レビュー第200号、こっそり、もっこり、追いかけてメグ・ベアード

2000年代中頃、大興奮しながら聴いていた米国バンド、エスパーズ。
メンバーのソロや、あれや、これや、関連作品にも手を出していました。
その当時、他のメンバーの作品は追うのをやめても
ヴォーカルのメグ・ベアードだけは追い続けそうだなと書きました。
そして現在、その通りになり、メグちゃんだけこっそり追いかけています。
なお、ページ・タイトルにある「もっこり」は特に意味はなくて
こっそり、もっこり、と続くとリズムが良いので入れちゃいました。
 

 
DontWeighDownTheLight.jpg
MEG BAIRD 「DON'T WEIGH DOWN THE LIGHT」 (2015)
英 Wichita Recordings WEBB445LP (LP)
A1 Counterfeiters
A2 I Don't Mind
A3 Mosquito Hawks
A4 Back To You
A5 Past Houses
A6 Leaving Song
 B1 Stars Unwinding
 B2 Good Directions
 B3 Don't Weigh Down The Light
 B4 Even The Walls Don't Want You To Go
 B5 Past Houses (Reprise)

顔色悪いですよ!真っ青ですよ!大丈夫ですか?こと、メグ・ベアードのソロ3rd。
こっそりと追いかけているので、こっそり教えますが、このLPのジャケットの紙は
内側が白色じゃなくて、メグの顔色と同じ、くすんだ水色なのです・・・こっそり。

トラッド色が強かった1st、1970年代の地味なシンガー・ソングライターを思わす2nd
そしてこの3rdは、トラッド色は薄く、何だかアンビエント感のある作品ですね。

どの曲も同じようなテンポだし、抑揚のないメロディーで淡々と流れるので
アンビエントを感じちゃうのだけど、実はそのような曲調は今までも一緒なのでした。

もちろんエスパーズ時代から続く、ギターのアルペジオで綴られるタイプの
マイナー調の曲や、美しく儚いメグの歌声はとても素晴らしく、ハラホロヒレハレー。
ただ、一聴してググッと引き込まれる曲は1st、2ndの方が多かったかなぁ。

A4はアコギのアルペジオに絡むエレキ・ギターが切なく儚げなフレーズを弾いて
1980年代英国バンド、フェルトのチェリー・レッド時代を思わせる響きがあります。

約1分のA6は幾重にも重なるスキャットで聴かせる無伴奏曲で、エンヤか?の新境地。
そして最後のB5はピアノ&エレキ・ギターのインストで、これも新境地?

演奏はメグ・ベアードとチャーリー・ソーフレイさんの2人しかクレジットされておらず
2人でギター、オルガン、ピアノ、ベース、パーカッションを演奏しています。
で、メグとチャーリーはこの後、ヘロン・オブリヴィオンというバンドをやる事になります。

手元にある英ウィチタ盤LPはダウンロード・コード付きでした。
米盤LPはドラッグ・シティからですが、ダウンロードは付いていないようですね。
もしかしてジャケットの内側が水色なのも英ウィチタ盤だけ?

1st「Dear Companion」(2007)をこっそりと書いたページ
第136号 2008/2/6 私をエスパーズに連れてって!

2nd「Seasons On Earth」(2011)をこっそりと書いたページ
第185号 2012/8/31 続々と登場するあの人たちの新作にもうカンカン!
 


HeronOblivion.jpg HeronOblivionBack.jpg
HERON OBLIVION 「HERON OBLIVION」 (2016)
米 Sub Pop Records SP 1149 (LP)
A1 Beneath Fields
A2 Oriar
A3 Sudden Lament
A4 Faro
 B1 Rama
 B2 Seventeen Landscapes
 B3 Your Hollows

さて、そして突然サブ・ポップからこっそりリリースされたヘロン・オブリヴィオンです。
メンバーは4人。メグ・ベアードはドラムス&ヴォーカル、ノエル・V・ハーモンソンがギター
イーサン・ミラーがベース、チャーリー・ソーフレイがギターとなっています。
メグはドラムスなのか!こっそりと追いかけているので、こっそりとびっくりしました。

盤に針を落としたら、1曲目から、これエスパーズでしょ?なエスパーズ・サウンド!
隙間のある音で始まる、スロー・テンポの、もの哀しいメロディーの曲で
メグちゃんの美しいヴォーカルが入って、間奏や後奏で2本のエレキ・ギターが
ギュイーンって暴れて盛り上がるサイケデリック・サウンドだぁ!

