初期音源というのはどんな音楽性にせよ初期衝動の塊なので
とにかく色々な意味で炸裂!していますよね。
そして当たり前の事だけど初期なので皆さん若くてヤングでピチピチですよ。
今やジジイやババアのあの人たち 中には死んじゃった人もいますが
皆さんピッチピチに炸裂!していて とにかく炸裂!しているんです。


RainTheLostAlbum.jpg
MARY McCASLIN 「RAIN-THE LOST ALBUM」 (1999)
独 BEAR FAMILY BCD 16232 AH (CD)
1 Rain (w/o strings)
2 Aren't You The One
3 Suzanne
4 Nine Time Blue (guitar version)
5 With The Sun In My Eyes
6 I'm Looking Through You
  7 This All Happened Once Before
  8 Boy From The Country
  9 From Some Cool Blue-Iced Shore

 10 Windigo
 11 Please Don't Go
 12 I Need You
 13 Walk On Out Of My Mind
 14 Hold On To Me Babe
 15 Needle Of Death
 16 Goodnight Everybody
 17 Nine Time Blue (with added instruments)
 18 
Rain (with strings)

アメリカの女性シンガー・ソングライター メアリ・マッカズリン(読み方適当シリーズ)の初期音源が炸裂!
「ロスト・アルバム」となっているので1stアルバム用に録音したけれど発表できなかった音源なのかな?
・・・と 彼女の事をシンガー・ソングライターと紹介しておきながら本作に自作曲は入っておりません。 
クレジットを見ると録音は1967〜68年となっていて まだシンガー・ソングライターの時代が訪れておらず
この時代 彼女のような新人はそう簡単に自作曲を録音できる状況に無かったのでしょうかねぇ。

7曲目と18曲目だけは当時シングルで発表された曲で 別バージョンの1曲目も収録している「レイン」は
サイケ期に突入したビートルズのカバーですね。 まあビートルズの中では地味な存在の曲ではありますが
7曲目もモンキーズのマイケル・ネスミス作だし ビートルズやモンキーズという人気グループ絡みで
シングル・ヒットを狙ったのかなぁ。 あと 6 12曲目もビートルズで 4 17曲目がネスミス作ですね。

他にはレナード・コーエンの3曲目やバート・ヤンシュの15曲目など フォーク・カバーの定番曲があって
ティム・バックリーやホイト・アクストンやトム・パクストンの曲とか・・・おっと 5曲目はビー・ジーズですねぇ。
・・・と色々あるのですがどれもけっこう渋い選曲で耳馴染みのある曲の連発!とはいきません。

ドラムスなども入る曲も何曲かあるけれど ギター2本で演奏する弾き語りに近いタイプの曲が多くて
おかげ様でサウンドは歌謡フォークのようでもあるけど それ程ポップさは無いというビミョーなものです。
そしてヴォーカルの節回しがカントリー・シンガーのようで 頑張って歌ったが為にこうなった感じなのかな?
もっとさらっと歌ってくれた方が好きだけど 炸裂する初期音源なのでヴォーカルも炸裂気味って事ですね。

しかしメアリ・マッカズリンは以前書いた「Way Out West」というアルバムがスンゴく良かったのだけれど
名盤ガイドとかには中々名前が登場しない人で 一般的な人気や認知度はどんな感じなのでしょうね。
僕も「Way Out West」をチャレンジ購入するまでは彼女の事をまったく知らなかったからなぁ。
それが今やオリジナル・アルバムだけでなく このような初期音源まで聴いているのさ!

