ナイスな再発をするイカした再発レーベルはたくさんありますが、
ドイツのシャドックス・ミュージックもとてもナイスな再発レーベルの内のひとつです。
シャドックス社は英米だけでなく世界中のサイケデリック・ミュージックを網羅していて
カタログにはかなりディープでヘヴィーで珍奇なサイケ作品が並んでいます。
でも僕はディープでヘヴィーで珍奇なサイケはそんなに聴かないので、
フォーク〜フォーク・ロック寄りの聴きやすいのしか所有していませんけどね。


AllOnTheFirstDay.jpg
TONY, CARO & JOHN 「ALL ON THE FIRST DAY」 (1972)
独 SHADOKS MUSIC 021 (CD/2001)
1 The Snowdon Song
2 Eclipse Of The Moon
3 Meg II
4 Snugglyug
5 Apocalypse
6 Sargasso Sea
7 Swordsman Of Samoa
8 There Are No Greater Heroes
9 Waltz For A Spaniel
 10 Hole In My Heart
 11 Morrison Heathcliff
 12 Don't Sing This Song
 13 Homecoming
 bonus tracks
 14 All On The First Day
 15 Swirling Sphere
 16 Children Of Plenty
 17 Forever And Ever
 18 Ton Tons Macoutes

シャドックスのCD、まずは男性2名、女性1名の英国レア・フォーク、トニー・キャロ&ジョンを聴いてみます。
2013年の今、ここら辺のアマチュアに毛の生えたような英国レア・フォークに対する評価は、
オリジナルLPがレアというだけで、実際に出てくる音は大した事はない・・・という感じではないでしょうか。

確かに本作なども素人の作ったデモテープでも聴いているかの如くであり、こんなモノに金を出して
購入する意味がわからないっちゃーわからないし、かつては容易に聴く事ができなかったレアな作品も、
現在はCD化されて手軽に聴ける環境にあり、その環境は「未知なる妖しげなモノを聴いている感」を
薄めてしまいその音楽の響き方を変えてしまっている面もあるのではないでしょうか。

この響き方の問題を克服するためには、素人のデモテープ・レベルだな・・・とクールに判断するのはやめ
無理をしてでも、果たしてどんな音が出てくるのかワクワク感を持ちながら聴いてみる事ですね。 
でも何とか良いところを探そうと頑張って聴いても本当にカスにしか聴こえない場合もあるけどね!

本作もクールにかっこつけないで聴いてみると、1曲目から切ないメロディーが流れてきて、うおおぉー!
演奏のもたつき感や録音状態の悪さが逆に良くて、うおおぉー! 曲の終わりにダサいエフェクトがかかる
2曲目のダサさも逆に凄くて、うおおぉー! この冒頭の2曲で「未知なる妖しげなモノを聴いている感」と
「そういうモノを聴いている自分に酔っている感」が滲み出てきてその気にさせてくれて、うおおぉー!

8曲目などは、男性ヴォーカルの独特な節回しがインクレディブル・ストリング・バンドに近い感触があり、
インクレのアルバムにこの曲がこっそり入っていても気付かないレベルの高さ(?)が、うおおぉー!だし
可愛らしい女性ヴォーカルで聴かせる9曲目がまた良くて、もうそのテのファンにしたら即死級の
エコーのかかり具合いや完成度の低さが聴く者を混乱させてくれ、うおおぉー!なのです。

アコースティック&エレキ・ギター&ベース&パーカッション類に男女ヴォーカルという基本サウンドに
その他の楽器がたまに入る程度で、ドラムスが入らない構成のため結果的にフォークに聴こえるし
これはクールに冷静になんて聴いていられませんよ。 素人のデモテープ・レベルだろうが何だろうが、
この響きは本作にしかない響きですからね! ボーナス部分も本編と変わらぬ完成度の低さですよー。
 


SeeTheMorningAndNoSavageWord.jpg
MICK STEVENS
「SEE THE MORNING/NO SAVAGE WORD」 (1972/1975)

独 SHADOKS MUSIC 038 (CD/2004)
disc1: See The Morning  disc2: No Savage Word
1 Smile Again
2 Asher's Song
3 Beach Tree
4 Catherine
5 Burning
  6 Joe's Kaph
  7 Judiana
  8 Song Of The Riverspirits
  9 The Wheel
 10 Salotan Cinonrever
 1 Runaround
 2 Easy Love
 3 Little Miss Freedom
 4 Sometimes
 5 Holiday
  6 Angie
  7 As I Lay Me Down
  8 Some Kind Of Unholiness
  9 Park And Grinners
 10 Waiting For The Blues
 11 Across The Miles

