レビュー第207号 エマニエル坊やは洋楽か邦楽か問題が再燃 1980年代の洋楽といったらほとんどの人はエマニエル坊やしか思いつかないし わたくしもエマニエル坊やしか思いつかなかった訳ですが レコード棚をよく見たら、あれれ?こんなにたくさん1980年代作品がありました。 何でこんなにたくさんあるのかな?何でだろう?聴き返して検証します。 あと、もちろんエマニエル坊やは洋楽か邦楽かの検証もするし 洋楽・邦楽という使い方自体、死語になっている問題も検証します。 |
THE SMITHS 「MEAT IS MURDER」 (1985) 日 徳間ジャパン 25RTL-3001 (LP) |
A1 The Headmaster Ritual A2 Rusholme Ruffians A3 I Want The One I Can't Have A4 What She Said A5 That Joke Isn't Funny Anymore |
B1 How Soon Is Now? B2 Nowhere Fast B3 Well I Wonder B4 Barbarism Begins At Home B5 Meat Is Murder |
さて、レコード棚に並んだ1980年代作品、どのような作品があるかというと その多くは英国インディーズのギター・バンド作品で、メジャー系は少ないですね。 イカした80sサウンドの大ヒットした有名作なども、ある程度所有していましたが そこら辺の作品は収納がピンチになる度に処分してしまい、現在残っている作品は 帯の「肉喰うな!」が衝撃的なこのスミスを筆頭にそのテの音楽ばかりなのです。 しかし何でそのテの音楽が多いのかというと、スミスの影響は大きいかなぁ。 スミスはラジオから流れてきた「Heaven Knows I'm Miserable Now」という曲の キラキラと輝くギターに完全にヤラれてしまい、ダッシュで買いに行きましたねぇ。 1980年代は意識しなくても普通に洋楽曲を耳にする機会は多かったので マイケル・ジャクソンとかホール&オーツとかビリー・ジョエルとかエマニエル坊やとか たくさんヒット曲を耳にしたけど、スミスはこれらのアメリカのヒット曲とは明らかに違う 独自の響きを感じ、スミスにヤラれた後はそっち方面ばかり探って行く事になります。 で、「ミート・イズ・マーダー」はスミスの3枚目のアルバム(2枚目は編集盤ですが)で ギター、ベース、ドラムスのロック基本楽器によるバンド・サウンドを追求した シンプルで無駄の無い演奏で、硬質感があり緊張感も漲る作品になっています。 ・・・が!そこに、お経を唱えているかのような抑揚の少ないメロディーを歌う モリッシーのナヨナヨした声が乗っかり、何じゃこりゃー!でナヨナヨー。 又、頻繁にヨーデル歌唱が飛び出すし、まあ、スミスは変なバンドでもあります。 B面ラストは、ファンキーなベースと、ギターのフレーズがかっこ良くて最高なB4から 牛の「モオォォー」という鳴き声と共に始まるB5への繋がりが凄い! モリッシーが菜食主義だったのでこのような曲が生まれたようです、肉喰うな! シングル曲のB1は日本盤のみのボーナス・トラック。 この長尺曲が追加されたおかげで、B面は約26分もありますね!(A面は約20分) なお、ベースのアンディ・ルークは2023年に亡くなってしまいました。59歳、若い! スミスを書いたページを発掘しました!こちらです。 第170号 2010/12/12→「This Charming Man」(1983) |
BILLY BRAGG 「WORKERS PLAYTIME」 (1988) 米 Elekrta Records 9 60824-1 (LP) |
A1 She's Got A New Spell A2 Must I Paint You A Picture A3 Tender Comrade A4 The Price I Pay A5 Little Time Bomb A6 Rotting On Remand |
B1 Valentine's Day Is Over B2 Life With The Lions B3 The Only One B4 The Short Answer B5 Waiting For The Great Leap Forwards |
