レコードというのはジャケットも魅力のひとつだというのに
再プレス盤や廉価盤などで変な売り文句がジャケットに直接印刷され
アートワークが損なわれているヤツに出会うとゲンナリしてしまいますよね。
ただ再プレスや廉価盤が出る作品は、よく売れる作品だから出るわけで
よく売れる作品・イコール・内容バツグンの名盤、って事です・・・よね?
つまりジャケットに直接変な売り文句が印刷されていれば名盤なので
見つけたら積極的に購入してゲンナリしたらいいじゃないですか。


Transformer.jpg TransformerBack.jpg
LOU REED 「TRANSFORMER」 (1972)
米 RCA AYL1-3806 (LP)
A1 Vicious
 2 Andy's Chest
 3 Perfect Day
 4 Hangin' 'Round
 5 Walk On The Wild Side
 B1 Make Up
  2 Satellite Of Love
  3 Wagon Wheel
  4 New York Telephone Conversation
  5 I'm So Free
  6 Goodnight Ladies

ジャケット左上に「BEST BUY SERIES」の文字が直接印刷されてゲンナリ!こと「トランスフォーマー」。
アメリカン・ロック界の大物、ルー・リードのヴェルヴェット・アウンダーグラウンドの後のソロ2作目です。

しかしこのような安売り系の文句が直接印刷されると、何だかワンランク下の作品に見えてしまう上に
裏ジャケにはバーコードまで付いています。 これは1980年代後半〜1990年代初めのプレスと思われ
まあ、市場価値の低そうなアイテムです。 まったく、こんなの誰が買うんだ? 誰も買う訳ないぜ!
・・・とは思うのですが、わたくし、しっかりと買っています。 ゲンナリしながらしっかり買っています。

ちなみに内容はワンランク下どころかツーランク上の名盤で、フレディ・マーキュリーしまくるゲイの人と
ケバい化粧の女装の人が並んだ裏ジャケを見れば、その名盤ぶりはわかっていただけると思います。

プロデュースをデヴィッド・ボウイ&ミック・ロンソンがしていて、ロケンローなA1、A4、B3、などは
グラム・ロック時代のボウイと同様のドライブ感がありかっちょ良いです。 表ジャケットもグラムを感じさせる
ナイス目バリで、ルーと水戸華之介とレッサーパンダで世界3大目バリと言いたくなるナイス目バリです。

アルバムの基本はギター・サウンドのイカれたロケンローですが、ホーンやストリングスなど多彩な音が入り
けっこうバラエティーに富んでいるので、1枚のアルバムとしてメリハリがあり飽きさせず聴かせてくれます。
ただ彼のヴォーカルは語り系なので要注意! この語るヴォーカルは好きじゃない人も多そうだなぁ・・・。

ソロ時代のルー・リードの代表曲第1位であるA5はダブル・ベースとブラシによるドラムス、ストリングス、
サックス、女性コーラスなどが入りますね。 代表曲第1位でありながら実は彼にしてはけっこう変化球な
サウンドでもあります。 まあはっきし言ってルー・リードのソロで曲名まで一般的に浸透している曲は
このA5の「ワイルドサイドを歩け」だけだと思います。 いや、それすらも浸透していないかもね。

B2はソロ時代のルー・リードの代表曲第2位でしょうか。 ピアノを基調にしたとても美しい曲で
途中にリコーダーなんかも入り最後はコーラスが複雑に絡んで盛り上がります。 劇的な名曲ですね。
A3はソロ時代の代表曲第3位かな? こちらもピアノとストリングスで哀しげに聴かせる素晴らしい曲です。
でもやっぱり名曲が並んでいても変な売り文句が直接印刷されているのを見るたびゲンナリするよ・・・。

「Ecstasy」(2000)・・・第26号 2000/12/14 ナルシスト・オヤジのジャケットを見て興奮しろ
 


HoundsOfLove.jpg HoundsOfLoveBack.jpg
KATE BUSH 「HOUNDS OF LOVE」 (1985)
独 EMI 038-74 6164 1 (LP)
Hounds Of Love
A1 Runnin Up That Hill (A Deal With God)
 2 Hounds Of Love
 3 The Big Sky
 4 Mother Stands For Comfort
 5 Cloudbusting
 The Ninth Wave
 B1 And Dream Of Sheep
  2 Under Ice
  3 Walking The Witch
  4 Watching You Without Me
  5 Jig Of Life
  6 Hello Earth
  7 The Morning Fog

リズミカルに迫るケイト・ブッシュを聴くならこれ! シングル・ヒット満載でポップだし、これは盛り上がるぜ!
こと1985年の名盤「ハウンズ・オブ・ラブ」です。 そのシングル・ヒット満載が仇となり(?)ジャケット左上には
「incl. Single Hits; Running Up That Hill, Cloudbusting, Hounds Of Love, Big Sky」と直接印刷されています。

そんなんで手元にあるこのドイツ盤LPは当然この4曲がシングル・ヒットした後にプレスされたものでしょうが
4曲の内「The Big Sky」は正式な曲名から「The」が省略され「Big Sky」と印刷されていてテキトーな感じです。
また、けっこう重要である歌詞やクレジット関連の書かれた内袋もついていないクソな作りの1枚であり、
彼女のキャリアの頂点である作品なだけに、ゲンナリですよ。 でもゲンナリしながら買っているんだけどね!

