ブリティッシュ・フォーク・ナウのタイトルに反して それらしいレコードがなかなか登場しないので
今回はブリティッシュ・フォークの最重要バンド フェアポート・コンベンションのレヴューをします。



FAIRPORT CONVENTION 「UNHALFBRICKING」 (1969)
英 ISLAND ILPS 9102 (LP)
 
 A1 Genesis Hall
 A2 Si Tu Dois Partir
 A3 Autopsy
 A4 A Sailor's Life

 B1 Cajun Woman
 B2 Who Knows Where The Time Goes
 B3 Percy's Song
 B4 Million Dollar Bash

ジャケットだけでも名盤の香り高い フェアポート・コンベンションの3rdアルバムです。
上品そうな老夫婦とレンガ塀。 綺麗な緑の英国庭園ではフェアポートのメンバーが午後の紅茶。
裏ジャケの食事風景では豆の煮たヤツなんか食べています。 まずそー。
フェアポート・コンベンションはアルバム毎にメンバー・チェンジを繰り返し
それに伴いサウンドも変化するのですが このアルバムでは リチャード・トンプソン(g)
サンディ・デニー(vo) アシュリー・ハッチングス(b) サイモン・ニコル(g)
マーティン・ランブル(ds 本作録音後死亡)というメンバーです。
ゲストで イアン・マシューズ(vo 前作まで正式メンバー)
デイブ・スワブリック(fiddle 次作から正式メンバー)等が参加しています。
名前だけ挙げても凄い奴らが集結していたバンドなのです。
A1 A3は 英国の曇り空を思わせる曲調で サンディ・デニーのハスキーな歌声には
このテの悲しげな曲が一番合っています。
サーカス小屋のような雰囲気が楽しいA2はボブ・ディランの曲で
ブートレグ・シリーズ収録の If You Gotta Go,Go Now のフランス語バージョンです。
B3 B4もディランの曲で B3はシンプルで美しいメロディーが繰り返され
後半になるにつれ盛り上がるスケールの大きい曲。
数多くのアーティストがカバーをしたサンディ・デニー作B2 と
エレキ楽器でトラッドを演奏するという その後のフェアポートのサウンドの雛形となるA4は必聴です。
B1 B4のロック・ナンバーもフィドルやマンドリンが入り一筋縄ではいきません。 全曲名曲です。
アルバムの重要度でいくと次作の Liege & Lief
演奏の充実度では5th Full House というのが定説ですが
僕はフェアポートのアルバムでは 4th程痛々しくなく
5th程プロフェッショナルを感じない この Unhalfbricking が一番好きです。



MATTHEWS' SOUTHERN COMFORT
「MATTHEWS' SOUTHERN COMFORT」 (1970)
独 LINECA LCCD 9.01261 O (CD/1993)

 1  Colorado Spring Eternal
 2  A Commercial Prooposition
 3  A Castle Far
 4  Please Be My Friend
 5  What We Say
 6  Fly Pigeon Fly
 7  The Watch
 8  Sweet Bread
 9  Thoughts For A Friend
 10  I’ve Lost You
 11  Once Upon A LIfetime

フェアポートを脱退したメンバー達はそれぞれ素晴らしいアルバムを制作する事になるのですが
その中でも 僕が一番好きな(一番聴く回数が多い)のは このアルバムなのです。
1970年前後アメリカでは こぞって皆さん取り組んでいたカントリー・ロック作品となっています。
イアン・マシューズのヴォーカルは線が細くて メイン・ヴォーカリスト・タイプではないのですが
しかし このメロウな感覚はアメリカ人の演奏する豪快なカントリー・ロックとは
ひと味もふた味も違って とっても魅力的です。
ジェイムス・テイラーやジャクソン・ブラウンに 英国らしい陰影をふり掛けたようなサウンドです。
フェアポート・コンベンションのメンバー達も 多数参加しています。
2曲目や11曲目は いかにも英国のシンガー・ソング・ライターといった雰囲気の美しい曲です。
4曲目 6曲目などは さわやかで繊細ないわゆる西海岸サウンドです。
本物の西海岸サウンドの イーグルスなんかと比べてもこっちの方がそれらしいです。
この2曲は聴いていて本当に気持ちがいいのです。
マシューズ・サザン・コンフォートは1970年に3枚もアルバムを発表しますが
曲の粒が揃った この1stアルバム以外はイマイチだと思います。
イアン・マシュ−ズは 3rd発表後脱退。 ソロ活動〜プレインソングを結成。
残ったメンバーは サザン・コンフォート として活動を続行します。
イアン・マシューズは ソロ作品もイマイチな作品ばかりだと思います。
実は イアン・マシューズ作品は このアルバムを一番最初に購入してしまって
うわぁ こいつはすごいぞ 他のアルバムも聴かねば と思って彼のソロ作品を
CDで10枚位は購入てしまったのですが 僕は騙されていました。
今では 中古CDが500円位で売っていて 他に買う物が無い時は 買ってあげる人です。
・・・イアン・マシューズの大ファンの人が見ていたら ごめんなさい。



では ご参考までにフェアポートのメンバーの 脱退直後の作品を脱退順に挙げておきます。

Judy Dyble・・・・・・・・・・・1st 「Fairport Convention」 (1968)まで在籍。
                  Trader Horne 「Morning Way」 (1970)
                  トレイダー・ホーンは第2号で紹介済み。

Ian Matthews・・・・・・・・2nd 「What We Did On Our Holidays」 (1968)まで在籍。
                  「Matthews’ Southern Comfort」 (1970)

Ashley Hutchings・・・4th 「Liege & Lief」 (1969)まで在籍。
                  Steeleye Span 「Hark! The Village Wait」 (1970)

Sandy Denny・・・・・・・・4th 「Liege & Lief」 (1969)まで在籍。
                  Fotheringay 「Fotheringay」 (1970)
                  10thアルバム 「Fairport Live Convention」 (1974)で復帰。

Richard Thompson・・5th 「Full House」 (1970)まで在籍。
                  「Starring As Henry The Human Fly!」 (1972)


フェアポート・コンベンションは その後も激しいメンバー・チェンジを繰り返して 現在も活動中です。
結成25周年コンサート(1992) 30周年コンサート(1997)の模様は それぞれCDも出ていて
過去出入りしたメンバーが多数出演しています。 ゲストも豪華。
30周年コンサートの ジュディ・ダイブルの登場には涙・・・。


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