家族で楽しめる健康的なフォークを得意とする
米国人プロデューサー・音楽監督のミルトン・オクン(Milton Okun)。
彼の関わった作品の中には ブリティッシュ・フォークのナチュラル・アコースティック・バンドなんてのもあり
フォーク業界っていうのは奥が深いなーと感じます。


NATURAL ACOUSTIC BAND 「LEARNING TO LIVE」 (1972)
韓国 Si-Wan SRMC 1038 (CD/1995)
 LearningToLive.jpg LearningToLoveInner.jpg
  1 Learning To Live
  2 Sometimes I Could Believe In You
  3 Subway Cinderella
  4 Free
  5 Tom
  6 February Feeling
  7 Maybe It Was The Sunshine
  8 Midnight Study
  9 All I Want Is Your Love
 10 Waiting For The Rain
 11 Dying Bird
 12 High In My Head

ナチュラル・アコースティック・バンドのCDは 韓国シーワン・レコードの
ユーロ・ロック1000シリーズからの登場です。
このシリーズはプログレ・バンドの再発が多いですが
我が愛すべきヘロンはじめ フォーク物もしっかり押さえています。
1000シリーズっていうのは 1000番台のレコード番号の事でしょうか。
僕はトータル1000枚再発する物だと勝手に思っています。
1000枚目指して これからも頑張って欲しいものです。

さて ミルトン・オクンがプロデュースのナチュラル・アコースティック・バンドの1st。
グループ名だけでも健康的で真面目な感じが香ってきます。
アコーステッィク・ギターとパーカッション。 そして しっかりとしたコーラス。
これがこのグループの基本的なサウンドです。
ミルトン・オクンが音楽監督をやっていた アメリカン・フォークの大御所
ピーター・ポール&マリーの1960年代後半の作品にも似ています。

時折 リコーダーやフルートなどが入るのが英国らしい所で
2曲目は最後に 短いグロッケンスペルのフレーズが登場。
また 言ってしまうけれど この入り方は「必殺」です。

パーカッションがバタバタと鳴らされ疾走感のある曲と
しっとりとした じっくり聴かせる曲とが入っていますが
このアルバムでは バタバタの曲の方が印象に残ります。

女性ヴォーカルのクリシア・コクヤンが ほとんどの曲でメイン・ヴォーカルですが
彼女は歌に感情移入しすぎるきらいがあって
美しい声ながら 1曲の中で声の表情が激しく変化するのはいけません。
特にすぐ裏声になってしまうのは ちょっとダメですね。

PP&Mのような 都会的センスがあるスタイリッシュなフォークを目指したけど
田舎臭さが抜けない感じもあります。 ・・・それがこの1stの魅力です。

お前らもっと売れたいんだろ とミルトン・オクンに言われたかどうかは知りませんが
2ndは 基本的な姿勢は変えずに より家族で聴けるサウンドに変化します。


NATURAL ACOUSTIC BAND 「BRANCING IN」 (1972)
韓国 Si-Wan SRMC 1040 (CD/1995)
 BrancingIn.jpg BrancingInBack.jpg
  1 Running Into Changes
  2 Echoes
  3 Money
  4 Follow Your Love
  5 Road To The Sun
  6 Is It True Blue ?
  7 First Boy
  8 I’ll Carry You
  9 Little Leaf
 10 Moontime Writer
 11 Travellers On The Road

かわいいジャケットの絵が毒キノコに見えてならない2ndです。
裏ジャケの写真は アイドル・グル−プみたいです。
ずっと探していたのですが 今年に入って新宿のガーデン・シェッドでやっと入手。
2600円(内税)もしたのですが ディスク・ユニオン各店でシーワン盤は
税別2590円の値札がついているので 決して高くはないのです。

1stと比べると曲調もバラエティーにとみ オルガンやストリングスも入り
コーラスも美しく ソフト・ロック・ファンが騒いでもいいような作品です。
さすがミルトン・オクン。 軌道修正は大成功なのではないでしょうか。
その ソフト・ロック的なサウンドと 前作に入っていてもいいような
リコーダーが美しい英国的な曲とがバランス良く入っています。

アコギがジャカジャカと疾走感のある始まり方の1曲目は 途中でテンポ・ダウン。
ストリングス入りの美しい 2 へと繋がる構成は見事です。
4曲目は 英国の庭園風景を思わせる 清楚なコーラスの導入部分から
バシッとドラムが入って サビに行き盛り上がる素晴らしい曲です。
フォーク・ロックな 7 はコーラスもなく クリシア・コクヤンの独断場。
バックのサウンドがいいだけに 彼女の感情移入ヴォーカルが非常に残念です。
それに比べると ザ・バンドのような 11 は男性の後ろで
クリシア・コクヤンはスキャットだけで入り いい効果を出しています。

1stよりも男性がメイン・ヴォーカルの曲が多くなったのも
ミルトン・オクンの指示なのでしょうか。
僕がプロデューサーだったら 「クリシア 君はコーラスだけね」って言います。
いずれにせよ この2ndは家族で楽しめるアルバムです。

