フォークといえば男性デュオでやるのが最も丁度良い塩梅で
メンバーが5〜6人いたら意見も合わず 殴り合いの喧嘩は日常茶飯事ですよね。
だからいつも言っているように フォークは男性デュオじゃないと違うと思います!
だいたい男性デュオの多さがそれを物語っていて ちょっと思いつくだけでも
ふきのとう グレープ バンバン チャゲ&飛鳥 雅夢 H2O ゆず あのねのね・・・
 あれ?あまり思いつきません。 てへへ・・・あとは あまり知られていませんが
ジャージ姿という斬新なステージ衣装で激しいダンスを取り入れ オリジナリティ溢れる
フォークを演っているテツandトモというグループも今後大注目ですよ!


AtHome.jpg
LAMBERT AND NUTTYCOMBE 「AT HOME」 (1970)
ユニバーサルミュージック UICY-9580 (CD/2005)
1 Morning
2 Time
3 Bird Song
4 My Own Beat
5 Something On My Mind
6 Mouse
  7 Ode To Drugan
  8 Putting Myself Together Again
  9 Mr. Bojangles
 10 Country Song
 11 Heaven Knows (Where I've Been)
 12 Clover

男性フォーキー・デュオ ランバート&ナッティカム。 1970年の1st。 日本盤紙ジャケCDです。
これはアメリカ西海岸の作品だけど何だかイギリス的な香りを漂わせていてアメリカン臭が全然しませんね。
1970年というこの時期のアメリカン・フォーキー達には ほんのりカントリー臭のある作品がが多いのだけど
彼らにはカントリー臭が無いし 声を張り上げたりしない優しげなヴォーカル・ハーモニーのせいもあり
イギリス的な香りがあるのです。 アコギの演奏も誠実な響きだし アメリカンな豪快さはいっさい無いです。

全編2人のヴォーカルとアコギの演奏で曲が進み そよ風のように流れて行く とても美しい音ですが
バックの音は本当に2人のギターだけでとても地味ではあります。 あまりにも地味過ぎて1回聴いただけじゃ
かったるく感じてしまいピンと来ない率も高いので注意が必要です。 最低10回は聴いてピンときましょう。
9曲目の「ミスター・ボージャングルズ」以外はランバート あるいは ナッティカム作の曲となっています。

1曲目から窓から射す朝の穏やかな陽射しを感じ 鳥のさえずりも聞こえてきそう・・・実際は入っていませんが
正に曲名どおり「モーニング」な曲ですねぇ。 更に3拍子なので もう大変。 出血大サービスです。

9曲目「ミスター・ボージャングルズ」は皆さんカバーし過ぎの名曲だし メロディーがすーっと耳に届き
おかげで聴き終わって最も印象に残る曲です。 いやしかし数多いこの曲のカバー・ヴァージョンの中でも
ボージャングル爺さんに会えなくて俺は淋しいよ・・・といった哀しみを最も纏っていて こりゃー絶品です。

最後の12曲目は途中にフランス語の歌詞が登場しますが 南米フォークの雰囲気もあって面白いし
本当に地味な演奏の連続だけれども じっくり聴けば聴くほど味わいが増して行く名盤になっていますよ。

しかし2人の声質といい ハーモニーの具合いといい キングス・オブ・コンビニエンスという21世紀の
フォーキー・デュオにそっくりですね。 キングス・オブ・コンビニエンスのアルバムに本作から何曲か
入れておいてもバレないようなそっくりぶりだし 又その逆でもバレないそっくりぶりなので
ご本人と一緒のコーナーで並んで歌ったら盛り上がりますよー。
 


Seeds.jpg
GALLAGHER & LYLE 「SEEDS」 (1973)
英 RIVER RIVERCD012 (CD/2004)
1 Country Morning
2 A Misspent Youth
3 I Believe In You
4 Sleepyhead
5 Layna
6 The Clearings
  7 Remember Then
  8 Seeds OF Change
  9 Shine A Light
 10 Randolph And Me
 11 Cape Cod Houses
 12 Seeds

イギリスの男性フォーキー・デュオ ギャラガー&ライルの3rdアルバム。 バンド・サウンドの曲が中心なので
ロックっぽいし 聴こえてくる楽器の音も多彩だけれど 2人の醸し出す雰囲気は優しげで誠実な感触で
前項のランバート&ナッティカムに近く どんな時でも「フォーキー・デュオ」を感じさせてくれる2人ですね。

