儚く美しい女性ヴォーカルのブームはひと段落したのでしょうか?
いや そもそもブームがあったかどうかも定かではありませんが
どの人もアルバムを重ねて3〜4作目になると失速してしまうのが定番パターンなのに
米国のマリッサ・ナドラーっていう人はアルバムを重ねるごとに良くなっていますよ。
こりゃーそろそろ次のアルバムあたりで大ブレイクしますね。 予言しておきます。
もし本当に彼女がブレイクしたら僕はブレイクを予言した世紀の大予言者なので
五島勉氏にお願いして「jiroweの大予言」という本を書いてもらわないとね。


BalladsOfLivingAndDying.jpg
MARISSA NADLER 「BALLADS OF LIVING AND DYING」 (2004)
米 ECLIPSE 036 (LP)
moon side
A1 Fifty Five Falls
 2 Hay Tantos Muertos
 3 Stallions
 4 Undertaker
 5 Box Of Cedar
 sea side
 B1 Bird Song
  2 Mayflower May
  3 Days Of Rum
  4 Virginia
  5 Annabelle Lee

どういう理由で彼女の作品に手を出したか覚えていないけれど 最初に入手したのはこの1stのLPで
新宿ディスクユニオンで中古1000円位でした。 マイナー調で抑揚無く淡々と進行する曲がズラリと並び
何だかネットリと絡み付くようなヴォーカルも呪い系のイヤーな感じだったし 購入した時点では
体調が良い時に聴かないとツラく感じる体罰系フリー・フォークの1枚という認識で放置プレイでしたねぇ。

それでも彼女の作品は中古盤が転がっていたらなんとなーく購入してしまい 3rd〜2ndという順番で
中古CDを入手。 そして4thと5thはLPを新品購入するまでに僕も成長しました。 大人になりました。

あの時この中古LPに出合って購入したおかげで 今では全アルバムが手元にあるのだけれど
もし出合わずに通り過ぎてしまった場合 数年後に気付いた時はアルバム枚数が5〜6枚になっていて
中々購入が追いつかないし初期作品は入手困難になっている場合もあり もうこの人の作品はいいや・・・
となってしまうからねぇ。 もちろんとてつもなく素晴らしいバンドやシンガーを発見してしまったら
アルバムが何枚あろうがもういいや・・・とはならず あらゆる手段を駆使して必死で購入しますけどね。

さて 本作ですが A2はパブロ・ネルーダの詩に B5はエドガー・アラン・ポーの詩に曲をつけていて
その他は全部彼女の作詞・作曲です。 どの曲もアコギのアルペジオによる弾き語りにもう1本のギターや
オルガンが入る程度の音に スロー〜ミドル・テンポのマイナー調の曲の連発で単調な事この上ないです。

またヴォーカルの発音がモゴモゴとしていて聴き取りにくく これが何だかネットリと絡み付く呪い系に
聴こえてしまう原因でしょうか。 A2 A5 B4 のような優しげに流れるメロディーを持った曲もあり
バンジョーで弾き語るB3といった変化球もあるので まあそこまで単調という事は無いですけどね。

そして宇宙サウンドの音処理がされた最後のB5がハイライト。 葉が落ち呪われたような森の向こうに
彼女がポツンと佇むジャケットの如く どんどん呪いの森に引きずり込まれて行く感覚が味わえますよー。
 


TheSagaOfMayflowerMay.jpg
MARISSA NADLER 「THE SAGA OF MAYFLOWER MAY」 (2005)
米 ECLIPSE ECL-044 (CD)
1 Under An Old Umbrella
2 The Little Famous Song
3 Mr. John Lee (Velveteen Rose)
4 Damsels In The Dark
5 Lily, Henry, And The Willow Trees
6 Yellow Lights
  7 Old Love Haunts Me In The Morning
  8 My Little Lark
  9 In The Time Of The Lorry Low
 10 Calico
 11 Horses And Their Kin

危ない目をしたジャケットが只者ではない2nd。 この目がイッちゃっているポートレートはかなり印象的で
彼女の呪い系のイメージを更に増幅させてくれますよ。 そして実際に出てくる音も全作品中最もダークな
呪い系のかったるい音で もしジャケ買いしてもジャケット通りの危ないサウンドで安心(?)ですね。
そんなんで本作を彼女の初期の代表作に決定します。 見開き紙ジャケット仕様のCDになっています。

アコギのアルペジオで曲の最初から最後まで淡々と流れて行く曲がズラズラーっと並んでいて
2曲目にはニック・カストロの吹く もの哀しいホイッスルが入ったりするけど 1曲目から5曲目までは
どれも同じような奏法のギターのアルペジオを基調にしていて曲のテンポがほぼ一緒という徹底ぶりです。

