正式なディスコグラフィーには登場しない日本独自企画盤というものがありますが
その名のとおり日本で独自に企画した編集盤なので内容はビミョーな場合も多いですよ。
でもアルバム未収録曲がまとめて聴けたりして 隙間を埋める隙間産業として有効です。
そうなんです。 まだまだ隙間需要はあるので 手元にある日本独自企画盤を語って
隙間産業とは何か? そしてこれからの隙間産業のあり方を検証したいと思います。


THE STANDS 「OUTSIDE YOUR DOOR」 (2004)
日 トイズファクトリー TFCK-87372 (CD)
1 Outside Your Door
2 All That's Glass (home recording)
3 It Takes A While (home recording)
4 Stumbling Home
5 Always I Love You
  6 All Years Leaving (acoustic version)
  7 I Will Journey Home
  8 The Shape You're In
  9 She Speaks Of These Things

 10 Outside Your Door (video)

こちらはアルバム2枚で解散してしまった英国のバンド スタンズの日本独自企画のミニ・アルバム。
1曲目は1stアルバム収録曲ですが 2曲目以降はシングルのB面曲などで構成されているのでしょうかねぇ。
すべてアルバム未収録の曲〜ヴァージョンになっていて 隙間を埋める隙間産業盤としてイケてる1枚です。

ただ どの曲がどのシングルのB面だとか元々のリリース情報が書かれておらずとても不親切ですねぇ。
真の意味で隙間を埋めるつもりがあるならばそういう情報を載せないとね。 このテの作品がリニューアルされ
再発されるなんて事はまず無いだろうけど もし間違ってリニューアル再発される機会などがあったなら
そのような楽曲情報を載せるのは必須ですぞ! わかりましたか? トイズファクトリーの洋楽担当の方!
・・・っつーか トイズファクトリーの洋楽部門って無くなったようで レコード会社にとっては大変な時代です。

さて 内容は当然オリジナル・アルバムと比べると 日本独自企画盤らしさ漂うビミョーな感じになっていて
スタンズというバンドの魅力である 男気漂うかっちょ良いロックな演奏は1曲目と9曲目くらいですかねぇ。
2曲目と3曲目にはホーム・レコーディング 6曲目にはアコースティック・ヴァージョンと表記があるように
バンドの中心人物ハウィー・ペインのソロ作かの如くなタイプの落ち着いた曲が多く並んでいるのですよ。
いや もちろん ヒドい内容だという事は無く 味わい深いルーツ・ロックが聴ける隙間産業盤ですけどね。

実際スタンズ解散後のハウィー・ペインのソロ作を聴いたら こんな感じの落ち着いたルーツ・ロックでしたね。
なお彼のソロはスタンズ時代の「Howie Payne」では無く「Howard Eliott Payne」という名前で出てますので
頭の隅っこにこの情報は入れておきましょう。 きっといつか役に立つ時が来ます・・・きっといつか・・・。

スタンズの1st「All Years Leaving」・・・第98号 2nd「Horse Fabulous」・・・第107号
 


STRANGE IDOLS 「IT'S NO FUN !」 (2006)
日 RALLYE LABEL RYECD 022 (CD)
1 It's No Fun !
2 She's Gonna Let You Down Again
3 Say Anything
 4 Old Times
 5 X-Ray Vision
 6 Berlin

さてこちらは女性ヴォーカル入りの英国の5人組バンド ストレンジ・アイドルズの日本独自企画盤です。
解説文をそのまま書くと「今年10月にリリースされたEPと来年2月にリリース予定の新作EPの全楽曲に
未発表曲やリミックスなどを加えた日本のファンにだけに贈る特別なミニ・アルバム」という事になっていて
隙間を埋めるというよりも 先行投資型の1枚になっていますね。 解説での「今年」とは2006年の事ですが
どの曲が今年のEP曲か来年のEP曲なのか特定されておらず前項のスタンズ同様不親切な解説ですね。

