突然ですが2006年ベスト10! 再発盤では無く2006年発売の新譜ベスト10です。
・・・とベスト10と言ったけど2006年の僕のベスト・アルバム10枚ではありません。
いや実はフリーク・フォークあるいはフリー・フォークと呼ばれているヤツを
書こうと思って何枚かピック・アップしていたら 何か2006年作が多かったので
 2006年作のそれっぽいのを並べていったら 10枚並べる事に成功したのです。
 で 10枚並んだらとりあえず ベスト10!って言いたくなるじゃないですか。
つまり3枚並んだらベスト3!だし 5枚並んだらベスト5!ですね。
 将来的には1万枚並べてベスト1万! 1億枚並べてベスト1億! ベスト1兆! ベスト1京!
ベスト1垓!・・・更にその先の無限大宇宙まで どんどん無駄に並べようぜ!って事です。


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BERT JANSCH 「THE BLACK SWAN」 (2006)
米 DRAG CITY DC325 (LP)
A1 The Black Swan
 2 High Days
 3 When The Sun Comes Up
 4 Katie Cruel
 5 My Pocket's Empty
 6 Watch The Stars

 B1 A Woman Like You
  2 The Old Triangle
  3 Bring Your Religion
  4 Texas Cowboy Blues
  5 Magdalina's Dance
  6 Hey Pretty Girl

英国フォーク大ベテランのバート・ヤンシュ2006年作「ブラック・スワン」の米国盤はフリーク・フォークや
アシッド・フォークと言われる音楽の宝庫のようなレーベル ドラッグ・シティから登場してしまいました。
バックにはベス・オートンやらエスパーズ〜ヴェティヴァーのメンバーやらが名を連ねていますよ。
そして何と言ってもフリーク・フォークといって真っ先に名前が挙がるであろうデヴェンドラ・バンハートも
1曲だけだけど参加中!・・・デヴェンドラ・バンハートはヴェティヴァーの準メンバーでもありますね。

これはヴァシュティ・バニヤンの35年ぶりの復活作「ルックアフタリング」にアメリカのヤングなフォーキーが
バックに名を連ねていたのと同じ流れですよ。 ヴァシュティ・バニヤンにしてもバート・ヤンシュにしても
アメリカのヤングなフォーキー側からの働きかけでアルバムを製作したのか あるいはその逆だったのか
僕はそこら辺の事情はよく知らないけれど 英国フォークとフリーク・フォークの相性はバッチリです。

アルバムの音はフリーク・フォーク的な妖しさもプーンと香るものの ヤンシュ作の曲とトラッド曲とが
バランス良く収録され 英国フォークの伝統を感じさせるシンガー・ソングライター作品といったところ。
基本はアコギの弾き語りにその他の楽器がほんのり入る程度のシンプルで地味な音ですが
ドラムスが入る曲も半分位あり「どフォーク」「どトラッド」ではないので けっこう聴きやすいです。

エスパーズのヘレナ・エスピヴァルの弾くチェロが妖しげに響きエスパーズの如くに迫るA1と
デヴェンドラ・バンハートとベス・オートンの男女ヴォーカルが歌い ヤンシュ本人は歌わずギターを弾く
という体制のA4の2曲に最もフリーク・フォークを感じます。 A面は全体的に妖しさが漂いますが
B面になると妖しさは後退して バート・ヤンシュのソロ作の音です!って感じになりますね。
B面では2本のバンジョーとフルートによるインスト曲のB5が郷愁の嵐!で印象に残ります。
そんなんでヤングなフリーク・フォーク・ファンもオヤジな英国フォーク・ファンも楽しめるアルバムです。

バート・ヤンシュのレヴュー
「Heartbreak」・・・第14号 2000/5/20 ペンタングルのしごきサウンドに君は耐えられるか
「Moonshine」・・・第112号 2006/3/23 メアリ・ホプキン様を無理して探せ!
 


