英国のシンガー・ソング・ライターはやっぱり素晴らしいです。
もちろん米国の1970年代のシンガー・ソング・ライター達も良いのですが
英国の連中は孤高度が高いというかただならぬ雰囲気を放つヤツが多いですね。



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ROY HARPER 「FOLKJOKEOPUS」 (1969)
英 SCIENCE FICTION HUCD009 (CD/1999)
 1 Sgt. Sunshine
 2 She's The One
 3 In The Time Of Water
 4 Composer Of Life
 5 One For All
 6 Exercising Some Control
 7 Mc Goohan's Blues
 8 Manana

現在でも地道に活動を続けるロイ・ハーパー1969年の3rdアルバム。
このオヤジはよく奇才のシンガーなどと語られる事が多いですね。
いやがらせのようにつながった眉毛とボリュームのあるヒゲもさすがだし
奇才とか孤高とか言いたくなる雰囲気が顔面からも漂っております。

1曲目は軽快なのに不吉な感じもするちょっとひねくれたフォーク・ロック。
途中から伸びやかな女性ヴォーカル(誰だか分かりません)が絡んできてスンバラシー。
2曲目はアコギのカッティングが鳴り続けネオ・アコースティックが如き躍動感爆発。
この冒頭の2曲で気持ちの良いフォーク・ロック作品だねぇ思ったらこれが大間違い。

3曲目はタブラが打ち鳴らされバックのシタール(っぽい音のギター?)が
これでもかこれでもかと右へ左へと動きアシッド・フォーク色強いですしねぇ。
ハープ(かな?)とヘタクソなリコーダーの伴奏が可愛らしいおとぎ話フォークの4曲目。
英国フォーク風でもありアラビア風でもあるアコギの演奏を延々と聴かせる5曲目。
ちょっとトボけた感じがラヴィン・スプーンフルのようでなごむ6曲目と8曲目。
18分近くある7曲目は悲痛に響く前半の弾き語り部分が10分以上ありこれは強力。

と充実の全8曲一筋縄ではいかない音楽性がヤバい事になっていますが
最もヤバいのはヨレヨレなんだか表現力豊かなんだか分からないヴォーカルですね。
必要以上に裏声を多用するし とにかく俺の声を聴け!といった感じで
こちらにその気が無くてもグイグイ引き込まれてしまうという恐るべき歌声です。

ロイ・ハーパー・・・ただ者ではないです。 彼の眉毛は伊達につながっていません。



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ERNIE GRAHAM 「ERNIE GRAHAM」 (1971)
英 HUX 032 (CD/2002)
 1 Sebastian
 2 So Lonely
 3 Sea Fever
 4 The Girl That Turned
   The Lever
 5 For A Little While
  6 Blues To Snowy
  7 Don't Want Me Round You
  8 Belfast
  bonus tracks
  9 Romeo And The Lonely Girl
 10 Only Time Will Tell

北アイルランド出身のアーニー・グレアム唯一のソロ・アルバムは2002年の春頃
ヴィニール・ジャパン・レーベルがCD化し遂にあの名盤が!と様々な所で大騒ぎでした。
僕も聴きたかったけど どのレコード屋でも2500円超の最高級品価格だったので
手を出さずにいたら数ヶ月後にHUXレーベルからボーナス曲入りCDが出てやがんの。
速攻でヴィニール・ジャパン盤をゲットした人にとっては何じゃそれ?って感じですねぇ。

で購入するならHUX盤の方だとは思っていましたがこちらも2000円超の高級品価格。
当然HUX盤もずーっと見送っていましたがあるレコード屋の年末セールに出動したら
2000円以下のまっとうな価格で売っていたのでやっとゲットできました。

2本のアコギにベースというバックで秋枯れの田園へ連れて行ってくれる1曲目。
キラキラと輝くアコースティック・ギターの前奏が流れた瞬間誰もが即死でしょう。
ボブ・ディランに似たヴォーカルが飛び出して脳味噌の血管が2〜3本切れました。

2曲目以降はエレキ・ギターやドラムスも入り大らかで土臭いフォーク・ロック曲を連発。
のどかな田園風景サウンドの中にアイルランドの寒さや哀しみが見え隠れします。
バックの演奏にブリンズリー・シュワーツのメンバーなどが参加しているもんで
ブリンズリーの1970年の名作 「Despite It All」 と似た音でもありますねぇ。