Mary McCaslin 「Way Out West」・・・第55号 2002/5/19 米国無名女マックの金脈を掘り当てろ
 


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LINDA DRAPER 「NO FRILLS」 (2010)
米 PLANTING SEEDS PSRCD-068 (CD)

 1 As The Story Goes
 2 Airplane
 3 La LaLaLa
 4 Dear Anonymous
 5 The One
 6 The Priest Who Looked Like Elvis
 7 Colorblind
 8 The Sleeping Giant
 9 A Little Bit Goes

10 Here I Am

前項で1960年代のメアリ・マッカズリンを聴いたと思ったら 何の脈絡も無く一気に21世紀へ飛びます。
この人は以前読み方適当シリーズでリンダ・ドラッパーと言っていたアメリカの女性フォーキーですが
ドラッパーでは無くドレイパーが正解のようです。 そんなんでリンダ・ドレイパーの初期音源が炸裂です。

これは1st〜3rdアルバムからセレクトされた編集盤になっていて 3rdなんてもう初期とは言えませんよね。
ただこれらのアルバムは現在入手困難(ダウンロードでは入手可能)で中古市場にもCDは中々出て来ず
聴いてみたかった初期の音源がやっと聴ける事になったので編集盤とはいえ有難いですよ。

ただこのCD 小さいサイズの紙ジャケに盤が入っているだけでブックレットとかは封入されていませんし
たった10曲 約31分という収録時間だし 盤面もフツーのプレスCDでは無くCD−Rっぽいですね。
実はこれは元々ライブ会場のみで販売していた「初期の音源が入った何だか編集盤っぽい作品」で 
ファンの要望に答え(?)一般流通し こうやって僕のようなイカレポンチの手元にも届けられている訳です。

基本はギター弾き語りで ちょっと囁きも入った優しげなヴォーカルは決して熱くならなず淡々と流れます。
1st〜3rdアルバムからそれぞれ3〜4曲 古い順から収録しているけど 最初から最後までトーンが一緒で
最も初期衝動の塊!な1stの曲でも キャリアを重ねた後の3rdの曲でも 地味なフォーク路線ですねぇ。
ホントどの曲もこれは良いぃー!と大騒ぎするような事は無いけれど 何年経っても古臭く感じず
聴き続けられるタイプの曲だし 1回聴いて良いぃー!と大騒ぎしない分 聴けば聴く程じわじわと来ます。

この編集盤に収録されなかった曲も 同じようにじわじわ来る曲だろうから そりゃー是非聴いてみたいので
早く1st〜3rdアルバムを再発して欲しいですね。 ただダウンロードでは入手可能なアルバムなので
プレスCDなどもう作る気は無いのかなぁ・・・今後CDというモノがどうなるかの方向性が見える問題ですね。
なお8曲目は3rd「パッチワーク」収録曲ですが4th「ワン・ツー・スリー・フォー」にも入っています。

4thアルバム「One Two Three Four」・・・第121号 2007/1/2 知られざるヤングなフォーキーのワールド
 


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PINK FLOYD 「1967/THE FIRST 3 SINGLES」 (1997)
英 EMI CDEMD 1117 (CD)

 1 Arnold Layne
 2 Candy And A Currant Bun
 3 See Emily Play
 4 Scarecrow
 5 Apples And Oranges
 6 Paint Box

前項のリンダ・ドレイパーで21世紀の音を聴いたと思ったら 何の脈絡も無くまた1960年代へ逆戻りです。
プログレッシヴ・ロックで一時代を築いた英国の有名バンド ピンク・フロイドの初期音源が炸裂ですよ。

これはアルバム・タイトル通り1967年に出た最初の3枚のシングルAB面をモノラル音源で収録していて
ジャケットは小さいサイズの紙ジャケが見開きになっています。 収録曲がたった6曲じゃ物足りないけど
1stアルバムに入っている4曲目以外はアルバム未収録曲で けっこう有難い編集盤ではありますね。

この頃のピンク・フロイドはシド・バレットが中心人物で プログレでは無くポップ・サイケをやっています。
1〜5曲目は楽曲もシド・バレットが作っているしメイン・ヴォーカルも彼が歌っていて正に中心人物です。
最後の6曲目だけはリチャード・ライト作でヴォーカルもリチャード・ライトが歌っていますね。

