なんですか やっぱりアメリカっていうのは芸能人にとっては魅力的なのですかねぇ。
ちょっと考えただけでもイギリスのビートルズという有名バンドに在籍していたジョン・レノンとか
イギリスのホリーズという有名バンドに在籍していたグラハム・ナッシュとか
英国臭放ちまくりの英国フォークのブリジット・セント・ジョンもニューヨーク在住だし
大西洋を渡って活動の場をアメリカに移した人は とにかくたくさんいますよね。
ただこれらの人ってアメリカ人から見たら 異国からやってきた外タレ芸能人なので
ニューヨークでブリジット・セント・ジョンを見かけて「あっ!外タレだ!」って言うんだろうなぁ。
いやいやアメリカ人が日本語で「あっ!外タレだ!」なんて言うはずないので
英語で「Oh! Gaitare!」って言うのでしょね。


AtlanticCrossing.jpg
ROD STEWART 「ATLANTIC CROSSING」 (1975)
ワーナー・パイオニア P-6547W (LP)
fast side
A1 Three Time Loser
 2 Alright For An Hour
 3 All In The Name Of Rock 'N' Roll
 4 Drift Away
 5 Stone Cold Sober
 slow side
 B1 I Don't Want To Talk About It
  2 It's Not The Spotlight
  3 This Old Heart Of Mine
  4 Still Love You
  5 Sailing

どうよ このジャケット? アメリカなんてちょろいモンだぜ! 大西洋を一跨ぎ! 脇にはサッカー・ボールを
抱えているし ジャケットを見開くと長く伸びたマフラーの先には小さくスコットランド国旗がたなびいていて
アルバム・タイトル ジャケット共に「イギリス人がアメリカへ渡って作ったアルバム」を強調しています。

ただひとつ残念な事はこの作品がロッド・スチュワートのアルバムだという事なんだよなぁ。
そう ロッド・スチュワートとかエリック・クラプトンとかジェフ・ベックとかは最も恥ずかしいオヤジ・ロックなので
ヒップでクールでとんがった若いヤングは間違っても絶対に手を出してはいけないのがお約束ですよね。
特にB5に有名曲「セイリング」などが入ったこんな作品は 輪をかけてホントに絶対購入してはいけません。

もちろん僕もヒップでクールでとんがった若いヤングを自称しているので そんなの手を出すはずありません。
あれ? でもなぜか手元にあるんだこれが。 そうなんです 間違って購入しちゃってさぁ・・・ああ間違った!
いや 間違っても購入してはいけないのに間違ったとはこれいかに!・・・だって聴きたかったんだもーん。

A面「ファスト・サイド」はゴージャスでイカれたロケンローの連発で ロッドのハスキーなヴォーカルは
ホントこういうイカれたロケンローに良く合っています。 どの曲も聴きやすくてカッチョ良くてとても良いです。

B面「スロー・サイド」はスロー〜ミディアム・テンポの曲が連発され アコースティックな味付けがあったり
ストリングスが入って盛り上げてくれたりします。 イアン・マシューズやエブリシング・バット・ザ・ガールも
やっていたB1や ヘロン様もやっていたB3とか とても素敵な選曲です。 最後のB5はもうホントこの曲を
聴いている事自体が恥ずかしくなってしまう「セイリング」ですが 実はこーゆー曲こそ最高なのですよ!

こっそりとこのアルバムを評価すると傑作!で いまどき日本盤中古LPなんかだとカス盤価格で買えるので
こんなオヤジ・ロックなんて聴けるか! というヒップでクールでとんがった若いヤングにこそ聴いてもらって
その良さにびっくり仰天して欲しいです。 でも絶対購入してはいけないので こっそり購入しましょう。
 


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ALBERT HAMMOND
「IT NEVER RAINS IN SOUTHERN CALIFORNIA」 (1972)

ソニー・ミュージックエンタテインメント EICP 879 (CD/2007)

 1 Listen To The World
 2 If You Gotta Break Another Heart
 3 From Great Britain To L.A.
 4 Brand New Day
 5 Anyone Here In The Audience
 6 It Never Rains In Southern California
 7 Names, Tags, Numbers & Labels
 8 Down By The River
 9 The Road To Understanding
10 The Air That I Breathe
bonus track
11 For The Peace Of All Mankind

アルバート・ハモンドにはアメリカ西海岸のAOR系シンガー・ソングライターのイメージがあるのですが
ライナーノーツによると彼はイギリス生まれでスペイン〜イギリスでの音楽活動を経てアメリカに渡った人で
アルバム・タイトル曲の6曲目が大ヒットし 彼は大西洋を渡ったおかげで大成功したんですねぇ。

サウンドはロック基本楽器の演奏によるアメリカ西海岸を感じさせるフォーク・ロックといったところですが 
カントリー色はあまりなく あとはコーラス隊がけっこう大げさに入り ストリングスなどが入る曲もあります。

1曲目から 少々ハスキーでゲロゲーロ系のカエル声やメロディー展開がキャット・スティーヴンス似だなぁ
と思っていたら2曲目の歌いだしの「ダラララー」がキャット・スティーヴンスの「Wild World」って曲にそっくり!

