さてさて遂に史上最速の新譜LP情報が始まりますよー。
まあ「史上最速」とか言いながら半年〜数ヶ月前にリリースされたLPばっかりですが
入手した新譜作品を並べて語ってみるという 割とフツーな事は
やった事が無かったので ちょっとやってみたくなったのです。
そんなんで このページ史上では最速の新譜情報って事で許してチョンマゲ!


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PASTELS/TENNISCOATS 「TWO SUNSETS」 (2009)
英 GEOGRAPHIC GEOG37LP (LP)
A1 Tokyo Glasgow
 2 Two Sunsets
 3 Song For A Friend
 4 Vivid Youth
 5 Yomigaeru
 6 Modesty Piece
 B1 About You
  2 Boats
  3 Hikoki
  4 Sodane
  5 Mou Mou Rainbow
  6 Start Slowly So We Sound Like A Loch

これはスコットランドのパステルズと日本のテニスコーツとの共作アルバム。 パステルズは1997年に出た
名盤「イルミネーション」の後はリミックス盤とサントラ盤が出ていますが純粋なオリジナル・アルバムは無く
この新譜も共作なので 純粋なオリジナル・アルバムは相当長い事出ていない事になりますねぇ。

盤に針を落とすと A1はインスト曲で A2はテニスコーツのさやが日本語で歌う曲になっていて あれれ?
A3もさやが日本語で歌い ええぇー!そりゃないよ!・・・と 途中からステファンの音程が不安定で
ヨレヨレな歌声が登場し・・・涙が溢れそうになってしまいました。 後半のギター・ソロもステファンでしょうか?
ギターのヘタな人が弾くとこうなるという無茶な符割りと音色が逆に感動を呼び起こすナイスなギター・ソロです。
いや本当は誰が弾いているのかわかりませんが 誰が弾いていようと感動が全身を襲う名曲になっています。

曲名を見るとわかりますが A5「よみがえる」 B3「ひこうき」 B4「そうだね」・・・と これらの曲はテニスコーツの
さやが日本語で歌っていて その他A2とB5も さやが日本語で歌っているし 作者クレジットなんかを見ても
テニスコーツ主導の曲が多くて テニスコーツの作品にパステルズがゲスト参加しているかのような印象です。

A4 B2 B6はパステルズのカトリーナ・ミッチェルがへなちょこウイスパー・ボイスでメインに歌いますが
ステファンがメインに歌うのはジーザス&メアリー・チェインのカバーB1だけで ホントこれどーゆー事?状態。
パステルズそのものとも言えるステファンがあまり歌わないどころか 歌わない曲でもどこに参加しているんだ?
実はほとんど参加していないのか?と思える曲が多くてパステルズ・ファンからしたら歯がゆいですねぇ。

これでもしパステルズが若いヤングに人気のバンドであれば こんな内容許さん! テニスコーツ許さん!
とにかく絶対に許さん! 反社会的な行動さえも辞さない!・・・となる血気盛んなヤングもいそうでうが
1980年代から活動するパステルズのファンはみんな大人な年齢なので当然この内容でも許しちゃうのでしょう。

いや誰も「こんな内容許さん!」と言わないのであれば 大人な年齢であっても僕が言うつもりだったのですが
実はこのアルバムは凄く良くてねぇ。 基本は切ないメロディーと隙間のあるサウンドがゆったりと流れる
美しい響きのギター・ポップになっていて「イルミネーション」の路線を引きずってもいる名盤なんだああぁ!

もう パステルズでもテニスコーツでも パステニスコーツだろうがテニスコーステルズだろうが何でもいいや。
誰が演奏してるだとか歌っているだとか関係なく盤に刻まれた音のひとつひとつがとても美しく耳に入ってきて
おかげで最初何じゃこりゃ?だったジャケットさえも段々素敵に見えてきたぞ。 ヒャッホーイ!
特にA2とA3はホント輝ける名曲で ここのところ頭の中でこの2曲のメロディーがグールグル回っています。

パステルズのレヴュー
EP「Songs For Children」・・・第16号 2000/6/18 奥さん!あなたのお子さんは大丈夫ですか?
1st〜7thアルバムをレヴューしたページ・・・第64号 2003/2/26 パステルズ栄光の20年
サントラ盤「The Last Great Wilderness」・・・第80号 2004/1/11 流行語大賞とる勢いでフォロー沙汰
 