これは本当に素晴らしい!ビリー・ブラッグの中で第1位です。(自分チャート) 手元にあるのはアメリカ盤で、イギリス盤はゴー!ディスクスから出ていました。 ビリー・ブラッグはエレキでガシャガシャ弾き語りするスタイルで登場した人で 誰が言ったか「ひとりクラッシュ」と呼ばれていて、確かにひとりクラッシュ状態でした。 作品を重ねる毎に徐々に弾き語りから脱却し、サウンドも分厚く、勢いもある 1991年の「Don't Try This At Home」はジョニー・マー(スミス)、カースティー・マッコール ピータ・バック(R.E.M.)、マイケル・スタイプ(R.E.M.)なども参加した強力盤ですが わたくしは雰囲気が良くて、曲の粒も揃った「Workers Playtime」で決まり!です。 アルバム全体のサウンドはルーツ・ロックのテイストをほんのりふり掛けた 軽やかなアコースティック・ポップといった趣で、この軽やかさが良い感じです。 無伴奏シンギングのA3などは、トラッド曲を歌っているかのようで このA3から、すぅーっとピアノの演奏で始まるA4への繋がりとか、もう感動的ですね。 最後は皆で曲タイトルのフレーズを大合唱するB5で、これがまた感動的! コーラス隊にミッシェル・ショックトの名前がありました・・・懐かしいねぇ。 あと、参加メンバーを見るとダニー・トンプソン(ペンタングル)が 多くの曲でダブル・ベースを弾いていたりもしますね。 ビリー・ブラッグのヴォーカルは鼻づまり気味でちょっとクセがあるため クセのあるヴォーカルが嫌いな人は、曲がいくら良くても嫌いかも知れません。 エマニエル坊やの子供声も嫌いな人は嫌いだろうなぁ・・・あんなに良い曲なのに! ビリー・ブラッグを書いたページが発掘された模様です!こちらです。 第163号 2010/6/10→「Back To Basics」(1987) |
THE WATERBOYS 「THE WATERBOYS」 (1983) 英 Ensign Records CHEN 1 (LP) |
A1 December A2 A Girl Called Johnny A3 The Three Day Man A4 Gala |
B1 I Will Not Follow B2 If Should Have Been You B3 The Girl In The Swing B4 Savage Earth Heart |
こちらはスコットランド出身のマイク・スコット率いるウォーターボーイズの1st。 手元にあるのはクリサリス傘下のエンサインから再発された盤。 リマスターもされているみたいで、「The Whole Of The Moon」という曲が シングルでヒットしたので、急遽(?)再発された盤なのでしょうか? そう、確か、購入したのは「This Is The Sea」(1985)の後だった記憶があります。 ウォーターボーイズとの出会いは、2nd収録曲「Church Not Made With Hands」を ラジオで聴いたのが最初で、この曲、ホーンも入った力強いロック・ナンバーで それほど好きなタイプの曲じゃ無かったけど、何か引っかかったのでしょうね。 暫くしてその2ndを中古で見かけ、あっ、ラジオで流れていたウォーターボーイズだ。 こういう、マニアックな洋楽LPを持っていると、かっこ良いから買おうかな・・・ でも、そんなにお金持っていないし、内容もよくわからないこんなの買うなら さだまさしや甲斐バンドやオフコースや中島みゆきを買った方がいいな・・・ と、少ない所持金と相談し、その場で30分くらいは悩み、そして結局 「マニアックな洋楽を聴いていてかっこ良い自分」の方をとり、買いました。 かっこ良い自分になるため、その後はさだまさしや甲斐バンドやオフコースに さよならをする事になります。でも、中島みゆきだけはやめられなかった・・・ で、この1stアルバム。録音時期や演奏参加メンバーもバラバラなヤツを集めて 1枚のアルバムにしたようなので、サウンドがちょっとショボい曲もあるけど とにかく哀愁のあるメロディーが良いし、ディラン風に叩きつけて歌う マイク・スコットのヴォーカルには魂を揺さぶられ、グイグイ惹き込まれますよ。 そう、熱血ロックです。片面4曲ずつと、長尺曲も多く、つまり熱血ロックです。 特にA2は熱血ピアノ・ロックの激・名曲で、本当に素晴らしい曲です! ウォーターボーイズはこの後の作品でもピアノでロックする曲が多く あとサックスが入るのも特徴的。サックスも熱血サウンドに一役買っていますね。 エマニエル坊やにもサックス入っていたし・・・あれ?入っていたかな?・・・あれ? ウォーターボーイズ&マイク・スコット・ソロを書いたページが大量に発掘されました! 