最近入手したエスパーズってゆーヤングな米国バンドのCDが良かったので
ここのところ米国アシッド・フォークをよく聴いています。
アシッド・フォークって言われている音楽をじっくり聴いていると
アシッド臭を漂わせる事を狙って作ったヤツがある事に誰もが気付くはずだし
狙っていないのにアシッド臭漂ってしまった天然系がある事にも誰もが気付くはずです。
・・・って僕の勝手な思い込みで「天然さん」「お狙いさん」と分けている事に
その内誰もが気付くはずなのでバレない内にレヴューへ突入だぜ!



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PEARLS BEFORE SWINE 「BALAKLAVA」 (1968)
伊 GET BACK GET1010CD  (CD/1998)

1 Trumpeter Landfrey....
2 Translucent Carriages
3 Images Of April
4 There Was A Man
5 I Saw The World
  6 Guardian Angels
  7 Suzanne
  8 Lepers And Roses
  9 Florence Nightingale....
 10 Ring Thung


トム・ラップ率いるパールズ・ビフォア・スワインの2nd。
イタリアのゲット・バックからの紙ジャケ再発CDにて紹介です。

このバンドは1960年代末から70年代前半までに5〜6枚アルバムが出ているけど
宗教画なジャケットが多くて中々手を出しにくい事になっていますねぇ。
その中でもガイコツ軍団に人間が襲われるの図の本作のジャケットは特に気持ち悪く
ガイコツにナイフで首を切られたり槍で刺されたりの死体が山積み大量虐殺状態だぁ!
もしかしたら有名な絵画を使用しているのかも知れないけど・・・これは気持ち悪いです。

収録された曲は様々な効果音と共にゆったりと流れて行く感じになっていて
ストリングスやフルートも入り美しいです。 うーん これは「お狙いさん」を感じますね。
効果音を抜いてしまうとけっこうフツーのシンガー・ソング・ライター風味だもんねぇ。

色々な人がカバーしまくっているレナード・コーエンの「スザンヌ」が7曲目に入っていて
全体的にこの「スザンヌ」の如くな抑揚の無いメロディーで展開する曲が多く
聴いた瞬間ガツーンとインパクトは無いので 何度も聴いてじわじわトリップ作戦です。 

フルートが泳ぎまくる3曲目のバックでは終始鳥のさえずりチュンチュンで
うおぉー!となるけど爽やかな朝の目覚めというよりジャングルの中といった趣き。
6曲目はストリングスをバックに歌われる3拍子の曲で美しい必殺室内楽サウンド。
AMラジオから流れてくるようなエフェクトがかかっていて中々雰囲気がありますねぇ。
呪いのような陰鬱なメロディーを持った10曲目の最後にはテープ高速早回し音が
ギュルルルーでトリップ!・・・しないなぁ。 ただのテープ早回し音として響きます。

この作品ってよくアシッド・フォーク名盤選などにも選ばれている作品だけど
インパクト度 トリップ度はそれ程高くないのでアシッド・フォークだ!と意識しない方が
すんなりと耳に入って来て美しく響いてくれそうな「お狙いさん」アルバムでした。
 



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JAKE HOLMES 「"THE ABOVE GROUND SOUND" OF JAKE HOLMES」 (1967)
英 RADIOACTIVE RRLP049 (LP/2004)

A1 Lonely
 2 Did You Know
 3 She Belongs To Me
 4 Too Long
 5 Genuine Imitation Life
 B1 Dazed And Confused
  2 Penny's
  3 Hard To Keep My Mind On You
  4 Wish I Was Anywhere Else
  5 Signs Of Age


ジェイク・ホームズの1stはここのところ活発にヤバいアイテムを出している
英レディオアクティブからの再発LPにて紹介です。 同レーベルからはCDも出ています。

レディオアクティブってゆーレーベルはキノコ・ジャケで活躍中(?)のアイルランドの
マッシュルームの再発CDも出していて有難いレーベルですがどーも怪しさも漂います。
本作のジャケはピンぼけ気味だし 裏ジャケもコピーのコピーを印刷したのでしょうか?
細かい文字は潰れ ゴミみたいなモンまで一緒に印刷されていて有難いですねぇ。
更に出てくる音もこもっていて こりゃーホント有難い事になっています・・・たぶん。

