久々に 「英国ロックの深い森」 という本をパラパラとめくっていたら
ハニーバスがグラム・ロック〜モダーン・ポップの項に紹介されていました。
各項を面白い分け方にしている本なので グラム・ロックの項には
シングル中心に活動した歌謡ロックな芸人も入っているみたいですが
ハニーバスは決してグラム・ロックでは無いので・・・念のため。
この本にはメンバーのピート・デロとコリン・ヘアのソロ作も一緒に紹介されていて
2枚とも名盤だというのに小さい枠のせいで多く語られていないのは残念。
・・・と僕もハニーバスと愉快な仲間たちをまとめて紹介です。



TheHoneybusStory.jpg
THE HONEYBUS
「THE HONEYBUS STORY」 (1999)
独 REPERTOIRE REP 4733-WY (CD)

1 I Can't Let Maggie Go
2 Girl Of Independant Means
3 Tender Are The Ashes
4 How Long (single version)
5 Delighted To See You
6 The Breaking Up Scene
7 (Do I Figure) In Your Life
8 Throw My Love Away
9 She Sold Blackpool Rock
 10 Would You Believe
 11 Story
 12 The Right To Choose
 13 She Is The Female
    To My Soul
 14 For Where Have You Been
 15 For You
 16 Little Lovely One
 17 Black Mourning Band
 18 Scarlet Lady
 19 Fresher Than The
    Sweetness In Water
 20 He Was Columbus
 21 Ceilings No.1
 22 Under The Silent Tree
 23 She's Out There
 24 La Cicogna
 25 Chi Sei Tu

ハニーバスはちょっと前にデモ音源なども入った2枚組のCDを見かけたのですが
2枚組という事で相当な高額(といっても3000円程度)のため購入もままならず
相変わらず僕はこのレパートワーからの編集盤CDを聴き続けております。

メンバーはレイ・ケーン ピート・デロ コリン・ヘア ピーター・カーチャーの4人で
1967年からシングル数枚 1970年にアルバム1枚を出して解散したようです。
13と14は1971年の 15と16は1973年の再結成シングルのようです。
ジャケットは唯一のアルバム 「Story」 からの流用で 3人しか写っていないのは
アルバム発表時にはピート・デロが抜けてしまっていたからです。

収録曲はコーラスも麗しくストリングスやホーンもたまに入る歌謡ロック路線ですが
バックでアコギをガチャガチャやる曲が多いというのはポイント高いですねぇ。
前半にシングル曲が並び 後半がアルバム 「Story」 からの曲という構成です。

レイ・ケーンが多く楽曲を提供しているけど やはりヒットもしたというピート・デロ作の
1曲目がどこまでも美しくて これはホント必殺ナンバーになっていますねぇ。
出だしから柔らかな木管(オーボエかな?)が流れ おぉこれは!と思った瞬間
優しげなピート・デロの歌声が聴こえてきて素晴らしい事になっています。
サビの 「She flies like bird」 という繰り返しに上を向いて歩こう状態(?)ですよ。

メイン・ヴォーカルはレイ・ケーンなのかなぁ。 よく分からないけど・・・クセの無い
この歌声が多くの曲で歌っていてピート・デロの優しげな歌声はあまり登場しません。
そしてコリン・ヘアは数少ない自作の曲で歌声を響かせているようです・・・たぶん!

ストリングスとグロッケンスピール入りで室内楽ポップな7曲目もたまりませんし
コリン・ヘア作の10 14 18曲目はフォーキーな味わいでググッと来ますねぇ。

さてこのCD 収録時間が78分近くあり思いっきりブチ込んだ感じになっていますが
シングル曲がコンプリートで収録されているかどうかは知りません。
アルバム 「Story」 収録曲も何曲か削られているようですねぇ。
そのくせイタリア語ヴァージョンの24 25 というのが入っていたりしますよ。
でも長時間録音に耐えられない派の僕でも大丈夫・・・という事は良いって事ですね。



IntoYourEarsPlus.jpg
PETE DELLO AND FRIENDS
「INTO YOUR EARS...PLUS」 (1971)
英 SEE FOR MILES SEE 257 (LP/1989)

