英国のオヤジ・ミュージシャンにとって
デュエットしたい相手第1位(勝手に決めました)ことカースティー・マッコール。
2000年12月 メキシコにてモーター・ボートに轢かれて死亡!
僕は全アルバムを所有してはいないのですが レコード棚を見たら5枚ありました。
という事でその5枚全部レヴューして追悼いたします。


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KIRSTY MacCOLL 「THE ESSENTIAL COLLECTION」 (1993)
英 STIFF STIFFCD 17 (CD)
 1 There's A Guy Works Down
   The Chip Shop Swears He's Elvis
 2 A New England
 3 Patrick
 4 Eighty Year Old Millionaire
 5 See That Girl
 6 Until The NIght
 7 Just One Look
 8 He Thinks I Still Care
 9 They Don't Know
 10 Turn My Motor On
 11 Please, Go To Sleep
 12 Terry
 13 Quietly Alone
 14 Teenager In Love
 15 A New England (12"version)
 16 Terry (12"version)
 17 There's A Guy Works Down
    The Chip Shop Swears He's Elvis
    (country version)

 これは彼女の初期音源(1979年〜1985年)を収録したベスト盤。

 僕が最初に彼女の曲を聴いたのは 1984年か85年でした。
 NHK FM クロスオーバー・イレブンから流れてきた「A New England」。
 ぶっとばしのギター・ポップ・ソングであるこの曲を聴いた僕は
 軽快なギターのキラキラ輝くようなフレーズにイチコロでした。

 1987年にはポーグスの「Fairytale Of New York」にゲスト・ヴォーカルで参加し
 ただ者ではない素晴らしい名唱を聴かせてくれ もっと聴きてーと思いましたが
 彼女のアルバムは どこのレコード屋にも置いてなかったのでした。

 実際彼女はただ者では無く 父親は1950年代から英国フォーク復興のため
 自ら歌い 様々な活動をしていたイワン・マッコール。
 更に旦那はプロデューサーのスティーブ・リリーホワイトだったりするんです。

 1stアルバム「Desperate Character」は 売れないとあっという間に
 廃盤にする事で有名なポリドールから1981年に出ていたようで
 今になってたまに中古盤LPを見かけますが
 3500円位はついているので僕は永遠にパスです。

 このベスト盤にはポップで甘酸っぱいロックが多く収録されています。
 各曲が2分30秒から3分っていうコンパクトな曲っていうのもいいですね。
 パブ・ロックの要素も感じられ 初期のエルビス・コステロから
 攻撃性を少し引いたようなサウンドとでも言えばいいのでしょうか。
 あるいは1960年代のガールズ・ポップスのオムニバス盤を
 聴いているような感覚もありますね・・・そんなもん聴いた事は無いけどね。

 デビュー曲の9はトレイシー・ウルマンがカバーして大ヒット。
 「A New England」のロング・ヴァージョン15は良くも悪くも1980年代的。
 楽曲をぶった切りつなぎ合わせたパターンで元凶はデペッシュ・モードあたりか?


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KIRSTY MacCOLL 「KITE」 (1989)
英 VIRGIN KMLP1 (LP)
 A1 Innocence
  2 Free World
  3 Mother's Ruin
  4 Days
  5 No Victims
  6 Fifteen Minutes
 B1 Don't Come The Cowboy With Me Sonny Jim !
  2 Tread Lightly
  3 What Do Pretty Girls Do ?
  4 Dancing In Limbo
  5 The End Of A Perfect Day
  6 You And Me Baby

 この2ndは出てすぐ購入しました。 傑作です。

 ヴォーカル ギター ベース ドラムスという基本構成で
 シンプルで無駄の無いギター・ポップ・サウンドになっています。
 一部の曲ではホーンやバイオリンなども入るのですが
 「A New England」の世界をアルバム丸ごと展開したって感じです。

 このアルバムの感触は1987年に解散したザ・スミスに似ていますね。
 特に似ているのは疾走感のあるA1 A2 B2。 そしてモロ!な曲調のB5。
 そのスミスでギターを弾いていたジョニー・マーも曲作り&ギターで参加。
 A1なんかはヴォーカル・スタイルまでスミスのヴォーカル モリッシーみたいです。

 彼女はモリッシーのソロ作にもヴォーカルで参加していて
 マーとモリッシーの仲を取り持つ触媒になり得る唯一の人物だと思っていたのです。
 そんな彼女が亡くなってしまいスミスの再結成も永遠に無いとみました。
 ・・・再結成して欲しくないけど。

 適度に哀愁のあるメロディーもじわじわと胸を打ちます。
 さりげなく凄いとは こういうアルバムの事を言うのです。


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KIRSTY MacCOLL 「ELECTRIC LANDLADY」 (1991)
英 VIRGIN V 2663 (LP)
 A1 Walking Down Madison
  2 All I Ever Wanted
  3 Children Of The Revolution
  4 Halloween
  5 My Affair
  6 Lying Down
 B1 He Never Mentioned Love
  2 We'll Never Pass This Way Again
  3 The Hardest World
  4 Maybe It's Imaginary
  5 My Way Home
  6 The One And Only