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DEVENDRA BANHART
「CRIPPLE CROW」 (2005)

米 XL XLLP 192 (LP/2006)

 
A1 Now That I Know
 2 Santa Maria Da Feira
 3 Heard Somebody Say
 4 Long Haired Child
 5 Lazy Butterfly
 6 Quedateluna
 7 Queen Bee
 B1 I Feel Just Like A Child
  2 Some People Ride The Wave
  3 The Beatles
  4 Dragonflys
  5 Cripple Crow
  6 Inaniel
  7 Hey Mama Wolf
 C1 Hows About Tellin A Story
  2 Chinese Children
  3 Saw Kill River
  4 I Love That Man
  5 Luna De Margarita
  6 Korean Dogwood
  7 Little Boys
  8 Canela
 D1 There's Always Something Happening
  2 La Ley
  3 Chicken
  4 Stewed Bark Of An Old Oak Tree
  5 La Pastorcita Perdida
  6 Lickety Split
  7 Ice Rat
  8 White Reggae Troll

そして米国人デヴェンドラ・バンハートの2005年作。 2005年作ですがLPは2006年になってから
発売されたので強引に2006年のベスト10入りですよ! で CDは22曲入りのようですがLPはD面に
8曲追加されているので アルバム2枚分たっぷり聴かなければいけないという状態になっています。

これ以前の彼のアルバムは全編弾き語りに近いかたちのあまり印象に残らない曲が並んでいる上に
細かく震えるマーク・ボランのようなヴォーカルもイヤーな感じで体罰ギリギリ一歩手前でした。
本作も基本路線は弾き語りではありますが バラエティーに富んだ面白い曲が多く ポップさもあり
2枚分聴かなければいけないのも体罰にならず飽きません。 いや弾き語りに近いかたちの曲も
印象に残る曲ばっかりで聴けば聴くほど段々良く聴こえてきて・・・これは良いアルバムですよ!

A面1曲目は挨拶がわりのデヴェンドラ流フリーク・フォークですねぇ。 バックにチェロが入っています。
スパニッシュ・フレイヴァー溢れるA2はギター&フルートの伴奏で必殺! 大らかなフォーク・ロックA3。
ロック初期衝動の如くな隙間だらけのサイケデリック・ロックA4。 シタールが入ってアシッド臭が香るA5。
再びスパニッシュのA6。 哀しげに響くつぶやきフォークのA7・・・とA面だけでもこのバラエティーっぷり。
それでも全てデヴェンドラ・バンハート色に染まっていて統一感もあるという素晴らしさなのです。 

「ポール・マッカトニー&リンゴ・スター」って歌い出しで始まるB3のタイトルは「ザ・ビートルズ」!
これがフルートも入る変態的なフォークで全くビートルズっぽさを感じさせないのはさすがです。
様々な国名が歌われるC2は多人種老若男女がズラズラーっと並んだジャケットを象徴するような曲。
そう アルバム全体でもそのバラエティーの富み方がフリーク・フォーク界のカリスマ世界一周
自分探しの旅状態で・・・日本サッカー界のカリスマ世界一周自分探しの旅と・・・重ならないなぁ。

最後のD8のレゲエ曲までどの曲もホント良く フリーク・フォークという枠で語ってしまってはもったいない
深みがあるので フリーク・フォークなんて聴いてられるか!って人にこそオススメなアルバムです。
・・・そんなこんなで このアルバムがフリーク・フォークという言い方の終焉の象徴なのかも知れませんね。
参加メンバーはクレジットが無いのでわかりませんが色々な楽器が次々と登場するので
当然フリーク・フォーク周辺の人 周辺じゃない人 他にも色々な人が参加しているのでしょうね。

デヴェンドラ・バンハート「Rejoicing In The Hands Of The Golden Empress/Niño Rojo」のレヴュー
・・・第109号 2005/12/31 母さん!事件ですよ!ヴァシュティですよ!
 


