1980年代〜1990年代前半の初期のコンパクト・ディスクというのは音がダメらしく
ダメな音を解消するためリマスター盤なるモノが続々と登場していますね。
しかしリマスター盤が出ても買い替えしない派の僕は 初期のコンパクト・ディスクと
最近のリマスター盤を聞き比べていないので どこがどうダメなのかがわかりませんよ。
いや聞き比べ以前に あまりにも耳クソたまり過ぎの耳が悪臭を放っているので
何を聴こうが音の良し悪しなど判断できない いわゆる腐った耳なのですけどね!
リマスター盤が・・・とか言っているそこのキミも本当は腐った耳の持ち主なんじゃないのかい?
そんなキミのためにブリティッシュ・フォーク名盤を初期のコンパクト・ディスクで紹介しますよ。


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SHIRLEY COLLINS AND THE ALBION COUNTRY BAND
「NO ROSES」 (1971)

英 MOONCREST CRESTCD 011 (CD/1991)

1 Claudy Banks
2 The Little Gypsy Girl
3 Banks Of The Bann
4 Murder Of Maria Marten
5 Van Dieman's Land
 6 Just As The Tide Was A 'Flowing
 7 The White Hare
 8 Hal-An-Tow

 9 Poor Murdered Woman

アルバム・タイトルの「ノー・ローゼス」の響きがとても素敵なエレクトリック・トラッドの定番にして名盤!
このムーンクレスト社製品はどこにもリマスターの文字が無い正真正銘(?)の初期のコンパクト・ディスクで
その後リマスター盤や紙ジャケも出て・・・いや 調べていないので記憶だけですが確か出ていました。

ベテラン女性トラッッド・シンガーのシャーリー・コリンズとそのバック・バンド的な名義の作品ですが
アルビオンと名のつくバンドはこの後アシュリー・ハッチングスが中心になり続々と発表して行く事になり
これもアシュリー・ハッチングス主導の作品のようですね。 またアルビオン・カントリー・バンドのメンバーは
固定メンバーではなく 曲によりトラッド方面の人〜トラッド方面じゃない人と沢山参加しています。

アシュリー・ハッチングスはフェアポート・コンヴェンションを脱退し結成したスティーライ・スパンも脱退して
この「ノー・ローゼス」を出し その後モリス・オンやら何やら1970年代は色々とやっていて面白いです。
そのどれもが聴き所の多いアルバムで もう色んな事やりたくてやりたくて仕方無かったのでしょうね。

作品の内容はトラッド曲をエレキ・ギターやドラムスなどのロックな楽器を使って演奏するという
典型的なエレクトリック・トラッドで このテの作品にしてはけっこう軽やかで明るく聴きやすいです。
この軽やかな音を聴くと更にディープにトラッドに向かう為にスティーライ・スパンを辞めた訳では無さそうで
シャーリー・コリンズと一緒にやるために辞めたのかな? そう スティーライ・スパンの方がキッツいですよ!

でも当然トラッドなのでキッツさも少々あるけど 最もキッツいのはシャーリー・コリンズのヴォーカルでしょうか。
彼女の歌声は甲高くて美しいタイプだけど 両頬に綿を詰めて歌っているかのようにモゴモゴしていて
このモゴモゴは何だか知らないけれど「姉御肌」を感じるし イヤーな歌声に響く瞬間もあります。
いや 僕の耳が腐っているので「姉御肌」とか意味不明なモノを感じてしまうのかも知れませんけどね。

でもどうせキミの耳も耳クソたまり過ぎで悪臭を放っている腐った耳だろう? そんな腐った耳のキミは
無駄に「姉御肌」を感じるべきだし そんな腐った耳のキミは 今手元にある最新のリマスター盤なんか
処分してむしろ初期のコンパクト・ディスクに買い替えるぜ!くらいの勢いが望まれるところです。

The Albion Band 「Rise Up Like The Sun」(1978)を書いたページ・・・第62号
 


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FAIRPORT CONVENTION 「FULL HOUSE」 (1970)
米 HANNIBAL HNCD 4417 (CD/1992)
1 Walk Awhile
2 Dirty Linen
3 Sloth
 4 Sir Patric Spens
 5 Flatback Caper
 6 Doctor Of Physick

 7 The Flowers Of The Forest

そのアシュリー・ハッチングスが脱退したフェアポートですが ついでに(?)素晴らしき女性ヴォーカリストの
サンディ・デニーも脱退してしまった為この5thはヴォーカルよりも演奏部分に聴き所が多い作品になりました。