サウンドは1980年代のネオ・アコースティックを思わせる音なのですが エヴリシング・バット・ザ・ガールや
ウィークエンドなどボサノヴァを取り入れたネオアコではなくて ビートの効いたスタイリッシュな曲の連発です。
解説ではアズテック・カメラ〜スミス〜フェルトの名前が挙げられており 更に言うとギター・カッティングや
スタイリッシュなニュー・ウェーヴ風味のビート感がヘアカット100やフレンズ・アゲインを思わせてくれますね。

つまりそこら辺のネオ・アコースティックと呼ばれていた音が好きな人にとっては相当良い作品なのですが
素直で飾り気の無い女性ヴォーカルがちょいとスタイリッシュなビート感の曲に合っていない感じもします。
4曲目とか相当かっちょ良い曲なのに このヴォーカルだとアマチュア感が出て間抜けに聴こえてしまってねぇ。
もっとソウルフルなヴォーカルか もっと音程が不安定な下手なヴォーカルだったら更に良くなりそうですよ。

しかし先行投資型の本作を出したものの ストレンジ・アイドルズはこの後アルバムは出していないようです。 
只今製作中なのでしょうか? もしアルバムを出すなら ヴォーカルの娘は本気でソウルフルに歌うか
音程不安定で歌ってみたらいかがでしょうか。 まあ歌い方なんてそんな簡単には変えられないけど
ネオアコ・ファンが発狂するような名盤が生まれる予感が・・・その際は僕も謹んで発狂させていただきます。
 


SHANE MacGOWAN 「YOU'RE THE ONE」 (1995)
日 ワーナーミュージックジャパン WPCR-214 (CD)
1 You're The One (w/Máire Brennan)
2 Haunted (w/Sinéad O'Connor)
3 Cracklin' Rosie
4 Rake At The Gates Of Hell
 5 King Of The Bop
 6 Nancy Whiskey
 7 Rodry McCorley
 8 Minstrel Boy

これはシェイン・マッゴワンのソロ名義の日本独自企画ミニ・アルバムですが 彼はポーグスを辞めてからは
シェイン・マッゴワン&ポープス名義で活動していたので 本当のソロ名義のアルバムはこの1枚だけですよ!
つまりこの作品の存在を知らないポーグス〜シェインのファンに対して「俺はシェイン・マッゴワンの本当の
ソロ名義のミニ・アルバムを持っているぜ! どうだい? 凄いだろう。」と自慢できるのですよ。

しかし どんなアルバムか詳しく聞かれ日本独自企画盤である事がバレた日にゃー 何だ企画盤か・・・チッ!
・・・と 排泄物を見るような目で見られてしまうので 詳しく聞かれる前に自慢だけしてその場を去りましょう。

ふぅー・・・何とかその場を去る事ができたので こっそりとこのミニ・アルバムについて語っておきます。
クラナドのモイア・ブレナン姐さんとデュエットする1曲目と シニード・オコナーとデュエットする2曲目は
それぞれシングルA面曲のはずですが 3曲目以降がよくわかりませんよ。 すべてB面曲だとは思いますが
相変わらず日本盤なのにノー解説なので元々どこに収録されていたか各曲の情報がわからないのです。

ブックレットは聴き取りによる歌詞と対訳が載っていて けっこう多くの箇所が聴き取り不能で「・・・」と表記され
そんな聴き取り不能の歌詞まで載せてくれているのに 基本的な楽曲情報の解説が無いとはこれいかに!
いや 中古で購入したので本当は解説の紙もあったけど その紙が紛失した中古という可能性もありますね。

冒頭のアイリッシュ女とのデュエット2曲で 徹底してアイリッシュをアピール。 徹底してそこを攻めてきます。
ただこの2人は綺麗な歌声で シェインのヤクザ声とは何か上手く絡まないのです。 かつてのデュエット曲
「フェアリーテイル・オブ・ニュー・ヨーク」で上手く絡んだカースティー・マッコールはあばずれ声だったよなぁ。

デュエットの2曲は歌い上げ系ですが 3曲目以降はパンキッシュ・トラッドないつものシェイン節で
何か安心して聴けます・・・こんな今にもゲロを吐きそうな危ういヤクザ声を安心して聴けていいのでしょうか。
4曲目はポーグスでもやっていた曲(ストレート・トゥ・ヘルのサントラに入っていた曲)の再録音ですね。