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VETIVER
「TO FIND ME GONE」 (2006)

日 P-VINE PCD-23781 (CD)
 
1 Been So Long
2 You May Be Blue
3 No One Word
4 Idle Ties
5 I Know No Pardon
 6 Maureen
 7 The Porter
 8 
Double
 9 Red Lantern Girls
 10 Lost & Found (bonus track)
 11 Won't Be Me
 12 Busted (bonus track)
 13 Down At El Rio

ヴェティヴァーの2008年新作はカバー曲集でロニー・レインやマシューズ・サザン・コンフォートの他
原曲なんか知らねぇよ!というようなシンガー・ソングライター作品の渋いカバーをたっぷりやっています。
そしてヴァシュティ・バニヤン様が1曲メイン・ヴォーカルで参加! ああ興奮! ああ失禁! ああ・・・!
そんな米国バンド ヴェティヴァー。 最新作ではデヴェンドラ・バンハートの名前はありませんでしたが
この2006年作の2ndでは準メンバーとして絶賛参加中! そして内容も素晴らしいときたモンだ!

ヴェティヴァーはヴォーカル&ギターのアンディ・キャビックという人がほぼすべての楽曲を作っていて
・・・「ほぼすべての楽曲」というのは13曲目がデヴェンドラ・バンハートとの共作になっているからで
そのサウンドもアンディ・キャビックというシンガー・ソングライターと そのバック・バンドという感じです。

基本はアコギ&ほんのりその他の楽器のフォーキーな音で 弾き語りばかりでは無く聴きやすいです。
ヴォーカルは栄養失調気味の情けない歌声で 出ない声を搾り出して歌っているかのようです。
ゆらゆらと漂う陽炎の如くな妖しげなフォーキー・サウンドの3曲目や8曲目あたりが
そんなアンディ・キャビックのヴォーカルとよく合っていて最もヴェティヴァーらしい曲だとも言えます。
 
しかし妖しく流れる曲があると思えば カントリー・ロック風味の 5 11 12 曲目あたりは
フツーのフォーク・ロック〜ルーツ・ロック曲として聴いてもフツーに良くて すんなり耳に入ってきます。
特に12曲目なんかはサイケデリックな浮遊感のあるカントリー・ロックなモンで
まるでビーチウッド・スパークスのようですよ!・・・とビーチウッド・スパークスの名前が出たところで
次項のノーバディ&ミスティック・コーズ・オブ・メモリーに繋がるんですよっ!

最後の13曲目はデヴェンドラ・バンハート色も出て妖しさもあるけれどカントリー・ロック風味も感じられ
「ラッタッタララー」ってコーラスの繰り返しがのどかで心地良く 全部聴き終わって気分が良いですねぇ。
ボーナス・トラックとある10曲目と12曲目は米盤ではLPにのみ収録されていた曲だそうです。
 


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NOBODY & MYSTIC CHORDS OF MEMORY
「TREE COLORED SEE...」 (2006)

米 MUSH MH 241 (LP)

 
A1 The Seed
 2 Decisions, Decisions
 3 Broaden A New Sound
 4 Coyote's Song (When You Hear It Too)
 5 Memory

 B1 Klaw Prints
  2 Walk In The After Light
  3 When The End Meets The Beginning
  4 Feet Upon The Sand
  5 Softer Sail
  6 Floating


DJのノーバディという人とミスティック・コーズ・オブ・メモリーというバンドの連名アルバム。
ミスティック・コーズ・オブ・メモリーはビーチウッド・スパークスのヴォーカルの人が結成したバンドで
2004年に素晴らしい内容の1stアルバムを出していました。 ノーバディの活動歴は全然知りませんが
名前の並びの順序からいくとノーバディの方が先にきているのでその筋では有名な人物なのでしょう。
・・・と名前の並び方でノーバディとミスティック・コーズ・オブ・メモリーの力関係が伺えますね。

