英国ポップスの頂点かと思われたレッド・ボックス。
しかし その実態は・・・。
今回のレヴューは 色々なレコードを聴くと
様々な事が見えてくるというお話です。


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RED BOX 「THE CIRCLE & THE SQUARE」
英 SIRE/WEA WX 79 (LP/1986)
A1 For America
 2 Heart Of The Sun
 3 Billy’s Line
 4 Bantu
 5 Living In Domes
 6 Lean On Me Reprise
 B1 Chenko (Tenka−Io)
  2 Lean On Me (Ah−Li−Ayo)
  3 Saskatchwan
  4 Leaders In Seventh Heaven
  5 Walk Walk
  6 Amen


ウォーターボーイズが1988年に 「フィッシャーマンズ・ブルース」 を発表するまで
僕がこの世で最も好きなバンドだったのが レッド・ボックスです。
彼等は男2人組の ユニット色の強いバンドで プログラミングされたリズムの上に
色々な楽器が絡み 楽しげなポップスをやってくれます。

メロディーが綺麗なのは 当たり前という感じなのですが
最大の特徴として 分厚いコーラス(というか大合唱といった方がいいかも)が入り
そのコーラス部分に 変なフレーズ(しかし楽しい)が並んでいます。
A1でいくと 「ヤダディ・イェー・イェー・イ・オー」 「ナーナナナナナナ」
A2は 「アヤヤ・デ・オー・ヘーイ」 なんて歌っています。
アレンジはけっこう派手ではあるけれど どの曲も 適度な哀愁を含んでいるので
むしろ 地味で味わい深いポップ・ソングといった印象です。

彼等は1983年 哀愁の名曲 B1 「チェンコ」 でチェリーレッドよりデビュー。
1984年 バフィー・セント・メアリのカバー B3。
1985年 坂本龍一の 戦メリみたいなイントロで始まる B2。
1986年 アコーディオンが印象的な A1 と年1枚のペースで
内容の濃いシングル盤を発表し やっと届いたアルバムだったのでした。
このアルバム発表後 A2 と 再び B1 がシングル・カットされています。

捨て曲は1曲もなく マーチング・バンド風で楽しい B4 や
ただ アーメン と大コーラスを繰り返す 宗教掛かった B6 など
彼等の曲作りには 「天才」 という言葉が頭をよぎったものです。

このアルバムは 日本盤でCDが発売されているようなので
聴いた事がない人は 廃盤になる前に 急いでそのCDを購入して下さい。
この名盤を聴けるのだから CD1枚買うなんて 安い 安い。

1人組になってしまった 2ndアルバム Motive (1990年) でも
基本的なポップさは同じですが 爆発する大コーラスは聴けません。



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RED BOX 「SASKATCHEWAN」
英 SIRE/ WEA W9157 (7"/1984)

A1 Saskatchewan

B1 Speechs

もう一発 レッド・ボックスです。
アルバムにも収録されていた この2ndシングルは アルバムとはまったくの別録音です。
アルバム・バージョンよりは洗練されていなくて シンプルな構成になっています。
この曲も得意の大コーラスが炸裂していますが
大コーラスぶりでいくと アルバム・バージョンの方が上です。
後半は 「ウェオエ・ウェ・ウェ・ウェ」 というコーラスが繰り返され 異様に盛り上がります。
そして なんといっても 圧倒的な悲しみに溢れたメロディーが心を打ちます。

B面は テープの逆回転や 話し声をサンプリングした 実験的な作品。
シングルのB面で 冒険してみるっていうのは この頃の英国バンドの共通項。
その 実験的なB面も完成度は高く 泣かせるメロディーも飛び出します。

しかし サスカッチェワンは 死ぬ程名曲なので こんな名曲を作った
バフィー・セント・メアリのオリジナルも 聴いてみたくなったのでした。



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BUFFY SAINTE-MARIE 「SWEET AMERICA」
日本コロムビア YX-8019-AB (LP/1976)
A1 Sweet America
 2 Wynken,Blynken & Nod
 3 Where Poets Go
 4 Free The Lady
 5 America My Home
 6 Look At The Facts
 B1 I Don’t Need You No City Life
  2 Sweet January
  3 Qu’Appelle Valley,Saskatchewan
  4 Honey Can You Hang Around
  5 I Been Down
  6 Starwalker

