1960年代アメリカン商業フォークの最高峰ニュー・クリスティー・ミンストレルズ。
安い中古LPを見かける度テキトーに購入していたら
いつの間にか10枚以上もレコード棚に収まっているという有り様です。
今回はその中から何枚か選んでみましたが
彼らを聴いていくと米国商業フォーク界の奥深さ(浅さ?)がよーく分かります。



THE NEW CHRISTY MINSTRELS 「RAMBLIN'」 (1963)
米 COLUMBIA CS 8855 (LP)
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 A1 Ramblin'
  2 Mighty Mississippi
  3 Hi Jolly
  4 A Travelin' Man
  5 Down The Ohio
  6 The Drinkin' Ground (The Muddy Road To Freedom)
 B1 Green, Green
  2 Rovin' Gambler
  3 Wagoner's Song (Land Of The Sacramento)
  4 My Dear Mary Anne
  5 Ride, Ride, Ride
  6 Last Farewell
彼らの代表曲である 「Green, Green」 収録のこれは(たぶん)4thアルバム。
分厚く元気なコーラスにギターやバンジョーの伴奏が基本的な構成ですが
曲によってはドラムスなども入って ポップスとフォークの中間といった感じです。

初期の彼らは音楽監督のランディ・スパークス (このオヤジもメンバーのひとり) の
厳しい厳しい指導によって爽やかなコーラス&爽やかな笑顔という芸風を確立。
貨物列車に楽器を持って無理な体勢でへばりつきながらも笑顔を絶やさないという
ナイスなジャケット写真こそが彼らの爽やかな芸風を物語っております。

小学校の音楽教科書にも登場してしまう程の必殺の名曲B1 「Green, Green」 は
元気で楽しげなサウンドに一緒に歌っちゃったりするけど聴き終わってふと悲しいという
1960年代アメリカン・フォークを代表する全人類必聴レベルの曲です。

「Green, Green」 のメイン・ヴォーカルはガラガラ蛇のような汚い声のバリー・マクガイア。
このオヤジはその後独立して1965年に出したフォーク・ロック・サウンドのシングル
「Eve Of Destruction (明日なき世界)」 が大ヒットしております。

ハイウェイメンの 「漕げよマイケル」 ピーター・ポール&マリーの 「パフ」
森山良子の 「今日の日はさようなら」 マイク真木の 「バラが咲いた」 なども
「Green, Green」 と同レベルの強力フォーク・ソングなので
皆で一緒に歌っておかないといけませんね。 さあ歌声喫茶へレッツ・ゴー!



THE NEW CHRISTY MINSTRELS 「MERRY CHRISTMAS !」 (1963)
米 COLUMBIA CL 2096 (LP)
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 A1 Beautiful City
  2 Tell It On The Mountain
  3 One Star Christmas Wishes
  4 The Sheperd Boy
  5 Sing Hosanna, Hallelujah
 B1 Sing Along With Santa
  2 It'll Be A Merry Christmas
  3 Tell Me
  4 A Christmas World Parson Browe
    (Our Christmas Dinner)
  5 Christmas Trees
このクリスマス用のアルバムは 「Ramblin'」 に続く5thアルバムと思われます。
クリスマスっていう事で元気の良い曲よりもスローな曲が多く収録されているのですが
このテのアルバムにありがちな鈴がシャンシャンとか鳴る曲が入っていないし
大げさなオーケストラで盛り上げる曲も無いのであまりクリスマスっぽく無いです。

そしてここで最も注目すべき点はジーン・クラーク(!)がジャケットに写っている事です。
それだけでもこれは何としてでも手に入れなければいけないアルバムなのです。

他のメンバーがありったけの笑顔をふりまいているというのに
ジーン・クラークは1人だけひきつった笑みを無理矢理作っていますねぇ。
これではランディ・スパークスの推し進める芸風からは遠い遠い所にいますよ。
てめぇ爽やかな笑顔が作れねーんじゃこのグループにいてもらう意味がねーんだよ!
ゲーノー界にいたいんだったら満面の笑みを浮かべてみやがれ!
笑顔を作れないヤツはグループから抜けてもゲーノー界にいられないようにしてやる!
と確執があったかどうかは知りませんが・・・
いやきっとそれが原因でジーン・クラークは解雇されてしまったのです。

ジーン・クラークはその後バーズ〜ディラード&クラーク〜ソロなどで活躍。
1991年に死亡するまでずっとゲーノー界にいるという皮肉な(?)結果となりました。
さて果たしてジーン・クラークの葬儀にランディ・スパークスは出席したのでしょうか。



