レイ・デイヴィス アラン・ハル デイブ・カズンズ
これが僕が勝手に決めた英国3大情けない声ロック・ヴォーカリストだ!
声は情けないけど彼らの音楽はどれも素晴らしいですぜ。



  
THE KINKS 「PRESERVATION ACT 1」 (1973)
米 KONK/VELVEL 63467-79721-2 (CD/1998)

  1 Preservation (single)
  2 Morning Songs
  3 Daylight
  4 Sweet Lady Genevieve
  5 There's A Change In The Weather
  6 Where Are They Now ?
  7 One Of The Survivors
  8 Cricket
  9 Money & Corruption/
    I Am Your Man
 10 Here Comes Flash
 11 Sitting In The Midday Sun
 12 Demolition
 13 One Of The Survivors (single edit)
 情けない声に関しては定評のある(?)
 キンクスのヴォーカルといえばレイ・デイヴィス。

 どーして情けなく聴こえてしまうのか考えると・・・
 これは3人とも共通するのですが 歌はヘタクソでもなく
 かといってそんなに上手くもないです。
 鼻詰まりぎみで 発音に歯切れがなくもたーっとしている。
 肺活量が少なそうで同じ音を長く維持できない。
 といった所でしょうか。

 さてキンクスのプリザベイション・アクト1。
 このアルバムはロック・オペラ作品だそうで
 各曲が繋がったストーリーになっているようですが
 そこら辺は英語をしっかり理解できる人とディープなキンクス・マニアだけが楽しめる部分であり
 一般のロック・ファンはレイ・デイビスの情けない声を堪能するアルバムになっています。

 この時代は 写真にもあるようにホーン・セクションや女性コーラスなどが演奏に参加しており
 曲調も演劇的だったりするのですが なぜか全然ゴージャスには聴こえませんね。
 むしろ 青森出身の旅回り一座(?)的なチープさがあります。
 このCDはリマスター盤なんですが 本当に手を加えたの?っていう音のこもり方も
 ゴージャスに聴こえない要因ですかね。

 その演劇的な曲と キンクスらしいハードなエレキ・ギターがかっこいいロックな曲も入ってますが
 印象的なのはのどかな曲調の 4 8 11 あたりです。
 11なんて情けない声と美しいメロディーにフルートなども絡み
 ひなたぼっこしているような名曲じゃないですか。

 1と13はCDのボーナス・トラックとなっています。
 なお女性コーラス隊には第10号で紹介したナチュラル・アコースティック・バンドの歌姫
 クリシア・コクヤンも名を連ねておりますので そちらのファンの方も必聴ですね・・・聴き取れねー。


  
LINDISFARNE 「NICELY OUT OF TUNE」 (1970)
英 VIRGIN/CHARISMA CASCD 1025 (CD)

  1 Lady Eleanor
  2 Road To Kingdom Come
  3 Winter Song
  4 Turn A Deaf Ear
  5 Clear White Light-Part 2
  6 We Can Swing Together
  7 Alan In The River With Flowers
  8 Down
  9 The Things I Should Have Said
 10 Jackhammer Blues
 11 Screcrow Song
 12 Knackers Yard Blues
 13 Nothing But The Marvellous Is Beautiful
 リンディスファーンで田舎臭い歌声を響かせていた
 アラン・ハルは1995年に死んじゃいました。
 しかしニュースにもならず 僕はつい最近まで彼の死を知らずに
 アランの声って情けなくていいよなーと思いながら
 彼の残した音楽をダラダラと聴いていたのでした。
 朝日新聞あたりは死亡者欄に登場させなければいけない位の
 情けない声ロック界の重要人物です。

 そしてこれがリンディスファーンの1stアルバムです。
 シングル・ヒットもしたという1曲目は
 哀愁を含んだメロディーが美しい曲で
 どんよりとした英国の空を思わせます。
  実はこのフェアポート・コンベンションみたいな曲がアルバム中一番の異色曲であり
  基本は楽しげなフォーク・ロックというイメージがあるバンドです。

  フィドルやマンドリンやハーモニカなどが登場し カントリー調の曲も多いですが
  不思議とカントリーっぽさやトラッドっぽさはほとんど感じられないですね。
  一部では彼らをトラッド・バンドと紹介していますが どこがトラッドなんだか・・・。

  スロー〜ミディアム・テンポの3や6や11ではアラン・ハルの情けない声が
  より一層情けなく響きますが いわゆるヨレヨレのダーラダラな声ではありません。
  かなり一生懸命歌っております。 頑張りすぎて余計調子が外れております。
  6のサビで盛り上がるコーラスも適当で良いですね。

  どの曲も派手ではないけど心に染みる綺麗なメロディーを持っており
  妙にフレンドリーな素晴らしい内容のアルバムです。
  12と13はボーナス・トラック。 それぞれ5と1のシングルのB面だった曲です。
  5のシングルは全英NO1になったらしいですよ。



  
ALAN HULL 「PIPEDREAM」 (1973)
英 VIRGIN/CHARISMA CASCD 1069 (CD)

  1 Breakfast
  2 Justanothersadsong
  3 Money Game
  4 STD 0632
  5 United States Of Mind
  6 Country Gentleman's Wife
  7 Numbers (Travelling Band)
  8 For The Bairns
  9 Drug Song
 10 Song For A Windmill
 11 Blue Murder
 12 I Hate To See You Cry
 シュルレアリスムの巨匠ルネ・マグリットの絵を
 ジャケットにしたアラン・ハルのソロ・アルバム。

