1970年代のアイリッシュ・トラッド・ロックは何か間が抜けていてダッサいですねぇ。
ロック度低いアイリッシュ・トラッドを聴くと 胸に沁み入る美しいメロディーにやられたり
魂の叫びを感じる歌唱や 壮絶な楽器バトルにロックを凌ぐ興奮があったりするのですが
エレキ・ギターやドラムスが入ってロック度が増すと何かダサくなってしまうのです。
しかし聴いているとそのダサさ故の愛おしさがあって好きですねぇ。
英国エレクトリック・トラッドのフェアポート・コンヴェンションやスティーライ・スパンが放つ
妥協を許さない厳しさとは対照的な間の抜け方はアイリッシュならではでしょうか。
今回取り上げたダサさ漂うアイリッシュ・トラッド・ロック作品のジャケットを開いたら
メンバー写真がドーンと載っていたのでその写真も載せておきます。


HappyToMeetSorryToPart.jpg HappyToMeetSorryToPartInner.jpg
HORSLIPS 「HAPPY TO MEET ・ SORRY TO PART」 (1972)
英 EDSEL EDCD 661 (CD/2000)
1 Happy To Meet
2 Hall Of Mirrors
3 The Clergy's Lamentation
4 An Bratach Bán
5 The Shamrock Shore
 6 Flower Amang Them All
 7 Bím Istigh Ag ól
 8 
Furniture
 9 Ace And Deuce
 10 Dance To Yer Daddy
 11 Scalloway Ripoff
 12 The Misician Priest
 13 Sorry To Part

1970年代アイリッシュ・トラッド・ロックの代表格であるホースリップスの1stアルバム。
その知名度や活動歴からいってやはり彼らが代表格でしょう・・・ってそんな知名度あるかぁ?

エドセル社からの彼らのCDは全部このジャケット・デザインで オリジナル・ジャケが右下に
小さく印刷されているという残念度高いもの。 かといってストレンジ・デイズ社から出た
コンセルティーナ型にくり抜かれた変形紙ジャケCDはブルジョアジー階級しか手が出ない
4000円近くするびっくり価格でびっくり仰天。 そんな訳でエドセル社のCDで我慢なのです。

ギター ベース キーボード ドラムス などのロック基本楽器による演奏をメインにしていますが
ホイッスルやフィドルやコンセルティーナやバウロンなども平気で入ってトラッド色も強いです。
各曲ごとのクレジットが無いので正確にはわかりませんがオリジナル曲とトラッド曲とが
混在しているようでトラッドっぽいメロディーの曲が大半でフツーのロックな曲少々という割合です。

最初の1曲目と 最後の13曲目はロック楽器が入らない短いインスト曲でもろトラッドですが
エレキ・ギターやキーボード入りの かっちょ良い曲はやっぱりダサい! かっちょ良いのに
ダサいとはこれいかに! 1970年代アイリッシュ・トラッド・ロックの人達全般にそうなのですが
かっちょ良く響かせようとした楽器の音色やフレーズが今の時代の耳には古臭くてダサいのです。
更にトラッド色が田舎臭さを放ってダサさも倍増! それに伴って愛しさも倍増ですよ!

古臭い音色の中にも テンション高い演奏が炸裂する アイルランド語で歌われる7曲目とか
野郎共の歓声が入ってパブで演奏しているかのようなアレンジの楽しげなインスト11曲目とか
いつの時代に聴こうがイケてる曲もあります。 ・・・さすが代表格バンドのホースリップスです。

ジャケットを開いたメンバー写真を見ると長髪にヒゲのヤツらばっかりで1970年代ロックの
正統派のルックスですねぇ。 このジーザス系のルックス方面は中々かっちょ良いですね。
 


EarlyOneMorning.jpg EarlyOneMorningInner.jpg
MUSHROOM 「EARLY ONE MORNING」 (1973)
伊 AKARMA AK 328 (LP/2005)
B1 Early One Morning
 2 The Liathdan
 3 Crying
 4 Unborn Child
 5 Johnny The Jumper
 bonus tracks
 6 The King Of Ireland's Daughter
 7 Kings And Queens
 8 Met A Friend
 A1 Potters Wheel
  2 Standing Alone
  3 Devil Among The Tailors
  4 Tenpenny Piece
  5 Drowsey Maggie
  6 King Of Alba
  bonus track
  7 Devil Among The Tailors (1st version)

白地に赤い斑点で通常のベニテングタケとは赤白逆バージョン・ジャケが最高なマッシュルーム。
ここに収録された音に全く興味が無くても キノコ・マニアの君や僕 キノコ・ファンのそこのアナタ
とにかくキノコの菌に侵された人には必須アイテムなのがこのマッシュルーム唯一のアルバムです。

これはボーナス4曲入りでお得なアカルマ盤LPですが A面とB面がオリジナルと逆になっていて
聴く時はB面から針を落とす事にしています。 そんなんで曲名表記もB面を先にもってきてみました。

アルバム・タイトル曲のB1は時計の針がチッチッチ・・・目覚まし音がジリリ・・・という効果音から始まり
演奏が始まるとヨレたヴォーカルが歌うという素晴らしきアシッド・フォーク・ナンバーじゃないですか!