A1 It's What You've Got
 2 There's Nothing That I Can Do For You
 3 I'm A Gambler
 4 Harry The Earwig
 5 Do I Still Figure In Your Life
 6 Uptight Basil
 bonus tracks
 7 Taking The Heart Out Of Love (Magic Valley)
 8 Here Me Only
 B1 Taking The Heart Out Of Love
  2 On A Time Said Sylvie
  3 A Good Song
  4 It's The Way
  5 Go Away
  6 Arise Sir Henry
  bonus tracks
  7 Uptight Basil (Magic Valley)
  8 Madame Chairman Of The Committee

ピート・デロ&フレンズ名義のアルバム。 いやぁ名作ですねぇ。
この再発盤のジャケ裏にはびっしりと英文解説が印刷されていて その情報を読むと
フレンズ達にはハニーバスの残り3人のメンバーも参加していて愉快な仲間状態です。
・・・まあちゃんと読んではいないので違っていても責任は持てないけどね。

ジャケットがイエスの作品で有名なロジャー・ディーンの絵になっているので
何の情報も無くジャケットだけ見るとプログレ度高い作品なのかなぁと思っちゃいますが
ハニーバスからの流れを受け継いだ美しい響きのポップなフォーク・ロック作品ですよ。
トレイダー・ホーンのジャッキー・マッコレーのソロ・アルバムなんかと印象がダブるかな。

ハニーバスもアコースティック・ギターの使用頻度が高かったけど本作は更に
アコースティックな感触が高くなっていて柔らかに射し込む陽射しのような素敵な音です。
失禁系の室内楽フォーク・ロックと言ってしまっても問題無い程の内容ですよ。
音程が不安定で優しげなピート・デロの歌声がたくさん聴けるのも嬉しいですね。

A5はハニーバス・ヴァージョンもありストリングスの入り方とかほぼ一緒のアレンジです。
でもこちらはアコギのアルペジオが強調されていて必殺室内楽フォークです。 名曲。

しかしどの曲もメロディーが良くて ポール・マッカートニー級のメロディーですねぇ。
時々顔を覗かすのんびりとくつろいだ感じの曲もまた効いていて 捨て曲無しです。

ボーナス曲A7 B7はマジック・バレイ名義の1969年のシングル。
A8 B8は1972年録音の未発表曲との事ですが実態は再結成ハニーバス?
・・・B8はヴォーカルがピート・デロでは無いように聴こえるしねぇ。



MarchHarePlus.jpg
COLIN HARE
「MARCH HARE...PLUS」 (1971)
英 SEE FOR MILES SEE 261 (LP/1989)

A1 Get Up The Road
 2 Bloodshot Eyes
 3 For Where Have You Been
 4 Find Me
 5 Underground Girl
 6 To My Maker
 bonus track
 7 Grannie, Grannie
 B1 Alice
  2 Nothing To Write Home About
  3 New Day
  4 Cowboy Joe (Sage)
  5 Just Like Me
  6 Charlie Brown's Time
  bonus tracks
  7 Fighting For Peace

ピート・デロ同様SEE FOR MILESからのコリン・ヘアの再発盤。 これももちろん名作。
自宅の裏庭(かどうかは知りません)にアコギを飾ってポーズをとるコリン・ヘア。
滅茶苦茶そそるジャケットにフォーキーな作品に違い無いぜ!と期待も膨らみます。

こちらもジャケ裏にびっしりと解説文があり これ又同様に適当に読み取ると
本作にもハニーバスのメンバーが参加しているようです。
てな事でハニーバスはメンバー同士が半殺しのケンカの末解散した訳では無いようで
グループで売れないのでバラ売りしてみたのでしょうか。 まったく愉快な仲間たちです。

コリン・ヘアのヴォーカルはちょっとボブ・ディラン入っていて語り気味だったりもします。
B2では実際に語りが入りますが この語り部分は別人のような気もします。
また適当だけど味のあるハーモニカが多く登場しこちらもディラン風ですねぇ。

A1から聴いていくとカントリー・ロック風味のA1 ストリングスとホーンも入る大らかなA2
鋭いエレキ・ギターがロックを感じさせるA3 波の効果音も入る切ないフォーク曲A4
・・・とバラエティー豊かなサウンドではありますが全体を貫く雰囲気は統一されていて
土と草の香りが漂う名盤なのです・・・それもコリン・ヘアの自宅の裏庭の土と草のね!