タイトルからして大西洋を渡った俺ってどうよ?な3曲目はミドル・テンポながら疾走感があってとても良い!
そして大ヒット曲の6曲目は僕の中ではアメリカ西海岸サウンド定番のフォーク・ロック曲になっていて
こんなモン ポップなフォーク・ロックの理想形でしょう。 それ程良くできていて もちろん永遠の名曲です。

優しげに流れ 後半盛り上がる10曲目はホリーズがカバーしていましたねぇ。 この10曲目だけじゃなく
ヒット曲が欲しいポップス系の人にとってこのアルバムは全曲カバーしたくなるような素敵な曲ばっかりですよ。
実際彼は楽曲提供の活動も多く1970〜80年代にたくさんヒット曲を送り出しています。 なお作詞・作曲は
ハモンド&マイク・ヘーゼルウッドのソングライター・チーム名義で 本作も全曲この2人の名義になっています。

邦題「落葉のコンチェルト」のボーナス曲 11曲目は日本でのみヒットした曲で 元々はこの次のアルバムに
入っていた曲だけれども サービスで無理矢理ボーナス追加したのですかねぇ。 誰もが1度は耳にした事が
あるであろうこの曲 AOR度も高いけれど 切ないメロディーが沁みる歌い上げ曲で どうしようもなく名曲!
前項のロッドの「セイリング」同様 聴いている事自体が恥ずかしいけど 実はこーゆー曲こそ最高なのです。
でもこの曲もサビの部分がキャット・スティーヴンスの「Father And Son」って曲に似たメロディーでよぉ・・・
そんなんで やはり どこまでもキャット・スティーヴンス似なアルバート・ハモンドなのでした。
 


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ALLAN TAYLOR 「THE AMERICAN ALBUM」 (1973)
米 UNITED ARTISTS UA-LA078-F (LP)
A1 Get Down
 2 Something's Changed
 3 Old Joe
 4 The City
 5 The Story
 B1 My Father's Room
  2 Always You
  3 Lavinia Forsythe-Jones
  4 Only A Few
  5 Lead On, I'll Follow (Belfast '71)

これはアラン・テイラーがアメリカ滞在中にレコーディングしたアルバムで アメリカン・ドリームを掴むぜ!と
意気込んでイギリスを離れアメリカに赴いたのでしょうかねぇ。 ところがアルバム・タイトルといいジャケットといい
イギリスのファンに向けて「ボク、アメリカデ元気ニヤッテルカラ、心配シナイデネ」的でどーもいけません。
こんな浮かれた旅行気分じゃ上手くはいかず 結局彼のアメリカ時代のアルバムはこれ1枚で終了しました。
・・・いや 浮かれた旅行気分とか言っているのは僕の勝手な妄想なので 実際はどーなのか知りませんよ。

さて そんなこのアルバム。 まあ 王道のよくある穏やかで地味なシンガー・ソングライター作品なのですが
アメリカ録音を象徴するかのようにほのかにカントリー臭が漂います。 どカントリーな感じでは無いけれど
元々ちょっとトラッド・シンガー風の節回しで歌う彼なので そんな節回しでカントリー色のある曲を歌うと
クソ真面目で面白味の無いアメリカのカントリー・シンガーが歌っているように聴こえてしまったりもしますねぇ。
おかげで何も情報も無いままA2とか聴いたら「何?このつまらないカントリー歌手は・・・」となる事うけあい!

