以前購入した雑誌を何冊か軽ーくペラペラとめくっていたら
ドノヴァンが表紙のストレンジ・デイズ誌2006年10月号のストレンジ・フォーク特集に
ストレンジ・フォークとしてヘロンやチューダー・ロッジも紹介されていました。
うーん 彼らってけっこう聴きやすいタイプの音だし ストレンジ・フォークでいいのかしら?
これはいかん! まだストレンジ・フォークという言い方がそれ程浸透していない今の内に
ヘロンやチューダー・ロッジと もっと変態度が高いヤツを区別するために
何か変で奇妙な響きがあるヤツは「ザ・変態フォーク」とでも言っておかないと。
・・・と勘の鋭いアナタならもうおわかりだと思いますが「ザ・変態フォーク」の「ザ」は
歴代テレビ番組の中でも第1位の「ザ・ガマン」からいただきましたよ。
本当は歴代アニメ番組で第1位の「おはよう!スパンク」からいただこうと思ったのだけど
「おはよう!変態フォーク」だと爽やか過ぎるので「ザ・変態フォーク」にしたんですよ!


HalcyonDays.jpg HalcyonDaysBack.jpg HalcyonDaysBook.jpg
DR. STRANGELY STRANGE 「HALCION DAYS」 (2007)
英 HUX HUX092 (CD)
1 Cock-A Doodle-Doo
2 Existence Now
3 Good Evening Mr Woods
4 Going To Poulaphouca
5 Mirror Mirror
6 Sweet Red Pape

7 Horse Of A Different Hue
  8 Lady Of The Glen
  9 HMS Avenger
 10 Halcyon Days (2006)
 11 The Invisible Kid (2006)
 12 Le Le Rockin Sound (2006)
 13 Cock-A Doodle-Doo (kip version)

「ザ・変態フォーク」といって真っ先に思いつくのは英国のインクレディブル・ストリング・バンドですねぇ。
そのインクレの芸風を継承する第一人者として僕の中で勝手に名を轟かせているのがアイルランドの
ドクター・ストレンジリィ・ストレンジです。 本作はそんな彼らの発掘音源集になります。

1969〜1970年に録音された音源に2006年の新録曲を3曲加えた内容で いやぁ 表ジャケット
〜裏ジャケット〜ブックレットの表紙・・・と写真だけ見ていても「ザ・変態フォーク」な音が出てきそうな
やってくれそうな写真が使われていて期待させてくれる訳です。 ブックレット内にも沢山写真があり
英文の解説文も長文で読み応え充分で・・・もちろん読んでいませんが ちゃんと歌詞も載っているし
充実したつくりの1枚です。 ただ僕の嫌いなデジパック仕様で・・・もうデジパックは消えて欲しいですよ。

収録曲は当時未発表に終わってしまった音源ながら作りかけの未完成品やデモといった感じではなく
彼らの2枚のオリジナル・アルバムにこっそり入っていてもわからないような完成された音ですねぇ。
まあ彼らの曲は元々ダラダラとした雰囲気なので作りかけだとしても完成品に聴こえてしまうのだけどね。

基本路線はアコギあるいはピアノかオルガンをメインに使ったダラダラと流れるフォークになっています。
ジャケットでタンバリンを持ったライナスという女性はパーカッション担当で コーラスでちょっと歌いますが
彼女がメインに歌う曲は無く全編男性がインクレ同様のヒッピー・ソウル感覚溢れる歌い回しで歌います。
ダラダラと流れるフォークというのは瞬間瞬間でははっとする美しいメロディーとかもあるのだけれど
楽曲の先の展開が読みにくくて中々覚えられそうにない曲ばっかりで・・・結果「ザ・変態フォーク」ですよ。
残念なのは1st「Kip Of The Serenes」で活躍していたヨレヨレの笛類があまり入っていない事でしょうか。

7 8曲目はエレキ・ギターやドラムスが入ってザ・バンドのような大らかなフォーク・ロックになっています。
ただこれらの聴きやすい曲も ポイント ポイントで変な節回しだったり変な楽曲展開だったりして
「ザ・変態フォーク・ロック」になっていて一筋縄ではいかないというのはさすがですねぇ。

2006年録音の 10 11 12曲目も古い音源に混じってもまったく違和感無く聴こえます。
フォーク・タイプの曲ではこの新録3曲がリズムもメロディーも素直さがあって最も聴きやすいですね。

1st「Kip Of The Serenes」のレヴュー・・・第35号 2001/4/15 英国ヒッピー・フォークで五月病を先取り
 


GreatWallOfChina.jpg
MORMOS 「GREAT WALL OF CHINA」 (1971)
仏 SPALAX MUSIC SPALAXCD14540 (CD/1997)
1 Womanbud Deborah
2 Great Wall Of China
3 Forever Seventh Loved Time
4 Now Is Made In America
5 The Crimson Uniform
6 Poughkeepsie

7 Smelling Lile A Rose
8 Victoria Falls
  9 Jack Of Hearts
 10 O Mistress Mine
 11 Cap And Bell
 12 Walk In, Walk Out
 13 These Echoes/My Granadma Rocks
 14 St. Ives
 15 Listen To The Flavour (bonus track)
 16 Paranoid Nightdream (bonus track)

