ここのところマジー・スターをよく聴いています。
ああホープ・サンドヴァル様の気だるく虚ろなロリータ・ヴォイスにメロメロですよぉ。
・・・って僕はよくメロメロっていう言葉を使うのだけどメロメロって死語ですかねぇ。
メロメロは昭和の言葉っぽいので昭和モードでマジー・スターをレヴューしましょう。
あ もうひとつ昭和の死語を思いついたぞぉ。
ホープ・サンドヴァルって歌声も素晴らしいけどルックスも「マブい」ですよ!



SheHangsBrightly.jpg

MAZZY STAR 「SHE HANGS BRIGHTLY」 (1990)
米 CAPITOL CDP 7 96508 2 (CD)

1 Halah
2 Blue Flower
3 Ride It On
4 She Hangs Brightly

 5 I'm Sailin
 6 Give You My Lovin
 7 Be My Angel
 8 Taste Of Blood

  9 Ghost Highway
 10 Free
 11 Before I Sleep


マジー・スターのデビュー作。 うわぁーこれって昭和65年(1990年/平成2年)かぁ。
最近のバンドのイメージがあったのだけどキャリアを考えたらもうベテランですねぇ。
アルバム枚数が少ないのもまだ若手〜中堅と思わせてしまう要因なのかもね。

マジー・スターはホープ・サンドヴァルとデヴィッド・ロバックの2人組の米国バンドで
隙間のある少ない音数ながらユニットって感じでもなくバンドの音になっています。
クレジットにある参加者の名前も内ウイリアム・クーパーとキース・ミッチェルは
2ndと3rdでも演奏しているのでこの2人は準メンバーなのかも知れません。

1曲目からタンバリンが印象的に響くミディアム・テンポのフォーク・ロック曲で
これにホープ姉さんのロリータ・ヴォイスが乗っかるモンだからたまりません。
・・・と基本はアコースティックな感触の穏かなフォーク・ロックをやるバンドなのだけど
やる気があるのか無いのか熱くならない演奏や 音符の一番下から上までの
幅が狭い(ように感じる)語り系ともいえる楽曲のメロディー・ラインが気だるくて
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなんかを思わせる夜のイメージの音ですよ。

ドラムレスの可愛い3拍子フォークの3曲目。 ドロドロとした6分超の4曲目。
スライド・ギターが入りブルース色も感じられる5 8 10曲目。
ギターのリフがハード・ロック的でもあり全曲中最も激しい9曲目とか色々あるけど
どの曲もじわじわとサイケデリックに迫ってきて聴く者を異空間へと誘ってくれます。
あとタンバンリンの使用頻度が非常に高くてタンバリン・アルバムでもあります。

近年のホープ・サンドヴァル&ワーム・インヴェンションズなどを聴いた耳だと
本作ではまだホープ様の歌声はちょっと硬い感じもあり虚ろさが物足りないかなぁ。

隙間のあるエレキ・ギターのストロークにヴィオラ(かな?)が絡む11曲目が
ニコのアルバム「Chelsea Girl」収録の「I'll Keep It With Mine」(ディランのカバー!)
に似ていたりとヴェルヴェッツやニコを聴いた事があれば更に楽しめますね。

なお昭和で何年かの計算は西暦から1925を引けば出ます。 覚えやすいでしょ?
1925をイクニゴって覚えればいいし。 え?イクニゴ?何じゃそれ?覚えられねー!
 



SoTonightThatIMightSee.jpg SoTonightThatIMightSeeObi.jpg

MAZZY STAR 「SO TONIGHT THAT I MIGHT SEE」 (1993)
東芝EMI TOCP-8359 (CD/1994)

1 Fade Into You
2 Bells Ring
3 Mary Of Silence
4 Five String Serenade
5 Blue Light

  6 She's My Baby
  7 Unreflected
  8 Wasted
  9 Into Dust

 10 So Tonight That I Might See


マジー・スターを初めて聴いたのはこの2ndの冒頭を飾る「Fade Into You」で
確かテレビでビデオクリップと共に流れたのを見たんだっけなぁ。
本作は1993年作でこの日本盤発売は1994年だけど聴いたのはもう少し後のはず。
虚ろなロリータ・ヴォイスとゆるやかな8分の6拍子のリズムにシンプルなメロディーで
聴いた瞬間ノックアウトでダッシュで出動→ダッシュで購入→ダッシュで聴きました。

で ホープ様のマブい顔立ちがよく分かるように帯の写真も載せてみましたよ。
この写真もちっちゃくなってしまってちょっと分かりにくいですけどね!
でも各アルバムのブックレットに載っている写真だと更に分かりにくいのです。

ホープ・サンドヴァルのルックスは前に現れた瞬間 別に何も悪い事していないのに
「ごめんなさい僕が悪かったです!」と言ってしまいそうな魔性系ですねぇ。
小野洋子を意識した顎のかたちに大きな瞳と厚い唇でエキゾチックな魅力もあります。
そして歌声も粘りついて離れないロリータ・ヴォイスの魔性系とくればメロメロだし
更に昭和語録でいくとフィーバーでハッスルでハラホロヒレハレーでしょう。
ああホープ様・・・何もしていないけどホントごめんなさい!