2曲目と5曲目はインストだし ヴォーカル入りの3曲目などでも非常に長い間奏をダレる事無く聴かせてくれ
ホント素晴らしい演奏が詰まっています。 ヤニ臭くて古いヴィンテージ感のあるデイヴ・スワブリックのフィドルや
霧のロンドンの曇り空を切り裂くが如きリチャード・トンプソンのメタリックなギターは凄い事になっていますよ。

クレジットを見ると 4 5 7曲目がトラッドで 残りの曲もトラッド的な味付けが顔を覗かせるのですが
トラッドだとかトラッドじゃないとか関係なく 充実した演奏を聴かせるナイスなロック名盤の内の1枚ですね。
昔聴いていた時は この充実の演奏の放つ緊張感に固まってしまって あまり好きになれなかったのですが
今の耳には何て素晴らしいアルバムなんだ!と感じています。 まあもちろん腐った耳ですけど・・・。

で ハンニバル社のこのCDもどこにもリマスターの文字が無い正真正銘(?)の初期のコンパクト・ディスクで
その後ボーナス曲入りリマスター盤が出て紙ジャケも出たので こんな初期のCDの価値は下がる一方ですよ。
何々? 今や紙ジャケだろうがボーナス曲入りだろうがリマスター盤だろうが CD自体の価値が無いって?
確かに! 近年のCDの売り上げを見ても 相次ぐCD屋の閉店を見ても そんな流れになりつつあります。

だから逆に今こそ初期のコンパクト・ディスクを入手すべきでしょう。 そう ヤニ臭くて古いヴィンテージ感のある
スワブリックのフィドルと共に初期のコンパクト・ディスクの古いヴィンテージ感を楽しむ位の気概が必要です。

フェアポート・コンヴェンションを書いたページ 「Unhalfbricking」(1969)・・・第6号
「The Bonny Bunch Of Roses/Tipplers Tales」(1977/1978)・・・第36号
「The Cropredy Box」(1998)・・・第101号 「XXXV」(2001)・・・第60号
 


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SPIROGYRA 「BELLS, BOOTS AND SHAMBLES」 (1973)
独 REPERTOIRE RR 4137-WZ (CD/1991)
1 The Furthest Point
2 Old Boot Wine
3 Parallel Lines Never Seperate
4 Spiggly
5 An Everyday Consumption Song
 6 The Sergant Says
 7 In The Western World:
   a. In The Western World
   b. Jungle Lore
   c. Coming Back
   d. Western World Reprise

かつて メロウ・キャンドル チューダー・ロッジ そしてこのスパイロジャイラの3rdは女性ヴォーカル入りの
英国プログレッシヴ・フォーク3大アイテムと言われていました。 これはプログレ方面の人が言い出したようですが
3枚ともLP時代は入手困難なレア盤で 中古レコード屋の壁に7万8千円!とか9万5千円!とかで飾ってあり
「レアで凄いもの感」「神々しい何かを放つ感」を放っていて 僕もそれを眺めてとにかく凄い!と思っていました。

しかし3アイテムとも リマスター盤 紙ジャケCD そしてLP再発など 様々なかたちで再発された今となっては
「レアで凄いもの感」「神々しい何かを放つ感」は薄れ手軽に聴ける定番アイテム化してしまいましたね。
ドイツのレパートワー社はそのたぐいの作品をここまで定番化する以前にCD化してくれていて有難かったけれど
今となってはどこにもリマスターの文字が無い正真正銘(?)の初期のコンパクト・ディスクになってしまいました。

さて 英国プログレッシヴ・フォークの名盤として定着している本作ですが 8分超の1曲目から組曲風で
1曲の中で曲調が変化して アコースティックな味付けのあるプログレッシヴ・ロックといった趣です。
3曲目も割とフツーのフォーク・ロックかと思いきや2つの曲が組み合わさったような曲だし
7曲目などは約13分もあり 1曲の中に題名のついた4つのパートがあって完全組曲になっていますしね。

またヴォーカルは美声女性ヴォーカルのバーバラ・ガスキンが 美しい歌声を響かせたと思ったら
ゲロゲーロのカエル声のマーティン・コッカーハムが演劇的な節回しで歌い そこもプログレ度を高めています。

