英国フォーク界の死神博士(勝手にそう言っています!)ことクライヴ・パーマーが
21世紀になったとたんに近年稀にみる絶好調じゃないですか!
絶好調といっても本物の死神博士のように世界征服のために毎週毎週
子供を誘拐したりするような無理のある絶好調では無くマイペースですけどね。
まあクライヴ・パーマーってもう年金を貰うような年齢のおじいちゃんなので
地獄の軍団ショッカーを率いて世界征服を企む本物の死神博士のような
必死さは必要無いのでマイペースなんだろうね。 実際年金貰っていたりしてね。



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INCREDIBLE STRING BAND
「NEBULOUS NEARNESSES」 (2004)

英AMOEBA RECORDINGS AR002 (CD)
1 You Know What You Could Be
2 Cousin Caterpillar
3 Everything's Fine Right Now
4 Chinese White
5 Ducks On A Pond
6 How Happy I Am
7 The Water Song
  8 Banjo Tune
  9 Log Cabin Home In The Sky
 10 Painting Box
 11 Empty Pocket Blues
 12 The Hedgehog's Song
 13 A Very Cellular Song


2001年の再結成ライブ盤「Bloomsburry 2000」に続くインクレディブル・ストリング・バンドの
作品はスタジオ・ライブ盤で少人数のようですが観客も入ってフツーにライブ盤でもあります。
収録曲はクライヴ・パーマーのバンジョー・ソロ・インストの8曲目以外はすべて1960年代の
初期のインクレの曲なので 初期インクレのベスト盤的なアルバムとしても楽しめますね。

全体的にはギターやバンジョーの伴奏の上に色々な楽器が乗っかるフォークになっていて
ほんのりとトラッド臭も香ります。 聴き終えて耳に残るのはバンジョーとフィドルの音で
耳に残るバンジョーはクライヴ・パーマーが弾いているので近年稀にみる絶好調な訳です。

インクレはロビン・ウイリアムソンとマイク・ヘロンの2人が中心のグループであるのに
本作にはロビン・ウイリアムソンが不参加で そんなのインクレじゃない!的でもありますが
クライヴ・パーマーの活躍がロビン不在の穴を埋めているのではないでしょうか。

そしてインクレで最も変態的なロビン不参加により割と聴きやすい作品に仕上がっています。
ん? ロビン不在が聴きやすい原因かなぁ? いやフルーフという女性が参加していて
この人がフィドルやリコーダーやコーラスでしっかりとした演奏をしてくれているおかげで
インクレ特有のダラダラ感を緩和してくれて本作を聴きやすくしているのが一番ですねぇ。

まあ聴きやすいといってもそこはインクレ。 マイク・ヘロンは相変わらず変な節回しの
ヒッピー・ソウル感覚溢れるへなちょこヴォーカルだし クライヴ・パーマーもぶっきらぼうで
テキトーな感じのヴォーカルだし 楽曲自体もキャッチーでわかりやすいなんて事は無く
CDに合わせて一緒に歌えるようなシロモノでは無いので注意が必要ですけどね。

でも全体的にゆったりとのどかな感じで良いですねぇ。 休日のピクニックのような
のどかな感じなので 死神博士がショッカー戦闘員を引き連れビニール・シートを広げて
弁当でも食べている姿を想像しながら聴くと一段と効果がありますよ!・・・って何の効果だ?

インクレの大量レヴュー
第58号 2002/9/3 インクレディブル・ストリング・バンド 「U」 CD化記念ジャンボリー
 



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THE FAMOUS JUG BAND
「O FOR SUMMER」 (2001)

英MARKET SQUARE MSMCD110 (CD)
1 O, For Summer
2 The Waiting Game
3 Hole In The Ground
4 Around Again (Save Me)
5 Baby Please Come Home
6 Time & Momentum
7 Winter Sunshine
8 Where Have You Been So Long
  9 In The Night
 10 Davy's Signal
 11 Gone With The Light
 12 Sitting Alone
 13 Heartstop
 14 Out Of The Blue
 15 Shells
 16 Danse De Matelots


インクレの1966年の1stだけ参加してすぐバックれてしまうクライヴ・パーマーですが
彼はその後1969年にフェイマス・ジャグ・バンドに参加してアルバムを出しておりました。
で インクレが再結成されたと思ったらフェイマス・ジャグ・バンドも再結成という暴挙ですよ。

1960年代のバンドの再結成となると1〜2人欠けていたり一部メンバーが変わっていたり
する事も多いですが本作でびっくりするのはオリジナル・メンバー4人がちゃんと揃っていて
この点を見てもクライヴ・パーマーは近年稀にみる絶好調じゃないですか!

