皆さん素晴らしいものを世に送り出そうと一生懸命音楽を作っているのだろうけど
やはりどーしてもダメなモノが出来てしまう事ってあるんです。 結果それらはカス盤化して
中古盤屋でカス盤価格で売られてしまいます。 また内容が良くても在庫過多でカス盤化してたり
内容以前に知名度が低すぎて誰も買ってくれずカス盤価格で売っているモノもありますよ。
さあそこで問題は1980年代後半から1990年代前半のLPからCDへの移行期の作品です。
中古CDはカス盤価格で売っているけれど 中古LPはそれなりに高いとか
またその逆もあったり 両方カス盤価格で汚物扱いされているとか・・・作品の内容というより
CD世代の若いヤングとLP世代の加齢臭を放つオヤジとの世代間断絶も感じられるのですが
そこら辺の検証がまったくなされておらず こんな事ではカス盤の将来が心配です。
いや カス盤の将来なんてどーでもいいけど ただこれだけは言える!
当時CD世代の若いヤングだったアナタも 今では加齢臭を放つオヤジになり
当時加齢臭を放っていたオヤジは もう初老だし 全員頻尿ですからね!


MariaMcKee.jpg
MARIA McKEE 「MARIA McKEE」 (1989)
独 GEFFEN 9 24229 1 (LP)
A1 I've Forgotten What It Was In You
   (That Put The Need In Me)
 2 To Miss Someone
 3 Am I The Only One (Who's Ever Felt This Way ?)
 4 Nobody's Child
 5 Panic Beach
 B1 Can't Pull The Wool Down
    (Over The Little Lamb's Eyes)
  2 More Than A Heart Can Hold
  3 The Property Is Condemned
  4 Breathe
  5 Has He Got A Friend For Me ?

1980年代米国のルーツ・ロック・バンド ローン・ジャスティスのヴォーカルだったマリア・マッキー様。
ローン・ジャスティス時代からそのルックスの良さで男共をメロメロにしてきたマリア様ですが
彼女の作品も今やカス盤コーナーの定番でしょうか。 いや CDはカス盤コーナーでけっこう
見かけますがLPはあまり見かけませんねぇ。 でも見かけたらカス盤価格で転がっていそうなので
何かきっかけがあって 若いヤングから再評価されないと カス盤コーナー定着化が懸念されますよ。

これはローン・ジャスティス解散後の1stソロで R&Bやロケンローやカントリーやゴスペルなどの
要素のある曲をソウルフルなヴォーカルで歌うルーツ・ロック作品になっています。
イキのいいバンド・サウンドでぶっ飛ばす感じよりも 落ち着いてしっかり歌い上げる曲が多くて
バンド・メンバーの1人からソロに転向した事を裏付ける「ソロ・アルバム」を感じさせる作品ですねぇ。

まあこの作品は何か特別な事もやっていないし「フツーのルーツ・ロック」の内の1枚でしょうね。
こういう作品のいい所はフツーが故にいつの時代でも古びる事無く聴ける所なのですけど
聴く者をグイグイと引き込む「何か」があると更にその上の名盤・傑作の仲間入りをする事ができますよ。
この1stにはその「何か」は無いなぁ。 カス盤コーナー行きも納得のフツーのルーツ・ロック作品です。

ところがところがこの数年後に出た2ndになると こちらもまたフツーのルーツ・ロック作品でありながら
聴いていると いてもたってもいられなくなってしまう興奮度1,000,000%の傑作で・・・面白いですねぇ。

B5はリチャード&リンダ・トンプソンのカバー。 1989年作にこの曲というのは渋い選曲です。
クレジットが載っていないので定かでは無いけれど B4の空気を切り裂くナイフのような音色のギターは
リチャード・トンプソンが演奏しているっぽいなぁー。

マリア様の大傑作2nd「You Gotta Sin To Get Saved」(1993)のレヴュー
第13号 2000/5/1 そそるジャケットに社会復帰不可能状態
 


Motive.jpg
RED BOX 「MOTIVE」 (1990)
独 WEA 9031-72614-1 (LP)
A1 Train
 2 Moving
 3 Hungry
 4 The Clapping Song
 5 Soldier Of Love
 B1 The Power Is Down
  2 Now Ask
  3 Casbah
  4 Walk On My Hands
  5 New England