 いきなり1曲目にラップも入ったダンサンブルな曲ですかぁ。
 あまり好きな世界では無いけど・・・かっちょいい曲で これはめちゃくちゃ良い!
 この後の展開を考えるとこの曲が彼女のピークだったのかなぁ。
 あるいは僕の彼女に対する興味のピークだったのかも知れません。

 3rd「エレクトリック・ランドレディ」はバラエティーに富んだ内容になっており
 数え切れない程の参加ミュージシャンがクレジットされていますね。
 名前の読み方さえ分からない(たぶん)南米〜中米の演奏家とか・・・アフリカかも。
 英・米からは前作に続きジョニー・マー。 ポーグスの面々。
 マーク・E・ネヴィン(フェアグラウンド・アトラクションね)などの名前があります。
 そしてA2の共作者にマーシャル・クレンショウ(!)を発見。

 使用楽器も訳分かりません。 「Conga Shekere Coros」「Bata(Iya)Achere」
 「Indian Ocarina」「Romanian Pan Pipe」・・・
 そんな世界音楽旅行のような内容のアルバムですが
 どの曲も非常に完成度の高いポップ・ソングに仕上がっております。

 ジャケットも彼女自身で描いたもので その多芸ぶりが伺えます。


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KIRSTY MacCOLL 「TITANIC DAYS」 (1994)
英 ZTT 4509-94711-2 (CD)
 1 You Know It's You
 2 Soho Square
 3 Angel
 4 Last Day Of Summer
 5 Bad
 6 Can't Stop Killing You
  7 Titanic Days
  8 Don't Go Home
  9 Big Boy On A Saturday Night
 10 Just Woke Up
 11 Tomorrow Never Comes

 彼女の歌声は松任谷由実をまろやかにして
 母性を膨らませたような感じなんだけど(分かりにくいなぁ。)
 そのヴォーカルを堪能するには一番いいのがこの4thでしょう。
 というのも全体的にバックのサウンドがあまり面白くないので
 おのずとヴォーカルを聴いちゃうアルバムなのです。

 うーん やっぱり僕の音楽の趣味の変化が
 つまんないアルバムだと思わせたのでしょうか。
 いい曲ばっかりなんだけど ちょっとカッチリ作り過ぎという感じもします。

 本作は前作のような訳の分からない楽器は登場しません。
 ネオ・アコースティック・タイプの曲やダンサンブルな曲 スローな曲が
 バランス良く配置されており大人のギター・ポップ・アルバムじゃないでしょうか。

 そんな中でも異色の ダブ風の10曲目が一番好きですね。
 ワウ&カッテイングのギターがかっこいいし パッパラ・コーラスも入るお徳な曲。
 しかしこういったタイプの曲は10分位は演奏して欲しい物です。
 長ければ長いほどじわじわノッてくるんでね。 ちなみにこちらは約4分です。

 なお第27号で絶賛したケイト・セント・ジョン様が2と5に管楽器で参加しています。
 両曲ともちょっとしか顔を出しませんが その絶妙な入り方は必殺です。


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KIRSTY MacCOLL 「TROPICAL BRAINSTORM」 (2000)
英 V2 WR1009872 (CD)
 1 Mumbo De La Luna
 2 In These Shoes ?
 3 Treachery
 4 Here Comes That Man Again
 5 Autumngirlsoup
 6 Celestine
 7 England 2 Colombia 0
  8 Nao Esperando
  9 Alegria
 10 Us Amazonians
 11 Wrong Again
 12 Designer Life
 13 Head

 遺作となってしまった5thはジャケットとタイトルが示す通り
 全編にキューバあたりのトロピカルなムードが漂っております。
 マンボにボサノバ サンバ サルサのリズムがこれでもか!と迫って来ます。

 参加ミュージシャンの数は少なく 打ち込み中心でやっていますが
 彼女のヴォーカルの持つ力なのか 不思議と人工的な感触はありません。

 「Electric Landlady」で見せた中・南米サウンドの部分を
 もう一歩踏み込んでやってみたんだと思うけど 前作からの流れから考えると
 きっと この路線はこれ1枚で終わりにして完結するつもりだったのでしょうね。

 次のアルバムでは何をやるつもりだったか今や知る由も無いけど
 僕としてはアイリッシュ・トラッド・タイプの曲がもっと聴きたかったな。
 ・・・ポーグスの「Fairytale Of New York」はホントに名曲ですよ。

 彼女のアルバムを5枚聴いてみて思うのは
 どんなタイプの曲も高いレベルでこなしていて 音楽職人ぶりが伺えました。
 数多い他アーティストへのヴォーカル参加にしても名唄ばっかりだったしね。

 それではみんなで合掌。 ああ僕も彼女とデュエットしたかった。


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