フェイマス・ジャグ・バンドはジャグ・バンドを名乗っているのでもちろんジャグも
登場しますが その他ギター マンドリン バンジョー ハーモニカ オートハープなどの
楽器も入っていて ジャグを使ったフォーク・グループという感じでしょうか。

収録された楽曲はトローンと妖しげな雰囲気を放つ曲や ブルース色のある曲や
トラッド臭のある曲や 聴きやすいフォーク・ソングなど割とバラエティーに富んでいますね。
そして女性ヴォーカルのジルが多くを歌っていて楽曲に彩りを与えてくれています。

1969年の1st「Sunshine Possibilities」もそうだったのですが 決してクライヴが中心の
グループという事は無く 本作でもクライヴは2曲だけの楽曲提供になっています。
クライヴの提供曲は1曲目と9曲目ですが バンジョーを基調にダラダラと淡々と
曲が進行するこの2曲は何か他の曲とは異質な妖しげで虚ろな雰囲気を放っているなぁ。

そしてジャグ担当のヘンリー・バートレット作ですが淡々とバンジョーが鳴り続ける12曲目も
また虚ろでトローンとした雰囲気で迫ってきますよ。 クライヴのバンジョーが入ると
こんな雰囲気になってしまうなんて さすが英国フォーク界の死神博士!ですね。

まあアルバム全体を通して凄い!大傑作だ!と大騒ぎする程の内容とは思えないので
気の狂ったマニア向けですかねぇ。 また16曲で約53分という収録時間は
ビミョーに長くてツラいのでダラダラとかったるい音が長時間垂れ流されていても
そんなのへっちゃらだ!という特異体質の人向けのアルバムでもあります。

The Famous Jug Band/Sunshine Possibilitiesのレヴュー
第59号 2002/10/20 まだまだ期待してるぜ!ウーデン・ヒル・レーベル
 



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CLIVE PALMER
「ALL ROADS LEAD TO LAND」 (2004)

米COMMUNION LABEL COMM60  (CD)
1 O For Summer
2 You Were Meant For Me
3 Lament For Shelley
4 Sands Of Time
5 Breizh
6 Broken Dreams
  7 Paris
  8 Linden Lea
  9 Dans La Campagne
 10 Big City Blues
 11 Baby Sing The Blues
 12 Embraceable You


近年稀にみる絶好調なモンでクライヴ・パーマーはソロ・アルバムも出してしまいまいたよ。
バンジョー以外の楽器の入る曲やインスト曲もありますが基本はバンジョーによる弾き語りで
相変わらずダラダラと単調に進行する曲ばっかりの死神博士サウンドになっていますが
妖しげに響く曲よりも のんびりとのどかな空気感を持った曲が印象に残りこれは良いです。

「英国ロックの深い森」のインクレ・コーナー情報だと彼は元々ラグタイム・バンジョー弾きで
なるほど彼のバンジョーはブルーグラスのような速いロールなどは登場しない訳です。
バンジョーっていうのは1弦1弦指で弾くアルペジオ(でいいのかな?)が基本の弾き方だと
思っていたのですが彼の演奏はジャンジャンと隙間だらけのストロークで進行する場合も多く
これがまたのどかで良い感じを醸し出してくれていますよ。 そして1弦1弦弾く場合でも
弦をちゃんと押さえられていないのか 時折音がミュートしたり歪んだりして決して演奏が
上手いとは言えないですが そこがまた真のプロフェッショナルを感じさせず良いのです。

ちょっと切ないメロディーを持った2曲目や可愛らしいメロディーを持った8曲目
そしてのどかーなブルースの11曲目あたりを聴いているとホントゆったりと心地良くて
草の上に寝転がってお昼寝でもしたくなってしまいますねぇ。 こんな曲を聴かされた日にゃー
「あぁ 死神博士の演奏が聴けるなら例え仮面ライダーに一瞬で倒されてしまう運命でも
ショッカー戦闘員になりたい!」くらいは言っておかないとバチがあたるってゆーモンですよ。

1曲目は前項の再結成フェイマス・ジャグ・バンドでもやっていた曲でバックにジャグも入るし
フェイマス・ジャグ・バンド・ヴァージョンと同じヴァージョンに聴こえます・・・というか同じです。
そしてゲスト参加のロビン・ウイリアムソンがフィドルで登場する7曲目もありますよ!

しかしクライヴ・パーマーのヴォーカルのぶっきらぼうぶりは そこら辺のオヤジが
酔った勢いで歌っているかの如くのテキトーさがあります。 このヴォーカルを心地良く
感じられるかどうかはアナタの心がけ次第なので さあ心がけろ!
 



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CLIVE PALMER 「BANJOLAND」 (2005)
英SUNBEAM SBRCD5004  (CD)
1 Banjoland
2 Boy In The Gallery
3 Christmas Carol
4 Winter's Tale
5 Danse Arlequin
6 Ma-Koush-La
  7 Irish Fantasy
  8 Stories Of Jesus
  9 Variations
 10 Smiling Through
 11 Sea Breeze
 12 I Hear You Calling Me
 13 Coventry Carol
 bonus tracks
 14 Swanoa Tunnel
 15 Fair And Tender Ladies
 16 Country Blues
 17 Old Maid's Song


クライヴ・パーマーの近年稀にみる絶好調ぶりを象徴するようにこんな発掘音源も出ました。
1967年に録音された音源で収録曲は全曲トラッドです。 彼が参加したインクレの1stが
1966年作なのでインクレを速攻でバックれた直後の録音で中々興味深いですねぇ。