こちらも英国レア・フォーク、ミック・スティーヴンスの1stと2ndの抱き合わせ商法の2枚組です。
何だか印象に残らず購入後数回聴いて放置プレイしていた作品ですが、久々に聴いてみたら
あれ?こんなに良かったっけ? 放置し、数年寝かせたおかげで熟成した・・・なんて事はないだろうけど。

1stの「See The Morning」の演奏は5曲目にフルート奏者が参加しているだけで、あとは全部
ミック・スティーヴンスの重ね録りになっており、アコギとエレキ・ギターに、ハーモニー・コーラスを多用した
ヴォーカルが乗っかるのが基本路線で、このサウンドならフォーク作品と言ってしまっていいかなぁ。
前奏なしでググッとくる柔らかなメロディーと歌声で迫ってくる1曲目が、僕のハートをガッチリ鷲掴み。
2曲目のインストは達者なアコギ演奏を聴かせてくれ、4曲目ではバンジョーも弾いており、良いですねぇ。

2ndの「No Savage Word」は弾き語りに近いかたちの曲もありますが、何人か演奏に参加しており、
ロックっぽさが加えられて、フォークというよりシンガー・ソングライター作品としての趣がありますね。
そして、さりげなくデイヴィ・グレアム作の有名曲であるインストの6曲目が入っているところなどは
英国の人らしいですねぇ。 このギター演奏、かなり上手いです。 あと9曲目もインストになっています。

1stも2ndもモノラルになっていて、音がクリアーではないので英国レア・フォークならではの
「何だか知らないけれど凄いものを聴いている感」が溢れ出すか?というと、なぜかほとんど感じません。
むしろメジャー・レーベルから出ている有名シンガー・ソングライターの作品と比べても何の遜色もなく、
人によってはシンガー・ソングライターの代表格であるジェイムス・テイラーなんかよりも良い!と思うかも。

・・・と思っているのは僕だけでしょうか。 いや実は僕の耳にはジェイムス・テイラーのヴォーカルが
とっても変な声に聴こえ、聴くに堪えないヒドい歌声だ!と決め付けてしまっているのです。
ジェイムス・テイラーも放置して数年寝かせたら熟成して良く響くかな?・・・仕方ない、寝かせるか・・・
 


OnADayOfCrystlineThought.jpg
PETE FINE 「ON A DAY OF CRYSTALINE THOUGHT」 (1974)
独 SHADOKS MUSIC 003 (CD/2001)
1 On A Day Of Crystaline Thorght
  (Band 1) Mumt I/Revelation/Prelude
        Mumt II/For Sam
  (Band 2) Mumt III/Meditations
  (Band 3) Mumt IV/Looking Ahead
  (Band 4) Sunrise
 2 Life
 3 Moo
 4 Bijinkies
 5 Rita

シャドックスは1990年代の終わり頃に活動を開始しており、本作はカタログ番号003と若い番号なので、
レーベル最初期のCDですね・・・なーんて、知ったふりをして書いていますが詳しい事は知りませんよ。
で、このピート・ファインはアメリカの方で、本作以前にザ・フロウというバンドでアルバムを出しています。
本作のオリジナルLPはレーベル名も番号もない自主製作盤で、ザ・フロウ共々プレス枚数の少ない
激レア盤だったようです。・・・なーんて、こちらも知ったふりして書いていますが、詳しく知りません。

組曲形式になっている1曲目では12弦ギターを基調にして、フルート、ストリングスなどが絡みます。
まあ組曲といっても各曲は繋がっておらず、(Band1)〜(Band4)までの4曲収録という感じになっています。
そしてヴォーカルも入りますが、インスト部分が多いため、サウンドトラック盤でも聴いているかのようですね。
ストリングスが入る事でしっかり作られている印象があり、それ程アンダーグラウンドな香りはしませんが、
ほぼ全編でバックに鳴り響く12弦ギターの金属的な響きがサイケデリックな空間力を増幅させてくれます。

2曲目以降はアコースティックとエレキを織り交ぜギターをガチャガチャ弾きながら歌う曲になっていて
こちらはサイケ・フォークといって良い音ですね。 「未知なる妖しげなモノを聴いている感」も放出され
となると当然「そういうモノを聴いている自分に酔っている感」も放出されるので酔ってしまいます。

ヴォーカルは少々ヨレ気味のピート・ファイン本人の他、美しい女性ヴォーカルも多く歌っています。
5曲目の「リタ」は12弦ギター&フルートによるインスト曲・・・かと思うと最後にその女性ヴォーカルが入り
ストリングスも絡み盛り上がるぜ! ついでにブチブチとノイズが入り、盤起こしのCDぶりを発揮だぁ!
ブチ・・・ブチ・・・ブチ・・・こんなノイズが入ると逆に興奮してしまう僕はやっぱりビョーキなのでしょうか?
 


