レビュー第209号 ファストカット・レコードの素晴らし過ぎるアナログ化

メグミ・アコーダというバンドの作品が非常に良かったので
レビューに登場させようと思い、レーベルを見たらファストカットでした。
いや、ファストカットだから買いだ!とかは特に意識した事は無くて
欲しい作品を買っていたら、ファストカット作品、けっこう手元にあったのです。
また、昨今のアナログ盤価格高騰の中での、良心的な価格も嬉しいですね。
ファストカットはレコードのリリースもしていますが、兵庫県加古川市に
実店舗も構えています(2024年4月現在)・・・行った事無いけどね!
 

WhenYouAndIWereVeryYoung.jpg WhenYouAndIWereVeryYoungBack.jpg
SILVER SCREEN 「WHEN YOU AND I WERE VERY YOUNG」 (2013)
日 Fastcut Records FCRD-059LP (LP/2016)
A1 Once In A Lifetime
A2 Really No Wonder
A3 Only Ever Yours
A4 Change To Fall
A5 Here To Hold You
A6 More Than You And I
A7 Excuse Me Girl
 B1 Mercy
 B2 A Little More Each Day
 B3 Hearts
 B4 Tell Me Darling
 B5 Come, Go, Return
 B6 From A Window, To The Indefinite

アメリカのクリス・ミラーという男性のひとりプロジェクト「シルバー・スクリーン」。
2013年にCDのみで出ていた2ndアルバムを2016年にアナログLP化したものです。
LP化に際してA7を追加収録していて、素晴らし過ぎるアナログ化とはこの事です!

しかし、このアルバムねぇ。ここまで良い曲が並ぶ事ってあるの?級の
優し気で爽やかな、とてもよくできたポップ・ソングが連発され、物凄く良いですよー。

クリス・ミラーさんがひとりで全部作ったであろうバックのサウンドが一本調子気味だったり
ミドル・テンポの曲ばかりで、全体がソフト過ぎる感じもあり、もう1曲くらい
A面2曲目(もうサイコーです!)のような、リズミカルでブチ上がる曲も欲しいところだけど
とにかく、やり過ぎなくらいのグッド・メロディー連発で、聴き終えた後の爽快感ったらないです。

それはまるでトラッシュキャン・シナトラズをライトニング・シーズがカバーしたかのような音で
そんなのある訳無いよ!と思ったそこのアナタ!是非聴いてみて唖然として下さい。

こちら、2つ折りの歌詞カードが封入されていますが、ライナーノーツは無し。
また、、日本盤ではあるものの、盤の隅々まで見ても日本語の表記はどこにも無いです。
わたくしが購入した時、価格は定価税込み3,300円。いまどき良心的な価格ですよね。
ライナーノーツ無しで価格を抑えているのかも知れません。ダウンロードも付いていません。
それを踏まえて、わたくしは言いたい!素晴らし過ぎるアナログ化とはこの事です!
 

LipsEP.jpg LipsEPBack.jpg
L I P S 「L I P S EP」 (2019)
日 Fastcut Records FCEP-033 (12"/2020)
A1 Apartment
A2 Pages
A3 Walls
 B1 In Summer
 B2 Sunken
 B3 Alma

英国のリップス。帯が巻かれて、そこに色々と書かれてはいるのですが
メンバー、楽器構成、録音などに関するクレジット類が無いので詳細はわからないです。
バンドキャンプでの情報を見ると、女性1人、男性3人の4人組が正解のようで
バンド名は「LIPS」ではなく字間にスペースが入って「L I P S」と表記するのが正解だし
表ジャケットの男女はバンドのメンバーでは無いというのが正解です・・・よね?違う?

このEPは2019年にCD-Rで出た5曲入り作品にB1を追加してアナログ化したもので
コーク・ボトル・グリーン(コーラ瓶のような透明緑色)の綺麗な盤が美しい45回転盤です。
とても素敵な帯も巻かれているし、ダウンロード・コードも付いて定価税込み2,640円!
そう、素晴らし過ぎるアナログ化とはこの事です!これは本当に素晴らしいと思います!