1980年代サウンドの英国ポップスにインディアン伝統のパウワウ・シンギングやゴスペル風の大合唱を
ぶつけた天才的な名曲揃いの傑作1st「The Circle & The Square」で僕を虜にしたレッド・ボックス。
その1st発表後は音沙汰が無くなってしまい 忘れた頃に突然出た2ndがこの「モーティヴ」です。

2人組みだった1stからメンバーがサイモン・トゥールソン・クラーク(読み方適当シリーズ)1人だけになり
最も特徴的だった大合唱も入っていなくて 1st程の凄い内容でも無く 忘れた頃にひっそりと発表され
LPからCDへの移行期のしのぎ合い(?)もあって 悪条件が重なってあまり売れなかったんだろうなぁ。

おかげでLPでもCDでも中古で1度も見た事がありません。 でも希少だからという理由で高値をつけても
そこまでの内容では無いので高額購入する人はいなさそうで あれば安く売っていそうなアルバムです。
だいたいサイモン・トゥールソン・クラークのアップ写真のジャケットからして購入する気がおきませんよね。

1stがあまりにも素晴らし過ぎたので イマイチに聴こえてしまうこの2ndですが 1stのサウンドから
大合唱を抜いたらこうなりましたという感じもあり 中々味わい深い英国ポップスではあります。
エレポップ風味もあるシャープで洗練された音の感触はドリーム・アカデミーというバンドに近い雰囲気で
ヴォーカルもドリーム・アカデミーに似た「おしゃれな都会派ポップス声」で歌っていて似ていますねぇ。

A3 A4 B2 あたりは1stに入っていても違和感の無い音で レッド・ボックスだなぁという感じだし
楽曲自体のメロディーなんかはどれも素晴らしく 実は悪い曲は1曲も入っていないのです。
もし1990年発表ではなく 今出ていたらもっと別なアレンジで凄いアルバムが出来上がるかもなぁ。
良くも悪くも 1990年という LPからCDへの移行期のしのぎ合いの時代の音になってしまい
しのぎの合間で埋もれてしまった残念なアルバムです。 皆さん カス盤価格で探してやってください。

・・・と ここでニュースです! レッド・ボックス復活の3rdアルバムが近日中にカミング・スーン!
この素晴らしいポップ・センスが2009年という時代の音で聴けるとは!・・・母さん!また事件です! 

大傑作1st「The Circle & The Square」(1986)とシングル盤「Saskatchwan」(1984)のレヴュー
第8号 2000/3/5 死ぬ程名曲サスカッチェワンを求めて
 


OurTimeInEden.jpg OurTimeInEdenBack.jpg
10,000 MANIACS 「OUR TIME IN EDEN」 (1992)
独 ELEKTRA 7559-61385-1 (LP)
A1 Noah's Dove
 2 These Are Days
 3 Eden
 4 Few And Far Between
 5 Stockton Gala Days
 6 Gold Rush Brides
 7 Jezebel
 B1 How You've Grown
  2 Candy Everybody Wants
  3 Tolerance
  4 Circle Dream
  5 If You Intend
  6 I'm Not The Man
この米国バンド10,000マニアックスなんてのは今やカス盤価格で見ない日は無い!くらいの勢いですが
当時それなりに人気はあったので沢山売れただろうから それに比例して中古盤の出回る枚数も多くて
需要と供給のバランスが崩れてカス盤化しているタイプ・・・って事でいいでしょうかねぇ。

ただこの5thアルバムは中古LPをめったに見かけません。 1992年ともなるとLPのプレス枚数が
確実に減ってきた時期で LP自体の絶対数が少ないので中古をめったに見かけないのでしょうか。
そうそう 僕もこのアルバムは店の人にLPで欲しいので入荷してくれとお願いして新品を購入したのです。
・・・今は無き新宿のラフ・トレードという店でした。 当時の僕の新宿でのレコード屋巡りは
今は無きシスコ〜今は無きラフ・トレード〜今もあるヴィニール・ジャパンと回るのがいつものルートで
時間がある時は今は無きウッドストックや 今は無きえとせとら 今もある新宿レコード なども回りました。