AroundTheWell.jpg
IRON AND WINE 「AROUND THE WELL」 (2009)
米 SUB POP SP 808 (LP)
A1 Dearest Forsaken
 2 Morning
 3 Loud As Hope
 4 Peng! 33
 5 Sacred Vision
 6 Friends They Are Jewels
B1 Hickory
 2 Waitin' For A Superman
 3 Swans And The Swimming
 4 Call Your Boys
 5 Such Great Heights
 C1 Communion Cups & Someone's Coat
  2 Belated Promise Ring
  3 God Made The Automobile
  4 Homeward, These Shose
  5 Love Vigilantes
  6 Sinning Hands
 D1 No Moon
  2 Serpent Charmer
  3 Carried Home
  4 Kingdom Of The Animals
  5 Arms Of A Thief
 E1 The Trapeze Swinger

アイアン&ワインは米国のバンド。 いやバンドといってもサム・ビームというヒゲ面オヤジの1人プロジェクトで
この2009年最新盤はシングルB面曲や未発表曲などで構成された編集盤になっています。
アルバムは4〜5枚は出ているのでしょうか? ディスコグラフィーを詳しく知りませんが 手元にある作品は
この編集盤の他に LPが3枚 ミニ・アルバムが1枚 そしてキャレキシコとの共作ミニ・アルバムが1枚で
アイアン&ワインをそれ程熱心に追いかけてはいないけれど 気付いたら割と沢山手元にありますねぇ。 

サウンドはアコギやバンジョーやスライド・ギターといった楽器をメインに使ったアコースティックな音で
そこにとても優しげに歌うささやき系のサム・ビームの歌声が乗っかります。 当然使用楽器からいっても
フォーク〜ブルース〜カントリーといったアメリカン・ルーツ色の濃いサウンドなのですが なぜかそれ程
アメリカン・アメリカンはしていません。 ささやきヴォーカルがアメリカン臭を薄めているのでしょうか。

A面 B面 C面はドラムレスの楽曲中心で 弾き語りプラス・アルファといった感じのタイプが多いです。
各曲のメロディーも穏やかで素直な展開があり そこに乗っかるサム・ビームの優しげな歌声が良いんだ。
次から次へと曲がそよ風のように流れて行く感じで非常に心地良く聴け いやぁホント良い流れだなぁ。
特にこの曲が最高!という曲も無いのですが そこが そよ風状態が持続し心地良く聴ける要因かもね。
このA〜C面が凄く良いので 編集盤ながらこのアルバムが僕のアイアン&ワインの第1位に躍り出ました。

D面はドラムスやパーカッション類が入った曲が多く 2007年のアルバム「シェパーズ・ドッグ」で展開された
同じフレーズが繰り返され 抑揚の無いメロディーでじわじわと迫ってくるブルース調の楽曲が中心です。

で これってLP3枚組ですが シングル・ジャケットに3枚入っていて モノとしては気合いが入っていません。
気合いが入っていないのに無駄に3枚組で 3枚目は片面1曲だけ収録という変則的な体制でよぉ。
このE面の曲は10分近くある長い曲だけれども 無駄に3枚組なせいで幅も太くなるし重さも増すわで
これは納得いかん!・・・かと言うとそんな事無くて 3枚組にしたおかげで各面の収録時間も丁度良いし
各面それぞれのカラーというものも出ているし LPで購入して良かった!と思わせる要素たっぷりなのです。
特にD面は独立していて正解ですよ! 2枚組で出ているCDで聴くと印象が変わる可能性アリですね。

以前チラリとアイアン&ワインを語った文章・・・2007年1月28日更新の表紙
 


DEVENDRA BANHART 「WHAT WILL WE BE」 (2009)
米 WARNER BROS. 520962-1 (LP)
A1 Can't Help But Smiling
 2 Angelika
 3 Baby
 4 Goin Back
B1 First Song For B
 2 Last Song For B
 3 Chin Chin & Muck Muck
 4 16th & Valencia Roxy Music
 C1 Rats
  2 Maria Lionza
  3 Brindo
  4 Meet Me At Lookout Point
 D1 Walilamdzi
  2 Foolin
  3 Welcome To The Island
  4 Pray For The Other Persons Happiness

米国のシンガー・ソングライター デヴェンドラ・バンハートの新譜はメジャーのワーナー・ブラザーズから。
2005年の「クリップル・クロウ」以降は妖しげな雰囲気を残しながらもポップで聴きやすい音になりましたが
この2009年の新譜でもその路線は続いており 誰でもすんなり聴けそうな作品になっています。

