スコティッシュへなちょこロックの真骨頂パステルズ。(The Pastels)
最近またレコード棚から引っぱり出して聴いています。
歌声も演奏もへなちょこだけどそこにミョーな美しさがあり感動的ですねぇ。
いや良いなぁ 最初のシングルが出てからもう20年も経つのか。
と 感慨にふけりながら全アルバム一挙レヴューしちゃいます。



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「UP FOR A BIT WITH THE PASTELS」 英 GLASS GLALP 021 (LP/1987)
A1 Ride
 2 Up For A Bit
 3 Crawl Babies
 4 Address Book
 5 I'm Alright With You
 B1 Hitchin' A.
  2 Get 'Round Town
  3 Automatically Yours
  4 Baby Honey
  5 If I Could Tell You
パステルズの1stアルバムはグラス・レーベルから1987年に出ました。
最初のシングルはワームというレーベルから1982年に発表しているので
随分と長い事アルバムを出さなかったのですね。 いや出せなかったのかな?
お前らヒドすぎるぞ!もっと演奏が上手くなってからアルバム出しやがれ!ってね。

メンバーはステファン ブライアン マーティン バーニース アギーと表記されています。
プロデュースはこの時期のネオアコ系では頻繁に登場するジョン・A・リバースです。

パステルズの基本はガチャガチャとしたギターがアマチュア度高いフォーク・ロックで
音程が不安定でへなちょこなステファンの歌声が更にアマチュア度を高めてくれます。
いやこのどーしようもなく情けない歌声こそがパステルズの魅力で
実はとても優しげで和やかで感動を呼び起こす歌声になっているのですよ。

ほのぼのとした感じのA面 元気に迫るB面といった感じの構成ですが
あらためて聴いてみて思うのは楽曲のメロディーの美しい事。
全曲素晴らしい事になっていますが特にA3 A5 B5あたりはホント名曲だねぇ。

リード・ギターが初期のバーズみたいな音だしオルガンも多く入っているので
サイケデリック色も感じられます。 深いエコーに包まれたA1と
長ーい間奏に様々な効果音が切れ込んで来てジワジワとトリップするB3には
脅迫的でダークな雰囲気もありアルバム全体の印象を引き締めていますねぇ。

いやしかし良い曲の連発。 最後のB5なんかどこにでもありそうなさりげない曲だけど
ゆったりと美しいメロディーにあの優しげなヴォーカルで涙が出そうになります。



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「SUCK ON THE PASTELS retrogressive 1983-1985 英 CREATION CRELP 031 (LP/1988)
A1 Baby Honey (creation single 1984)
 2 I Wonder Why (rough trade single 1984)
 3 Something Going On (creation single 1983)
 4 Million Tears (bbc live 1984)
 5 Surprise Me (creation single 1984)
 B1 She Always Cries On Sunday (bbc live 1984)
  2 Baby Honey (bbc live 1984)
  3 I'm Alright With You (creation single 1985)
  4 Couldn't Care Less (creation single 1985)
  5 What's It Worth ? (creation single 1985)
初期シングルとBBC音源をブチ込んだ2ndの編集盤はクリエイション・レーベルから。
編集盤にしては全10曲と物足りないし 「ベイビー・ハニー」 は2ヴァージョン入っていて
ちょっと無理矢理な感じのアルバムではありますが相変わらず素晴らしいですよ。

A3 「サムシング・ゴーイング・オン」 ・・・これで決まりですね。
へなちょこなのに軽やかに流れる感じが非常に気持ち良い素敵なフォーク・ロック。
僕が初期の彼らの曲の中で最も好きな曲です。 いやこれはすげー名曲だ。

そして両面最後を飾るA5とB5のゆったりと穏やかな表情は
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドをほうふつとさせる美しさがあります。
ちきしょー1stも最後はこのタイプの曲だったけど やる事がズルいぜ。
B5のリフレインが 「ゴー・ホーム・・・ゴー・ホーム」 と涙を流せと言わんばかりじゃん。
・・・もちろん泣いてしまいました。 おとーさーん! おかーさーん!

なおこのアルバム収録曲より更に最初期の曲を収録した
EP 「Songs For Children」 は第16号でレヴューしています。



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「SITTIN' PRETTY」 英 CHAPTER 22 CHAP LP 043 (LP/1989)
A1 Nothing To Be Done
 2 Anne Boleyn
 3 Sit On It Mother
 4 Holy Moly
 5 Ugly Town
 6 Zooom
 B1 Baby, You're Just You
  2 Ditch The Fool
  3 Sittin' Pretty
  4 Swerve
アルバムを出す度にレーベルが変わるパステルズ。 3rdはチャプター22からです。
メンバーは1stと同じ5人。 プロデュースはリチャード・マツダ(でいいのかな?)。

前2作と比べるとジャケット意匠から各楽器の音からきらびやさがあり
メジャー感が増しています・・・といってもあくまで前作までと比べるとですけどね。
全体的にギターの音もノイジーで分厚くなりやる気満々って感じですよ。