第187号 2013/12/21→「An Appointment With Mr. Yeats」(2011) 第163号 2010/6/10→Mike Scott 「Bring 'Em All In」(1995) 第129号 2007/6/30→「Book Of Lightning」(2007) 第85号 2004/4/16→「Fisherman's Blues」 (1988) 「Room To Roam」(1990) 第40号 2001/7/14→「Windmill Lane Sessions」(1989) 第5号 2000/2/11→「Fisherman's Blues」(1988) |
FELT 「IGNITE THE SEVEN CANNONS」 (1985) 仏 Cherry Red Records B-RED 65 (LP) |
A1 My Darkest Light Will Shine A2 The Day The Rain Came Down A3 Scarlet Servants A4 I Don't Know Which Way To Turn A5 Primitive Painters |
B1 Textile Ranch B2 Black Ship In The Harbour B3 Elegance Of An Only Dream B4 Serpent Shade B5 Caspian See B6 Southern State Tapestry |
前項のウォーターボーイズのジャケットでガーゼ布みたいなのが漂っているのを見て レースの布地の図柄に合わせて細かいエンボス加工がされている素敵なジャケットの こちらを思い出しました。英国のフェルトのチェリー・レッド時代最後のアルバムですね。 フェルトはクリエイション時代の作品を先に聴いていて 後からチェリー・レッド時代のアルバムを買い集めましたね。 この作品も聴いたら、ああ、チェリー・レッド時代のフェルトの音だよねー。 キーボードが目立つ曲もあってクリエイション移籍前夜の感じもあるよねー。 ・・・と、思ったら、A5でエリザベス・フレイザーの歌声が聴こえてきて凄く驚きました。 購入当時、彼女が参加している事を知らなかったし、フェルトとコクトー・ツインズは 音楽的に結び付いていなかったので・・・そりゃー本当に驚いて、たまげたよぉ。 実はプロデュースもコクトー・ツインズのロビン・ガズリーがやっていて 確かに、他の作品よりはリバーブが深くかかっているのかなぁという印象はありますね。 でもやはり特にシングルにもなったA5はエリザベスが歌っているのもあるけど コクトー・ツインズ・サウンドとフェルト・サウンドの融合といった感じで、盛り上がります。 アルバムの基本サウンドはギター、ベース、ドラムス、キーボードによる演奏で ヴォーカルのローレンスは語り系ヴォーカルで、メロディーを崩して語るように歌います。 バックの音は、ヴォーカルを聴かせるための伴奏という感じはまったくなく 特にギターは歌メロと別のメロディーで同じ曲を演奏しているかのようですよ。 B1、B3、B4、B6はインスト。フェルトは元々インスト曲が多いバンドでしたね。 あれ?エマニエル坊やにもインスト曲あったかな? 確かドラムの演奏が達者で、テレビ番組に出演してドラム演奏していた気がします。 テレビ番組内で短時間演奏するドラム・ソロって、インスト曲?・・・でいいですよね。 なお、フェルト解散後、プライマル・スクリームに加入した キーボードのマーティン・ダフィは2022年に亡くなってしまいました。55歳、若い! フェルトを書いたページも遂に発掘された模様です!こちら 第48号 2001/11/28→「Gold Mine Trash」(1987) |
THE HOUSE OF LOVE 「THE HOUSE OF LOVE」 (1988) 英 Creation Records CRELP 034 (LP) |
A1 Christine A2 Hope A3 Road A4 Sulphur A5 Man To Child |
B1 Salome B2 Love In A Car B3 Happy B4 Fisherman's Tale B5 Touch Me |