エスパーズも曲の後半に歪んだギターがサイケデリックに暴れる曲、多かったですよね。
ヘロン・オブリヴィオンはエスパーズからアコースティックの要素を無くしたような音で
全7曲という長尺曲の連発というのもエスパーズと一緒ですね。

ワウや歪み系エフェクトがかかった、暴力的な音色の長いギター・ソロは古臭くもあり
ただ、しっかりとメロディーを弾いていて、まあ、前時代的な、いわゆる「ロック」です。
今更、この古臭いロック・・・とは思いますが、GS的な歌謡ロックなA3とかも面白いし
正直、これ、かなり良いです、ハマります。

アナログ盤はダウンロード・コード付きです。
 


TheChapel.jpg TheChapelBack.jpg
HERON OBLIVION 「THE CHAPEL」 (2017)
チェコ no label HO1 (LP)
A1 Beneath Fields
A2 Oriar
A3 Sudden Lament
A4 Untitled
 B1 Your Hollows
 B2 Faro
 B3 Rama
 B4 Crossroads

ヘロン・オブリヴィオンは1stアルバムに続き、こっそりとライブ・アルバムも登場!

ライブ盤・・・内容も想像できるし、価格もそれなりに高くて、別に買わなくてもいいかな
・・・と、放置していたけれど、最近になって安価な盤を発見してしまい
興奮して急いで買いに走りました。ハァハァ。実際は走ってないけどね!ハァハァ。

こちら「ザ・チャペル」とタイトルがあるように、サンフランシスコのライブ・ハウス
ザ・チャペルでの2017年1月の演奏を収録しています。
サブ・ポップからではなく、バンドの自主リリースのようで、レーベル無し(品番はアリ)です。
まあ、これはアメリカ盤なのだろうけれど、裏ジャケの右下の小さい丸シールに
「Made In CZ」とあったので、チェコでプレスされたチェコ盤という事にしておきました。
CZはチェコ・・・でいいのですよね?

スタジオ盤に収録の7曲中、6曲が演奏されていて、A1〜A3はスタジオ盤と曲順も一緒。
その他、スタジオ盤には未収録のA4、ダグ・サーム作のカバー曲B4となっています。

音はスタジオ盤より更にヘヴィーに荒々しく爆発!していて、特にギターはかなりノイジー。
ただ、メグはライブだからといって、音程を外したり、ウギャー!とか叫んだりしません。
うーん、冷静!さすがメグです・・・と思ったら、B2はヴォーカルが荒れ模様です!いいぞ!

しかし、ソロ3rd「Don't Weigh Down The Light」のジャケットでは真っ青な顔色だったメグ。
それはそれは体調が悪そうでしたが、本盤のジャケットでは顔色が真っ赤にほてっています。
ほてるというより、真っ赤に燃えている感じだけど、いずれにせよ体調良さそうで良かった!

この盤はCDはリリースされておらず、LPのみの作品のようです。ダウンロード・コード付き。
 


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THE BAIRD SISTERS 「UNTIL YOU FIND YOUR GREEN」 (2012)
米 Ba Da Bing BING-117 (LP/2016)
A1 On And On
A2 Until You Find Your Green
A3 Looking At Things Up Close
A4 Towpath Drill
 B1 Where The Waters Flow
 B2 After The Work Is Done
 B3 Tracks
 B4 Until The Bottle Is Dry
 B5 A Soldier Being Tired
 B6 Going West With Secrets

メグ・ベアードが(たぶん)姉のローラ・ベアードとやっているベアード・シスターズ。
2012年にLPのみでこっそりと出ていた3rdアルバムが、2016年にこっそりと再発されました。
再発盤はLPの他、CDも出ています。2012年版LPとはジャケットが違うようです。

裏ジャケの写真を見ると、ローラがバンジョーを弾き、メグがギターを弾いています。
バンジョー、ギター、2人の歌というのが基本路線の地味なサウンドで
他に、ちゃんとしたクレジットは無いですがフルート、フィドル(ビオラかも?)なども入ります。
そして極めつけは、A2に入る鳥のさえずり!B1に入る虫の鳴き声!うおおおぉぉー!
また、短いインストのB4にはエレキ・ギター、ベース、ドラムスも入っていますね。