シェイン・マッゴワン関連アルバム  ポープス「Outlaw Heaven」・・・第161号
ポーグス「Pogue Mahone」・・・第5号 ポーグス「If I Should Fall From Grace With God」・・・第85号

 


THE SMITHS 「THIS CHARMING MAN」 (1983)
日 ワーナーミュージック・ジャパン WMC5-532 (CD/1992)
1 This Charming Man
2 This Charming Man (manchester)
3 This Charming Man (london)
4 This Charming Man (new york vocal)
5 This Charming Man (new york instrumental)
  6 This Charming Man (peel session)
  7 This Charming Man (single remix)
  8 Jeane

  9 Wonderful Woman
 10 Accept Yourself

ここまで紹介してきた作品はせっかくの日本盤なのに なぜか元々のリリース情報が詳しく載っていなくて
リリース情報書くの禁止!みたいな日本独自企画盤の裏事情があるのではないか?と勘ぐってしまいます。

・・・と思ったらスミスのこの作品には楽曲の出どころが詳しく書かれておりましたねぇ。 でもこのCDの場合は
同じ曲が7曲入っている特殊なものなので 元々のリリース情報を載せないでどうする?といった感じだし
それより前項までの作品と決定的に違うのは 本作はリアル・タイム作品では無く再発盤であるという事で
やはりリアル・タイム作品だと出どころを書けない事情がありそうですよ・・・とまた勝手な事を言っておきます。

「ジス・チャーミング・マン」はシュープリームスの「恋はあせらず」みたいな軽快なモータウン・ビートの曲で
ロック基本楽器によるシンプルな演奏ですが フレーズのひとつひとつがきらめくジョニー・マーのギターと
何だかモゴモゴとしがらもサビ前に「アッ!」と裏声で合いの手が入ったりする変態的なモリッシーの歌声が
とても上手く絡んだ名曲で スミスを代表する1曲・・・つまり1980年代の英国を代表する1曲でもあります。

そんな名曲でもスミスはモリッシーのヴォーカルが気持ち悪いので嫌いという人も多く 僕も彼のヴォーカルは
うわぁ気持ち悪っ!となりますが 嫌いじゃないですよ。 むしろ好き。 この気持ち悪さこそスミスですからね。

まあそれにしても「ジス・チャーミング・マン」には色々なヴァージョンがあったのですねぇ。 
4 5曲目を収録したリミックス12インチなどはけっこうなレア盤であったので こうやって聴けて有難いですが
スミスのようなバンドにリミックスというのは今思うと斬新ですねぇ。 1980年代は商業ロックの時代なので
リミックスのロング・ヴァージョンなんて縁の無さそうな音楽性の人たちも みーんな無駄に12インチを出して
例えばブルース・スプリングスティーンのリミックスなんかもホント意味不明ですよ。 ・・・そして今思うと斬新!

で 「ジス・チャーミング・マン」を7ヴァージョン連続聴きしましたが 僕の腐った耳では1曲目と2曲目の違いが
全くわかりませんし 3曲目と7曲目も同じように聴こえ 聴き比べもできない僕の耳はリアルに腐ってまーす。
しかし耳は腐っていても この7連続聴きで「ジス・チャーミング・マン」の隙間はバッチリ埋まりましたね。

でも隙間が埋まってもあまり嬉しくないのはどうしてでしょう。 そう さすがに7連続はキツイぜ! 飽きるぜ!
そこで残りの8〜10曲目で気分転換。 これらは全部どれもA面では無理そうなB面的な地味さのあるB面曲で
このようなB面曲を聴くと 今度はきらびやかなA面曲の「ジス・チャーミング・マン」が聴きたくなり7連続聴き。
また7連続がキツいので8〜10曲目を聴いたら地味なので1曲目に戻り・・・と何度も繰り返し聴くハメに。
これだけ連続して聴けば隙間産業盤としての役割は充分果たしていますね・・・さてじゃあもう1回聴くかな。
 

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