奇跡的に見つける事ができた バフィーの サスカッチェワンを収録したLPは
神保町のレコード社で 税込2310円もしたのです。
僕の感覚からすると 2000円以上する中古LPは なかなか手が出ない価格なのですが
どうしても聴きたかったので これを逃してなるものかと 迷わず購入したのでした。

バフィー・セント・メアリは カナダ生まれのインディアンで
サスカッチェワンとは バフィーの生まれた土地の名前です。

彼女は1964年 ヴァンガードからフォーク・アルバム It's My Way でデビュー。
フォーク・ロック カントリー・ロックを経て このアルバムではインディアン魂が爆発。
レッド・ボックスが多用していた変なコーラスは インディアン伝統の
パウワウ・シンギングを バフィーが現代的にアレンジした物だったのです。
それを 更にアレンジしたのがレッド・ボックスだった訳です。

で 問題の サスカッチェワンは コーラスの入り方はもちろん
バックのパーカッションやオルガンの使い方まで バフィー・ヴァージョンの完全模倣。
レッド・ボックス天才説は 見事に覆ったのでした。

B3 B4 B5 B6でパウワウ・シンギングが聴かれますが
やっぱり サスカッチェワン。 どうしようもない名曲ぶりを発揮しています。
ホーンも入った かっこいい A1 A6。 かわいいフォークの A2 B1 B7。
カントリー・ロックの B2 など聴き所の多い バラエティーにとんだアルバムです。

細かくビブラートしながら 搾り出すように歌われる バフィーのヴォーカルは
特異なスタイルとも言え 出ない声を無理に出しているようにも聴こえ
曲によっては 痛々しく感じられてしまう事もあります。
 
それにしても B6 と レッド・ボックスの Walk Walk はそっくりな曲です。



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BUFFY SAINTE-MARIE 「UP WHERE WE BELONG」
加 EMI MUSIC CANADA 7243 8 35059 2 0 (CD/1996)
1 Darling Don’t Cry
2 Up Where We Belong
3 Piney Wood Hills
4 Cripple Creek
5 God Is Alive/Magic Is Afoot
6 Until It’s Time For You To Go
7 Universal Soldier
8 Goodnight
  9 Dance Me Around
 10 He’s An Indian Cowboy In The Rodeo
 11 Now That The Buffalo’s Gone
 12 Soldier Blue
 13 Eagle Man/Changing Woman
 14 Bury My Heart At Wounded Knee
 15 Starwalker

バフィーを聴くなら まずはこれっていうアルバムを紹介します。
1976年 Sweet America 発表後 長い 長い 沈黙期間を経て
1992年に久々のアルバム Coincidence And Likely Stories をリリース。
そして次のアルバムは このセルフ・カバー・アルバムだったのでした。

最大の聴き所は サスカッチェワン・タイプのコーラス大爆発の新曲 1曲目と
邦題 愛と青春の旅立ち で有名な 2曲目でしょう。
ヒットした 映画の主題歌ヴァージョンは 男と女のデュエットで
ゴージャスなアレンジでしたが バフィーは アコギで弾き語ります。
(バフィーは この曲の作者なんですよ!)
途中で パウワウ・コーラスが入り ヒットしたバージョンとは全く違った感覚です。

3曲目以降は バフィーが過去発表してきた曲の中でも
特にいい曲ばかり選んで 再録音したっていう感じですね。
フォーク・タッチの曲が多いですが コンピューターの演奏を使ったポップな曲もあり
そのメロディーの美しさは どれも一級品です。

エルビス・プレスリーがカバーした 6曲目。
ドノバンがカバーした 7曲目などの他にも
9 10 12 15 あたりは名曲と呼んでいいでしょう。

Sweet America でも登場した 15 はこちらのヴァージョンでは
更に レッド・ボックスの Walk Walk にそっくりです。


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