前項のフェルトで思い出されるのはこれ。英国のハウス・オブ・ラヴの1stですね。 なぜ、フェルトといえばハウス・オブ・ラヴかというと 渋谷のレコード店、ゼストがまだノア・マンションの5階にあった頃 壁に飾ってあったこの作品、完全にフェルトの新譜だと思って買いました。これ本当です。 フェルトと間違えたのは、ポップがついておらず、値札だけ貼ってあったからかな? 表ジャケにも裏ジャケにも、バンド名や作品名らしき文字は無かったし クリエイション期のフェルトっぽいジャケット写真とタイポグラフィーだったので 完全に騙されました・・・騙された?・・・のかな?・・・でも騙されて良かった。 サウンドはかなりオーソドックスなロックで、特にここが特別だ!という特徴は無いですが 何だろう、とにかく全曲最高で、楽曲自体がイイ!アンサンブルが美しい! 儚い雰囲気も漂って素晴らしい!A3とか、もうホント、すごい普通な曲だけど最高! ヴォーカルのガイ・チャドウィックの低めの歌声はルー・リードぽくもあり ペコペコ言っているドラムスもヴェルヴェット・アンダーグラウンドの影響を感じますね。 A5のサビで「ジィーーザス」って歌うところは、ヴェルヴェッツの「Jesus」を思わせますよ。 またノイジーなギターが入るA1はジーザス&メアリー・チェイン的でもあり・・・ジーザス! ハウス・オブ・ラブはこの後、メジャーのフォンタナへ移籍し これまた最高な2nd「House Of Love」(1990)(蝶のジャケットのヤツ)を出しています。 その後は・・・何だかイマイチになってしまい終了してしまいました。 同時期に4ADからフォンタナへ移籍したコクトー・ツインズもイマイチになって終了したし ジェイムスもね。フォンタナ移籍後、ヒット・シングルもあったけど、アルバムはイマイチ・・・ フォンタナ移籍はダメだね!もしかしてエマニエル坊やもその後、見かけなくなったのは まさか!フォンタナに移籍しちゃったのか?・・・これは追跡調査が必要です。 ハウス・オブ・ラブを書いたページも遂に、遂に、発掘されました!こちらです。 第129号 2007/6/30→「Days Run Away」(2005) |
JIM JIMINEE 「WELCOME TO HAWAII」 (1987) 仏 Cat And Mouse Records ABB02 (LP) |
A1 Town And Country Blues A2 Do It On Thursday A3 Snap Me Up A4 You Pulled A String In My Heart A5 Under My Hat |
B1 A Habit Of You B2 She's Gone Too Far B3 Heyday B4 Wasting Away B5 Two Brothers B6 She's Coming Back |
そしてゼストといえばこれが思い出されます。英国のジム・ジミニー、唯一のアルバム。 ゼストが凄ーくプッシュしていて、内容もよくわからないけど、えいっ!と購入した1枚です。 まあ、先にラジオで聴いたりしていれば、どんな音か知っていて安心だけど 当時、ほとんどの作品は試聴などせずに買っていたので、レコード店のポップ頼りだし 家に帰ってから盤に針を落として、何じゃこりゃー!・・・リスク高くて、面白かったよね。 で、ジム・ジミニーは聴いたらブッ飛ばしのギター・ポップで、最高でしたねぇ。 アレンジもよく練られていて、達者な男性ヴォーカル&女性コーラスというのも凄く良く メジャー・チャートでもシングル・ヒットしそうな盛り上がる曲がずらりと並んでいました。 かなりよくできたサウンドは、ロカビリー風味とソウル・フレイヴァーが香る感じで 楽曲展開を素直にして、カッティングを多用したリズム・ギター部分を増やした プリファブ・スプラウトといった感じ・・・って、そんなの、もはやプリファブじゃないけど A4なんかはプリファブの「Faron Young」のカバーか?と思う始まり方でビビりますよー。 全曲良いけれど、いきなりホーンが入って盛り上がる彼らの代表曲A1と 終始ギターがブッ飛ばしで、カチャカチャとリズムを刻むB3は特に盛り上がりますね。 そう、これだけ盛り上がるという事は、エマニエル坊や級に盛り上がるって事で もっと1980年代の洋楽を聴き込み、エマニエル坊や級に更に盛り上がるしかないですね。 そして、そして、今回最大の問題、エマニエル坊やは洋楽か邦楽か問題ですが ちょっとレビュー枚数が多くなってしまい、文章量も増えてしまったので、今回はここまで。 次回更新予定の「エマニエル坊やは絶対洋楽だ!」で真実が明らかになりますし もちろん号外として「エマニエル坊やのずっこけ珍道中」も予定していますよ! これは楽しみですね。ワクワクしながら待っていて下さい。 |