A1から疾走感バツグンにエレキ・ギターが暴れてバーズの「Eight Miles High」の如く
ラーガ・ロック風味で迫ります。 悲痛に響くヴォーカルもキていますねぇ。
まあドラムスが入らないのでラーガ・ロックにはならず結果的にアシッド・フォークですね。

そしてA1と同じの路線のB1はレッド・ツェッペリンが無断でカバーしているらしく
ジェイク・ホームズを聴いてキてるなーと感じるならバーズやレッド・ツェッペリンといった
有名バンドもヤバいって事で・・・1960年代後半は皆ブッ飛んでいたのですねぇ。

ヴォーカルは曲によって叫びにも似た感じだったり優しく迫ったりと表現力豊かで
割とフツーなフォーク曲やゆったりと美しい曲やジャージーな曲など色々入っています。
聴けば聴くほどにグイグイと彼の歌の世界に引き込まれて行き 結果名盤状態だけど
こーゆーのってヴォーカルがポイントなのかなぁ・・・英国勢のマイク・スティーヴンスや
ロイ・ハーパーなんかにも同様の引き込みの魅力を感じてしまいますねぇ。

ほとんどの曲をエレキあるいはアコースティックのギターとベースのみで聴かせ
その他のいかにもな楽器や効果音は入らないので意識的に狙って作った感じはなく
この人は勝手にアシッド臭漂ってしまった「天然さん」ですね。 いやー名盤です。
 



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DINO VALENTE 「DINO VALENTE」 (1968)
米 KOCH KOC-CD-7930 (CD/1998)

1 Time
2 Something New
3 My Friend
4 Listen To Me
5 Me And My Uncle
6 Tomorrow
7 Children Of The Sun
  8 New Wind Blowing
  9 Everything Is Gonna Be OK
 10 Test
 bonus tracks
 11 Shame On You Babe
 12 Now And Now Only


このアルバムは米アシッド・フォーク業界では古典中の古典でしょうか。
ディノ・ヴァレンテの唯一のソロ・アルバム。 この人には「天然さん」を感じますねぇ。

自分で作った曲が愛しいがゆえに感情たっぷりに歌ったら悲痛に響いてしまい
結果アシッド臭漂ってしまったという所かな。 もちろん実際はどーだか知らないけどね!
・・・と自作曲が並ぶ中5曲目だけはママス&パパスのジョン・フィリップス作ですね。

ゆったりと流れる曲がほとんどで伴奏はギターの弾き語りに他の楽器が多少乗る程度。
いやぁ12弦ギターの音色が儚く美しい幻想の世界へ誘ってくれますねぇ。
楽曲のメロディーは切ないのが多いけど すっげー美しいメロディーって事もないので
聴くタイミングを間違えるとかったるく響いてしまう危険性もあったり無かったりです。

2 7 8曲目といった6〜7分超の長尺曲が真骨頂でダラダラと歌い流しでもあるけど
じっくり耳を傾けていると じわりと彼の深遠な歌の世界に引き込まれますねぇ。

チリチリ・パーマネントな髪型もそうですが俺がリズムだ!俺がメローディーだ!
文句あるか!俺の歌を聴け!といった姿勢が感じられる部分はボブ・ディランと
イメージが重なり 5 11曲目などはいかにもディランがやりそうなフォーク曲ですしね。

ストリングスが入ってポップに迫る6曲目はアルバムの中で浮いているけど
ホッと一息つくのには良いタイミングで入っていてナイス!だし
アシッド・フォーク古典として語られているのも納得の名盤になっております。
 



GANDALF THE GREY 「THE GREY WIZARD AM I」 (1972)
米 GEAR FAB GF208 (LP/2003)

1 The Grey Wizard Am I
 2 My Elven Home
 3 From The Grey Havens
 4 Here On Eighth Street
 5 Go And See
 6 The Christmas Song
 7 Old Town Church
 8 The Home Coming
   (The Sun Is Down)
 B1 I Don't Know Why The People
  2 Mr. Joe's
  3 Sunshine Down The Line
  bonus tracks
  4 The Future Belongs To The Children
  5 A Young Girl Just Died
  6 Before Tomorrow
  7 Shadow Of Tomorrow
  8 An Eleven Song Of Love


アンタ一体誰ですか?ことガンダルフ・ザ・グレイ。 ホント アンタ一体誰なのよ?
ジャケットやレーベル面に「Gear Fab」の文字は一切無いのだけれど これは
ガレージ〜サイケ方面のヤバいのばかり出している米ギアー・ファブからの再発盤です。