音は前作とさほど変わってはいませんが2〜3分台の曲が多く並んだ1stに対し
こちらは4〜5分台の長い曲が並び 1曲の中でじわりとサイケがより味わえます。
ホープ様の歌声もささやくように語るように虚ろな味わいが増しています。

オルガンが印象的なドロドロとしたサイケデリック・ナンバーの3曲目や
後半ヘヴィーなエレキ・ギターが爆発しそうで爆発しないブルース色のある8曲目や
ペコペコ・ドラムに延々と繰り返される脅迫的なギターのリフ&ホープ姉さんの語りで
じわじわとトリップする7分超体罰系の10曲目などどれも夜に聴くべきアルバムだ!と
言わんがばかりだし アシッド・フォークと呼んでもいいような4 7 9曲目もあります。

ゆったりとしたフォーク・ロックの 1 2 5曲目が正統派マジー・スター・サウンドかな?
あぁ・・・ゆらゆらと漂う感じが気持ち良いなぁ。 特に1曲目はホント名曲だねぇ。

アコギのアルペジオ&タンバリンに後半ストリングスが絡むフォーク曲の4曲目は
アーサー・リー作なのでラヴのカバーなのかな? オリジナルは聴いた事ありません。
 



AmongMySwan.jpg

MAZZY STAR 「AMONG MY SWAN」 (1996)
米 CAPITOL CDP 7243 8 27224 2 7 (CD)

1 Disappear
2 Flowers In December
3 Rhymes Of An Hour
4 Cry, Cry
5 Take Everything
6 Still Cold

  7 All Your Sisters
  8 I've Been Let Down
  9 Roseblood
 10 Happy
 11 Umbilical
 12 Look On Down From The Bridge


この3rdは第44号で紹介済みです。 いやーこれも良いなぁー。

ホープ・サンドヴァルとデヴィッド・ロバックの2人プラス数名の演奏者という体制は
前2作と変わりませんが楽曲のメロディーが多少親しみやすい曲が多くなったのと
ほんのちょっとカントリー風味の曲なども織り交ぜ 3作中最も聴きやすいです。
聴きやすいといってもやっぱり気だるくて虚ろなのでダメな人はダメでしょうけどね。

マジー・スターの男性の方デヴィッド・ロバックについて書くと1980年代初頭から
レイン・パレード〜オパール〜マジー・スターと渡り歩いていて キャリアの長さは
完全に昭和の人ですねぇ。・・・とこれは前作の日本盤ライナーノーツからの情報で
僕はレイン・パレードもオパールも聴いた事は無いのでした。
ホープ・サンドヴァルに逃げられて(?)現在は何しているか分からないけど
デヴィッド・ロバックの志向する隙間のあるじわりとサイケなサウンドと
ホープ様の気だるいロリータ・ヴォイスがあってこそのマジー・スターですよ。

・・・とここまでマジー・スター全3枚連続して聴くとどれも同じに聴こえたりしてねぇ。
でも3枚とも流行りの音に左右される事無くアコースティックで虚ろでサイケで
3枚とも名作ですからね! 1990年代 特異な存在であったと思いますよ!
20年後くらいに伝説になっているかもね。 ・・・20年後は昭和99年かぁ。
よし!翌年昭和100年を祝えるぞ! 生きていればね。
 



BavarianFuruitBread.jpg

HOPE SANDOVAL & THE WARM INVENTIONS 「BAVARIAN FRUIT BREAD」 (2001)
英 ROUGH TRADE RTRADELP031 (LP)

A1 Drop
 2 Suzanne
 3 Butterfly Mornings
 4 On The Low
 5 Baby Let Me
 6 Feeling Of Gaze

 B1 Charlotte
  2 Clear Day
  3 Bavarian Fruit Bread
  4 Around My Smile
  5 Lose  Me On The Way


果たしてマジー・スターが解散してしまったのかどうかは分からないのだけど
ホープ・サンドヴァル&ワーム・インヴェンションズ名義で出たこれは傑作ですよ!