フランスで活動していたモルモス(ローマ字読みの読み方適当シリーズ)の1stアルバム。
いやーんこれは素晴らしい! 何とも形容し難い妖しげな音が「ザ・変態フォーク」ですよ。
そして前項のドクター・ストレンジリィ・ストレンジと同じくこちらも僕の嫌いなデジパック仕様です。

「フランスで活動していた」というのはメンバーがアメリカ人を中心にしたグループとの事で
歌詞も英語で歌われています。 フランスで活動するアメリカ人というのはフランスから見たら
外タレさんな訳ですからこのグループは日本でいったら ダニエル・ビダル エマニエル婦人
そしてエマニエル坊や の3大フレンチ外タレと同じくらい重要な立場だったのでしょうね。
・・・ってエマニエル婦人は役名だし エマニエル坊やはアメリカ人か! いけねっ 間違えた!

クレジットを見ると6人のメンバーの内3人がリコーダーとバラライカ(!)を演奏していて
それだけでも変なアンサンブルをかましてくれる事が決定付けられているじゃないですか。
後はギターやチェロやフルートが使われていますが 聴いていて印象的に響くのは
チェロとフルートやリコーダーの笛類の音ですね。 バラライカは・・・うーんよくわかりません。

ヴォーカルは男女で歌っていますが メイン・ヴォーカルをとるのは男性の方がちょっと多いかな。
そしてメンバーは6人だけど 2人位で演奏しているような隙間のある音ですねぇ。
隙間だらけだけど のどかさなどは無く不安を煽るような不気味さと妖しさが全編を支配しています。
聴くタイミングを間違えると隙間だらけでショボく聴こえる時もあるので体調を整えてから聴きましょうね。

1分〜3分台の尺の楽曲が多く並んでいて次から次へ変な曲が飛び出すという構成もいいですね。
4曲目のリコーダー大炸裂とか 5曲目の虫声変態ヴォーカル大炸裂とか 15曲目の意味不明の
「ウーワッ!」っていう合いの手とか どれも過剰にやっていて何だかわからないけれど凄いです。

このグループは2ndもCD化されているので手遅れにならない内に入手しないと。 2ndも聴きたく
なってしまうという事はこの1stが良いって事ですよね。 そーだよね! ねえ エマニエル坊や。
 


YouUsedToThink.jpg YouUsedToThinkBack.jpg
ERICA POMERANCE 「YOU USED TO THINK」 (1968)
伊 GET BACK GET1099 (LP)
A1 You Used To Think
 2 The Slippery Morning
 3 We Came Via
 4 The French Revolution
 5 Julius
 B1 Burn Baby Burn
  2 Koanisphere
  3 Anything Goes
  4 To Leonard From Hospital

カナダ人のエリカ・ポメランスのこの作品はイタリアのゲット・バック社からの再発LPでの紹介ですが
オリジナルLPはアシッド・フォークの宝庫ともいえる米国のESPというレーベルから出ていたとの事です。
男性と女性が結合している絵の表ジャケもキていますが ライオンキングのようなメイクをした
エリカ・ポメランスがギョロリとした目で睨みつける裏ジャケもキているじゃないですか。

アコースティック・ギターがジャカジャカとかき鳴らされバタバタとパーカッションが入る1曲目から
スピーカーの右と左からオクターブの違う彼女の歌声が大炸裂して妙な凄みを放つ曲で
こんな変態的な響きじゃあ「ザ・変態フォーク」の仲間入りしてもらわないといけませんよ。

音域を広く使い演劇的に歌われる彼女のヴォーカルは低音の時はタンのからんだようなしゃがれ声で
高音になると一瞬ジョーン・バエズみたいだなぁと思ってしまう伸びやかさがあります。
基本路線はそんな彼女の妙な凄みのあるヴォーカルを聴かせるアルバムなのでしょうが
バックの演奏もヴォーカルのテンションに負けない凄みのある演奏の連続でとにかく凄いです。

演奏はアコギとパーカッション類の他にフルート サックス ピアノ シタールなども使われています。
パーカッションはほぼ全曲に入るのでリズミカルでスピード感のある曲が多いですね。

フルート炸裂のA3とか疾走感のあるギターとシタールで迫るA5とかA面は割りと聴きやすいですが
B面が危険で「ザ・変態フォーク」以上の前衛的な実験音楽の要素も強くなっています。
このB面はポップス好きの人なんかにとってはけっこう聴くのがツラい体罰系でしょうねぇ。

僕もポップス好きなので聴くのが体罰になりそうなところですが ところがどっこいですよ!
このB面も含めアルバム全体にみなぎるテンションの高さだけでグイグイと引き込まれてしまい
サウンドの好き嫌いに関わらず最後まで一気に聴けてしまうという凄いアルバムなのです。
それって相当の傑作だと思いません? ねえ エマニエル坊や!
そんな傑作に出会える訳だから「ザ・変態フォーク」の探求はこれからも続いていくのです。
 

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