そんなアシッド・フォークなアルバムかと思うと2曲目以降はトラッド色が強まり トラッド的なフレーズを
エレキ・ギターやキーボードなどが弾いて その音色や切り込んでくるタイミングのダサい事ダサい事。
特にA3「Devil Among The Tailors」の間奏でフィドルのフレーズからエレキ・ギターに切り替わる時
フィドルに変なエコーがかかってヒュィ!って えぇぇー ヒュィ!ときたか! これはダサっ!
しかしこの瞬間のダサさはホント最高で ヒュィ!って部分だけ何度も何度も繰り返し聴きたくなります。

フィドルやホイッスルなんかも程よく入ってトラッド・ダンス曲みたいなフレーズが多く登場しますが
クレジットによるとすべてオリジナル曲のようですね。 そして全体に勢いがありブッ飛ばし気味で
前項のホースリップスより若くて青く ホースリップスの弟分のような存在だと勝手に思っています。
ブッ飛ばし曲の合間に郷愁を誘うメロディーのB4や ハープシコード&リコーダーの伴奏で歌われる
A4などミディアム・テンポの美しい曲も入っていてアルバムとしての流れもヒジョーに良いです。

ジャケットを開いたメンバー写真を見るとホースリップスを真似て長髪にヒゲにしているようでもあり
やはりマシュルームはホースリップスの弟分のような存在だと勝手に思わずにはいられません。
 


SmokingOnTheBog.jpg SmokingOnTheBogInner.jpg
SPUD 「SMOKING ON THE BOG」 (1977)
英 KISSING SPELL KSCD955 (CD/2008)
1 Tickle Your Fancy
2 Anna Livla
3 Nothing's Gonna Stop Us Tonight
4 The Farmer's Cursed Wife
5 Scarlett
  6 The Nine Points Of Roguery
  7 Full Scale Love
  8 Gusty's Frolics

  9 Waves Rise And Fall
 10 For Shame Of Doing Wrong (Fool For You Again)

かつてはレア・フォーク再発業界の王者だった英キッシング・スペル社でしたが
近年はリリース・ペースも落ち渋い脇役的な存在になってしまいました。 ただ地味ながらも
ナイスな再発活動は続いていて このスパッドの3rdなんかもナイスCD化です!

キッシング・スペル社からは彼らの2nd「The Happy Handful」も同時にCD化されて
そちらはサイモン・ニコルのプロデュースで まあフェアポートの域までは行っていませんが
正統派エレクトリック・トラッド アイルランド編といった感じのしっかりとした真面目な内容でした。
この3rdも基本路線のエレクトリック・トラッド風味は同じなのだけど ロック〜ポップ度が増して
ロック度が増したらかっこ良さも増すかと思いきやダサさが増すという素晴らしい事になっています。

スパッドも前項のホースリップスやマッシュルーム同様に ロック基本楽器による演奏の上に
フィドルやホイッスルがトラッド風なフレーズで絡んできます。 また数曲でペダル・スティールが入り
ここら辺の曲はアメリカンな感じなので そこはホースリップスやマッシュルームと違う雰囲気ですね。

スパッドもエレキ・ギターの音色とかダサくて 1970年代アイリッシュ・トラッド・ロックの王道だよなぁ
と思いながら聴いていたけど 何回か聴くとダサさよりフレンドリーさが気になり出し トラッド色薄い
2曲目や3曲目なんかを聴いていると そのフレンドリーぶりはリンディスファーンのようで良いです。

鳥のさえずり(!)とフィドル&ハープによる出だしで おおぉ!これはぁ!となる5曲目はその後
哀愁のエレキ・ギターがむせび泣いてサンタナ状態のインストであれれ?・・・そしてフレンドリー。
最後の10曲目はリチャード&リンダ・トンプソンのカバーでこのカバー以外はオリジナル曲ですね。

しかしジャケットを開いて出てくるメンバー写真はロックをやっている人とは思えないオヤジぶり!
5人中3人が薄毛とは! いや1970年代後半ともなるとロックの人の風貌はこんなものかなぁ。
 

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