レコード屋のサイケデリック・コーナーをサクサクやっていたら発見した1枚ですが
裏ジャケの文字を見ても使用楽器などの情報が印刷されていなかったので
どーゆー音なのか想像できなかったけど このジャケットにやられてしまい購入です。
ガンダルフ衣装で不敵な笑いを浮かべるこの青年・・・やってくれそうじゃないですか!
そしてバックは森で切り株があるし 木こり派の僕が買わずに誰が買う!状態ですよ。

中に紙が一枚入っていてそれに目を通すと1972年のオリジナルLPはかなりプレミアの
ついているレア盤との事。 しかしオリジナル盤を1万円以上出して購入するような
凄い内容かというとこれが凄くない内容で・・・そのギャップが凄い!と思っておきます。

本作はアシッド・フォークというよりもドラムスやベースも入るフォーク・ロックですね。
じわりとサイケデリックな感じが漂いますが とにかく幻想的で美しいだとか
狂気が見え隠れするだとかのアシッド臭も薄く バタつくドラムスなどは1980年代の
アマチュアに毛の生えたようなインディー・ギター・バンドのようにも響きます。
本編よりもボーナス曲部分の方が妖しげでほのかにアシッド臭が漂いますね。

まあ「ほのかに天然さん」としてそれなりに楽しめるので失敗という事はないけど
アシッド・フォークだと思って購入したのでちょっと期待はずれでしたねぇ。
しかし2000円を超える商品にはいちいち高いぜ!って文句を言うくせに
どんな音なのかも分からない本作に2400円も出しちゃうのはムダ遣いかな?

いやいやハズレも掴むけどスンゴイのに出会った時の感動ったらないですからね。
内容分からずジャケ買いで成功例はジェントル・ソウルやデヴィッド・ウィフェンとか・・・
最近のバンドではエセックス・グリーンも大感動だったしねぇ。
成功例の割合を考えるとムダ遣いだけどジャケ買いチャレンジはやめられません。 
 



Espers.jpg

ESPERS 「ESPERS」 (2003)
米 LOCUST 44 (CD)

1 Flowery Noontide
2 Meadow
3 Riding
4 Voices
 5 Hearts & Daggers
 6 Byss & Abyss
 7 Daughter
 8 Travel Mountains


出たぁー!その名もエスパーズ! エスパーって事で超能力者サウンド全開の
21世型アシッド・フォークを聴かせてくれるグループです。 いやぁ素晴らしい。
メンバーは男性1人女性2人の3人組で どーやらこれは1stアルバムのようです。

CDケースに貼られたバンドの売り文句ステッカーにはフェアポート・コンヴェンション
ペンタングル ジャクソン・C・フランク ブレッド・ラブ&ドリームス バート・ヤンシュの
ファンなら黙って聴いときやがれ!といった事が書いてあるのかな?
フェアポートとペンタングルの文字がある割にトラッド臭は薄いなぁと思うのですが
アシッド・フォークな響きになるように練りに練って作った「極度のお狙いさん」ですね。
でも狙いに乗っかってしまい踊らされようが何だろうが良いモンは良いのさ!

サウンドはアコースティック・ギターのアルペジオに様々な楽器が妖しく絡む感じで
登場楽器はフルートやフィドルやオートハープや鋭いエレキ・ギター等でヤバいです。
カントリーとかブルースの要素は感じられず英国〜ヨーロッパ的な陰影があり
マイナー調のスローな曲の連続で暗くもあるけど幻想的で妖しげな空気が放たれ
男女で聴かせるヴォーカルも美しい女性の声と虚ろな男性の声でやってくれるし
ちょっと米国の21世紀のグループとは思えない美しく儚い響きの傑作になっています。

1曲目からオートハープがジャラーンと連発される陰鬱なメロディーのフォーク曲に
美しい女性ヴォーカルが乗っかり妖しげな雰囲気で迫ってきてたまりませんねぇ。
7曲目の哀しげな歌いだしのメロディーはヴァシュティ・バニヤンの
「Rose Hip November」って曲にそっくりで・・・これは大変な事になっていますよ!
そして時折登場するエレキ・ギターの暴れ具合もまた効いていますねぇ。

最近のヤングなバンドなんか興味ねー!聴きたくもねー!といった
オールド・ロック病を発症している人も充分イケる内容なのではないでしょうか。
あ あとヤングなバンドなら英国のゴーキーズ・ザイゴティック・マンキもお忘れなく!
 


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