出だしの1曲目はいきなりサックスが入ってビビりますが 誠実で品の良いロックンロールに仕上がっています。
2曲目はのどかなハーモニカが入り田舎度アップするけど やはり品の良いフォーク・ロックといった趣です。

3曲目は2人の曲作りの素晴らしさを実感できるさりげない名曲。 彼らの曲作りの何が素晴らしいかって
主旋律の音域が狭い(1オクターブ以内)ように聴こえ その限られた音域の中で美しいメロディーを
作っている印象があるのです。 あくまで印象なので・・・実際はどうだかわかりませんけどね。
とにかくギターを抱えて弾きながら曲を作るのではなくて 頭の中で音符を並べてメロディーを作り
ちゃんと楽譜を書いて曲を完成させているような頭の良さ・・・育ちの良さを感じさせてくれる2人なのです。

可愛らしいフォーキー・ポップの5曲目とかとても素晴らしい響きの曲なのだけど ちょいちょいと簡単に
作詞作曲しちゃったような感じがあります。 実際は簡単に作ったかどうか知らないけれど 憎い2人ですねぇ。

7曲目はギター&アコーディオンで 11曲目はギターのみで演奏され この辺はマッギネス・フリント時代の
「インターナショナル」などの名曲に繋がるギャラガー&ライルらしいナイスなフォーキー・ソングです。
まあ マッギネス・フリントと比べても それほど変わりは無いサウンドですが やはり2人になった事で
バンドでやってます的なドタバタ感が後退し 落ち着きのある音なので 大人向けの音楽でもあるのです。

ギャラガー&ライル関連ページの数々
Gallagher & Lyle 「Willie And The Lapdog」・・・第89号
Gallagher & Lyle 「Live In Concert」・・・第54号
McGuinness Flint 「Happy Birthday, Ruthy Baby」・・・第83号
 


FreemanAndLange.jpg
FREEMAN & LANGE 「FREEMAN & LANGE」 (1975)
ヴィヴィッド・サウンド VSCD-142 (CD/2002)
1 The Non-Smokers Liberation Front Anthem
2 Bronze And Steel
3 Song For Allende
4 The Barefoot Rag
5 The Lady's Song
6 The Modern Army Can't Fight Song
  7 Sit Back So Easy
  8 Old Wooley
  9 Don't (Pass Me By)
 10 The Dying River
 11 The Gold Watch
 12 Northern Lights

アメリカの男性フォーキー・デュオ フリーマン&ランジの唯一のアルバム。 日本盤紙ジャケCDです。
オリジナルLPはフォーク〜カントリー方面を得意とするフライング・フィッシュから出ていた作品です。

フライング・フィッシュのレーベル・カラーは いかにものアメリカン・ローカル・フォークといった感じで
このアルバムもレーベル・カラーがモロに出ており 大ヒットはしそうもないローカルなフォークです。
「ローカルなフォーク イコール セミプロ級の音楽」でもあるので 聴かずに通り過ぎてしまいそうですが
本作はこのテの作品の中でも1歩も2歩も抜きん出ている名盤で 通り過ぎてはいけない1枚になっています。

ドラムスは入っておらず ギターを弾いて歌う2人の飾りのないヴォーカル・ハーモニーの上に
フィドルやマンドリンやペダル・スティールやフルートやサックスやクラリネットなどが乗っかるサウンドです。
演奏はしっかりしていてルーズな感じはなく かといってそこまでカチッとはしていおらず良い塩梅ですね。

フィドルやペダル・スティールが入る曲はカントリー臭がして アメリカン・フォークだなぁという感じですが
アコギ&フルートの楽器構成で失神してしまう体質の僕は フルートが入る曲にびっくりして 只今失神中!
2曲目のアコギ&フルートなんかもう大必殺で 朝の柔らかな陽射しを思わせる優しげな曲調に失神中!
そして12曲目のアコギ&フルートも大必殺! こちらも何とも優しげな音で 当たり前のように失神中!