 リンデスファーンの1stでは1曲目に
 フェアポート・コンベンションしまくる曲を
 持って来ていましたが
 こちらの1曲目はグラム・ロック時代の
 デビッド・ボウイみたいな曲です。
 ソロ・アルバムで自由に出来るので当時最新の
 トレンドを取り入れたつもりなのでしょうか。
 これが見事にアラン・ハル節になっちゃっていて
 声もかなり情けないです。

 全体的にはリンディスファーンとさほど変わらぬアコーステイックな響きのアルバムになっています。
 違いといえば多少バックの演奏が繊細で都会的に聴こえるくらいでしょうか。
 もちろんどの曲も美しい旋律のもとに成り立っており
 特にインストの4ののどかなハーモニカのメロディーなんかたまりませんね。

 ソロ・アルバムらしく弾き語りの曲も入っていて6はアコギ・ガシャガシャ。
 12はピアノをバックに歌い上げています。
 12の裏声になるメロディーの部分では思いっきりはずしまくっていますね。
 自分で作曲しているんだから声が出ないんだったらキーを下げて作ればいいのに
 そんなの関係ねーよとばかりに歌い上げています。

 このCDは最近あまり見かけないけど見つけたら必ず購入しておきましょう。
 とても良いアルバムです。



 
STRAWBS 「BURSTING AT THE SEAMS」 (1973)
欧 A&M 540 936-2 (CD/1998)
 1 Flying
 2 Lady Fuschia
 3 Stormy Down
 4 The River
 5 Down By The Sea
 6 Part Of The Union
 7 Tears And Pavan
  8 The Winter And The Summer
  9 Lay Down
 10 Thank You
 11 Will You Go
 12 Backside
 13 Lay Down (single version)


 ストローブスのヴォーカリスト デイブ・カズンズの声もかなりの情けなさを誇っています。
 僕の中で今一番盛り上がっている情けないヴォーカルは彼で
 レイ・デイビス アラン・ハル以上に情けなく感じます。

 レコード屋に行くとストローブスはプログレのコーナーに入っていたりするのです。
 曲によってはプログレだと思って聴けば メロトロンの使用や凝った音作りがプログレなんだけど
 ストローブスの放つ香りは基本的には田舎臭いフォーク・ロックなのです。

 5や7のようなドラマティックな長尺曲はプログレッシブ・ロックと呼んでもいいでしょう。
 しかしデイブ・カズンズの情けない声の持つ力がこれらの曲さえも
 これこそ田舎パワー全開な曲じゃんと思わせてくれるのです。

 僕が一番好きな3はイーグルスのテイク・イット・イージーばりの軽快なカントリー・ロック。
 サビの高音部分で裏返っちゃうデイブの情けない声が最高の1曲。

 11〜13がボーナス・トラックになっていて11は Part Of The Union のB面曲。
 12は Lay Down のB面だった曲です。

 最後に最も基本的な事ですが・・・ストローブスにはヴォーカルをとるヤツが何人か居るようです。
 もしかすると僕がデイブ・カズンズの声だ!と思って書いている声は別のメンバーの声かも知れません。
 デイブのソロ・アルバムをゲットして確認しないといけませんね。



  
SANDY DENNY AND THE STRAWBS
「SANDY DENNY AND THE STRAWBS」 (1991)
英 HANNIBAL HNCD 1361 (CD)

  1 Nothing Else Will Do
  2 Who Knows Where The Time Gose
  3 How Everyone But Sam Was A Hypocrite
  4 Sail Away To The Sea
  5 And You Need Me
  6 Poor Jimmy Wilson
  7 All I Need Is You
  8 Tell Me What You See In Me
  9 I've Been My Own Worst Friend
 10 On My Way
 11 Two Weeks Last Summer
 12 Always On My Mind
 13 Stay Awhile With Me
 このアルバムは1973年に発表されたLPの改訂版CDです。
 ストローブスもサンディ・デニーも正式デビュー前の
 1967年の録音で構成されておりマニア向けですね。

 1973年当時は両者ともそれぞれ人気があり
 オリジナル・ジャケットを見ると2組が同等に扱われていますが
 1991年のCDとなると完全にサンディがメインになってます。

 アルバムの意味合いとしてはサンディのソロ・アルバム4枚と
 サンディがフェアポート・コンベンション在籍時のアルバム5枚と
 サンディがフェアポート脱退後結成したフォザリンゲイ1枚と
 サンディの3枚組アンソロジーBOXを全部聴いた人が
 購入すべきアルバムです。 僕もそれらを全部制覇してから手を出しました。

 バックの演奏がシンプルなフォーク・ロックで サウンド的には面白みは無いです。
 若き日の連中のヴォーカルを聴くためのアルバムですね。
 特にサンディの若々しい歌声は印象的です。

 デイブ・カズンズの方は歌よりも楽曲の良さのアッピールでしょうか。
 2と12以外はデイブ・カズンズ作となっております。
 まあアメリカン・フォークみたいな9あたりではかなり情けない喉を披露しています。
 後年のストローブスと比べてもこっちの方が渋いし情けない声ですね。
 普通は歳をとったら声がヨレてくる物なんですが彼にはそれが当てはまらないようです。

 しかしサンディ・デニーは1967年だと20歳位でしょうか。
 とっても苦労人な悲壮感漂う表情で歌っておりますね。
 単に元々老け顔なだけっていう噂もありますが。

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