韓国シーワン盤に ひとこと申しますと・・・
ブックレットにはハングル文字の解説が書かれており 全く読めません。
この解説の内容が気になって眠れない日々が続いております。
世界中のマニアの人がこのシリーズを買い求めていると思うので
せめて英語で書いてもらう訳にはいかないのでしょうか。


STARLAND VOCAL BAND 「STARLAND VOCAL BAND」 (1976)
米 WINDSONG BHL1-1351 (LP)
 StarlandVocalBand.jpg StarlandVocalBandBack.jpg
 A1 Boulder To Birmingham
  2 Baby,You Look Good To Me Tonight
  3 American Tune
  4 Starland
  5 California Day

 B1 War Surplus Baby
  2 Starting All Over Again
  3 Afternoon Delight
  4 Hail! Hail! Rock And Roll!
  5 Ain’t It The Fall

ミルトン・オクンの仕事の中でも 特に有名なのはピーター・ポール&マリーと
ジョン・デンバーでしょうか。 そのジョン・デンバーの曲の中でも
最も有名で最もいい曲 「故郷へ帰りたい(カントリー・ロード)」 の共作者である
ビル&タフィー・ダノフが中心となり結成したのが スターランド・ヴォーカル・バンドです。

ここでもミルトン・オクンがプロデューサーとして登場しており
相変わらずバンド名も健康的。 サウンドも思いっきり健康的な仕上がりです。
全く売れなかったナチュラル・アコースティック・バンドに対して
彼等は B3が全米で1位を2週記録しております(ビルボード誌)。

美しく複雑なコーラスがサウンドの核となっており
4人の完璧なアカペラで ぐぐっと引き込まれるA3などを聴いていると
僕みたいなチンピラがこんな崇高な音楽を聴いていていいのかなといった気分です。
バックで ペダル・スティールやバンジョー ドブロなどが入る曲も多く
それが良いフックとなり飽きずに聴く事ができますが カントリー臭は少ないです。
サックス入りでおしゃれなB5と 大ヒット曲B3がベスト・トラックです。

しかしB3はすごいいい曲です。 出だしのアコギの美しいアルペジオから
男性と女性がヴォーカルを分け合い歌い 次第にコーラスが広がります。
最後の「アフタヌーン・ディライト」と繰り返されるコーラスでイッちゃいますね。

彼等はこの後も何枚かアルバムを発表したようですが
どれも売れなかったようで B3だけの一発屋として音楽史に名を残しています。
CDは 米Collectablesから Afternoon Delight っていうのが出ています。
この1stから全曲と (たぶん)2ndの全曲の20曲入りです。
ブックレットに出展が書かれていないのでよく分かりません。
僕はあと Late Nite Radio というLPを持っています。(1978年作 たぶん3rd)
1st以降でも美しいコーラスは相変わらずで 良い曲も多いです。


JOHN DENVER 「WHOSE GARDEN WAS THIS」 (1970)
BMGジャパン BVCP-7488 (CD/1997)
 WhoseGardenWasThis.jpg
  1 Tremble If You Must
  2 Sail Away Home
  3 The Night They Drove Old Dixie Down
  4 Mr. Bojangles
  5 I Wish I Could Have Been There (Woodstock)
  6 Whose Garden Was This
  7 The Game Is Over
  8 Eleanor Rigby
  9 Old Folks
 10 Golden Slumbers
    〜Sweet Sweet Life
    〜Tremble If You Must
 11 Jingle Bells

最後に ジョン・デンバーも紹介しておきます。
彼がヒット曲を連発していた1970年代は ミルトン・オクンのプロデュースで
ダメなアルバムは一枚もありません。

まだブレイク前のこの3rdは 半分以上がカバー曲のため
彼のアルバムの中でも かなり甘く見られている作品かも知れません。
しかし 彼の誠実で丁寧な歌唱は安心して聴けるし
けっこう有名な曲を中心にしたカバー・センスは僕の好みです。

ここでのサウンドは 次作以降のフォークとカントリーの中間みたいな音ではなく
フォーク〜フォーク・ロック色が強いです。
ジョン・デンバー作の 2 は起伏の少ないメロディーながら
曲が進むにつれ ストリングスや女性コーラス 鋭いエレキギターなどが飛び出し
じわじわと感動を呼び起こす曲。
同じくジョン作の 5 はタンバリン ジャカジャカで正統派フォーク・ロック。
その2曲にはさまれた形の 有名曲のカバー 3と4は
曲自体が名曲なので もう何も言うことはありません。
ビートルズのカバー8曲目は バタバタとした騒がしいパーカッションと
怪しいキーボードが暴れまくるサイケデリックな仕上がりで異色。
またまた ビートルズから始まるメドレー 10 は
そのまま アビー・ロードのB面の後半部分といった雰囲気で
一番最後に ジングル・ベルが入っているのも ジ・エンドと対応している。(かな?)

ジョン・デンバーは1997年に飛行機事故で死亡しましたが
ディープなフォークやシンガー・ソング・ライターのファンには 今だに
こんな健康的なの聴いてられるか という思いはあるのかも知れません。
南こうせつのようなルックスでも損をしていると思います。
でも 彼の1970年代はいいですよ。 間違いなく家族で楽しめます。


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