B5だけ「トラディショナル」とクレジットされていて、後は2人が作ったオリジナル曲。
バンジョーはブルーグラスみたいな早い回転の演奏では無く、ゆったりと流れるので
のどかなマウンテン・ミュージック風味ではあるのだけれど、「どトラッド」な感じでもなく
現代的なコンテンポラリー・フォークの香りもするので、聴きやすいと思います。

バンジョー&フルート、2人のハーモニー・コーラスで迫るA面1曲目から完全にやられ
鳥のさえずり入りのA2にもフルートが入って、ふたたび完全にやられてクラクラするのに
それ以降の曲にも完全にやられまくりで、はっきり言って、これは相当素晴らしいです。

ただ、地味なフォークだと思って聴くと、地味なフォークにしか聴こえなかったりするので
出てくる音に最大限に想像力を働かせ、素敵な風景を思い浮かべながら聴きましょう。
懐かしい峠の我が家、そよ風と新緑の香り、そして哀しい夕暮れ・・・
ほーら、色々と風景を想像しながら聴いたら、もうやられまくりでしょ?

このLPにはダウンロード・コードは付いていません。
さあ、盤に針を落として聴きましょう。その先には幸せが待っています。これホント!

The Baird Sistersの2nd「Lonely Town」(2008)をこっそりと書いたページ
第189号 2014/7/10 21世紀の姉妹でポン!
 


GhostForests.jpg GhostForestsBack.jpg
MEG BAIRD & MARY LATTIMORE 「GHOST FORESTS」 (2018)
米 Three Lobed Recordings TLR-125 (LP)
A1 Between Two Worlds
A2 Damaged Sunset
A3 In Cedars
 B1 Blue Burning
 B2 Painter Of Tygers
 B3 Fair Annie

メグちゃんのソロ2nd「Seasons On Earth」にも参加していたアメリカの女性ハープ奏者
メアリー・ラティモアさんとの共作アルバムが遂に完成!そして、こっそりとリリース!
ジャケットではアート作品がにょっきり!見開きジャケ、ダウンロード・コード付きです。

音の基本はメグのヴォーカル、ギター(アコースティック&エレキ)とメアリーのハープで
そしてあまり目立たないけれど、ほんのりと他の楽器も入っているように聴こえます。

A1とB1はインストで、アンビエントでドローンな響きがありますね。
この2曲はメアリー・ラティモアさん主導でしょうね。

A2とB2は顔色が真っ青なソロ「Don't Weigh Down The Light」に入っていてもいいような
抑揚の無いメロディーで流れる、浮遊感のあるフォーキー・ナンバーで、メグ主導か?

そして、美しいハープの響きとメグの美しいヴォーカルが見事に融合した絶品曲A3とB3!
特にアイリッシュ・トラッドを思わせる哀しみを纏ったメロディーが染みる最後のB3がぁぁ!
美しいメロディー、美しいハープ、美しいヴォーカルと3拍子揃っていて、1970年代の
クラナドに通ずる雰囲気もあり、もう、このB3で全員が間違いなく昇天します。

メグとメアリー、どちらかが目立つという事も無く、2人のバランスが良いアルバムです。
しかしこの作品、たった6曲しか入っていないので、もう少し聴きたいよなぁ。
2人の共作で、もう1枚くらい作って欲しい・・・と、こっそりとお願いしておきます。

あと、この作品はこっそりと、2021年にカラー盤LPで再プレスされた模様です。
2022年5月時点で、まだ売り切れではないようなので、こっそり入手するチャンスですね。
やったね!こっそり入手して、こっそり聴いて、こっそり興奮して、もっこりだぁー!

その他、メグ・ベアード関連作品をこっそり書いたページはこちら!
Meg Baird, Helena Espvall, Sharron Kraus 「Leaves From Off The Tree」 (2006)
第126号 2007/5/3 紙ジャケCDなんて燃やしてしまえ!

エスパーズの作品をこっそり並べて興奮して、もっこりした文章はこちら!
2020年2月17日更新の表紙
 

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