演奏はテープ逆回転だとか変なエフェクトだとか効果音だとか ライブ演奏では使用しないシタールなどの
特殊楽器が入るだとかのスタジオワークでのアイデアよりも 通常の楽器演奏に重きを置いている感じで
エレキ・ギターとオルガンの演奏が印象的です。 もちろんスタジオワークの部分も相当ありますけどね。

ところでポップ・サイケと言ったのですが 同時代のポップ・サイケと呼ばれているバンドと比べると
ピンク・フロイドはキャッチーなメロディーで迫ってくれないのでポップな部分が弱い気もしますねぇ。
それでもここに収録された曲はシングル曲だからなのか 3曲目を筆頭に彼らの中でも最もポップな部類で
1stアルバムを聴くと更にポップ部分が弱く ポップ・サイケと言うよりアート・ロックという趣ですからね。

そしてモノラル音源での収録ですが これらの曲は元々モノラルしか存在しないのでしょうか?
ステレオじゃ無いのがちょっと残念でねぇ。 いや モノラルが嫌いな訳じゃなくて サイケ時代のステレオは
音を右に左に無駄に振ったりなどトリッピーな音作りをしてサイケ度を更に上げる取り組みをしているので
やはりポップ・サイケを聴く場合はステレオ・サウンドこそが本領発揮だと僕は思っているのですよ。

ビートルズのモノ・ボックス以降は モノラル音源とステレオ音源の両方ある場合はモノラルが最高で
真の音楽マニアはモノラルだ!みたいな風潮になってしまってどうもいけませんよね。
・・・ん? そんな風潮にはなっていないか。 いずれにせよポップ・サイケはステレオで聴きたいのです。
まあ この編集盤は1997年のCDだから「ビートルズ・モノ・ボックス以降」とか全く関係無いですけどね。
 


ALaGuillotine.jpg

McCARTHY 「A LA GUILLOTINE!」 (1988)
仏 TUESDAY TUE 871 (LP)
A1 Red Sleeping Beauty
 2 Something Wrong Somewhere
 3 Kill Kill Kill Kill
 4 In Purgatory
 5 From The Damned
 B1 Frans Hals
  2 The Comrade Era
  3 God The Father
  4 For The Fat Lady
  5 The Fall

前項のピンク・フロイドから何の脈絡も無く1980年代英国ギター・ポップのマッカーシーの初期音源集です。
いや 何の脈絡も無いと思ったらこちらも最初の3枚のシングルを収録した作品なので脈絡アリですね。
ただピンク・フロイドは3枚のシングルAB面で6曲なのに対し マッカーシーはなぜか10曲も絶賛収録中!
これは1980年代 シングルといえば1枚に3〜4曲は収録している12インチ・シングルだからですね。

しかしこれは本当に初期音源が炸裂!って感じで 若くて青くて疾走感バツグンな楽曲が並んでいます。
若くて青いギター・ポップと聞くと とても爽やかなサウンドかと思いますが マッカーシーはそうでは無く
ドコドコと騒々しく鳴り続けるドラムスとか聴いているとけっこう怖いモノがあり マイナー調のメロディーの
A4 B3 あたりは特に怖いです。 ジャケットの図柄も何か怖いし アルバム・タイトル「ア・ラ・ギロチン!」や
A3の「キル・キル・キル・キル」 A5「フロム・ザ・ダムド」とか・・・何かパンク・バンドみたいで怖そうでしょ?