THE NEW CHRISTY MINSTRELS 「CHIM CHIM CHER-EE」 (1965?)
米 COLUMBIA CS 9169 (LP)
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 A1 Chim Chim Cher-ee
  2 We'll Sing In The Sunshine
  3 He's A Loser
  4 Kisses Sweeter Than Wine
  5 Springtime
  6 It's Gonna Be Fine
 B1 A Little Bit Of Happiness
  2 Downtown
  3 The Rounder
  4 Lark Day
  5 Cotton Fields
  6 Freedom
ニュー・クリスティー・ミンストレルズを使って更に金儲けを企んだランディ・スパークスは
とうとう最終手段に打って出て1965年頃グループの権利ごと
どっかの悪徳プロダクションに売り飛ばしてしまったようです。
この商談で少なくとも100万円(安っすぅー)はヤツの懐に入ったはずです。

この人身売買の成立によりグループは拘束状態で働かせられたに違いありません。
その働きぶりはLPの発表枚数にも表れており これはすでに9枚目なのかな?

更にこの時期からジャケットは変な絵やイージー・リスニングばりの写真に変わりました。
全盛期のピンク・レディーの如きあまりにもハードなスケジュールをこなすために
メンバー達は強制的にヒロポンとか打たれて目の下に隈を作ってたんだろうね。
そんなまるで死人のようなメンバーの写真は使えなくなったのでこんなジャケなのです。
・・・とこれは又もやの無茶苦茶な想像で書いているので信じないよーに。

しかしランディ・スパークスの手を離れたおかげでアルバムの内容は良くなりました。
それまではランディ・スパークスの作ったどーでもいいような曲の収録も多かったのですが
本作は良いメロディーの曲ばっかりの選曲だし バックの使用楽器も多彩になり
これぞ最高峰のアメリカン商業フォークといえるサウンドです。

映画 「メアリ・ポピンズ」 の主題歌(挿入歌?)の悲しげなワルツA1。
柔らかな歌声の女性メイン・ヴォーカル&ボサノバでソフト・ロック・ファンも必聴のA2。
有名曲A4のカバーはマカロニ・ウエスタンのエンディング・テーマみたいな仕上がり。
ビーチ・ボーイズやC.C.R.もやっている名曲B5は
分厚いコーラスにバンジョーとタンバリンの絡み具合が最高だしねぇ。
更にエレキ・ギターの入ったフォーク・ロック・タイプの曲などもあります。

僕はこのアルバムはディスク・ユニオンで税込み630円で購入したのですが
こんな素晴らしい内容でこの価格とは米国商業フォークは完全になめられています。
ディスク・ユニオンよ次からは2000円くらいつけときなさい。 いや マジで。



THE NEW CHRISTY MINSTRELS 「THE WANDERING MINSTRELS」 (1965?)
米 COLUMBIA CS 9184 (LP)
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 A1 Wimoweh (The Lion Sleeps Tonight)
  2 The Girl From Ipanema
  3 Tie Me Kangaroo Down, Sport
  4 Guadalajara
  5 Lovely Greensleeves
  6 Can You Do The Can-Can ?
 B1 Everybody Loves Saturday Night
  2 Sweet Sorrento
  3 Live! Live! (Havah Nagilah)
  4 Go, Lassie, Go
  5 Yamao Toko No Uta
  6 Song Of The Wandering Minstrels
これは 「Chim Chim Cher-ee」 の次のアルバムと思われます。
ギターやバンジョーを抱え様々な民族衣装を着たジャケットが物語る通り
フォーク・ソング世界一周旅行みたいなとっても健康的な内容のアルバムです。
「Chim Chim Cher-ee」 と同様のバラエティーに富んだサウンドが聴けますが
こちらも選曲は有名な曲が多くて2000円レベルのアルバムになっております。

けたたましいドラムにバンジョーとホーンの絡みがかっこ良いA1 「ライオンは寝ている」。
全体を覆うオルガンの音がイカしたムード・ミュージックなボサノバA2 「イパネマの娘」。
運動会の徒競走のバックによくかかるA6で最高潮に興奮してA面が終了。
優しげなコーラスで迫る感じがブラザーズ・フォーみたいなB2 「帰れソレントへ」。
こちらも優しいコーラスがたまらないB4は 「Wild Mountain Thyme」 のタイトルで有名。

