| 10,000 MANIACS 「IN MY TRIBE」 (1987) 米 ELEKTRA/ASYLUM 60738-1 (LP)
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女の子ヴォーカリスト ナタリー・マーチャントを擁した5人組テン・サウザンド・マニアックス。 この3rdアルバムは1980年代の米フォーク・ロックを代表する大傑作です。 よくテン・サウザンド・マニアックスはR.E.M.の妹分みたいに語られてしまうのですが R.E.M.の全アルバムがまとまってかかって来ても このアルバムにはかないません。 1980年代アメリカン・ロックで1枚選べと言われたら これにするか トーキング・ヘッズの 「Little Creatures」 にするか迷うレベルの最高の1枚なのです。 A1からA4までの軽快な曲を並べた流れは 良い!としか言葉が出てきませんね。 この4曲のキラキラと輝くギター・サウンドは何度聴いても鼻血が出そうになります。 B1のキャット・スティーブンスのカバーではパーカッションを多用しリズミカルに迫り R.E.M.のマイケル・スタイプが突然登場してワン・フレーズ歌って去って行くB4など やっぱりどの曲も素晴らしいよー。 何でこんなに良いのでしょう。 ナタリーの気が強いようでありながらも 粘りがありまろやかな歌声も良いのですが 何といっても不思議な滑らかさのあるメロディー・ラインが気持ち良いのです。 このメロディーの感じはフツーなようで凄いです。 他にもありそうで無いしねぇ。 テン・サウザンド・マニアックス時代はメンバーが登場しないジャケばかりだったのですが ナタリーはソロになってからは自分の顔写真をジャケに使っています。 彼女は萩原聖人顔なのでジャケットを見ているとムカムカして来ませんか? 決して萩原に似ているという事では無いのですが 顔の質(?)が同じなんだよね。 |
| MICHELLE SHOCKED 「ARKANSAS TRAVELER」 (1992) 米 MERCURY 314 512 101-2 (CD)
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第33号で紹介したシンディ・リー・ベリーヒルと共に1990年代アメリカの そそらないルックス界(?)を牽引したミッシェル・ショックトの4thアルバム。 シェリル・クロウという人があんなに大ヒットした イコール あれが時代が求めていた音 という事であれば この人の扱われ方はヒドいものです。 この知名度の違いはもうミッシェル・ショックトのルックスのせいとしか言えません。 ちなみに僕の知っているシェリル・クロウの曲は大ヒットした 「オール・アイ・ワナ・ドゥ」 (ってタイトルでいいんだっけ?)だけというボケボケぶりだけどね! ・・・このアルバムの1曲目がシェリル・クロウのその曲に似ているのですよ。 ほんのちょっとソウルフルなヴォーカルの感じとか 乾いたバックのサウンドとかね。 いやこのアルバムはそれだけじゃ済まされない素晴らしい内容です。 全体的にはロックな部分とカントリーやアイリッシュ・トラッドの味付けが絶妙に絡みます。 ジャケットそのままにアメリカど田舎ふろしき1個の旅といった感じの音です。 僕が特に好きなのは軽快だけど悲しみを纏ったメロディーがたまらないフォーク・ロック2。 ギターとフィドルとチェロの柔らかいバックに郷愁を誘う切ないメロディーが乗っかる9。 涼しげなブルーグラス風インストの14も気持ち良いですね。 そして各曲には多数の有名だけどいぶし銀なプレイヤーが演奏に参加しております。 銀はいぶしてこそ深みや味わいが増すのです。 ぜひ味わってやって下さい。 |
| MAZZY STAR 「AMONG MY SWAN」 (1996) 米 CAPITOL CDP 7243 8 27224 2 7 (CD)