A面1曲目からA4まで元気よくブッ飛ばしてくれていてこれは爽快。
A1では以前もたまにコーラスで登場したいたアギーちゃんがステファンと
掛け合いのデュエットで迫りますが彼女も又あまり上手くない歌声で最高ですね。

なおアギーは表ジャケ最前にいるゴツゴツとした男らしさ漂う(?)女性で
この人は各ジャケットのヘッタクソな絵も描いています。
本作のジャケはメンバー写真ですがオマケについているポスターは彼女の絵ですねぇ。
うーん こんなポスター部屋に貼りたいヤツいるのでしょうか。
ちなみに後ろの方にいるツンツン金髪のパンク女はドラムスのバーニースです。

B面はもたつきながらもじわりと迫力のあるB1と反復するストリングスが脅迫的なB2の
ヘビー・サイケな2曲が強力なおかげで続くB3は間の抜けた曲に聴こえちゃいます。
最後のB4はスピード感たっぷりで爽快に締めくくり気分の良くなるアルバムですが
さりげなく泣かせてしまう曲の収録が無いのはちょっと残念です。



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「TRUCKLOAD OF TROUBLE」 英 PAPERHOUSE PAPLP 008 (LP/1993)
A1 Thank You For Being You
   (paprehouse single 1993)
 2 Thru' Your Heart (paprehouse single 1991)
 3 Firebell Ringing (paprehouse single 1991)
 4 Kitted Out (paprehouse single 1993)
 5 Comin' Through (glass single 1987)
 6 Over My Shoulder (glass single 1987)
B1 Truck Train Tractor (glass single 1986)
 2 Crawl Babies (glass single 1987)
 3 Nothing To Be Done (sittin' pretty lp 1989)
 4 Different Drum (k single 1990)
 C1 Not Unloved (previously unreleased 1993)
  2 Baby Honey (previously unreleased 1992)
  3 Speeding Motorcycle (paprehouse single 1991)
  4 Speedway Star (paprehouse single 1991)
 D1 What You Said (previously unreleased 1992)
  2 Dark Side Of Your World
    (jad fair & the pastels/paprehouse single 1992)
  3 Sometimes I Think About You
    (paprehouse single 1993)
  4 Sigh Across Me (paprehouse single 1991)
4thはティーンエイジ・ファンクラブも1stを出していたペーパーハウスからの編集盤。
なおティーンエイジのメンバーやユージン・ケリーなどのスコットランド人脈が
3rd〜6thではちょこちょことゲストで顔を出しているのでそちらも要チェックですね。

デビュー・シングルから本作への10年でアルバム4枚 内2枚が編集盤ですかぁ。
ワーム〜ラフ・トレード〜クリエイション〜グラス〜チャプター22〜ペーパーハウス・・・と
グルグルと所属レーベルが変わる彼らだしアメリカのKレーベルから出した曲も入っていて
こういう編集盤は有り難いです。 そして次作は又レーベルが変わるんだけどね。

メンバーは1991年頃に ステファン アギー カトリーナ・ミッチェルの3人になったようで
へなちょこ男を女の子2人がバックアップするという体勢になりました。

2枚組というボリュームで編集盤ながらこれは本当に素晴らしいです。
良い曲が次から次へと飛び出して何度聴いても飽きる事がありません。

特に1枚目が凄い事になっていて ゆったりと泣かせるA2 アギーが歌うA3 A6
ホーンが入るインストのA4 グロッケンスピールも飛び出す軽快なフォーク・ロックA5
曲が進むにつれステファンのヴォーカルが表情豊かにヨレて行くB1
1stに入っていたB2 3rdに入っていたB3と名曲を並べた後
バンジョー スライドギターが入り美しいメロディーに涙ボロボロの大名曲B4ですからね。

2枚目ではおもちゃ箱をひっくり返したような楽しいC3 疾走感がたまらないC4も最高。
ジャド・フェアーとの共演曲D2は終始浮遊感漂う妖しげな曲。
そしてまたC2 「ベイビー・ハニー」 が収録されていてここまでの4枚のアルバムで
4バージョンも聴かされるハメになっています・・・この曲は相当の自信作なようで。



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「MOBILE SAFARI」 英 DOMINO WIGLP 17 (LP/1994)
A1 Exploration Team
 2 Mandarin
 3 Yoga
 4 Mobile Deli
 5 Exotic Arcade
 6 Classic Line-Up
 B1 Flightpaths To Each Other
  2 Basement Scam
  3 Strategic Gear
  4 Token Collecting
  5 Coolport
  6 Worlds Of Possibility
5thはドミノというレーベルから出ました。
前作の編集盤がすげー良かったので期待しすぎたのが原因なのか
購入当時からイマイチだなぁという印象がありほとんど聴いていませんでした。
今聴き返してみてもガツーンと来る曲が無いしイマイチだねぇと感じてしまいます。