僕はサイケデリックな浮遊感のあるカントリー・ロックをやっていたビーチウッド・スパークスが
大好きだったのでこの作品なんかも購入している訳ですが 本作においてもサイケデリックな浮遊感は
そのまま残っており そこにノーバディのリズムの遊びとエレクトロニカの要素が入っている感じです。
またアコースティックな響きもあるし クリストファー・ガンストの線の細いヴォーカルも心地良くて
DJだとかエレクトロニカだとか全然聴いた事なかったけれど 本作は聴きやすいし凄く良いです。

で フリーク・フォークに関してですが このアルバムがフリーク・フォークかというとそれはノーです。 
でも軽やかなカントリー・タッチのA4や サイケデリックにゆったりと流れるフォーク・ソングのA5
あたりを聴いているとフリーク・フォーク勢との同時代性 同感覚を感じずにはいられませんよ。

実際アルバムの中でもひときわ輝く 奇妙だけど心地良く流れて行くアコースティック・ポップのA3が
シングル・カットされたのですが その12インチにはデヴェンドラ・バンハートがスペイン語で歌う
A1の別ヴァージョンと 美声女性ヴォーカルが歌うロング・ロストというバンド(なのかな?)の
A4の別ヴァージョンが入っていて 両曲ともそれはそれはフリーク・フォークな香りを放っていて・・・
やっぱり繋がっていたんだ!と思うと同時に 又かよ・・・デヴェンドラ・・・というのもありますけどね。
 


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THE SKYGREEN LEOPARDS 「DISCIPLES OF CALIFORNIA」 (2006)
米 JAGJAGUWAR JAG104 (LP)
A1 Disciples Of California
 2 Places West Of Shawnapee
 3 Sally Orchid
 4 Egyptian Circus
 5 Marching Band

 B1 William & The Sacred Hammer
  2 Golden Pilgrim
  3 Jesus Was California
  4 I Remember Sally Orchid
  5 Silvery Branches
  6 Hollow Tree


米国バンド スカイグリーン・レオパルズのたぶん3rd。 表ジャケットは道の向こうにガイコツがいるし
裏ジャケはガイコツに羽がはえて蝶になって空を飛んでるぅー。 こんなガイコツを強調しまくった
ジャケットだと妖しげな呪いのアシッド・フォークが炸裂しそうな雰囲気プンプンですねぇ。
・・・と このグループの作品のジャケットはだいたいこんな感じのばっかりになっているのです。

前作の2005年作「Life & Love In Sparrow's Meadow」ってアルバムはジャケット同様の妖しさで
何度聴いても楽曲を覚えられないし 果たして良いのか悪いのか 何度聴いてもわからないという
フリーク・フォークど真ん中なサウンドでしたが本作は違います。 アルバム全体に流れる
のどかなカントリー風味がヒジョーに気持ち良くて まるで別のバンドのようですねぇ。

使用楽器はアコギやピアノの他 ドラムスやベースも入り ペダル・スティールやバンジョーも入ります。
でもカントリー・ロックと言う程ロックを感じないし かといってフォークと言う程シンプルでもないので
カントリー風味のシンガー・ソングライター作品ってとこかな?・・・シンガー・ソングライターじゃ無いけど。

またヴォーカルは少々ヨレ気味で あまり上手く音程がとれないのを 泣いているように歌って
泣きに変える派です。 僕はこのヴォーカルがのどかなカントリー風味に合っているなぁと思うのですが
聴く人によっては 何だ?この全然歌えてない素人ヴォーカルは!となりそうなので注意が必要です。

各曲美しいメロディーが炸裂する瞬間が多々あって 最初から最後までどの曲もとても良いけれど
どの曲がどうというよりも アルバム全体でダラダラとのどかなカントリー風味の心地良さという感じなので
更に気持ち良く聴くために初夏のお昼寝のお供にダラダラと垂れ流しておきたいアルバムです。
 


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WOODEN WAND AND THE SKY HIGH BAND
「SECOND ATTENTION」 (2006)

米 KILL ROCK STARS KRS456 (LP)

 
A1 Crucifixion, Pt. II
 2 Portrait In The Clouds
 3 Rolling One Sun Blues
 4 Sweet Xiao Li
 5 Hot Death