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男と女の2人組マジー・スター。 これは3rdアルバムになります。 女の子ヴォーカル ホープ・サンドヴァルは反則ぎみの舌っ足らずな甘えん坊な歌声。 バックのサウンドはカントリー風味も伴ったゆったりとしたフォーク・ロックですが ベルベット・アンダーグラウンドを更に気だるくしたような空気が全体を包んでいます。 1st 2ndと比べるとその気だるい部分がちょっと後退しているような気はしますね。 3枚中では本作が最も聴きやすいのかなぁ。 メロディーも綺麗だし。 まあどのアルバムも太陽の似合う音ではありません。 夜に聴く音楽です。 1曲目からわざと適当に演奏しているような感じがゆったりと夜へと誘います。 ただ誰でも吹けそうなヘッタクソなハーモニカが絡む2曲目だけは昼間に聴きましょう。 うたた寝を誘うその雰囲気は睡眠薬100錠分くらいの効果があります。 それにしてもこのバンドの知名度がイマイチ低いのは どのアルバムにも表ジャケットにメンバーが登場していないのが原因ですね。 ホープ・サンドヴァルは小野洋子ばりの四角い顔がたまらないし 男の方のデヴィド・ロバックというヤツは さえないハゲオヤジです。 2人ともルックスはバッチリなのでジャケットにメンバー写真を使えば ジャケ買いするヤツも増えるんだけどねぇ。 |
| COWBOY JUNKIES 「THE CAUTION HORSES」 (1990) 米 RCA/BMG 2058-1-R (LP)
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カナダ出身のカウボーイ・ジャンキーズ。 何てかっちょいいバンド名なんでしょう。 彼らのアルバムは1988年の 「The Trinity Session」 が有名ですが僕はこれです。 女の子ヴォーカルのマーゴ・ティミンズは優しく美しいつぶやき系ヴォーカル。 決してつぶやいている訳じゃないのだけど熱くなり声を張り上げる事もありません。 カナダのど田舎のイモねーちゃんみたいなルックスには目をつぶってあげましょう。 その他のメンバーの男3人はギター ベース ドラムス というロックな構成ですが ゲスト演奏者の弾くマンドリンやアコーディオンやペダル・スティールが全編に入ります。 そしてもの悲しいメロディーな上に全曲スロー〜ミディアム・テンポという徹底ぶり。 バックのサウンドだけ聴くと理想的なうたた寝カントリーなんだけど マーゴちゃんのつぶやきヴォーカルが乗っかるとやり場の無い無常感が漂います。 もう怒りをぶつけてみても何も変わりはしない・・・といった諦めの音楽です。 僕はこれを聴くと悲しくて悲しくて涙が止まらなくなってしまいます。 これを書くために盤に針を落としたのですがA1の出だしのアコーディオンの音一発で もう涙が溢れて来たので聴くのをやめました。 ・・・名作です。 |
| SUZANNE VEGA 「99.9 F゚」 (1992) 英 A&M 540 012-1 (LP)
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スザンヌ・ベガ。 この人は美しい人ですね。 「Luka」 「Tom's Diner」 の彼女の代表曲を生んだ1987年の2nd 「Solitude Standing」 の ジャケットなんか奇跡的に可愛いですよ。 たまらねー。 その次の3rd 「Days Of Open Hand」 はなーんか聴き所の無いアコースティック・ポップで 当時僕は 「スザンヌよお前もか!」 とジャケットに向かって何度も何度も叫んでいました。 そこに登場したこの4thアルバム。 冒険心満載の不思議なサウンドが飛び出して来ました。 奇妙な響きのパーカッションの洪水と地を這うようなかっちょいいベース・ライン。 当然ダンス・ミュージックとしても有効ですが これが踊れそうで踊れない。 そして一部の曲では彼女の最大の売り物であった耳元で語りかけるような優しい歌声にも エフェクトがかかっていて かつての文学少女のイメージからかっちょいい女へ大変身です。 でもメロディーは相変わらず暗い曲ばっかりな所は安心して聴けます。 サウンドが変わったからといって彼女はフォークを捨てた訳ではありません。 その証拠に 3rd 4th 5th のジャケットには長く爪を伸ばした右手を登場させています。 これは 何をやろうが私はフォーク・シンガー宣言 に間違いありません。 ああ彼女は伸ばした自分の爪を使ってアコースティック・ギターをつま弾いているんだ! と思えば思う程ギターの音色はより一層繊細で美しい響きに聴こえますよ。 本当はもうギターなんか弾かないから爪を伸ばしているのかも知れないけどね! |