そんな入荷要請までしてLPで購入できた喜びに溢れた思い出深い1枚・・・かと言うとそんな事も無くて
10,000マニアックスにしては何か「深み」の無いアルバムかなぁ。 この前の 3rd 4th が凄みも放つ 
気合いの入ったアルバムだっただけにちょっと物足りなさを感じてしまったのでした。

まあ物足りないと言いながら 相変わらず10,000マニアック節な流れるような素敵なメロディーがあるし
ナタリー・マーチャントの存在感のあるヴォーカルも相変わらず魅力的に響いて 悪い訳無いですけどね。
バックの音もロック基本楽器プラス・アルファ程度の相変わらずのフォーク・ロックで安心して聴けます。

そんな中ジェームス・ブラウンのホーン隊 JBホーンズがどういう経緯か A4 B2 と2曲参加していて
この2曲がガツンとキャッチーでスンゴいポップ! 終始ホーンが鳴り続けてJBホーンズは大活躍!
10,000マニアックスにしては異色曲の部類だけど2曲とも後期の彼らの代表曲ですね。 名曲!

しかしやはりここら辺がLP時代の終焉だったのか 1993年の次作のライブ盤「MTVアンプラグド」は
CDしか発売されず ヴォーカルのナタリー・マーチャントも脱退してソロに転向してしまいます。
いや脱退はLP時代の終わりとは関係無いけど その後ジョン&マリーの2人がそのまま合体する形で
10,000マニアックスに加入して アルバム2枚出しましたが それらもCDのみの発売でしたよ。

ナタリー・マーチャントが去った10,000マニアックスも悪くは無かったけど ジョン&マリーに近い音で
昔の名前で出ています状態・・・そして人気も下降し 10,000マニアックスは終了してしまいました。
ソロになったナタリー・マーチャントも最初の2〜3枚のアルバムは凄い良かったけれど その後失速。
今やナタリーのソロ・アルバムもカス盤価格で中古が溢れているし・・・音楽で飯喰っていくのは大変だぁ。
この様子だとそろそろナタリー・マーチャント入りの10,000マニアックスの再結成とかもあるかもね!

大傑作3rd「In My Tribe」(1987)のレヴュー
第44号 2001/9/11 アメリカ女は顔を見ずに歌声だけ聴いておけ
 


TheUkrainians.jpg TheUkrainiansBack.jpg
THE UKRAINIANS 「THE UKRAINIANS」 (1991)
英 COOKING VINYL COOK 044 (LP)
A1 Oi Divchino
 2 Hopak
 3 Ti Moyi Radoshchi
 4 Zavtra
 5 Slava Kobzarya
 B1 Dity Plachut
  2 Cherez Richku, Cherez Hai
  3 Pereyidu
  4 Tebe Zhdu
  5 Son

ガシャガシャ・ガレージなスンゴいスピードのカッティング・ギターを武器に1980年代中盤〜1990年代中盤を
駆け抜けた英国のウェディング・プレゼント。 彼らはウクライナ民謡をブッ飛ばしで演奏したミニ・アルバムを
1989年に発表し それを期に初期メンバーのピート・ソロワカがやりはじめたのがこのウクライニアンズです。

けっこうな人気バンドであるウェディング・プレゼントの方のミニ・アルバムは所有している人も多そうですが
こちらのウクライニアンズはどうなんでしょうねぇ。 やはり ウクライナ民謡なんか聴いてられるか!と
カス盤化していそうですねぇ。 しかーし! ウェディング・プレゼントのミニ・アルバムが好きなのであれば
聴いて損は無いアルバムです。 楽器構成やブッ飛ばしぶりなど似通っていて 存分に楽しめますよ!

ウクライニアンズのメンバーは3人で クレジットが無いので正確な使用楽器は分かりませんが
ギター マンドリン フィドル アコーディオンの音が聴こえてきて・・・あとはベースとドラムスくらいかな?
そしてガシャガシャ・カッティング・ギターも所々登場して興奮させてくれるのです。 ヴォーカルの歌声は
ウェディング・プレゼントのミニ・アルバムのヴォーカルと同じような気がするのでピート・ソロワカなのでしょうか。

どの曲もウクライナ民謡な旋律ですが A2がトラッドとクレジトされている以外はメンバーのオリジナル曲で
歌詞はロシア語・・・うーん 歌詞がロシア語という ここら辺に カス盤化を増徴する傾向がありそうですねぇ。
各曲のタイトルも英語表記で表記しましたが 本当はロシア語の文字のタイトルが正式タイトルです。

