ポップ職人なんて呼ばれている英国の音楽家の方々はけっこういますが
今回登場する人たちは巷ではどういう呼ばれ方をしているのでしょうねぇ。
ポップ職人的な趣きのある人たちだなぁと思って登場させてみたのですが
実際は別の角度から語るべき人たちなのかも・・・ね。
ただ出てくる音の素晴らしさったらアンタ!
驚愕の職人技に驚愕するしかないでしょう。


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WIL MALONE 「WIL MALONE」 (1970)
日 エアー・メイル・レコーディングス AIRAC-1198 (CD/2006)
1 Catherine Wheel
2 I Could Write A Book
3 February Face
4 Love In The Afternoon
5 Winter In Boston
6 Caravan
  7 Down Maundies
  8 Suzy

  9 Tale To Tell
 10 One More Flight To Parker
 11 At The Silver Slipper
 12 How About Then

ウィル・マローンは1960年代にはオレンジ・バイシクルというフラワー・ポップ・バンドで活動し
1970年代にはリック・ウェイクマンやリッチー・フランシスやブラック・サバスのアレンジを担当し
1980年代にはメタリカ 1990年代にはヴァーヴのアレンジもしているという息の長い裏方職人です。

・・・と ウィル・マローンを良く知っているかの如く書きましたが これはすべてライナーノーツに
書いてあった事の丸写し。 ホントに丸写しで 今挙げた芸人さんたちも名前は知っているけど
全部聴いた事が無く ウィル・マローンを良く知っているどころか まったく知らない派の僕です。

まあ 知っていても知らなくてもこのアルバムを聴いて感動できるかどうかが一番重要な部分であり
全編ドラムレスでギターやピアノや管楽器やストリングスがゆったりと美しく響く室内楽ポップスで
ウィル・マローンの職人技が冴えまくる素晴らしい作品に仕上がっていて感動させてくれます。

ただ室内楽ポップスと言っても曲に合わせて一緒に歌う感じでは無く全然ポップじゃないんだこれが。
1曲目の歌いだしの儚げなメロディーにハッとさせられ それ以降も終始儚げで美しいのだけれども
この曲が特に!とか このフレーズが特に!とかよりも ダラダラと垂れ流しながら聴くタイプかなぁ。
聴いていると 切ない秋枯れの英国の風景などの映像が思い浮かぶサントラ盤的な趣きもあります。

出ない声を一生懸命絞り出し 頑張って音程をはずさないように歌っているかのような
ちょっと情けないヴォーカルも全体に流れる切なく儚げな空気感の演出に一役買っています。
また1曲1曲が短く トータル32分というのも良いです。 60分あったら聴いてて疲れちゃいそうです。

しかしこれが可愛らしい女性ヴォーカルだったりしたら「野に咲く名も知らぬ花の如く真に美しい音楽」
とか書くのだけれども 情けないヴォーカルに加え どこぞのカルト教団かの服装のジャケットがねぇ。
「名も知らぬカルト教団の如く真に危険な・・・」なんてキャッチフレーズはつけれれないので
只今ウィル・マローンのキャッチフレーズを募集中です。 小粋なヤツを! ふるってご応募下さい。
 


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THE MARMALADE 「RAINBOW the decca years」 (2000)
英 SEQUEL NEECD 335 (CD)
 disc 1
 the junior campbell sessions
 1 Reflections Of My Life
 2 Rollin' My Thing
 3 Rainbow
 4 The Ballad Of Cherry Flavor
 5 Super Clean Jean
 6 Carolina In My Mind
 7 I'll Be Home (In A Day Or So)
 8 And Yours Is A Piece Of Mine

  9 Some Other Guy
 10 Kaleidoscope
 11 Dear John
 12 Fight Say The Mighty
 13 Life Is
 14 My Little One
 15 Is Your Life Your Own
 16 Stay With Me Baby
 17 Can You Help Me
 disc 2
 the hugh nicholson sessions
 1 Cousin Norman
 2 Lonely Man
 3 Back On The Road
 4 Love Is Hard To Re-Arrange
 5 Bad Weather
 6 Sarah

 7 Mama

  8 Lady Of Catrine

  9 Empty Bottles
 10 I've Been Around Too Long
 11 Lovely Nights
 12 She Wrote Me A Letter
 13 Ride Boy Ride
 14 Radancer
 15 Just One Woman

マーマレードのデッカ・レーベル時代の音源の編集盤はディスク1とディスク2でバンドの中心人物が
完全に変わっていて それまでバンドを仕切っていたジュニアー・キャンベルという職人が脱退したら
新たにヒュー・ニコルソンという職人がやってきてバンドを仕切るという まるで社長が辞任したら
内部で昇格するのでは無く 外部から新たな人物を招聘する雇われ社長的で面白いですねぇ。

ディスク1は1970年のアルバム「Reflections Of The Marmalade」とその時期のシングル曲と
未発表曲(16 17曲目)で構成され ジュニアー・キャンベルが多くの楽曲を提供しています。

永遠系ナンバーの1曲目から とてつもなく素晴らしく ストリングスやホーンも入ってポップなくせに
ほんのりアコースティックでほんのりサイケデリックで切なくて 泣きたくなってしまう程素晴らしき名曲!
この曲は こちらも大名曲のハニーバスの「I Can't Let Maggie Go」という曲とイメージが重なります。

「あの素晴らしい愛をもう一度」的な歌謡フォーク調の3曲目がたまらない事になっていると思ったら
それに続くハーモニカが効いているドラムレスの切ないフォーキー・ソング4曲目が又たまらない!
1曲目「Reflections Of My Life」と同様の感動を持つ永遠系の楽曲 7 8 曲目も もちろん最高だし
6 11 曲目あたりの歌謡フォーク・ナンバーも素晴らしく この曲作りの上手さは凄ぇっすよ!