A面冒頭3曲のシングル曲連発のブッ飛ばしぶりはちょっと凄く、「イェイ、イェイ、ヨー」や「ヒヨー」のコーラスが
印象的な哀愁のA1、明るく迫るA2、そのダンサンブルさに体も動いてしまうA3と、本当に盛り上がりますねぇ。

そしてA面最後には数多い彼女の名曲の中でも名曲中の名曲である「クラウドバスティング」があああああぁ!
マーチ風リズムにぶ厚いストリングスが被さり、哀愁のメロディーでじわじわと迫りますねぇ。
そして最後には、出た!「イェイ、イェイ、イェイ、ヨー」のコーラス! 完璧だぜ! オーガノン!

B面はピアノ系シンガー・ソングライターとしての彼女を味わえる落ち着いた曲が多く、ひとつの物語の中の
各場面に合わせて7つの曲が流れているかのような印象です。 中でもアラビア風のメロディーを持ったB5は
途中からアイリッシュ・トラッドに変身する変な曲で印象的ですねぇ。 そういえばスフィアン・スティーヴンスの
1stアルバムにこれに似た曲が入っていたなぁ。 スフィアンも影響受けてるのかなぁ・・・。
B7は「ドンドン、ディア、ドン、ドゥ」のコーラスで爽やかに締めてくれ、最後に「イェイ、イェイ、ヨー」も登場だぁ!

1980年代的な音処理もされていて苦手な人もいそうだけど、そんな1980年代サウンドのイヤーな感じなんか
軽く吹き飛ばしてしまう勢いと凄みのある名盤! 1980年代の英国を代表するアルバムの内の1枚だと思うし
ジャケットに変な売り文句が直接印刷されている事など軽く吹き飛ばしてしまう勢いと凄みのある名盤ですよ!
・・・でもやっぱりジャケットの直接印刷を見るたびにゲンナリするよなぁ。 ・・・ああオーガノン。

「Aerial」(2005)・・・第129号 2007/6/30 かつてのマイ・アイドル達よどこへ行く
 


Roots.jpg RootsBack.jpg
THE EVERLY BROTHERS 「ROOTS」 (1968)
独 WARNER BROS. 26045 (LP/1986)
A1 The Everly Family (1952)
 2 Mama Tried
 3 Less Of Me
 4 T For Texas
 5 I Wonder If I Care As Much
 6 Ventura Boulevard
 7 Shady Grove
 B1 Illinois
  2 Living Too Close To The Ground
  3 You Done Me Wrong
  4 Turn Around
  5 Sing Me Back Home
  6 montage: The Everly Family (1952),
    Shady Grove, Kentucky

アメリカの兄弟デュオ、エヴァリー・ブラザース。 彼らの有名曲の多くは1950年代後半にヒットしていて
まあ、オールディーズですよ。 オールディーズなどトンがった若いヤングからしたら、ケッ!ってなモンで
僕もトンがった若いヤング気取りなので、できればこんな時代遅れのポップスは聴きたくありません。

ところが素直な耳で素直に聴くと、「ルーツ」にはカントリー・ロックの名盤としての響きと風格があります。
本人達がカントリー・ロックを意識して作ったかどうかは知りませんが、時代はひと回り、ふた回りして、
古いカントリー・ソングであってもカントリー・ロックと言ってしまえばカントリー・ロックなのです。

そんな名盤である「ルーツ」ですが、ジャケット左下に「Including The Everly Family Radio Show 1952」と
直接印刷されていてゲンナリですよぉー。 それも斜めに傾いた黄色い長方形の中に配置され、
無駄に斜めに傾いているセンスにもゲンナリ! 所有のLPは裏ジャケに「P1986」と印刷されているので、
1986年のプレスなのでしょうね。 1980年代プレスなので物としての価値も低く、中古税込み420円で
転がっていたのを拾い、それに伴って所有していたCDを処分したいわくつき(?)のアルバムなのです。

ジャケットに直接印刷された宣伝文句のエヴァリー・ファミリーの音源は曲名表記のあるA1とB6の他にも
A7の終わりに少々、B3とB5の出だしにも少々登場する構成で、コンセプト・アルバム度が高く、
楽曲も繋がっていたりするし、アルバムとしての完成度もとても高くて、聴き入ってしまいますねぇ。

収録曲はのどかで心地良いメロディーを持ったポップなカントリー風味の曲が中心に並んでいて
2人のクセの無い歌声によるハーモニーがまたとても心地良いです。 まあ、カントリー・ロックの名盤と
言ってみたものの、ロックっぽさが目立ってこれぞカントリー・ロック!な曲はA4、A6くらいですけどね。
また、カントリー臭のしない、ビー・ジーズ風のミドル・テンポの素敵なポップス、B5なども入っています。

しかし今回登場した3枚はどれも相当の名盤ですよ。 この3枚に関しては「ジャケットに直接
変な売り文句が印刷されていれば名盤!」の法則が当てはまっているのではないでしょうか。
いや、実は他にも直接印刷の作品があったのだけど、名盤とは言えないので選ばなかったんだ・・・
そんな裏事情を暴露して、直接印刷のジャケットを見ると・・・ふぅー、やっぱりゲンナリしちゃうねぇ。
 

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