 B1 Mother Midnight
  2 The Bleeder
  3 Madonna
  4 Dead Sue
  5 Los Angeles Manna

このアルバムのウーデン・ワンドという米国人については全く知らなかったのですが
ジャケットがジョン&ヴィヴァリー・マーティンの名作「ストームブリンガー」のパロディだったので
きっとそれっぽい英国フォーク・ロックな音なんだろうなぁと想像してチャレンジ購入したのです。
で このジャケットをよく見ると「ストームブリンガー」と背景がまったく一緒! 真似て作ったのではなく
フォトショップとかを使用して人物だけ入れ替えて製作したのかなぁ・・・という21世紀型ジャケですね。

そして針を落として出てきた音はA面1曲目のイントロからアコギがコードを3拍子でジャンジャン弾いて
その後に粘りつくヴォーカルが出てきて アーニー・グレアムの「セバスチャン」みたいだ! おおっ!
・・・と思ったけれど何か楽曲自体の魅力がねぇ・・・アーニー・グレアムと比べるような曲ではありません。
そして A5 B4 も同様のイントロで始まるという3拍子の「なんちゃってセバスチャン」だぁ! 

全体のサウンドはアコギを弾いて歌って そこに他の楽器が乗っかったり乗らなかったりで
特に何か特殊だったりという事も無く オーソドックスなフォーク〜フォーク・ロックをやっているので
「スカイ・ハイ・バンド」というバック・バンド付きのシンガー・ソングライター作品といったところでしょうか。
なおバック・メンバーの中には前項のスカイグリーン・レオパルズのメンバーもいたりしますねぇ。

いや このテのシンガー・ソングライターはいつの時代もいて地道に活動しているのだろうけど
特別な何かを放っていて凄い!とか 必殺の1曲でイチコロ!とかが無いと中々浮上しないですねぇ。
その点で行くと浮上しまくっているデヴェンドラ・バンハートという人は好き嫌いは別にしても
特別な何かを放っています・・・いや僕が知らないだけでウーデン・ワンドも浮上しているのかもね。

うーん しかし本作で最も魅力的なのは内容では無くジャケットですねぇ。 そんなアルバムなので
今後処分してしまう可能性も孕んでいますがフリーク・フォークという言葉が音楽界を駆け巡った
(のでしょうか?)2006年作なのでフリーク・フォークの1枚って事にしておきますよっ! 
 


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WINTER FLOWERS 「WINTER FLOWERS」 (2006)
米 ATTACKNINE ATTCD012 (CD)
1 Misty Morning Land
2 End Of The War
3 Ivory Path
4 Country Fair
5 Hey Ho
  6 Sixteenth Street Sunset
  7 Winter Bird
  8 Why Don't You Shine
  9 Too Young To Marry
 10 Isle Of Islay
 11 Sea Song
 12 Window Of The Sun
 13 White Pilgrim
 14 Crist Bird

米国のウインター・フラワーズというバンドの1stアルバムは裏ジャケの何かやってくれそうな風貌で
演奏するメンバー写真そのままの少々妖しげな雰囲気の女性ヴォーカル入りフォーキー・サウンド!

米国バンドでありながらカントリー臭やブルース臭はせず英国的な美しさが全体を支配していて
使用楽器もギターやマンドリンを基調にして そこにグロッケンスピールやリコーダーなどが絡み
10曲目にはドノヴァンのカバーも入っているという念の入れようで エスパーズに近い感覚があります。

ただ基本的にマイナー調の暗い曲ばかりのエスパーズとは違い 優しげな素敵な曲が多いですね。
その中でもギターにグロッケンスピールとリコーダーが絡み 寂しげなメロディーをヴァシュティ風に
消え入りそうに女性ヴォーカルが歌う7曲目と バック・コーラスと何本かのリコーダーが絡み
じわりと美しい空間が広がる男性ヴォーカルが歌う13曲目が とても良いですねぇ。