そして決定的なのがB5 「山男のうた」 でしょう。 ビミョーに危うい日本語で歌ってます。
「Yamao Toko No Uta」 と区切りがおかしい曲名表記はご愛嬌。
バンジョー・ロールと玩具ピアノの音色が最高のマウンテン・フォークに仕上がっています。
僕はこの曲を聴いて日本の愛唱歌の放つ美しさやかっこ良さを再認識した次第です。
うーんアレンジ次第でどうにでも聴こえるっていう噂もありますが。
いや それを差し引いても 「山男のうた」 は日本が生んだ最高峰レベルの曲ですよ。
この曲って作者不詳って事になっているけど 実はヨーロッパの民謡に
日本語詞をつけただけだったりして・・・そんな感じもするメロディー展開だなぁ。



THE NEW CHRISTY MINSTRELS 「NEW KICK !」 (1966?)
米 COLUMBIA CS 9342 (LP)
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 A1 Homeward Bound
  2 I Want Hold Your Hand
  3 Highflyin' Bird
  4 Blowin' In The Wind
  5 Raindrops
  6 Southern Comfort
 B1 Flowers On The Wall
  2 A Corner In The Sun
  3 What The World Needs Now
  4 Beautiful
  5 These Boots Are Made For Walkin'
当時のヒット曲をカバーするという とっても安易な企画盤。
1962年の1stから4年にしてすでに12枚目(くらい)という末期症状ぶりも凄いです。
ジャケットの近未来ファッションの意味不明さもインパクトがあるような無いような。

これ以降の彼らは更に末期症状な イタリア語で歌ったアルバムや
モータウン・カバーのアルバムとか 再びクリスマス・アルバムとか色々ありますよ。
1970年代のアルバムも見かけた事があるのですが高かったので購入しませんでした。
その見送ったアルバムはジャケットに写るメンバーが4〜5人になっていて
日本人の伊東きよ子(だと思う)もメンバーに写っていました。

さてこのアルバム エレキ・ギター ベース ドラムス オルガンなどをバックに配した
軽快なフォーク・ロック・サウンドを中心に展開されて もうフォークとは呼べませんね。
フォーク・ロックに分厚いコーラスが被さったサウンドといえばママス&パパスを連想。
しかしコーラスの絡み具合がママス&パパス程複雑では無いので雰囲気は違いますね。

疾走感のあるA4はかなりかっちょ良い仕上がりでベスト・トラックでしょう。
B3あたりは歌謡ポップスですねぇ。 良く言えばソフト・ロックってゆーヤツですか。
かと思うと 女性メイン・ヴォーカルのスロー・ナンバーB4は
バックにバンジョーとハーモニカが入りヒジョーに美しい響きを持っております。
こーゆー素敵な曲がさりげなく入っていたりするんで やめたいけどやめられない。
又彼らのアルバムを見かけたら購入しちゃうんでしょうね。



「STAR FOLK VOL.2 WITH BARRY McGUIRE AND FEATURING MEMBERS
 OF THE NEW CHRISTY MINSTRELS」 (1965?)
 米 SURREY S-1010 (LP)
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 A1 Banjo
  2 Town And Country
  3 Another Country
  4 Love Song
  5 The Way You Are
 B1 Doo Dah
  2 One, Two, Three
  3 Good Times Is All Done Now
  4 Gold Wedding Ring
  5 Little Boy
こちらはジャケットにニュー・クリスティー・ミンストレルズの文字を発見したので購入。
木に登ってまでギターを弾かなければいけないその意図がよく分かりませんが
結果この芸風がそそるジャケットに仕上がっていて購入に走ってしまったのです。

ジャケットにはバリー・マクガイアの名前がでっかっく印刷されていますが
彼のソロ・アルバムでも無いようで 彼の汚い声が全曲メイン・ヴォーカルでもないし
ジャケット写真にも彼らしき人物が見当たらないという念の入れよう(?)です。
これはスター・フォークというグループのアルバムなのですかねぇ。
更に発表年も分からないのですが1965年頃のアルバムだと勝手に思っています。

ニュー・クリスティー・ミンストレルズと比べると分厚いコーラス部分が少ないですね。
B2 B4 B5などはピーター・ポール&マリーを思わせる清楚なフォークですが
どこにでもありそうなカレッジ・フォークなので買うとしたら1500円が限界でしょう。
ちなみに僕は購入に迷ったあげく2500円も出してしまいましたよ。
そそるジャケットのせいで完全に騙されてしまいました。

裏ジャケにはSURREYのカタログがずらーっとジャケ写付きで載っています。
ホイト・アクストンやグレン・キャンベルなどのフォーク・シンガーから
ジャズ ブルース イージー・リスニングのアルバム そしてウイーン少年合唱団まで
無茶苦茶なラインナップが米ゲーノー界の奥深さを感じさせてれるレーベルです。
ふむふむ スター・フォークのVOL1も出ておりますね。 もう騙されないぞ。


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