STEELEYE SPAN 「PLEASE TO SEE THE KING」 (1971) 米 SHANACHIE 79075 (CD/1990)
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スティーライ・スパンは彼らを紹介するどの文章を見ても 最初の3枚が名作とされているので 代表で2ndを取り上げてみましたが 1st〜3rdまとめてレヴューしちゃいます。 フェアポート・コンベンションを脱退したAshley Huchings。 アイルランドのスゥイニーズ・メン出身のTerry Woodsとその妻のGay Woods。 フォーク・デュオとして活動していたMaddy PriorとTim Hart というメンツで1970年に1st「Hark ! The Village Wait」を発表します。 2ndではGay & Terry Woodsが脱退し フォーク・シンガーのMartin Carthyと マルチ・プレイヤーのPeter Knight(メインはフィドル)が加入しております。 3rd「Ten Man Mop Or Mr. Reservoir Butler Rides Again」も2ndと同じ布陣です。 Ashley Huchingsのいたフェアポート・コンベンションは ロック・バンドがトラッドでもやってみるかーという姿勢が感じられるのですが スティーライはトラッドをエレキ楽器でやるという目的のために集まったバンドでしょう。 おかげで1st〜3rdはどれをとっても楽曲自体に暗く重たい空気がある上 ピリピリとした緊張感のある演奏が展開される体罰系アルバムになっています。 1stはアイルランド勢の醸し出すのどかな風情も多少あり ドラムスも入っているので3枚中一番とっつきやすいのかな。 2nd 3rdはドラムレスの非常にストイックなトラッド求道アルバムで その完成度は凄いとは思うのですが これはキッツいなぁ。 まともなポップス・ファン(?)は手を出してはいけません。 しかしこのキツさに耐えて無理してでも聴いておけば 無伴奏トラッドばっかり集めた最高に体罰なオムニバス盤なども すんなり聴ける体になれる・・・わけ無いか。 |
MADDY PRIOR & TIM HART 「SUMMER SOLSTICE」 (1971) 米 SHANACHIE 79046 (CD/1991)
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Maddy Prior & Tim Hartでのアルバムはスティーライ結成前に2枚あるのですが スティーライが体罰トラッドをバリバリやっている最中に この2人で息抜きで出した(?)アルバムがこれです。 収録曲はスティーライ同様暗ーいトラッド曲ばかりですが のどかでアコースティックな肌触りがあり ほっとさせてくれますね。 1曲目の「False Knight On The Road」をスティーライの2nd収録の同曲と聴き比べれば 違いは歴然・・・ってメロディーも歌詞も違う曲のような気がするけど。 英国3大トラッド・バンドはフェアポート・コンベンションにSandy Denny ペンタングルにJacqui McSheeと 素晴らしい女性ヴォーカリストを擁していたのですが スティーライの歌姫Maddy Priorは3人中一番田舎臭い歌声なので 彼女にはこういったのどかなバックのサウンドの方が合っていると思います。 しかしこのアルバムで僕が一番好きなのはアコギにストリングスが絡み 優しげな陽射しを思わせる8曲目で 歌っているのはTim Hartの方です。 |
BOB JOHNSON & PETER KNIGHT 「THE KING OF ELFLAND'S DAUGHTER」 (1977) 英 EDSEL EDCD 342 (CD/1991)
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スティーライ・スパンは3rd発表後 体罰サウンドの元凶であったAshley Huchingsが脱退。 Martin Carthyも抜けてソロ活動に戻り 4thからBob JohnsonとTim Hartが加入。 その後はもっとロック〜ポップス寄りのサウンドに変化して行く事になります。 そのロック時代を支えていたBob JohnsonとPeter Knightが作ったアルバムは ヴォーカルに1960年代〜70年代前半の英国音楽シーンを彩った人達をゲストに迎え 曲間にナレーションも入ったロック・オペラ作品です・・・たぶん。 ポップなロック曲が中心で ミュージカル風な大げさな曲も入っておりますが ここでの聴きものは何といってもメアリ・ホプキン様の歌う2と9です。 両曲ともアコースティック・タッチの可愛い曲だし これはたまりませーん。 やはりメアリ様こそ英国最高峰の女性シンガーなのです。 その他のヴォーカルのヤツがソウルフルで濃いのばっかりなので メアリ様の清楚な歌声がより一層美しく聴こえるのかなぁ。 それにしてもメアリ様はじめ皆が忘れかけていたミュージシャンを呼び寄せた Bob JohnsonとPeter Knightの人選のセンスは最高です。 いや きっとレコード会社かプロダクション主導の人選でしょうね。 |
GAY AND TERRY WOODS 「TENDER HOOKS」 (1978) 英 COOKING VINYL GUMBO CD 019 (CD/2000) | ||
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スティーライ・スパン結成の首謀者でありながら1stだけに参加して あれーちょっと違うぞ こんなトラッド学者集団みたいなヤツらとはやってやれねーよ。 と素早くアイルランドにバックれたウッズ夫妻。 Woods Band名義で1枚出した後Gay & Terry Woodsとしても何枚か出しておりますが 1978年のこの4thは昨年やっと再発されました。 1曲目から軽やかで心地良いフォーク・ロックじゃーないですか。 これはいい! Gay Woodsがほとんどの曲でメイン・ヴォーカルをとっていて 彼女の素直な歌唱に対し Terry Woodsのヨレた歌声がたまに登場。 全体的にも爽やかな西海岸サウンドが幅を利かせていて アイルランドの寒さやブリティッシュ・フォークの暗さはほとんど感じられないので そのテの音を期待すると肩透かしをくらいます。 このアルバム発表後音沙汰の無かったTerry Woodsですが 1980年代に突然ポーグスに加入。 その失態ぶり(?)は第5号に書いてあります。 今回ソロ作を取り上げなかったAshley Huchingsはスティーライ脱退後 1960年代に体罰アルバムを多数発表している女性トラッド・シンガーShirley Collinsと 活動を共にし かなりヤバいトラッド研究アルバムから聴きやすいのまで大量に制作。 Maddy Priorも面白いアルバムを沢山出しているし ・・・スティーライ周辺を追っていけば本当に怖いもの無しですよ。 スティーライ本体は1978年に解散するものの すぐに再結成。 解散したかと思いきやすぐに復活するのは英国フォーク界の奥の深い所(?)で フェアポート・コンベンションもペンタングルも負けてなるものかと競って解散〜再結成しています。 |