そろそろ五月病の季節がやって来ます。
英国ヒッピー・フォークを聴いて皆で五月病を先取りしましょう。
もうすでに五月病の人は更に病状を悪化させましょう。



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THE INCREDIBLE STRING BAND 「WEE TAM」 (1968)
欧 ELEKTRA 7559-60914-2 (CD/1992)
 1 Job's Tears
 2 Puppies
 3 Beyond The See
 4 The Yellow Snake
 5 Log Cabin Home In The Sky
 6 You Get Brighter
 7 The Half-Remarkable Question
 8 Air
 9 Ducks On A Pond
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THE INCREDIBLE STRING BAND 「THE BIG HUGE」 (1968)
欧 ELEKTRA 7559-61548-2 (CD/1993)
 1 Maya
 2 Greatest Friend
 3 The Son Of Noah's Brother
 4 Lordly Nightshade
 5 The Mountain Of God
 6 Cousin Caterpillar
 7 The Iron Stone
 8 Douglas Traherne Harding
 9 The Circle Is Unbroken

 聴いているだけで勤労意欲が無くなってしまうという素晴らしい音楽性を持った
 英国ヒッピー・フォークの代表格インクレディブル・ストリング・バンド。

 彼らは1966年のデビュー・アルバムから1974年のラスト・アルバムまで
 大量にアルバムを発表しており 1969年に行われた愛と平和と勤労拒否のイべント
 ウッドストック・フェスティバルにも英国ヒッピー代表として出演しております。

 今回取り上げた2枚のアルバムは英国オリジナルLPは2枚組で
 「Wee Tam And The Big Huge」のタイトルで出ていた4thアルバムですが
 米国盤LP発売時に こんなの2枚分も聴いたらみんな仕事しなくなるぜ!
 と心あるレコード会社の上層部の配慮でバラ売りされた模様です。
 ・・・とまたまた適当にこじつけてしまいました。
 という事で僕が所有のエレクトラからのCDは米国盤仕様ですが
 オリジナル仕様のCDもハンニバルから発売されているんでマニアは両方揃えましょう。

 ジャケットに写る2人はマイク・ヘロン(黒髪)とロビン・ウイリアムソン(金髪)で
 2人が分け合って曲を書き それぞれの曲でそれぞれメイン・ヴォーカルをとっています。
 このヴォーカルが2人ともヒッピー・ソウル感覚(?)を煽るイヤーな感じで
 ずーっと聴いていると脳味噌が耳からドロッと出てきそうになります。
 第9号でも書いたのですが特にヒドいのがロビン・ウイリアムソンのへなちょこぶり。
 俺自身がメロディーでありリズムだ!文句あるか!というその姿勢は
 ボブ・ディランに対抗できる人だし もしかするとディラン以上なのかも知れません。

 2人とも様々な楽器を演奏し ギター シタール ホイッスル ピアノ オルガン
 ハープシコード パーカッション類などは当たり前のように演奏する他
 すぐに習得できそうにもないバイオリン フルート アイリッシュ・ハープ
 といった楽器にまで手を出していて これをヘッタクソだなぁーと思うか
 何てへなちょこで美しいんだーと思えるかで好き嫌いが分かれますね。

 この2枚のアルバムでは1stや1970年代の作品に比べるとトラッド色が薄くなっていて
 一日中川の流れを見つめて過ごすが如き美しい響きの曲が並んでいます。
 まあアルバム毎に微妙に音が違うのですが
 終始一貫して勤労意欲を削ぐトローンとした感覚は一緒なので
 彼らのアルバムはどれに手を出しても安心して五月病になる事ができます。