Apache.jpg Inca.jpg
SATYA SAI MAITREYA KALI
「APACHE/INCA」 (1971/1972)

独 SHADOKS MUSIC 005 (CD/2000)
disc1: Apache
1 Ice And Snow
2 Black Swan
3 Color Fantasy
4 Voodoo Spell
5 Salesman
6 Music Box

  7 Love Is Our Existence
  8 One Last Farewell
  9 I'm Walkin' Solo
 10 Silk And Ivory
 11 Swim
 12 Revelation
 disc2: Inca
 1 Lights Of Dawn
 2 Thesis
 3 Knot The Freize
 4 Jesus Owns
 5 Sam Pan Boat

  6 Fearless Men
  7 Cheryl
  8 Country Girl
  9 Old Man
 10 King

出た!サタヤ・サイ・マイトレア・カーリ! この名前は何かハプニングを起こしてくれそうな名前だし、
「アパッチ」「インカ」というタイトルやジャケットの図柄もハプニングを起こしてくれそうな雰囲気があります。
いや、シャドックスがCD化している事自体既にハプニングで、それも1stと2ndの抱き合わせ商法の
2枚組っていうのが大いなるハプニングです。 ・・・と、無駄にハプニングを煽ってみました。

「サタヤ・サイ・マイトレア・カーリ」というのは芸名で、正体はアメリカ人のヤングでヒッピーな男性です。
基本はアコギを弾いて歌い、フォーク度高くなっています。 ヴォーカルはクセがなく聴きやすいですが
深くかかったエコーやこもった録音状態がかげろうの如くゆらゆらと揺れる感じを演出してくれますねぇ。

アコギ弾き語り曲以外にロックっぽい曲も入っており、1st「アパッチ」は弾き語りの曲が多いですが
2ndの「インカ」はロックな曲の割合が多くなっています。 ロックな曲はロック基本楽器であるギター、
ベース、ドラムスといった楽器による演奏のため、とてもオーソドックスなロック・サウンドに聴こえ、
1960年代のビート・バンド〜フォーク・ロック・バンドなんかを聴いているかのようでもありますね。

ただ、弾き語りの曲に関してはいっさいメジャー感が漂わず、これぞアングラ・フォークという感じなので
アングラなフォークの世界に浸りたい時などは本作はうってつけ。 何だこれ? 金払って聴くモンか?
などとは思わずに「未知なる妖しげなモノを聴いている自分に酔っている感」でたっぷり酔いましょう。
 


Sacros.jpg
SACROS 「SACROS」 (1973)
独 SHADOKS MUSIC 098 (CD/2008)
1 Aum
2 En Primavera
3 Manos Duras
4 La Realidad
5 Paloma De Plumas Blancas
  6 Diosa Del Mar
  7 Quetzalcoatl
  8 Cobre, Pobres, Viejos
  9 Su Herencia
 10 Iluso Que Sueñas

チリのサクロス(ローマ字読みの読み方適当シリーズ)。 何だか怖そうなジャケットが民族色を感じさせ、
フォルクローレ度高いインカ帝国サウンドが炸裂して混沌の世界へ導いてくれるのか?と期待は高まります。

ところが、出てきた音は少々サイケ風味のあるフォーク・ロックといった趣で、割とよくあるタイプの音ですね。
フォルクローレ色はそれ程無く、南米モノに共通したクセのないヴォーカルと優しげな雰囲気はありますが
混沌の世界へ導いてくれるまではいかず、オリジナルLPが激レアなのが本作のいちばんの売りでしょうか。

音の特徴としてはドラム・セットよりもパーカッションをポコポコやる曲が多く、ハーモニー・コーラスを多用し、
12弦ギターの音が印象的に響きます。 1973年作とは思えない1960年代を引きずった音でもあります。

聴き終えて印象に残る曲は少ないですが、柔らかいメロディーを持ったフォーク・タッチの6曲目は凄くて、
ぼんやりと漂う、あいまいで優しい光に包まれたような曲ですよ!・・・って何を言っているか意味不明ですが
とにかく必殺の名曲で、秒殺、瞬殺、即死ですね。 前奏や間奏でフルートらしき音も聴こえてくるし
この1曲のためにゲットすべき1枚!・・・とは言えないなぁ。 ホント他の曲が印象に残らな過ぎでねぇ。

まあ、レア度、期待度、実際の内容、すべてがパーフェクトのアルバムなんてそうそうありません。
そこで登場する「未知なる妖しげなモノを聴いている感」と「そういうモノを聴いている自分に酔っている感」。
これは聴く側の意識次第なので、意識を高めてサクロスを聴いている自分に酔いましょう、酔いましょう。
 