そしてじっくり聴いていると表面上はあまり感じない伝統的なアメリカン・フォークやカントリーの香りも
ある事に気付きました。 うーん このアルバムの美しく儚く響く音はバンドの本質とは違うのかなぁ。
フリーク・フォークの時代ならでは!という感じでこーゆー音を作り上げたのかもね。
だとすれば相当のツワモノで器用なバンドですねぇ。 もうフリーク・フォーク・ブームも終わりが
近付いていると思われるので 次のアルバムではどんなサウンドの変化があるか楽しみです。

あっ サンクス欄にデヴェンドラの名前があった。 やっぱりどこか繋がっているんだねぇ。
 


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JO MANGO
「PAPERCLIPS & SAND」 (2006)

英 LO-FIVE LO5 001 (CD)
 
1 My Lung
2 Tealights
3 Gamer
4 How I'd Be
5 Waltz With Me

  6 Take Me Back
  7 Hard Day
  8 Blue Light

  9 Harlow 1959
 10 Portuguese Skies (bonus track)

デヴェンドラ・バンハートやジョアンナ・ニューサムやエスパーズ そしてヴァシュティ・バニヤン
といったところはフリーク・フォークのキーワードとなる人物〜バンドになってしまっていますが
その中でも世代がだいぶ上のヴァシュティが そんな風に言われて おいおい勘弁してくれよと
迷惑に思っているのか あるいは満更でもないのか それはわからないけれどもヴァシュティが
フリーク・フォークのキーワードとして認知されてしまったという事実は消しようがありません。

ただそんなフリーク・フォークがどうとかいうサイド・ストーリーよりも その音楽が素晴らしく響き
感動を届けてくれているかどうかが最も重要で その点からいくとヴァシュティ・バニヤンの復活作
「ルックアフタリング」は聴くと泣いてしまいそうな程の素晴らしさで 最高峰の音楽でしたよ。 

そんなヴァシュティ2007年の来日公演にてバックで演奏をしていた英国人ジョー・マンゴー。
ヴァシュティのバックで演奏する位だからそれはもう彼女もフリーク・フォークのキーワードの中に
無理矢理盛り込んでしまっても構わないじゃないですか。 ああ そうじゃないですか。
ヴァシュティ来日公演の際に彼女は本作の1曲目「My Lung」をカリンバの弾き語りという
特殊なスタイルで歌い これが音の中に溶け込んで行って死んでしまいそうな程の良さでした。

そのジョー・マンゴーの1stアルバム。 カリンバの弾き語りという特殊スタイルは1曲目だけで
後はギターの弾き語りを中心にしたフォーキーなシンガー・ソングライター作品ですね。
表現力豊かでありながら可愛らしさのあるヴォーカルや楽器の演奏も非常にしっかりしていて
本当はもっと複雑なサウンドを作りたいけれど それを抑えてシンプルな伴奏と
わかりやすいメロディーにしていますって感じにも聴こえて・・・その位秘めた才能を感じますよ。

そんなんでフリーク・フォークという枠にはめ込んでしまってはいけない人だと思うし
うまくいけばノラ・ジョーンズ級の有名芸人になれるメジャー感さえも感じ取る事ができますが
英国勢でフリーク・フォークってあまりいないので強引にフリーク・フォークの仲間入りなのです。

必殺の1曲目と共に アコギ&フルートという楽器構成で展開する6曲目も大必殺!
ボーナス扱いの10曲目は1994年発表のEPに収録されていた曲との事・・・この曲も沁みるー。
何でもうまくこなせそうな人なので今後の活動もヒジョーに楽しみです。
 


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THE MEMORY BAND
「APRON STRINGS」 (2006)

米 DICRISTINA STEP08 (CD)
 