DR. STRANGELY STRANGE 「KIP OF THE SERENES」 (1969)
英 ISLAND 3D CID 1004 (CD)
KipsOfTheSerenes.jpg KipsOfTheSerenesBack.jpg
  1 Strangely Strange But Oddly Normal
  2 Dr Dim And Dr Strange
  3 Roy Rogers
  4 Dark Haired Lady
  5 On The West Cork Hack
  6 A Tale Of Two Orphanages
  7 Strings In The Earth And Air
  8 Ship Of Fools
  9 Frosty Mornings
 10 Donnybrook Fair

 ジャケットからして僕たちヒッピー・フォークでーすと宣言しているかのような
 ドクター・ストレンジリー・ストレンジの1st。 彼らはアイルランド出身らしいです。
 ジャケット左下にもでっかく印刷されていますが 嬉しい事に本CDは3Dサウンド仕様。
 これはたまりませんよ。・・・って聴いていても3Dって一体何だ?って感じですけど。

 ヴァーティゴから出ていた1970年の2ndはマニアも喜ぶ変形ジャケットLPで
 アルバムとしては2ndの方が有名で そちらも素晴らしい内容ですが
 2ndにはエレキ・ギターとドラムスが導入されているので1stの方がフォーク度は高いです。

 ドクター・ストレンジリー・ストレンジはインクレディブル・ストリング・バンドの芸風を
 継承した数少ないバンドのうちのひとつで この1stはかなりの勤労拒否フォークです。
 各メンバーが様々な楽器を操る事ができるのも一緒の芸風だし
 プロデューサーがジョー・ボイドなのも一緒ですね。
 ヴォーカルはインクレディブル・ストリング・バンドに比べるとまともで
 ゆったりとしたのどかで美しいメロディーの曲が連発される内容です。

 最大の特徴として音をはずしまくったリコーダーやホイッスルが大々的に登場し
 のどかなのか嫌がらせなのかよく分からない空間を演出してくれます。

 割とまともなリコーダー演奏と優しげなコーラスが絡む1曲目。
 間奏で2本のリコーダーが爆発する必殺パターンを持った4曲目。
 柔らかなグロッケンスペルの音色がさりげなくバックで鳴っていてたまらない9曲目。
 などなど必殺ブリティッシュ・フォークとして聴ける素晴らしい曲も入っているのですが
 いいかげんな響きの笛の音色が 仕事しよう 勉強しよう 明日も頑張ろう
 などという意欲を削いでくれるので もう仕事やめてーよと迷っている人は
 このアルバムを聴いて そんな下らない仕事なんかやめちまえ!

 なお彼らは2nd後も活動はしていたようで1997年に突然復活アルバムを発表。
 そちらは笛の代わりにフィドルが活躍する割とまともなトラッド寄りのロックでした。



TYRANNOSAURUS REX 「UNICORN」 (1969)
テイチク TECX-18814 (CD/1994)
Unicorn.jpg UnicornBack.jpg
 1 Charlots Of Silk
 2 'Pon A Hill
 3 The Seal Of Seasons
 4 The Throat Of Winter
 5 Catblack (The Wizard's Hat)
 6 Stones For Avalon
 7 She Was Born To Be My Unicorn
 8 Like A White Star, Tangled And Far,
   Tulip That's What You Are.
  9 Warlord Of The Royal Crocodiles
 10 Evening Of Damask
 11 The Sea Beasts
 12 Iscariot
 13 Nijinsky Hind
 14 The Pilgrim's Tale
 15 The Misty Coast Of Albany
 16 Romany Soup

 こちらはティラノザウルス・レックスの3rdアルバム。
 バンド名を短くしてギンギラ・ロックで大成功したT.REX時代ももちろん最高なのですが
 ティラノザウルス・レックス時代も摩訶不思議なヒッピー・フォークで最高なのです。

 ティラノザウルス・レックス名義ではアルバムは4枚出ていますが
 ヒッピー魂爆発のスティーブ・ペリグリントン・トゥックが在籍していたのは本3rdまで。
 アルバムの最後をジョン・ピールの朗読で締めるというスタイルもこのアルバムまでです。