クレジットが無いので正確にはわかりませんが聴いていると演奏は エレキ・ギター ベース ドラムス で
他の楽器は入っていないんじゃないかな? またギターはリズム・ギターしか存在しないような感じで
間奏のギター・ソロはただのリズム・ギターですよ。 いや 間奏でギター・ソロが入る当たり前のパターンは
オヤジ・ロックの定番でダッサイですからねぇ。 そういったギター・ソロが無いのが1980年代的で良いです。

ん? ギター・ソロが入らないのってそんなに良いのか? こういうのはジャングリー・ギター・ポップと言われ
ワン・ランク・・・いやスリー・ランク・・・フォー・ランクぐらい下の音楽としてバカにされる傾向もありますけどね。
でもマッカーシーはこのテの音楽の中でも そのブッ飛ばしぶりが徹底していて とっても快いのです。
特に初期衝動!な初期のマッカーシー・サウンドがギュッと詰まったこのアルバムは編集盤ながらかなり良く
とても怖い曲であるデビュー・シングルのA4の疾走感なんかホント凄くて 漏らしそうになるんだから! 

間奏のギター・ソロを拒否した(?)ギターのティム・ゲインは 1990年代にステレオラブを結成して大成功。
ギター・ポップからポスト・ロックへ 彼は時代の流れにうまく乗って炸裂!したひとりでもありますね。
 


GlidingBird.jpg

EMMY LOU HARRIS 「GLIDING BIRD」 (1970)
米 EMUS ES-12052 (LP/1979)

A1 I'll Be Your Baby Tonight
 2 Fugue For The Ox
 3 I Saw The Light
 4 Clocks
 5 Black Gypsy
 B1 Gliding Bird
  2 Everybody's Talkin'
  3 Bobbie's Gone
  4 I'll Never Fall In Love Again
  5 Waltz Of The Magic Man

そしてまた何の脈絡も無くカントリー界の女帝エミルー・ハリスの登場です。 「カントリー界の女帝」というのは
僕の勝手な彼女に対するイメージですが この1970年の1stアルバムではまだ女帝のイメージは無く
新人らしい瑞々しさのある作品になっているしカントリー臭も薄いですね。 本作は全く売れなかったようで
グラム・パーソンズのヴォーカル・パートナーを務め名を上げた後 1975年にソロ再デビューを果たしますが
名前の表記も再デビュー後と違って エミーとルーの間に区切りがあり「エミー・ルー・ハリス」ですね。

カントリー・ロック期のボブ・ディラン・カバーA1だとか ハンク・ウイリアムスのA3なんかも入っていて
その2曲はカントリー臭がしますが その他は楽器構成などもカントリー臭の薄いアレンジになっています。
アコギの弾き語りを基本にストリングスが被さるタイプの曲が多くポップ・フォークといった趣がありますよ。
アコギ&ストリングスの必殺パターンなのに必殺室内楽フォークにならないのは一生懸命歌い上げる
ヴォーカルのせいでしょうか。 ただ声自体はとても若くフレッシュなので これぞ初期音源が炸裂!ですね。

有名なヒット曲の B2 B4のカバーなどは耳馴染みのあるメロディーが心地良く耳に入って来るのですが
それに比べ A2 A4 A5 B3 B5 と5曲ある自作曲はどれもカバー曲に比べ印象に残らないなぁ。
うっ! 私の自作曲ダメだ これからはカバーで行くわ・・・という芸風がここで確立されたのかもね。
彼女はソロ再デビュー後は自作曲はほぼ無いですからねぇ。 近年はどうだか知らないけど。

えーと これは再発盤でオリジナル盤とはジャケットが違うようですが 何か低予算の自主盤っぽい印刷の
にっこりエミー・ルーのジャケットも 初期の可愛いエミー・ルーが炸裂!でけっこう好きですね。

本作は神保町のターンテーブルという店で購入した中古盤で 10年くらい前かな? もっと前だったかも。
その頃はまだ僕も若かったのでとにかく色々な意味で炸裂!していて レコードの買い方も凄かった・・・。
何が凄いって今も昔も高額商品はビビって買えないのでそこは凄く無いけれど レコード屋はまだ沢山あり
色々な街の色々な店に出動して 枚数は今の10倍位買っていましたよ。 とにかく面白かったですね。

1990年のアルバム「Duets」・・・第138号 2008/4/12 カントリー〜ブルーグラスに あービビった、ビビった
 

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