6曲目になってやっと8分の6拍子の曲が出てきたと思ったら 7曲目以降はまた元の同じような曲に戻り
そのまま最後の11曲目まで 同じパターンを貫いて終了してしまいます。 いやぁホント同じような曲が
ここまで並ぶと何だか凄いですねぇ。 そんなんで呪い系のかったるい音ではありますが
明るめのメロディーを持った 8 9 曲目は1960年代アメリカのフォーク・シンガーかの如くで
ジョーン・バエズが思い浮かびました。 9曲目はウクレレを弾いているのかな? ウクレレっぽい弦の音です。

プロデュースはブライアン・マクティアーという人で エスパーズの全作品でミックスを担当している人です。
つまりブライアン・マクティアー抜きでエスパーズ・サウンドは語れないのではないかと囁かれて・・・いないか。
密かに囁いている人もいるかも知れないけど今気付いたので僕が囁いておきます・・・抜きでは語れない・・・
 
しかしマイナー調のフォークというとブリティッシュ・フォークが思い浮かぶのですが ギターの奏法のせいか
アルバム全体をぼんやりと霞ませるエコー感のせいか 全然ブリティッシュ・フォークを感じませんね。
まあ米国の作品なのでブリティッシュ・フォークを感じる必要も無いので囁いておきます・・・必要も無い・・・
 


SongsIIIBirdOnTheWater.jpg 
MARISSA NADLER 「SONGS III: BIRD ON THE WATER」 (2007)
米 KEMADO KEM 055 (CD)
1 Diamond Heart
2 Dying Breed
3 Mexican Summer
4 Thinking Of You
5 Silvia
  6 Bird On Your Grave
  7 Rachel
  8 Feathers
  9 Famous Blue Raincoat
 10 My Love And I
 11 Leather Made Shoes

この3rdアルバムは以前第136号 2008/2/6 私をエスパーズに連れてって!というページで紹介しました。
そちらのページではわたくしの身を削った必死の調査により彼女とエスパーズとの深い関係が明らかになり
ジャケットの細かい切り抜きはカッターで必死に切り抜いて時給600円!である事も判明しました。

ただエスパーズの面々が全面的に参加している割にはエスパーズ色は抑えられ 歪んだギターが
ギュイーンと鳴って あ!エスパーズ・サウンドだ!という曲が2曲ほど登場している程度ですね。
相変わらず淡々と抑揚無く弾き語るタイプの曲中心で 彼女にはエスパーズなんか関係ありません。

そして今回もうひとつ明らかになった事は 3曲目のタイトルが「メキシカン・サマー」ときたモンだ!
そう メキシカン・サマーといえばここ数年で最も素晴らしい米国のレコード・レーベルの内のひとつとして
注目度は前年比1000パーセント増で 君は1000パーセント状態であり カルロス・トシキ状態ですよね。

メキシカン・サマーはケマド・レーベルのサブ・レーベルとして2008年から始動したのだけど
おかげ様で今や本家のケマド以上に有名なレーベルになり絶好調です・・・という事も無いのかな?
メキシカン・サマーはLPとダウンロード専門のレーベルとして始動したので CDよりもLPリリース情報を
重点的に見ているちょっと頭のイカれた僕のようなヤツにとってはケマド以上に有名レーベルですけどね!

なおメキシカン・サマーというレーベル名は本当にマリッサ・ナドラーの曲のタイトルからいただいたと
ウィキペディアに書いてありましたねぇ。 そんなんで ある意味ケマド〜メキシカン・サマーを牽引してきた
彼女だけど現在はケマド・レーベルを離れ 2011年の5thは自身のレーベルからリリースしています。
 


LittleHells.jpg
MARISSA NADLER 「LITTLE HELLS」 (2009)
米 KEMADO KEM 086 (LP)
A1 Heart Paper Lover
 2 Rosary
 3 Mary Come Alive
 4 Little Hells
 5 Ghosts & Lovers
 B1 Brittle, Crushed & Torn
  2 The Whole Is Wide
  3 River Of Dirt
  4 Loner
  5 Mistress

これは素晴らしい! マリッサ・ナドラーを最初に聴くのであればこの4thあたりがオススメですよ!
エレキ・ギターやドラムスを導入した曲が何曲か入りロックっぽさが増した事により 初期に比べたら
だいぶ聴きやすくなっていますし 前作はエスパーズの面々が参加しヒャッホーイ!でしたが
本作ではビーチウッド・スパークスのデイヴ・シェアーが全面的に参加してウッヒョーイ!ですしね。

出だしのA1はマイナー超で抑揚無く淡々と進行する典型的なマリッサ・ナドラー・サウンドですが
バックの演奏はアコギではなくエレピです。 眠れそうで眠れない子守唄のような8分の6拍子のA2に続き
ドラムスとエレキ・ギターが入り本作のイメージを作っているA3が登場。 サイケデリックな空間処理された
オルタナ・フォーク・ロックといった趣きになっていて 同様のサウンドは B3 B5 でも聴けます。