 こいつが脱退した後の4thではエレキ・ギター導入でギンギラ・ロックへ接近するので
 もしかするとスティーブ・ペリグリントン・トゥックが初期ティラノザウルス・レックスの
 ヒッピー・フォーク路線を支えていたのかも知れません。

 スティーブ・ペリグリントン・トゥックの脱退理由は ドラッグばっかりやっているので
 マーク・ボランにお前はクビだ!と言われたという事になっています。
 が トゥック側から言わせると てめぇエレキ・ギターなんか弾きやがって!
 だいたい何だ そのチリチリ・パーマは。 ヒゲを生やせ ヒゲを!
 お前なんかとはもうやってられねーぜ。 やめてやるぜ!という事も考えられます。

 彼は脱退後もドラッグ漬けだったようで 結果的にドラッグが原因で死亡しております。
 ヒッピー街道まっしぐらのこの生き方は五月病どころではありませんね。

 1stと2ndはガシャガシャ・アコギとポコポコ・パーカッションのシンプルなバックに
 マーク・ボランのこぶし回りまくりの変なヴォーカルが乗っかるスタイルなのですが
 このアルバムではピアノやハーモニウムやドラムスなどが入っている曲が登場し
 1stと2ndに比べるとだいぶ聴きやすくなっているのではないでしょうか。
 聴きやすいといっても各曲はかなり変なアンサンブルを持っていますけどね。

 このアルバムで最も強力なのが最後の曲で 詩の朗読を右に左に振った後
 呪文のようなリフレインが繰り返される構成はかなりキます。
 この曲だけでも勤労意欲は相当減退するので ぜひお試し下さい。



TIR NA NOG 「STRONG IN THE SUN」 (1973)
英 EDSEL EDCD 336 (CD/1991)
StrongInTheSun.jpg StrongInTheSunBack.jpg
  1 Free Ride
  2 Whitestone Bridge
  3 Teesside
  4 Cinema
  5 Strong In The Sun
  6 The Wind Was High
  7 In The Morning
  8 Love Lost
  9 Most Magical
 10 Fall Of Day

 ティア・ナ・ノグ・・・こいつらはアイルランド出身のようです。
 ヒッピー兄弟街へ行くの巻〜 みたいなジャケットのインパクトが凄いですねぇ。
 アルバムとしては全編のどかなフォークの1stが最高なのですが
 危ないルックスを全面に押し出してやる気満々の3rdを紹介しておきます。

 1曲目にニック・ドレイクのカバーを持ってきていますが
 ニック・ドレイクのドロドロしたつぶやきフォーク・バージョンと聴き比べると
 何でそーなるのって感じのハンド・クラップも入った軽快なフォーク・ロックです。

 アルバム全体ではそのフォーク・ロックと悲しげなフォーク・ソングが同居していて
 通して聴くとなんかどっちつかずで中途半端な印象が残ります。
 どの曲もバックで終始鳴り続けるアコギの音が基調となっているのですが
 各楽器の音がシャープに綺麗に鳴っているのは都会的でちょっと洗練され過ぎかなぁ。

 まあ このルックスのくせに洗練されたサウンドが飛び出すというギャップが
 ヒッピー兄弟街へ行くの巻〜 を成立させていると思いましょう。

 それでもフォーク・タイプの曲は素晴らしく 英国フォークらしい暗さのある3曲目。
 トラッド風のフィドルとホイッスルが郷愁を誘う6曲目。
 うつろなヴォーカルにグロッケンスペルが絡む7曲目とどれも良いです。

 ティア・ナ・ノグは1995年に再結成のライブをやった時のCDも出ています。
 非常に録音状態の悪いライブ盤ですが 左側のヤツはジジイになっても今だに長髪で
 ヒッピー兄弟そのまま歳をとるの巻〜 になっていて凄いっす。

 と ここまで連続して聴けば確実に何事にもやる気が失せます。
 さあ皆でレッツ五月病!


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