1 Blackwaterside
2 Come Wright Me Down
3 Brambles
4 Green Grows The Laurel

 5 I Wish I Wish
 6 The Light

 7 Want To Know You
 8 Deltic Soul

  9 Why
 10 Reasons
 11 Evill
 12 The Poacher

以前掲示板で存在を教えていただいた英国のグループ メモリー・バンドの2ndアルバム。
オリジナル曲をメインに 1 4 5 曲目がトラッド曲で 最後の12曲目はロニー・レインのカバー!
作者クレジットがメンバー以外の名前になっているので 7 9 曲目もカバーなのかなぁ。

ヴォーカルは男性も歌いますが 女性ヴォーカルが多くを歌い インスト曲も数曲という構成。
メンバーにバイオリン奏者とビオラ奏者がいるので このストリングス軍団が全編に渡り活躍します。
楽曲自体がトラッド曲でバイオリンも入るときたらトラッド色強そうですが それ程トラッド色は無く
トラッド・フォークはまあ聴けるけどトラッドばっかりじゃキツいよ!というような人にぴったりです。

そうだなぁ ウォーターボーイズの「フィッシャーマン・ブルース」から男臭さを抜いて穏やかにして
もっと英国的な陰影をふりかけたような音です。 実際7曲目の出だしのストリングスのフレーズは
ウォーターボーイズにそっくりなのがあったような気が・・・と僕はそっち方面との共通項を
思い浮かべてしまって 聴いていてフリーク・フォークっぽさは全然感じる事ができませんでした。

ただ1970年代の英国フォークとも ウォーターボーイズのような1980年代のルーツ・ロックとも違う
21世紀感覚は漂っていますね。 21世紀感覚って何だ?と言われてしまうと答えようがありませんが
聴けばわかる フリーク・フォーク勢との同時代性! 米国盤はレーベルもディクリスティーナだしね。

最後のロニー・レインの名曲カバーではあの印象的なフレーズをストリングス軍団が弾きまくって
ヴォーカルも男女ヴォーカルで一緒に歌いまくって盛り上がるというナイス・カバー! ナイス!
 


FromEdenHomeAndInBetween.jpg FromEdenHomeAndInBetweenBack.jpg
SHORELINE 「FROM EDEN, HOME & IN BETWEEN」 (2006)
英 YESTERNOW YES001 (10")
A1 Lightning
 2 
Shipwrecked
 B1 Sounds Like
  2 Kings
  3 
A Second Thought


さあ2006年ベスト10も残すところ1枚となりました! 当然ベスト10というのは一番最後に紹介するのが
第1位なので英国から登場のショアラインが第1位で決定です。 ただこれアルバムじゃなくてEPなんだ。
いや頑張って10枚並べたかったけれど もうフリーク・フォークで語れる2006年作って所有していなくて
EPだけど仕方なく登場させました・・・いずれにせよ おめでとう ショアライン! 君達が1位だ!

このイエスターナウというレーベルはまったく同じジャケット・デザインで10インチ盤を何枚か
リリースしていたのですが現在は活動していないみたいですね。 ただショアラインというグループ自体は
今のところこの5曲入りEPしかリリースしていないけれど 解散や活動停止はしていないようなので
はやく1stアルバムが出ないかなぁと心待ちにしている そんな僕です。

で ショアラインはこのジャケットの放つ雰囲気そのままにヴィンテージ感のあるフォークをやっています。
同じフレーズの繰り返しが多くてどことなくミニマル・ミュージック的な要素も感じられる音なのですが
ロリータ声の女性ヴォーカル ナイロン弦のギター そして陰影のある英国的な美しいメロディー
・・・と素晴らしい要素が詰まっています。 これは5曲入りでギュッと良いところを詰め込んだから
この内容でいけたのか フリーク・フォークの時代の空気に乗っかって作ったらこの音になったのか
1stアルバムでの結果待ちです・・・って1stアルバムが出るかどうかわからないですけどね。

・・・ふぅ 10枚も書いて疲れましたが せっかく2006年ベスト10をやったのでこの勢いで
次は2006年ベスト1億!くらいはやりたい気分ですね。 しかし1億枚も集められないので
2006年ベスト1万!でどうだ! それも あくまでも2006年度の1万枚でいこうと思っています。
 

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