その他 可愛らしいメロディーを持った弾き語りのアルバム・タイトル曲A4がまた素敵な響きだし
深いエコーに包まれたサイケデリック・フォークのB4などはじわりじわりと脳味噌に染みてきますね。

A5 B1 B4 は1stアルバムに入っていてもおかしくないようなマイナー調の淡々と紡がれる曲だけど
もうここではヴォーカルが絡みついてくる感じが気にならないし 儚く美しく響いてくれ とても良いです。

弾き語りのマリッサ・ナドラー・サウンドとバンド・サウンド 暗い曲と暗くない曲が 良いバランスで入り
うん やっぱりこれは聴きやすいしオススメ・アルバムです・・・いや 彼女の作品の中で考えたら
聴きやすいというだけなので 実際聴きやすいかどうか・・・そこは注意が必要ですけどね!

なおジャケット左上の「MARISSA NADLER/Little Hells」の白い文字は斜めに傾いていますが
これはジャケットに直接印刷されている訳じゃなくシュリンクの上に貼られている透明ステッカーになります。
そしてダウンロード・コード付きのLPはたいがいステッカーに「ダウンロードできます!」の文句を
載せているものなのだけど 本作はどこにも書いていない・・・でもダウンロード・コードが付いていました。
 


MarissaNadler.jpg
MARISSA NADLER 「MARISSA NADLER」 (2011)
米 BOX OF CEDAR BOC001 (LP)
A1 In Your Lair, Bear
 2 Alabaster Queen
 3 The Sun Always Reminds Me Of You
 4 Mr. John Lee Revisited
 5 Baby I Will Leave You In The Morning
 B1 Puppet Master
  2 Wind Up Doll
  3 Wedding
  4 Little King
  5 In A Magazine
  6 Daisy, Where Did You Go?

自身のレーベルからの2011年の5thアルバム。 レーベル名は1stに入っていた曲名を使っていて
「メキシカン・サマー」「ボックス・オブ・セダー」と 彼女の曲名のついたレーベルが2つも存在するんだなぁ
・・・と考えていたら興奮してきました。 そんな方面からも本当に近い将来大ブレイクする気がしませんか?
そして2ndをプロデュースしていたブライアン・マクティアーが再びプロデューサーで登場していますね。

頭を抱え悩むマリッサ・ナドラー(なのかな?)のジャケットは意味深ですが ドラムスやエレキ・ギターが
入る曲もあり前作の路線を踏襲した作品ですね。 美しく漂うようなA1から凄く良くてぬおおおおぉー!
これは昼間でも聴けるマジー・スターといった感じでしょうか。 8分の6拍子のA2やB3なんかは特に
マジー・スター〜ホープ・サンドヴァルとイメージが重なる曲になっていてぬおおおおぉー!ですねぇ。

楽曲の粒の揃い具合いは「リトル・ヘルズ」と甲乙つけ難いけど 音の中に溶けて行ってしまいそうになる
アルバム全体を支配する空気感はこちらの方が上かなぁ。 音の中に溶けて行ってしまうという感覚は
どれだけ溶けてしまえるか 聴く側の意識の持ちようも重要なのでその気で聴かないといけませんけどね。
ペダル・スティールが入る大らかなフォーク・ロックのA3などびっくりする程良いのでその気で聴きましょう。

最初から最後まで同じ奏法で淡々と進行するギターのアルペジオによる弾き語りを基調にした
B4などは1stアルバムの時から変わらない彼女の基本的なスタイルで そんな基本スタイルの曲も
しっかりと入れているのもまた偉いです。 弾き語り曲とバンド・サウンドの曲とのバランスはとても良いので
後は印象に残る楽曲がどれだけ並べられるかですが 前作〜本作の流れで行くと次の作品はもっと
印象深い曲が並ぶ事は間違いないでしょう。 そんなアルバムを作ったらホント大ブレイクしますよー。

・・・と大ブレイクの予言はしたけれど どうしたら五島勉氏に「jiroweの大予言」を書いてもらえるかの
研究もしないといけませんね。 まずノストラダムスの大予言シリーズを全巻読破して研究してみます。
ん? そんな研究どうでもいいのかな? 金? そうか金か! 金をたくさん払って書いてもらうか!

イメージが重なるマジー・スター〜ホープ・サンドヴァル関連作品を書いたページへついでにリンク
 第84号 2004/3/19 ホープ・サンドヴァルの虚ろなロリータ・ヴォイスであの世行き
 第161号 2010/3/31 CDWOW!による深刻な資金不足解消法
 

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