サウンドは女性ヴォーカルが歌う、シューゲイザー寄りのギター・ポップ・サウンドで
ナチュラルなようで中々美しい歌声の女性ヴォーカルも良い感じです。

ちょっとバタつく感じのサウンドは、サラ・レーベル後期のバンドかの如くに響きます。
そう、サラ・レーベル後期のバンドかの如く、そこまで大騒ぎする程ではないけど
愛おしくてギュッと抱きしめたくなっちゃう、そんな曲が並んでいるし
このEPのアナログ化自体が、愛おしくてギュッと抱きしめたくなっちゃうアナログ化であり
素晴らし過ぎるアナログ化とはこの事なのです!

リップスの帯について語った文章が発掘されました・・・2020年10月31日更新の表紙
 

OtherCities.jpg OtherCitiesBack.jpg
TINY MICROPHONE 「OTHER CITIES」 (2023)
日 Fastcut Records FCRD-086LP (LP)
A1 Back Then
A2 Sound Advice
A3 Night
A4 Holiday
A5 Stranger
 B1 Lighting A Fire
 B2 Haunted
 B3 Other Cities
 B4 The Lake
 B5 I Exist (And Everything's Fine)

こちらはアメリカのクリスティン・カプアさんのソロ・プロジェクト、タイニー・マイクロフォン。
彼女はタイニー・マイクロフォン以外にもいくつかバンドに参加していて、アルバムも出ている模様。
タイニー・マイクロフォン名義では2008年にカセット・アルバムを出し、後にCD化もされていた模様。
なので本作は2ndアルバムという事になるようですが・・・詳しくないので、詳細はウェブで調べてね。

甘ったれ系の可愛らしいヴォーカルで歌う、のどかなフォーク・ロックのA面1曲目を聴いたら
これはズバリ!その昔、クリエイション・レーベルから出ていたイーダちゃんの1stみたいだ!
・・・と思ったのはサウンドがそれっぽかったA面1曲目だけで、全体はちょっと違う感じでしたね。

あまり変わったアレンジなどはせず、素直なバンド・サウンドで「うた」を聴かせる
シンガー・ソングライター作品といった趣で、ガツン!とノックアウトされるような
強力な曲は無いけれど、彼女の可愛らしいヴォーカルにうっとりできる穏やかな曲が並び
うっとりに次ぐうっとり、そして又うっとりで、気持ち良く聴けるアルバムになっています。

8分の6拍子のB2から、マイナー調のB3と続くあたりは、かなりうっとりできますねぇ。
A5でデュエットをする低音男性ヴォーカルはゲイリー・オルソン(レディバグ・トランジスター)です!

まあしかし、髪の毛で顔が全部隠れているピンぼけ写真のジャケットが・・・何か地味ですね。
色合いも地味で、面出しで並んでいても目立たないし、 このジャケットに関してはちょっと残念。
彼女の素敵な顔写真をバーンと出したら、ジャケ買いする人もいそうですからねぇ。

リリースはアメリカのシェルフライフというレーベルとの共同リリースのようで
ファストカットのレコード番号「FCRD-086LP」の他、「LIFE206」という番号も併記されています。
歌詞カード付き、ダウンロードは付いていませんが、いまどき定価税込み3,300円の良心的価格!
という事で、また言わせていただきます。素晴らし過ぎるアナログ化とはこの事ですよ!
 

SilverFairy.jpg SilverFairyBack.jpg
MEGUMI ACORDA 「SILVER FAIRY」 (2023)
日 Fastcut Records FCRD-088LP (LP)
A1 Dream Sequence
A2 Tomorrow
A3 If They Come
A4 Borrowed/Burrowed
 B1 Feverfew
 B2 Nothing/Forgotten
 B3 Time Does Not Heal All Wounds (A Reprise)
 B4 Song Of The Sea

これは良い!凄く良い!フィリピンの5人組、メグミ・アコーダです。

メンバーにメグミ・アコーダちゃんがいて、バンド名もメグミ・アコーダ。
つまり、メンバー名とバンド名が一緒の、ブリンズリー・シュウォーツやマリリン・マンソンと
ジャンル的には一緒なので、そのジャンルを追っている人(などいるのか?)にもオススメ!