5曲目や7曲目なんかは どこにでもありそうなカントリー・ワルツだけど こんな当たり前な曲が良くて
音楽なんてそんな難しい事をしなくても セミプロ級の音楽であっても 思いがけず感動は運ばれてきます。
とは言ってもけっこうカントリー臭がするアルバムなのでカントリーが苦手な人は聴く必要ナシです。
カントリーがイケる人はこの名盤を聴きまくって 当たり前のように5〜6回は失神しましょうね。
 


AtThePureFountain.jpg AtThePureFountainBack.jpg
ROBIN WILLIAMSON & CLIVE PALMER 「AT THE PURE FOUNTAIN」 (1999)
英 PIG'S WHISKER MUSIC PWMD5017 (CD)
1 Come A Ye Tramps And Hawkers
2 Pretty Fair Maid
3 Paris
4 For Far Soldier
5 (I Can't Help It If I'm) Still In Love With You
6 Relax Your Mind
7 Cam Y Oer Frae France
8 Rise When The Rooster Crows
  9 À La Belle Étoile
 10 Bless You (For Being An Angel)
 11 Sally Ann
 12 Green Grow The Laurels
 13 The Show Must Go On
 14 Wae's Me For Prince Charlie
 15 Salty Dog
 16 The Night Of The Ragmen's Ball

勤労拒否フォークの英国代表であるインクレディブル・ストリング・バンドでロビン・ウイリアムソンと
クライヴ・パーマーは一緒にやっていましたが クライヴ・パーマーは1stだけ参加してバックれました。
そんな2人が久々に同窓会状態で作った作品がこれです。 同窓会状態なので男性フォーキー・デュオ
という括りは無理がある気もしますが そんな小さな事は気にしない派なので まったく気にしません。

しかしこのテのアルバム・・・昔 活躍した人がジジイやババアになって同窓会ノリで作品を発表というタイプは
大した内容では無い場合がほとんどだし 老いた歌声を聴かされてがっくり・・・というのは皆さんご承知の通り。
ところが本作は違う! 凄く良い! とても良い! 勤労拒否フォークの最終到達点とも言いたくなる内容です。

収録曲はトラッドが中心になっていて のどかにゆったりと流れます。 インクレ時代はヒッピー・ソウル感覚が
イヤーな感じだったロビンのヴォーカルも本作は割とまともで 2人ともそこら辺のオヤジ風ヴォーカルですね。
そんな2人のヴォーカルですが 同窓会状態で楽しんで作っただろう作品なのに 絶対に一緒にハモったり
しないという芸風が笑えます。 そういえばインクレの1stも個人主義でそんな感じでしたね。 さすがインクレ!
 
演奏はロビンとクライヴの2人の他 再結成インクレにも参加したロビンの妻のビナ・ウイリアムソンと
ローソン・ダンドゥなど数人が参加しており 地味なようでバラエティーに富んだサウンド作りに貢献しています。
そんな演奏の中でも最も印象的なのはクライヴ・パーマーの弾くダラダラ感のあるバンジョーの響きでしょうか。
彼のバンジョーは適当なようにしか聴こえないので どんだけキャリアあるんですか? もう少し練習すれば?
と思ってしまうけれど これは本気です。 本気で適当に弾いていますね。 それって凄くないですか?

「本気で適当」なバンジョーにロビン・ウイリアムソンのハープが乗っかるインストの5曲目などは劇的に美しく
ジブリ作品の挿入曲として採用されても問題がないレベルです。 つまり彼らが日本の音楽番組に出演し
不敵な笑みが地上デジタル放送の電波に乗ってお茶の間に届けられる日も近いという事で・・・これは事件!

16曲も入っていますが収録時間は約49分。 3分の1くらいあるインスト曲がかなり効いていて 飽きる事なく
何度も聴き入ってしまう中毒アルバムなので気をつけて! じゃあインクレが苦手な人でもイケる内容か?
といったらそれは無理です。 あくまで一部のマニアが聴き入ってしまう中毒アルバムなので気をつけて!

ロビン・ウイリアムソンとクライヴ・パーマーの関連ページの数々
インクレ特集(記念ジャンボリー)のページは第58号です。
クライヴ・パーマーが近年希にみる絶好調のページは第115号です。
そしてRobin Williamson & His Merry Band 「American Stonehenge」も第9号で書いているし
Robin Williamson 「Myrrh」に至っては第117号で書き散らかしているし
更ににC. O. B. 「Moyshe McStiff And The Tartan Lancers Of The Sacred Heart」も第52号で書いています。
 

表紙へ戻る

inserted by FC2 system