波の音の効果音に導かれ始まる3曲目は正に凍てついた冬の海を思わせるし
フィドルが入りトラッド色強い8曲目は北アイルランド出身ならではでしょう。
ボーナスの2曲は1978年のシングル曲。 バタバタとした疾走感が良い9曲目は
シン・リジーのフィル・ライノット作でこれも北アイルランドつながりですね。

いやこれは確かに名盤 傑作 最高峰。 皆さん大騒ぎしていたのに納得です。
脳味噌の血管100本は切れるの覚悟で聴きましょう。
なおアーニー・グレアムは2001年に死亡したようで・・・彼も血管切れたのかなぁ。



Control.jpg
JOHN ST. FIELD 「CONTROL」 (1975)
韓国 MERRY-GO-ROUND BMRL 1002 (LP/2002?)
A1 Soft Lowland Tongue
 2 Ruins
 3 The Problem
 4 Dune Voices
 B1 Raerona
  2 I'm Always A Prinlaws Boy
  3 Mansion Tension
  4 Dog Star

前項のアーニー・グレアムで2000円超の高級品には手を出さねーと書いているくせに
ジョン・セント・フィールドのLPは税込み2700円程の最高級品価格で購入しました。

このオヤジの事は全く知りませんでしたがレコード屋で手にとったら帯が付いていて
そこに印刷された 「Scottish acid-folk singer」 と 「limited edition 500 copies」 の文字に反応。
きっとすげーまぼろし度の高いフォーク作品だと思い発作的に購入です。

そんな訳でかなり期待して針を落としたのですがこれはアシッド・フォークじゃないなぁ。
ところどころ儚げなアコースティック・ギターのアルペジオで迫る部分はあるのですが
1曲通して弾き語りの曲は無く全体的に地味目のフォーク・ロック作品という感じです。
ヴォーカルは端正でちょっとソウルフル。 バックの演奏もしっかりしています。

シンセサイザーの使用やA3の長いフルート・ソロなんかにはプログレ色もありますし
風の音の効果音をバックにテープ逆回転ヴォーカルが乗っかるサイケなA4もあります。
B4なんか活きのいいロックン・ロールで中々つかみどころの無い作品ですが
このテの怪しい盤特有の霧の向こうから浮かび上がるような雰囲気があって良いのです。

本作には彼のプロフィールやディスコグラフィーも載ったブックレットもついていて
しっかりした作りのくせに曲名表記のあるB5 「Sleeping In Bracken」 が収録されていません。
さすが韓国盤。 やる事がひと味もふた味も違いますねぇ。

ブックレットによると録音は1971年で1975年にスペインのみで発売された作品のようです。
そしてこの人 ジャッキー・レヴィン名義で1990年代なかばから沢山CDも出しています。



PassTheDistance.jpg
SIMON FINN 「PASS THE DISTANCE」 (1970)
加 no label (CD/2001?)
 1 Very Close Friend
 2 The Courtyard
 3 What A Day
 4 Fades (Pass The Distance)
 5 Jerusalem
  6 Where's Your Master Gone
  7 Laughing 'Til Tomorrow
  8 Hiawatha
  9 Patrice
 10 Big White Car

そしてこちらは真のアシッド・フォーク。 サイモン・フィンの強力な1枚。
この人Finnという苗字からしてアイルランド人かも知れませんね。

ジャケ裏に印刷されたメイド・イン・カナダの文字が海賊盤臭を放つ怪しいつくりで
後はただ曲名が印刷されているだけで作者や演奏者のクレジットも一切無い徹底ぶり。
この有り難いつくりに見合うだけの内容を誇る孤高度の高いアルバムですねぇ。

何といっても不安定で自己陶酔したようなヴォーカルがヤバいですよ。
そして突然爆発して叫んだりしてしまい精神異常一歩手前のような迫力があります。

バックの演奏もその気満々のようでじわじわと妖しい雰囲気を煽る演奏の連続。
特にサイモン・フィン本人が弾いていると思われるアコギのストロークは音が汚くて最高。

最初美しいフルートが飛び出し必殺の室内楽フォークなのか?と思わせる3曲目は
途中から入るベースのチューニングが(わざと?)ずれていてトリップ度バツグン。
アコギと2本の笛による伴奏の9曲目は唯一穏やかな陽射しを思わせる美しい曲。
叫びヴォーカルが充分堪能できる5曲目と10曲目がハイライトですね。

シド・バレットのソロ作品と同系列のイッちゃっている作品なので
聴いているだけで現実へ戻ってこれなくなる危険性もはらんだ作品。 究極です。


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