デヴェンドラ・バンハートなんてフリー・フォークあるいはフリーク・フォークの中心人物だからオエェー!
てな人もいるでしょう。 実は僕も一時期オエェー!となっていたけど そこはちょいとガマンして(?)
新譜が出たら聴くようにしていたら 今やこの人のセンスの良さにヤラれっぱなしになってしまっています。

何だか印象に残らない弾き語りのフォーク曲一辺倒だった初期作品では 彼の嫌がらせのように細かく
ビブラートするヴォーカルばっかりに耳が行ってイヤーな感じもありましたが「クリップル・クロウ」以降は
曲調も多彩になってバックのサウンドにも耳が行くようになったのでイヤーな感じも後退しています。
ただデヴェンドラの描いたジャケットの絵は拒否反応を示す人も多そうなイヤーな感じですけどね。

前作「スモーキー・ロールズ・ダウン・サンダー・キャニオン」収録の「フリーリー」程の決定的な名曲は
見当たりませんが「スモーキー・ロールズ・・・」で展開されたカリプソやレゲエやなどのリズムを持った
トロピカル路線の曲は本作でも多く入っていて 全体的にのどかに心地良ーい響きがあります。

しかしこんな聴きやすいとなると ミュージックステーションに出演して「海外からのお客様でーす」と
タモリにぞんざいに紹介され デヴィッド・ボウイの「スケアリー・モンスターズ」に入っていても良いような
ポップなロックのB4とかをかっこ良く演奏しちゃうかも。 そんな事になったらアイドル的な人気が出ても
何ら不思議では無いです。 ワイルドだけど優しそうな風貌が色男だし 女子に人気出そうですよ。

うーん その内本当にミュージックステーションに出演してしまいそうで怖い・・・いや別に怖くないけど
メジャーのワーナーへ移籍した影響はこれから出てくると思うので 覚悟しときましょう!

デヴェンドラ・バンハートのレヴュー
「Rejoicing In The Hands Of The Golden Empress/Niño Rojo」
 ・・・第109号 2005/12/31 母さん!事件ですよ!ヴァシュティですよ!
「Cripple Crow」・・・第141号 2008/7/6 お待たせしました 2006年ベスト10!
 


TheFall.jpg
NORAH JONES 「THE FALL」 (2009)
米 BLUE NOTE 509996 99286 1 1 (LP)
A1 Chasing Pirates
 2 Even Though
 3 Light As A Feather
 4 Young Blood
 5 I Wouldn't Need You
 6 Waiting
 7 It's Gonna Be
 B1 You've Ruined Me
  2 Back To Manhattan
  3 Stuck
  4 December
  5 Tell Yer Mama
  6 Man Of The Hour

この人はミュージックステーションで「海外からのお客様でーす ラヴィ・シャンカールの娘さんでーす」と
タモリにぞんざいに紹介されても全く違和感がありません。 海外の音楽はほとんど聴かないけれど
ノラ・ジョーンズとエンヤと女子十二楽坊のCDは持っている なーんて人も多そうですね。
・・・と 実際そんな人がいるかどうかわかりませんが ノラちゃんはその位メジャーなイメージがありますよ。

おしゃれなジャズ・ヴォーカル商法の1stの売り出し方にひっかかってしまい 僕も含め1stは全員購入し
日本でも大ヒットした訳ですが 2nd以降のルーツ・ロック路線は全然おしゃれじゃない渋ーい音でした。
トレンディーな女子は何これ?と思い オヤジ・ロック好きなオヤジはニヤリとするような音だったけれど
いやいやどうして 2nd以降も相変わらずトレンディーな女子からの人気もあるようで なによりですねぇ。

で この新譜はソロ名義では4枚目で 引き続き 2nd 3rdのルーツ・ロック路線の流れではあるものの
渋さは後退しポップさを増したギター系ルーツ・ロックですね。 2nd 3rdよりもっと現代的な雰囲気で
おかげで聴きやすくはあるけれど 果たして彼女のヴォーカルはこのサウンドに合っているのかなぁ。

ちょっとハスキーでザラつくヴォーカルは さりげなくさらっと歌っているようで表現力豊かなので 
本作のような現代的なギター系ルーツ・ロックを歌っているのを じっくりと真剣に聴けば聴くほど 
あばずれ声に聴こえちゃってねぇ。 やはりピアノ系のジャージーな曲の方がしっくり来るんだよなぁ。
ねえ ノラちゃん。 次作は1stのジャージー路線を是非! トレンディーな女子から更に人気出ますよー。

ところで重症の音楽好き患者の間では 犬ジャケは名作!だとか 馬ジャケは名作!だとか
根拠の無い思い込みが蔓延していますが 本作は僕の意見では全然名作では無いですね。
ただこの犬ジャケはCDで見るよりサイズの大きいLPで見るとよりいっそう素敵なんですよっ!
特大ポスターも封入されているし やっぱりLPだと何だか嬉しいな! 嬉しいな!
そして次項のディランは馬ジャケだ! 果たして名作かな? 根拠の無い思い込みかな?
 