また この前後は本家のウェディング・プレゼントがスンゴいスピードのカッティング・ギター最終段階の名盤
「ビザーロ」と「シーモンスター」を出したり 1992年には毎月1枚 計12枚の7インチ・シングルを出すとか
どんどん次の段階へ行っていたので ウェディング・プレゼント・ファンにしたらウクライナ民謡をやるのは
もう過去の出来事だったのかもね。 そんなんでウクライニアンズ人気ねぇー。 カス盤価格で入手しましょう。
 


VaVaVoom.jpg VaVaVoomBack.jpg
CINERAMA 「VA VA VOOM」 (1998)
英 COOKING VINYL COOK 150 (LP)
A1 Maniac
 2 Comedienne
 3 Hate
 4 Kerry Kerry
 5 Barefoot In The Park
 B1 You Turn Me On
  2 Ears
  3 Me Next
  4 Hard, Fast And Beautiful
  5 Dance, Girl, Dance
  6 Honey Rider

本家のウェディング・プレゼントも1990年代中頃になると スンゴいスピードのカッティング・ギターは後退し
僕にはどーでも良いオルタナ・バンドみたいに聴こえてしまいウェディング・プレゼント終わった!的でした。
そうしたら中心人物のデヴィッド・ゲッジ本人もウェディング・プレゼントを終わらせて このシネラマに移行。
これが落ち着きがありながらもカラフルなポップ・ソングの連発になっていて素晴らしい作品だぁー!

いや このシネラマの1stはホント良い作品なので カス盤価格で落ちているタイプでは無さそうですが
前項のウクライニアンズを聴いていたら もっとウェディング・プレゼントの事を言いたくなったので
急遽シネラマさんに登場願いました。 あ でもシネラマはウェディング・プレゼント程 知名度・人気も無いし
カス盤コーナーに落っこちていてもおかしくありません。 カス盤コーナーを必死でサクサクしましょう。
実際僕もこのLPは池袋のディスク・ユニオンで中古税込630円で入手しましたからねぇ。
630円という価格はあと一歩でカス盤価格に突入する直前とも言えるカス盤予備軍なのですよ!

シネラマは2nd以降はメンバーが増えバンドらしい姿になりますが この1stではデヴィッド・ゲッジと
サリー・マーレルの男女2人組でゲスト演奏者がたくさん参加して録音されております。
ウェディング・プレゼントの時は考えられなかったキーボード類やストリングスなんかも多く入ります。
サビでバックに流れるキーボードのフレーズが印象的なA4なんかが象徴的な曲ですねぇ。

全編明るい表情の素敵なポップ・ソングの連発で そこに無理矢理声を搾り出して歌っているかのような
デヴィッド・ゲッジの特徴的なヴォーカルが乗っかりますが 女性のサリー・マーレルはたまにコーラスで
入る程度でほとんど歌っていません。 なぜでしょうねぇ。 これはもったいない。
B2で入る素敵な女性ヴォーカルはゲスト参加のエマ・ポロック(デルガドスの人らしい)だしねぇ。

この後シネラマは作品を重ねる毎に徐々にウェディング・プレゼント風なギター・サウンドに戻っていきます。
なので ポップ・ソングのシネラマを聴くなら この1stか初期シングル集「ディス・イズ・シネラマ」ですよ!
そして遂に2005年にはウェディング・プレゼントが復活!・・・僕としてはポップなシネラマが好きだっただけに
シネラマの終了は残念だったけれど 多くの人はウェディング・プレゼントの復活を喜んだようですね。
シネラマじゃ知名度・人気の面でウェディング・プレゼントの名前にはかなわなかったんだろうなぁ。
音楽で飯喰っていくのは大変だぁ・・・そして復活ウェディング・プレゼントは来日公演も行うなど順調に活動。
でも僕は復活ライブは行かなかった・・・もうウェディング・プレゼントでは興奮しない体質になってしまってさぁ。
1993年の初来日ライブは見に行って興奮したんだけど 今や初老目前 頻尿目前なので仕方無いですね。
 

表紙へ戻る

inserted by FC2 system