いやいや 実はそんなところがこのアルバムを魅力的に響かせてくれている部分なのですよ。
これ以前の英国時代のアルバム「Sometimes」と「The Lady」が 英国的な美しさが漂うけれど聴いていると
緊張して金縛りになりそうな雰囲気があるのに対し 本作はアメリカンな開放感がありリラックスして聴けます。
僕は特にのんびりとした感じのB面の流れが好きですが A面も聴けば聴くほど どんどん良く響き出します。

録音はナッシュビルとロサンゼルスで 大量の演奏者やコーラス隊が30人くらいクレジットされていますが
知ってる名前がほとんど無く有名人はスティーヴ・ミラーくらい。 どうなんでしょう 皆さん表舞台に登場しない
スタジオ・セッションマンなのかな? まあ ちゃんと見ていないので重大な見落としがあるかも知れません。
あとはコーラス隊の中に第55号でレヴューしたメアリ・マッカズリン(読み方適当)がいてちょっと嬉しかったー。

この作品でアメリカン・ドリームを掴めなかった彼は意気消沈して帰国。 これはもうソロじゃ無理だなぁと
思い切ってケイジャン・ムーンというバンドを始めます・・・が これも1枚で終わってしまい又々意気消沈!
・・・いや意気消沈とか言っているのは僕の勝手な妄想なので 実際はどーなのか全く知りませんからね! 
 


TheGreenFieldsOfAmericaLiveInConcert.jpg
THE GREEN FIELDS OF AMERICA 「LIVE IN CONCERT」 (1989)
米 GREEN LINNET GLCD 1096 (CD)
1 The Kerry Jig/Seamus Cooley's/Paddy's Green Shamrock Shore/Sligo Jack/Redican's
2 Kilkelly
3 medley of reels: The Maids Of Galway/The Reel Of Rio/Coyne's/
  Return To Miltown/Hunting The Boyne/Return Of The Maids
4 An Gaoth Andheas (The South Wind)
5 A Tribute To Ed Reavy - fling: Lovely Bannion/jig: Both Meat And Dhrink/
  hornpipe: The Fiddler's Wife/reel: The Ceilier/reel: Maudebawn Chapel/reel: The Hunter's House
6 Reynardine
7 Stick To The Craythur
8 reels: Gan Ainm/Mulhaire's/Walsh's/The Bucks OF Oranmore

大西洋を渡るといえばアメリカへ多くの移民が渡ったアイルランドでしょう。 そんなんでアイリッシュ物です。
この作品は1988年6月21日フィラデルフィアでのライブが収めれていて メンバーは ミック・モロニー
ロビー・オコンネル ジミー・キーン アイリーン・アイヴァース シーマス・イーガン・・・ここまでは楽器演奏者で
その他にステップダンサーのドニー&アイリーン・ゴールデン兄妹もクレジットされています。

内容はインスト曲とヴォーカル曲がバランス良く入ったアイリッシュ・トラッドの典型的なパターンの作品で
メンバーの内ミック・モロニーとロビー・オコンネルはアイルランド生まれで リーダー格のミック・モロニーは
1970年代にアメリカへ移住した「大西洋を渡る外タレ芸能人」です。 他の人はアイリッシュ系アメリカ人で
まあ皆さんアイリッシュ・トラッド方面ではよく名前を見かける有名な凄腕の演奏者たちですねぇ。

1曲目のメドレーに登場する「Paddy's Green Shamrock Shore」という曲もアイルランドからアメリカへ
向かう厳しい航海を歌った移民の歌ですが 2曲目の「キルケリー」がよおおおおおぉ!
アイルランド キルケリーにて 1860年 親愛なる息子ジョンへ・・・って手紙から始まり 最後の手紙は
アイルランド キルケリーにて 1892年 親愛なる兄さんジョンへ・・・と弟からの手紙になりました。
そう 大西洋を渡った息子に会いたいと32年間願いながら 結局会えずに父親は亡くなってしまったのです。

うーんこんな歌詞を読んだらもう涙ボロボロですが 更に涙ボロボロに拍車をかける情報として
この曲は実際にやりとりされた手紙を元に作られた曲なのです。 パッと聴くとただのマイナー調の地味な
フォークにしか聴こえないので どこかで訳詞をゲットして読んで泣きましょう。 劇的に泣けますよ!

その他 アン・ブリッグスやフェアポート・コンヴェンションもやっていた6曲目は のどかな田舎フォークの趣で
演奏者によってまったく違う曲に聴こえますねぇ。 聴き比べてみるのも楽しいかも・・・いや楽しく無いかも。
そして最後の8曲目のインスト・ダンス曲メドレーはスピード感バツグンに盛り上がり興奮のまま幕を閉じます。

しかし今思うと この「Green Fields Of America」くらいの時期から1990年代中頃まで大西洋を渡るアイリッシュ
大キャンペーンが張られた感がありますね。 第54号で書いたBBC製作の「Bringing It All Back Home」とか
トム・クルーズ主演の映画「遥かなる大地へ」とか ミュージカル「リバーダンス」とか・・・他にも色々ありました。
僕もこのキャンペーンに見事にハマりアイリッシュ物を聴きまくっていました。 リバーダンスは観てないけどね。
 

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