Blops.jpg
BLOPS 「BLOPS」 (2006)
独 SHADOKS MUSIC CD Box 080 (CD)

BlopsAgosta1970.jpg

disc1: BLOPS, Agosto 1970

SHADOKS MUSIC 058
1 Barroquita
2 Los Momentos
3 La Muerte Del Rey
4 Niebla
5 Vértigo
6 La Mañana Y El Jardin
  7 Santiago Oscurece
    El Pelo En El Agua
  8 Patita
  9 Atlántico
 10 Maquinaria
 11 Valle De Los Espejos (bonus track)

BlopsJulia1971.jpg disc2: BLOPS, Julio 1971
SHADOKS MUSIC 059
1 Que Lindas Son Las Mañanas
2 Pintando Azul El Mar
3 Manchufela
4 El Rio Donde Va
5 Esencialmente Asi No Mas
6 El Proclive Necesario
  7 La Rodandera
  8 Tarde
  9 Del Volar De Las Palomas
 10 Campos Verdes
 11 Pisandose La Cola
 12 Machulenco (bonus track)
BlopsMarzo1973.jpg disc3: BLOPS, Marzo 1973
SHADOKS MUSIC 060
1 Allegro Ma Non Troppo
2 Tartaleta De Frutillas
3 Locomotora
4 Pirómano
5 Sandokan

こちらもチリのバンド、ブロップス(ローマ字読みの読み方適当シリーズ)。
がっちりとした作りのボックスに3枚のCDが入った抱き合わせ商法(また抱き合わせ商法だ!)です。
3枚のCDは「1970年9月」などと年月がタイトルになっていますが、これらは彼らが残したアルバム
1st「Blops」(1970)、2nd「Del Volar De Las Palomas」(1971)、3rd「Locomotora」(1973)の3枚です。
なおCD1枚ずつにカタログ番号もついていますがバラ売りはしておらず、ボックス商法のみのようですね。

まず1st、これが凄い! ディス・イズ・南米サイケ・フォーク!といった趣で必殺に次ぐ必殺の連続ですよ。
インストの1曲目はフルートが炸裂し、もう大変! もの哀しく紡がれる2曲目はグロッケンスピールも絡み
もう、もう、大変! 3曲目以降も、もう、もう、もう、もう、とにかく大変で、ぬおおおおぉー! うぎゃーっ!
エレキ・ギターやドラムスが入る曲もありますが、ロックな感じは薄く、南米独特の優しげな雰囲気の中
アコギ&フルートという基本路線が全編を貫き、その凄さに卒倒しそうになります。 インスト曲が多くて
ヴォーカル入りは2、5、6、10、11曲目だけですが、でも母ちゃん、これ凄ぇよ・・・ただいま卒倒中です。

2ndは6曲目以外はヴォーカル入りで、フォーク度が後退し何だか歌謡曲っぽいサウンドになっています。
優しげな雰囲気はあるしフルートもたっぷり入り悪くはないのだけど1stと比べてしまうとちょっと弱いかなぁ。
そんな中でも、爽やかな朝の目覚めを思わせる室内楽フォーク・サウンドの8曲目にはやられました。
実際に朝の目覚めの瞬間にふっとこの曲が流れてきたら、メガトン級の爽やかさを味わえそうなので
これは明日の朝さっそく試して、メガトン級の爽やかなヤツになってみんなに笑顔をふりまいてやるぜ!

3rdはすべてインスト曲。 インストなので気合い入れて演奏をした結果、尺が長くなりました的な全5曲。
前2作ではあまり活躍していなかったキーボードの使用頻度が増し、プログレ・・・あるいはジャズ・ロックと
言ってもいいサウンドでしょうかねぇ。 そして相変わらずフルートはガンガン入ってナイス!です。
フォークっぽさはありませんが、聴いているとそのスリリングな演奏にはけっこう引き込まれますね。
特に最後の5曲目はブンブンうなるベースとオルガンが暴れまくるグルーヴィーなかっこいい曲で、
これは踊るしかないでしょう。 さあ、キミも100回くらいリピート再生にして、ブロップスで踊りまくろうぜ!

さて、3枚通して聴くとサウンドがだいぶ違うので、ホントに同じバンド?と思ってしまう事うけあいですが
1stでアコギ&フルートの必殺フォークにクラクラし、2ndでメガトン級の爽やさで笑顔をふりまき、
3rdで狂ったように踊りまくり・・・と、色々楽しめるじゃないですか。 つまりシャドックス社の作品には
今後も注目していかなければいけないのですが、抱き合わせ商法には騙されないようにしましょうね。
 

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