A3はフォーク・タッチのハニーバス・ヴァージョンの方が良いけど それでも全曲最高。
コーラスも麗しく ハニーバス・サウンドに土の香りをふりかけたようなA2でクラリ。
バーズの 「Ballad Of Easy Rider」 みたいなギターアルペジオで始まるA6で更にクラリ。
ゆるやかに木管が泳ぐB2 トラッド色濃厚なB3で英国の陰影を感じさせ意識も遠のき
デイラン風ヴォーカルが最も堪能できるフォーク・ロック曲B5の心地良さに失神です。

ボーナス曲はシングルの曲で 「Grannie, Grannie/For Where Have You Been」
「Underground Girl/Fighting For Peace」 というカップリングで2枚出ていたみたいです。
A7は柔らかな木管が入りハニーバスからの流れを感じさせる必殺の室内楽サウンド。
B7はハーモニカが入ってカントリー色もありアルバム本編と同じ雰囲気を持っています。

しかしジャケットにアコギが登場するアルバムって沢山あるけど
中にはフォーキーでも何でもなかったりするのもあるので・・・注意が必要ですね。



TheBlueTrees.jpg
GORKY'S ZYGOTIC MYNCI
「THE BLUE TREES」 (2000)
英 MANTRA MNTLPM 1023 (LP)

A1 The Blue Trees
 2 This Summer's Been Good From The Start
 3 Lady Fair
 4 Foot And Mouth '68
 B1 Wrong Turnings
  2 Fresher Than The Sweetness In Water
  3 Face Like Summer
  4 Sbia Ar Y Seren

ゴーキーズ・ザイゴティック・マンキは第53号でアルバム 「Barafundle」 をレヴュー後
未入手だったアルバムも少しづつポツポツと購入しておりました。
で これは2000年に出た8曲入りのミニ・アルバムなのですが
何でこんな最近のバンドが登場するかというとB2がハニーバスのカバー曲なのです。
よって彼らも愉快な仲間入りです・・・でも一体何が愉快なのかは分からないけどね。

もしかしたら僕は他にもハニーバスのカバーをやっている芸人のアルバムを
持っているかも知れないけど・・・今回気付いたのはゴーキーズだけでした。
彼らもレパートワーからのCDを聴いてカバーしようと思ったのかなぁ。

そのカバーB2はハンドクラップも入る本家のポップ・ロックなヴァージョンより
アコースティックな音で構成されたゴーキーズ・ヴァージョンの方が良いですねぇ。
メンバーにフィドラーがいるのでフィドルも泳ぎまくりで・・・いや素晴らしい。

その他の曲は彼らのオリジナルで 全体のサウンドは1970年代前半の如くな
雰囲気を持った儚くて美しい英国フォーク風味になっていて・・・これは名作です。
こんな雰囲気のアルバムが2000年に発表されたなんて事自体事件ですよ。
雰囲気っていうのはサウンドを真似たからといって出せるってモンじゃないし
元々他の同時代のバンドとは異質の何かがあった彼らだから出来たのでしょうね。

A2とB3のタイトルにサマーって入っていて 録音されたのも2000年の8月です。
だから夏を感じさせるかっていうと違くて 秋枯れの田園を感じさせてくれます。
ウェールズ語で歌われる最後のB4なんてホントもうどこまでも切ない名曲だし・・・
うおおぉ!何だよゴーキーズ!てめーら凄すぎ!素晴らしすぎ!

ギターのコード・チェンジの際 弦をこするキュッキュッという音がミョーに耳につき
でも雑音ではなく良い雰囲気だぜ!と思うのだけど・・・そんな事を感じてしまう僕は
やっぱり病気なのかなぁ。 なおA1 A4 B1はインストになっています。
本作はもちろんCDも出ているので手遅れにならない内にゲットしましょう。


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