本作を出した英サンビーム社はクライヴ・パーマーに負けず劣らず近年稀にみる絶好調で
そのカタログを見るとかーなり危険で鋭いラインナップがリリースされていてヤバいです。
僕も気になるアルバムが沢山あるので今後ポツポツと拾っていきたいところです。

しかし発掘音源集なのにボーナス・トラック入りになっていて これは当時13曲目までで
LPが少数枚プレスされたのでしょうか? そこら辺の詳細はわからないけれど
ボーナス曲入りだと何かお得感があるじゃないですか・・・とボーナス・トラック商法には
いつも騙されっぱなしだけど このアルバムにもすんなりと素直に騙されてみました。

「バンジョーランド」というアルバム・タイトル通りバンジョー島上陸作戦の如くな内容で
バンジョーによる弾き語りと バンジョーによるインスト曲の連発になっています。
全曲トラッドという事になっていますが明るい曲調のヤツが多くてディープなトラッド臭は
薄いのでトラッドが苦手な人でも聴きやすそうな感じではありますね。

でもやっぱりこの若い時の演奏でもクライヴ・パーマーのバンジョーは徹底してユルくて
ダラダラ感があるのはもちろん 若々しいヴォーカルも丁寧に歌っているにもかかわらず
相変わらずぶっきらぼうなので 果たして聴きやすいのかどーなのか・・・うーん 前項の
2004年作と比べても基本は何も変わってないなぁ。 40年近い時を経てもこれですよ!
さすがクライヴ・パーマー! さすが英国フォーク界の死神博士です。

ちょっと変わったところではストリングスが入りポップ・フォークな8曲目が面白いですねぇ。
そしてボーナス曲はカントリー〜ブルーグラス〜アメリカン・フォーク臭がして異質です。
ギターでウィズ・ジョーンズが参加しているというのもポイントが高いのではないでしょうか。
 



Suns&Moons.jpg
CLIVE PALMER & BOB DEVEREUX
「SUNS & MOONS」 (1978)

英PIG'S WHISKER MUSIC PWMD5020 (CD/1999)
1 Girl From North The Country
2 Suns & Moons
3 Changes
4 D Tune
5 Turkey
6 House Carpenter
  7 Queen Of All The Gypsies
  8 Blackbird
  9 It Used To Be Different
 10 Morris Room
 11 Man Behaind The Mask
 12 Sacco's Last Letter


これは1999年にCD化された作品なので21世紀に入って近年稀にみる絶好調シリーズ
では無いですが 関係ねー! 知るもんか!・・・と勢いで紹介してしまうシリーズです。

英文のブックレットに目を通すと1978年にカセット・テープのみで発売された作品らしく
「ラビリンス」に載っていたクライヴ・パーマーの1970年代のソロ作と一部収録曲が
被っているので これはどーゆー事なのか 時間が余っている人は暇つぶしに調べましょう。

内容はクライヴ・パーマーのバンジョーを中心にした演奏と歌にボブ・デヴェリュークス
(ローマ字読みの読み方適当シリーズ)という人の朗読が絡むという内容で
クレジットを見るとゲスト参加者も無く 完全に2人でやっているようです。
このテのアルバムにありがちなヴォーカル曲と朗読曲とが独立しているという事は無く
ヴォーカル曲に朗読が切れ込んできたり 切れ込むと思いきや切れ込まなかったりです。

ボブ・ディランのカバー1曲目でのクライヴ・パーマーのヴォーカルは何か艶があり
バックのバンジョー演奏も淡々と5分間同じ弾き方を繰り返すだけですが これがじわじわと
引き込まれていってしまい凄く良いのです。 ああ1曲目からつかみはオッケーだねぇ。
そして耳に馴染みのあるメロディーの有名トラッド曲6曲目なんかも同じ弾き方を繰り返す
バンジョー演奏にじわじわ引き込まれるタイプの曲で いやぁこりゃーホント良いなぁ。

朗読のボブ・デヴェリュークスも大活躍ですが ちょと声が高めなのが原因なのか
彼の朗読には渋さとか深みとかは感じず この声が登場すると気が抜けてしまったりして。
でもそこが良いのかも知れません。 彼は10曲目ではクライヴと一緒に歌も披露してます。

2曲目と8曲目でクライヴ・パーマーはバグパイプと思われる楽器(クレジットはパイプ)を
弾いていて バンジョーやギターなどの弦楽器しか演奏しないと思っていたクライヴに
こんな裏技もあったとは・・・さすが英国フォーク界の死神博士ですね。

その他 クライヴ・パーマー関連のレヴュー
C.O.B./Moyshe McStiff And The Tartan Lancers Of The Sacred Heart
第52号 2002/3/9 奇妙な音楽は奇妙な生物ジャケから
 


AllRoadsLeadToLandBack.jpg
 

「All Roads Lead To Land」のブックレットより。
ほんのり笑顔のクライヴ・パーマー。
この笑顔は明らかに近年稀にみる絶好調なので
今後の動向も楽しみです。
 

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