ピアノによる美しいインスト曲A1に心奪われ、おお、これは素敵!と思ったらその後は
切なく美しいメロディーと共に迫るノイジーなギターがググッと胸に突き刺さる
シューゲイザー系のバンド・サウンドで・・・どうしましょう、ホント全曲良いのですけど!

少々ハスキーなメグミちゃんのヴォーカルも、このサウンドに合っていてナイス!だし
最初のA1と最後のB4を静かな曲にして、他の曲はどれも爆発力高くなっていて
盛り上がって興奮して、鼻息荒くなっちゃう曲にしている構成も良いですね。
特に最も爆発力高いB2は是非大音量で聴いて下さい。これは鼻息フガッっと興奮します。

全8曲、内1曲はインストだし、曲数も少なくて収録時間も短めだけれど
聴き終えて充実感を感じるアルバムではないでしょうか。とにかく曲が良いんだよねー。

なお、こちらの作品は定価税込み3,850円で、2023年後半、さすがのファストカットさんにも
レコード価格高騰の波が押し寄せたのですね。・・・とはいっても3,850円という価格は
3,500円プラス税ですからね。いまどき、頑張っているのではないでしょうか?
という事で、またまた言わせていただきます。素晴らし過ぎるアナログ化とはこの事です!
 

Grace.jpg GraceBack.jpg
HARUKA NAKAMURA 「GRACE」 (2008)
日 Fastcut Records FCRD-064LP (LP/2018)
A1 Every Day
A2 Arne
A3 Opus
A4 Ralgo
A5 Elm
A6 Luz
 B1 Lang
 B2 Cielo
 B3 Elm/2
 B4 Sign
 B5 Lamp
 B6 Grace
 B7 Cadenza
このサイトは洋楽専門サイトを謳っているので(謳っていたかな?)
日本人アーティストを徹底的に排除していて(排除していたかな?)
まあ、少なくともレビュー・ページに日本人は登場した事が無いはずです。
(本当は登場した事あるけど、上手く誤魔化して無い事になっています。)

そして遂に、この掟が破られる時が来ました。
・・・と思ったけど「なかむら・はるか」じゃなくて「ハルカ・ナカムラ」は欧米仕様の表記だから
今回のみの助っ人ガイジン枠扱いでどうでしょう?・・・って、また上手く誤魔化せましたよ!

さて、この作品はハルカ・ナカムラさんの2008年の1stを2018年にアナログ化したもの。
2024年4月現在、3rdプレス盤が定価税込み3,960円で絶賛販売中のようですが
わたくしが購入した時は税込み3,300円だったので、時期的に2ndプレスだったのかな?
短期間で値上がりしてしまい、困ったモンですが、この作品をアナログ化した事自体が
事件級なので、つまり、素晴らし過ぎるアナログ化とはこの事です!

盤に針を落とすと、A1は切なく懐かしい感触の女性ヴォーカル入りフォーキー・ソングですが
基本はインストで、全体的にアコギやピアノをメインにしたアコースティックで隙間のある音。
そこに様々な効果音なども入り、美しく構成され、まあ、フォークトロニカと言っていいのかな?
女性ヴォーカル入りの曲は数曲あり、全部、ジャニス・クランチさんが歌っています。
ジャニスさんのヴォーカルは幽玄な感じですね。英語詞と日本語詞の曲、両方あります。

どの曲も美しく切ないメロディーがあり、BGMとしも有効ですが、これは聴き入っちゃいます。
3拍子のB4の静かに流れる郷愁感にはやられまくりで・・・こんなのずっと聴いていたいよ!
そしてヴォーカル入りの郷愁フォークB6・・・これもずっと聴いていたい!素晴らしいです!

ハルカ・ナカムラさんは作品数が多く、様々なレーベルから様々な形態でリリースされていて
本作のような本人名義、連名コラボ作、サントラ盤など、色々あるので実態は掴みにくく
果たしてハルカ・ナカムラさんの作品って、どんな人が買って聴いて、何を求めているのか
謎なのですが・・・まあ、少なくともわたくしは買って聴いて、うわぁ、良い!と感動しています。

なお、ハルカ・ナカムラさんは男性ですので・・・念のため。
あと、念のため、これももう一度言っておきますね。
ファストカット・レコードの素晴らし過ぎるアナログ化とはこの事です!
 

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