聴けるか!といった
若いヤングからは敬遠されてしまいそうなアルバムです・・・しかーし これを聴かないと損ですよ!
楽しんで歌っているのに ふてくされているという凄い世界! こんなアルバム他に無いです。
さすが最後の頑固オヤジです。 ジャケットのサングラスも凄いワルなオヤジで・・・マフィアですね。
 



MagicTime.jpg

VAN MORRISON 「MAGIC TIME」 (2005)
欧 EXILE/POLYDOR 9871428 (LP)

A1 Stranded
 2 Celtic New Year
 3 Keep Mediocrity At Bay
 4 Evening Train
 5 This Love Of Mine
 6 Just Like Greta
 B1 Gypsy In My Soul
  2 Lonely And Blue
  3 The Lion This Time
  4 Magic Time
  5 They Sold Me Out
  6 Carry On Regardless


ヴァン・モリソンのアルバムはどれを聴いても素晴らしいけれど近年の最高峰と言えるのがこれ。
噂の2005年作「Magic Time」ですよ! アルバム・タイトルが「魔法の時間」というだけでも即死級なのに
色々なタイプの曲がバランス良く入ってくれていて 楽しくて 美しくて かっこ良くて そして泣けます。
でも色々あるからといってバラバラでは無くアルバム全体に統一感もあるという傑作になっていますよ。

A2の「ケルティック・ニュー・イヤー」でいきなりハイライト! ゆったりと流れる曲調にストリングスも入って
最後にチーフタンズのパディ・モロニーの郷愁を誘うホイッスルが炸裂して涙を誘うという名曲だぁ!

そしてビッグ・バンドをバックに歌いまくるA5がまた最高! 燕尾服と蝶ネクタイの古ーいスタイルの
マジシャンがシルクハットから鳩を出す瞬間かの如くなそのサウンドは はっきし言ってダサいけれど
逆にそのダサさがかっこ良過ぎです。 ノリノリでやる気満々なヴァンが聴ける本作のキメの1曲ですよ! 
なおこの曲はクレジットを見ると作者に「Sinatra」ってあるのでフランク・シナトラのカバー・・・なのでしょうか。

B2も作者クレジットを見るとカバーらしき曲で サックスがむせび泣き ピアノがムーディーに響いて
ナイトクラブ状態! はっきし言ってダサいけれど逆にそのダサさがかっこ良過ぎで くっそー! 良い!

アコギとベースとリュート そしてストリングスによる伴奏で全曲中唯一ドラムレスのB3は
バックの音だけ抜き出すとヒジョーに美しい室内楽風フォークになっていて大興奮ですよ!
でもヴァンのソウフルなヴォーカルが乗っかってフォーク度を低くするというヴァン・モリソン節炸裂だぁ!

ソウルフルなヴォーカル同様に得意技のソウフフルなハーモニカも爆発して興奮させてくれる
アルバム・タイトル曲のB4は3拍子で 3拍子好きの僕は更に興奮するし ヴァンの代表曲の内のひとつ
「クレイジー・ラブ」っぽいコード進行のB5とか 最後にヨーデルで締めるB6とか 聴き所満載ですね。

いやぁホント良いなぁ。 これはやっぱりどーしても死ぬまでに1度くらいはヴァンのライブを見ておかないと!
よーし ヴァンが来日しないのであればこちらから出向くぞ!・・・って意気込みだけで終わりそうだけどね。

最後の頑固オヤジのレヴュー
Tupelo Honey (1972) 第41号 2001/7/21 麗しき英国の森への誘い
No Guru, No Method, No Teacher (1986) 第76号 2003/10/14 美しい英国の音で秋の切なさを更に満喫
Poetic Champions Compose (1987) 第26号 2000/12/14 ナルシスト・オヤジのジャケットを見て興奮しろ
Irish Heartbeat (1988) 第85号 2004/4/16 1988年、僕の心はアイルランドへ
 


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