ワーム・インヴェンションズってバンド名がついていますが全曲参加しているのは
マイ・ブラディ・ヴァレンタイン(こちらも解散したのかどーか分からない)のドラマー
コルム・オウキオソイグだけで後はゲストで数人が参加するかたちになっています。

気だるい美しさを伴ったゆったりとした曲の連発でマジー・スター時代と
それ程変わってはいませんが音の隙間の美しさは更に磨きがかかっています。
マジー・スターはタンバリンが多く入っていましたが本作にはハーモニカが多く登場。
そしてフォーキーな響きの曲が大部分を占め もしこれが1970年作だとしたら
アシッド・フォークの必聴作として語られるようなレベルのアルバムですねぇ。

3拍子でフォーキーでグロッケンスピール入り・・・とA1から必殺度高い曲で
虚ろなフォーク曲A2では更にグロッケンスピールが全編入りまくりですよおおぉ!
この2曲で鼻血やヨダレが噴出しているというのにA3ではバート・ヤンシュが登場し
アコギがあらぬフレーズを弾いちゃう儚いフォーク曲で・・・もうどうしましょう!
で ヤンシュおじさんはもう1曲 哀しげなメロディーを持ったB1で弾いております。

エレキ・ギターをメインにした曲はA4とB4の2曲だけで
A4ではやる気の無いパパパ・コーラスが凄いし どこまでもどこまでも美しいB4は
グロッケンスピールも入る必殺の名曲・・・曲の中へとろけて行くようですよ!
非メロディアスな最後のB5はギターをこするキュッキュッって音にエコーがかかり
不思議なトリップ感がキてます。 キャー!これはホント傑作だぁー!

・・・と傑作と言っておきながらマジー・スターも本作も決して
メロディアスとは言えないのでメロディー重視の人は手を出すべきでは無いし
ロックの興奮という物も無いのでまともなロック・ファンも手を出してはいけません。
部屋の中を真っ暗にして夜中に独りで聴くべき音楽ですからね。
眠気が襲ってきた瞬間聴くと効果バツグンで・・・死にたくなります。 
 



Stoned&Dethroned.jpg

THE JESUS & MARY CHAIN 「STONED & DETHRONED」 (1994)
独 BLANCO Y NEGRO 4509-96717-1 (LP)

A1 Dirty Water
 2 Bullet Lovers
 3 Sometimes Always
 4 Come On
 5 Between Us
 6 Hole
 7 Never Saw It Coming
 8 She

 B1 Wish I Could
  2 Save Me
  3 Till It Shines
  4 God Help Me
  5 Girlfriend
  6 Everybody I Know
  7 You've Been A Friend
  8 These Days
  9 Feeling Lucky


さて最後に登場はジーザス&メアリ・チェインの「ストーンド&デスローンド」です。
A3にホープ・サンドヴァルがヴォーカルで参加しているので取り上げました。

これはマジー・スターを知る前に聴いていたので誰だぁこのロリータ・ヴォイスは?
と思ったけど これといって調査もせずいやぁーこの曲いいなぁーと聴いていました。
後にマジー・スターを知りクレジットを見て「Hope Sandval-vocals」とあったので
あーこの歌声はホープ様だったのねーと分かった次第です。

1985年(昭和60年)に1stアルバムを出したジーザス&メアリ・チェインは
暴力的なノイズ・ギターを武器にして昭和〜平成と駆け抜け解散しました。
かっちょ良いアルバムが多い彼らですが本作は穏かなアコースティックな響きで
ダラダラ感のあるフォーク・ロック曲がズラズラーっと並んでおります。

いやーこのダラダラ感が心地良くてねぇ。 マジー・スター同様のやる気無さげな
気だるさが全編を覆っているのですが こちらは夜の音では無いですねぇ。
カラリと晴れた青空を思わせる音でありながら草の香りや木漏れ日は似合わない。
・・・とドラッグや絶望の香りがする喉の渇く青空サウンドになっているのです。

全曲ジムとウイリアムのリード兄弟&ベース&ドラムスのメンバーの4人で演奏し
ゲスト参加者はホープ姉さんともう1人 元ポーグスのシェイン・マッゴワン(!)です。
シェイン登場のB4ではリード兄弟は歌わずシェインが全編ヨレヨレのヤクザ声で
歌ってしまってシェインのソロ曲の如くです。 これがこれがすっげー名曲!

なおジーザス&メアリ・チェインの次作&最終作&1998年(昭和73年)作の
「Munki」にもホープ・サンドヴァルはヴォーカルで参加しています。

The Jesus & Mary Chain 「Complete John Peel Sessions」のレヴュー・・・第54号
 


表紙へ戻る

inserted by FC2 system