サウンドは幾分落ちつき彼らも大人になったなぁと思わせる所は良いのですが
あまり気に入らない原因は何といってもメロディーが弱いところですね。

その代わりステファンのヴォーカルは今までで一番ヨレているので安心(?)だし
女性陣がメイン・ヴォーカルをとる曲の比率も増え彼女達の歌声もヨレヨレ。
ヨレたヴォーカルをおかずにしてご飯おかわり3杯はいける体質の僕ですが
やっぱりこのアルバムではおかわり2杯が限界ですよ。

どんな音楽でも100回聴けば好きになるの法則にしたがって
100回連続で聴けばいいのだけど・・・今の僕には何でもチャレンジしてしまう
轟二郎レベルの体力は無いので最高峰に体調の良い時にもう1度聴いてみます。

轟二郎・・・びっくり日本新記録ね。 TBSだったかなぁ・・・忘れた。



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「ILLUMINATION」 英 DOMINO WIGLP 34 (LP/1997)
A1 The Hits Hurt
 2 Cycle
 3 Thomson Colour
 4 Unfiair Kind Of Fame
 5 Fragile Gang
 6 The Viaduct
 B1 Remote Climbs
  2 Rough Riders
  3 On The Way
  4 Leaving This Island
  5 G12 Nights
  6 Attic Plan
  7 Mechanised
前作以上に落ちついた雰囲気で迫る6th。
非常に隙間のある音で構成されたゆったりとした曲ばっかりでこれは良いぞ。

聴きようによっては音が記号化されて あらぬ方向に向かいつつある直前とも
聴き取れますがそんな中に顔を覗かせる切ないメロディーにクラっとします。

ステファンと女性陣のメイン・ヴォーカルの比率は半々になっています。
女性陣はアギーとカトリーナ・ミッチェル両人とも歌っているようですが
2人ともへなちょこヴォーカルなのでどの曲を誰が歌っているか分かりませーん。

哀しみを纏ったメロディーの曲が多く かつてのほのぼのとした感じは消え
もしかしたら初めてプロフェッショナルな意識で制作されたアルバムなのかも。
特に夕暮れ時の切なさを思わせるA6とB4がたまりませんねぇ。
いやA6なんかホントに名曲。 この曲を何度も聴いていたら
パステルズには似つかわしくない 「死」 さえ遠くに見えてきました。

確かびっくり日本新記録で1度だけ優勝した事のある
轟二郎さんにもぜひ聴いて欲しい好アルバムです。



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「ILLUMINATI」 英 DOMINO WIGLP 46 (LP/1998)
A1 MY BLOODY VALENTINE Magic Nights
 2 KID LOCO The Viaduct
 3 CORNELIUS Windy Hill
 4 STEREOLAB One Wild Moment
B1 MOUSE ON MARS
   Attic Plan (saturday nightlight mix)
 2 CINEMA Remote Climbs
 3 JOHN M'ENTIRE Remote Climbs
 4 IAN CARMICHAEL The Viaduct
 C1 TO ROCOCO ROT Thomson Colour
  2 MY BLOODY VALENTINE Cycle
  3 THE THIRD EYE FOUNDATION On The Way
  4 FUTURE PILOT AKA Rough Riders
 D1 MAKE UP featuring
    MIGHTY FLASHLIGHT Rough Riders
  2 FLACCO Frozen Wave
  3 BILL WELLS The Viaduct
  4 JIM O'ROURKE Leaving This Island
これは 「イルミネーション」 収録曲を中心にしたリミックス・アルバム。
音の記号化を感じる 「イルミネーション」 は更に記号化されてしまいました。

昔の音源をCD化するにあたってリミックスした物は散々聴いていますが
こーゆーアルバムを聴くと ついこの間発表された曲をリミックスするという作業は
曲をズタズタにぶったぎり原曲を分からなくさせるのが目的だとしか思えません。
誰が一番ぶった切る事ができるか大会が開催されていて
原曲の良さを失ったダメな曲の連続になっていて僕は気に入りませんねぇ。

やっている人達はたぶんリミックス業界では有名な人ばかりなのでしょうが
マイ・ブラッディ・バレンタインとコーネリアスとステレオラブ位しか知りません。
その中でもアルバムを持っているのはマイ・ブラッディ・バレンタインだけだし
ステレオラブはかつて大量に売り飛ばしてしまったしねぇ。

いや こーゆーのを受け入れられないという事はヤングじゃないという事かな?
僕はいつまでもヤング気取りでいきたいので聴かなくても売り飛ばしませんよ!
だってびっくり日本新記録でチャレンジ・ボーイと呼ばれていた轟二郎は
その時点で明らかに少年じゃなかったのにボーイ呼ばわりされていたじゃん。
ちきしょー悔しいねぇ。 羨ましいねぇ。

それにしてもこのアルバムから暫くパステルズのアルバムが出ていませんねぇ。
どーしちゃったのでしょう。 いつまでもいつまでも首を長くして待ってるよー。


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