そして一緒に歌わずにはいられない「ドゥーワー ドウッダッデー」のサビのコーラスに即死した上に
クラリネット(かな?)のフレーズとストリングスが絡んで もうホント最高峰としか言えない14曲目がぁ!
その他ハードなロック曲なども少々入って このディスク1は素晴らしいポップ・ソングの宝庫です。

ジュニアー・キャンベルが脱退し 新たに加入したヒュー・ニコルソンが活躍するディスク2は
1971年のアルバム「Songs」とシングル曲で構成され ほとんどの楽曲がヒュー・ニコルソン作です。
様々な楽器が登場し様々な曲調だったポップス度の高いディスク1からはだいぶ音が変わり
ギター ベース ドラムス のロック基本楽器による演奏が多くなり「バンド・サウンド」していますねぇ。

1曲目からブリンズリー・シュウォーツかの如くなフレンドリーで土臭さのあるロケンロールで始まり
大らかなフォーク・ロック曲や 3声コーラスでしっとり聴かせるドラムレスのフォーク曲などが登場し
アコースティックな響きがあり 後はちょっとハードなロック曲などバランス良く収録されています。

全体から爽やかなアメリカン風味も香ってきて 1970年代の英国バンドでいくとユニコーンや
デカメロン そしてヒュー・ニコルソンがこの後結成するブルーなんかと近い匂いがあります。
ディスク1と比べると地味ではあるけれど聴けば聴く程じわーっと沁みてくるタイプの曲が多くて
6曲目のアコースティックな響きの素敵な3拍子のフォーク・ロック曲なんかホント沁みるわぁ。

この2枚を一気に聴くと ディスク1のジュニアー・キャンベルは何でもこなしてしまうポップス職人で
ディスク2のヒュー・ニコルソンは職人というよりもバンド・メンバーの中の才能ある1人って感じですね。
ただ どちらの時期も素晴らしい事に変わりは無く ふたりの違いが楽しめるCDなのです。
「Reflections Of The Marmalade」と「Songs」のアルバムは単体でもエアー・メイルさんがCD化
しているのでそちらも購入しないといけませんが・・・僕は購入していないので偉い事は言えません。

The Marmalade 「I See The Rain-The CBS Years」のレヴュー・・・第19号
ヒュー・ニコルソンがマーマレードの次にやっていたバンドBlue「Blue」のレヴュー・・・第71号
 


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HARVEY ANDREWS 「I'M RESIGNING FROM TODAY the transatlantic anthology」 (2007)
英 SANCTUARY TRRDD403 (CD)
 disc 1
 Fantasies From A Corner Seat (1975)
 1 The Mistress
 2 A Little Moon'n' Juning
 3 Lady Of The Light
 4 Daisy/Autumn Song
 5 (I'm Resigning) From Today
 6 Targets
 7 Me And The Empty Glasses
 8 Lazy Days
 9 Fantasy From A Corner Seat
10 Dardy And Joan
11 Lullaby

 Someday (1976)
 12 Why
 13 Jane
 14 Song For Phil Ochs
 15 Together (Day By Day)
 16 Mr Homburg Hat
 17 Someday
 18 Gang Of '64
 19 He Played For England
 20 Man With A Gun
 21 Movies On TV
 22 I Think I'll Get Drunk Again
  disc 2
  alubum outtakes (1975)
  1 England My England
  2 Davy
  3 Winter Sundays
  new zealand pressing Someday (1976)
  4 He Played For The All-Blacks
  A Most Peculiar Man EP (1966)
  5 A Most Peculiar Man
  6 You're On Your Own
  7 Death Come Easy
  8 Children Of Hiroshima
  various artists album Second Wave (1965)
  9 Harvest Of Hate
 10 Ice Cream Man
 11 Kids Colour Bar
 12 Buy Me A Rifle
 13 College Days

出たぁ! ハーヴェイ・アンドリュース! この野坂昭如に影響を受けたであろう風貌がああぁ!
ピッチリとした横分けヘアー 色メガネ ベロアのジャケットと3拍子揃っていて こんな風貌だと
作詞家か何かの裏方職人にしか見えません。 更に指を指してどうだ!と言っていて自信満々ですよ。
あるいはズームイン!と言っているのでしょうか? いずれにせよ自信満々なオヤジです。