ChristmasInTheHeart.jpg ChristmasInTheHeartCD.jpg
BOB DYLAN 「CHRISTMAS IN THE HEART」 (2009)
米 COLUMBIA 88697 57323 1 (LP)
A1 Here Comes Santa Claus
 2 Do You Hear What I Hear ?
 3 Winter Wonderland
 4 Hark The Herald Angels Sing
 5 I'll Be Home For Christmas
 6 Little Drummer Boy
 7 The Christmas Blues
 8 O' Come All Ye Faithful (Adeste Fideles)
 B1 Have Yourself A Merry Little Christmas
  2 Must Be Santa
  3 Silver Bells
  4 The First Noel
  5 Christmas Island
  6 The Christmas Song
  7 O' Little Town Of Beathlehem

ジャクソンさんが亡くなってしまったり ビートルズさんのリマスター盤が出たり 酒井さんが失踪したりと
2009年は音楽界も激動の年でしたねぇ。 そしてディランさんも年2枚の新録アルバムを出すという
近年希に見るハイ・ペースでのリリースで その1枚がクリスマス・アルバムというのもびっくりでした。

だいたいディランがクリスマス・アルバムを作るという事自体 誰もが不意をつかれた意外な事件でした。
それもどこかで聞き覚えのある割と有名なクリスマス・ソングを歌っていて ええぇー!何じゃこりゃ?
とてもオーソドックスなポピュラー・ヴォーカルのクリスマス・アルバムかの如くのバックの演奏で
クリスマスの定番サウンドの鈴の音もシャンシャンシャンと入ってしまい ええぇー!何じゃこりゃ?
そして彼のあまりにも潰れ過ぎて あまりにもお聞き苦しい歌声がヒド過ぎで おいおい何だよこれは?

ホントこの歌声はヒドい!としか言いようがなく 潰れているというより痰がからんでカァーッ!ペッ!だし
鈴の音シャンシャンや女性コーラス隊といった聖なる夜を煽るサウンドと全然マッチしていません。
ジャケットに貼られたステッカーに「大変お聞き苦しい歌声ですがアーティストの意向によるものです」
くらいは印刷してもらって 聴く前に心の準備をさせてくれるくらいの措置が必要な歌声です。

で こんなモン聴かされた日にゃーもう笑うしかないので もちろん聴いた瞬間大爆笑してしまいました。
音楽を聴いて凄く感動した時には泣く事もあるでしょう。 では笑ってしまうというのはどうゆう事でしょう。
別に笑わせようとはしていないのに笑ってしまうのは ある意味泣く以上の感動ではないでしょうか。
つまりどういう事かというとこの作品は大傑作という事です。 クリスマスに聴けばなお一層笑えますが
クリスマスでなくても笑ってしまう大傑作なので クリスマスを過ぎた今でもガンガン聴くべきでしょう。

しかしデビューから50年(!)近く経ってもこんな傑作を届けてくれるなんてホント凄いジジイですねぇ。
そして2009年のもう1枚の新録作品「Together Through Life」も良いので2枚合わせて聴くべきです。
「Together Through Life」もこのクリスマス・アルバムもLPを買うとCDももれなく付いてくるという
お買い得商法なので ターンテーブルを所有していない人こそ無駄にLPを買ってCDで聴きましょう。

ところで今回登場したパステルズ/テニスコーツとアイアン&ワインのLPには携帯音楽プレーヤー用に
圧縮音源をダウンロードできるコードが付いていましたが それに対してメジャー・レーベルからの
デヴェンドラ・バンハートとノラ・ジョーンズにはそのような特典は付いていませんでした。
もちろんマイナー・レーベルでもそういう事をやらない方針のレコード会社もあるでしょうが
こうやって並べてみると メジャーなレコード会社って了見が狭いなぁと感じてしまいました。
そんな中メジャー・レーベルでありながらCDそのものを付けてしまうコロムビアの気前の良さったら!
いやレーベルの方針じゃなくてボブ・ディラン本人の意向だろうな。 ああ ディラン・・・凄いジジイだ!

2009年6月9日更新の表紙で「Together Through Life」の事も書いています。
 

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