・・・とプログレ度100%かと思いきや そこは英国フォーク業界に名を轟かすセプテンバー・プロダクション作品。
2曲目や4曲目はアコギにチェロやフルートなどが絡み英国的な陰影を感じさせる室内楽風フォークです。
そこにバーバラ・ガスキンの美しき歌声が乗っかるときたら こんなモン クラクラするしかないでしょう。
 
マーティン・コッカーハムがメインに歌うシンガー・ソングライター風フォーク・ロックの6曲目もとても良いけど
このゲロゲーロなカエル声・・・リマスター盤で聴いたら本当にカエルが歌っているかのように聴こえたりしてね!
いや カエルが歌っているのは聴きたくないなぁ。 だからこそ音のはっきりしない初期のコンパクト・ディスクで
カエル声を和らげてもらわないと。 さあ今こそ初期のコンパクト・ディスクでこの名盤を聴くべきでしょう。

スパイロジャイラを書いたページ 「Burn The Bridges」(2000)・・・第17号
 


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DONOVAN 「A GIFT FROM A FLOWER TO A GARDEN」 (1968)
エピック・ソニー ESCA 7537 (CD/1994)
wear your love like heaven
1 Wear Your Love Like Heaven
2 Mad John's Escape
3 Skip-A-Long Sam
4 Sun
5 There Was A Time
6 Oh Gosh
7 Little Boy In Corduroy
  8 Under The Greenwood Tree
  9 The Land Of Doesn't Have To Be
 10 Someone Singing
 for little ones
 11 Song Of The Naturalist's Wife
 12 The Enchanted Gypsy
 13 Voyage Into The Garden Screen
 14 Isle Of Islay
 15 The Mandolin Man And His Secret
 16 Lay Of The Last Tinker

 17 The Tinker And The Crab
 18 Window With Shawl (A Portrait)

 19 The Lullaby Of Spring
 20 The Magpie
 21 Starfish-On-The-Toast
 22 Epistle To Derroll

このドノヴァンの作品は1994年のコンパクト・ディスクなので 今まで紹介したのと比べたら新しく
・・・はないよなぁ。 今年が2010年だから もう16年も前のCDだもんねぇ。 そんなんでこれも当然
どこにもリマスターという文字の無い正真正銘(?)の初期のコンパクト・ディスクとなっております。

当初1967年にアメリカでバラ売りされた「Wear Your Love Like Heaven」と「For Little Ones 」の
合体版2枚組がこの「A Gift From A Flower To A Garden」ですが この2枚組みヴァージョンが
ドノヴァン本人が望んだかたちという事で CDではバラ売りヴァージョンは存在しないようです。
いやこの初期のコンパクト・ディスクで満足している腐った耳の持ち主の僕は最近のCD化情報を
チェックしていないので ちゃんと調べればバラ売りのCDも出ているのかも知れませんけどね。 

「Wear Your Love Like Heaven」の方はジャージーな雰囲気があり 程よいスゥイング感が心地良く
ジャージーと言っても全編に渡りゆったりとしたお昼寝スゥイング・ポップといった趣で凄く良いです。
フルートやピアノやオルガンなどが効果的に入るのもナイス!で 特に3曲目と7曲目が好きですねぇ。

「For Little Ones 」の方は弾き語りに近いかたちの曲中心で マイナー調の曲も多く地味ですが
ドノヴァン得意技の英国おとぎ話フォーク全開でたまらないですよ。 赤ん坊の泣き声や波の音や
鳥のさえずりなどの効果音もポイント高く アコギ&フルートで必殺な17曲目なんか即死でしょう。

・・・と「Wear Your Love Like Heaven」と「For Little Ones 」では出てくるサウンドが違いますが
両方とも靄のかかった森の奥からゆらゆらと漂ってくる音を聴いているかのような雰囲気があり
まるで妖精達の音楽界に招待されたかの如く幻想的な名盤! 凄い傑作になっています。

でもこのゆらゆら漂う感じはリマスター盤で聴くと音がくっきりはっきりしてあまり感じられないのかもね。
そう考えると初期のコンパクト・ディスクを所有していて良かったよ・・・いやいや耳クソたまり過ぎの
腐った耳で聴いているせいで くっきりはっきり聴こえずに ゆらゆらと漂うように聴こえるのかもね。

そしてこれだけは言いたい。 リマスター盤が・・・とか言っているそこのキミも本当は腐った耳の
持ち主なんじゃないのかい? どうなんだい? ねえ かっこつけないで白状しちゃいな!

ドノヴァンを書いたページ 「Open Road」(1970)・・・第22号 「Pied Piper」(2002)・・・第60号
 

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