ディスク1 1〜11曲目はハーヴェイ・アンドリュース&グラハム・クーパー名義の1975年のアルバムで
12〜22曲目はハーヴェイ・アンドリュース単独名義の1976年のアルバムからの曲になっています。
ディスク2は表記の通りの出展で このCDで彼がトランスアトランティックに残した音源がすべて
聴けるというヒジョーにありがたいつくりの編集盤になっていてありがたい事この上ないですね。

そしてこんな野坂昭如な風貌ですが出てくる音はヒジョーに聴きやすい穏やかなポップスなのです。
ヴォーカルも野坂昭如な風貌からは想像できない優しげな歌声でイアン・マシューズに近いですねぇ。
ペダル・スティール入りでカントリー色のあるディスク1の 8 18 曲目なんかホントにマシューズのようで
マシューズのアルバムのB面3曲目とかに紛れて入っていてもバレなそうなそっくりさんぶりです。

1975〜76年の音源はは1970年代中期という時代らしくAORへ突入する前夜という感じでしょうか。
フォーキーな響きのシンガー・ソングライター風な曲から ホーンやピアノなんかが入って
古臭いポピュラー・ヴォーカルみたいな曲まで どの曲も洗練された都会感覚が目の前に来ているけど
ギリギリのところで留まっているAORスレスレのスリリングな感じが凄く良いですねぇ。
そんな中リチャード&リンダ・トンプソン参加のディスク1の6曲目はトンプソン夫妻色濃くて面白いです。

ディスク2の後半の1965〜66年の音源は アコギ弾き語りによるフォークでヒジョーに地味ですが
1960年代中期にフォークをやっていたらこうなるという典型的な音で やはりどうだ!と言っています。
いやぁ1970年代も1960年代もしっかりと時代の音を放っているという点で職人的ではありますね。

このCDで聴ける音は独創性や攻撃性は無いのでガツンと一発でハートをブチ抜くような事はないけど
ディスク1の10曲目あたりを筆頭にホント文句のつけどころの無い心地良いポップスの連発で良いです。
やはりジャケットのポーズはどうだ!と言っていますよ。 確実にどうだ!と言っていて自信満々です。
それに対して参った!と言うしかないので みんなでハーヴェイ・アンドリュースの職人技に参りましょう。
 


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THE WORLD OF OZ 「THE WORLD OF OZ」 (1969)
韓国 Si-Wan SRMC 0077 (CD/1998)
1 The Muffin Man
2 Bring The Ring
3 Jackie
4 Beside The Fire
5 The Hum-Gum Tree
6 With A Little Help
  7 We've All Seen The Queen
  8 King Croesus

  9 Mandy-Ann
 10 Jack
 11 Like A Tear
 12 Willow's Harp

ワールド・オブ・オズの唯一のアルバム。 この作品は以前日本盤の紙ジャケCDで出ていて
きっとそこにはこのバンドの詳細がわかる日本語のライナーノーツもついていたのだろうけど
僕の手元にあるのは韓国シー・ワン盤なのです。 うーん ハングル語の解説がまったく読めなくて
メンバーの名前さえわかりませんが「元ワールド・オブ・オズの誰々が・・・」といった話は聞かないので
ワールド・オブ・オズ後も多少活動はしていたのだろうけど大活躍した有名人はいなさそうですね。

有名人はいなくてもこのアルバムの職人技はホントに凄くて 夢のようなポップ・ソングが炸裂する
ドリーミー・ポップの大傑作なので 夢見る夢子さんや 夢見る夢夫さんは必須アイテムでしょう。

サイケ・ポップの時代の名残りも少々引きずったサウンドで 一緒に歌いたくなるフレーズも盛り沢山。
ロック基本楽器の上にストリングスや管楽器やハーモニー・コーラスなどが絶妙のバランスで被さり
ほんの少しハスキーなメイン・ヴォーカルも このサウンドによく馴染んでいていてホントに良いです。

もう全曲最高なのですが 特に永遠を感じさせてくれるメロディーを持った3曲目で即死です。
サビの「ラーララララー」のコーラス シャカシャカと鳴り続けるタンバリン 効果的に入る管楽器・・・
僕をおとぎの国へと運んでくれる夢見るポップ・ソング。 涙が溢れる程の凄い職人技が冴える名曲!

しかし バンド名といい ジャケットといい こんなんだと当然ディズニーなんかと通ずるものもあります。
ディズニーかぁ・・・僕はミッキー・マウスが嫌いでねぇ。 だってミッキーといえばミッキー安川なのに
ミッキー・マウスとか言ってんじゃねぇよ! うーん「ミッキーといえばミッキー安川」というこの話は
以前のレヴューでも書いたような・・・あれ?書いて無かったかな?・・・夢で見たんだっけ?

夢だったか現実だったかわからなくなってしまうのはワールド・オブ・オズを聴いているせいかなぁ。
ああ 夢と現実がこんがらがるワールド・オブ・オズのドリーミー・ポップ・・・やはり凄い職人技だ!
夢見る夢子さん 夢見る夢夫さん ディズニー好きのアナタなんかにはしっくり来る事間違いなしだし
童心を忘れた意地汚いクソジジイやクソババアにこそ是非聴いてもらいたい傑作! 聴いて泣け!
 

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