レディバグ・トランジスターの新譜を購入したら あれれ? サーシャ・ベルの名前がありません。
当然彼女の吹くフルートやヴォーカルも入っていないのでサウンドに変化が!・・・と言ってみたものの
サウンドに大した変化も無く相変わらずポップで聴きやすいレディバグの音でした。
しかしサーシャ・ベルはエセックス・グリーンに専念なのか ソロ活動なのか はたまた休業なのか
心配事がまたひとつ増えて神経質で気の弱い僕は夜も眠れないという状態が続いています。
そんなんでレヴュー第90号の続編 レディバグ〜エセックス・グリーン関連作品の紹介です。


CantWaitAnotherDay.jpg
THE LADYBUG TRANSISTOR 「CAN'T WAIT ANOTHER DAY」 (2007)
米 MERGE MRG292 (CD)
1 Always On The Telephone
2 I'm Not Mad Enough
3 Here Comes The Rain
4 Terry
5 This Old Chase
6 For No Other
  7 Three Days From Now
  8 In-Between
  9 So Blind
 10 Broken LInks
 11 California Stopover
 12 Lord, don't Pass Me By
 Gary Olson
 Julia Rydholm
 San Fadyl

所有しているレディバグ・トランジスターのアルバムのクレジットを見てみたらサーシャ・ベルは
「Albemarle Sound」(1999) 「Argyle Heir」(2001) 前作の「The Ladybug Transistor」(2003)
に正式メンバーとしてクレジットされていました。 あと僕が所有している彼らのアルバムは
「Marlborough Farms」(1995) 「Beverley Atonale」(1997)で もしかするとこれで全アルバムかな?
となると本作は6thアルバムで サーシャ・ベルと共にエセックス・グリーンをやっている
ジェフ・バーロンは全曲ではないものの本作にも参加しているという状況になっていますねぇ。

メンバー・クレジットは参加者多数で何だかよくわからないので前作でメンバー・クレジットされていた
5人からサーシャ・ベルとジェフ・バーロンを抜いた3人を勝手に本作の正式メンバーにしておきました。
ジャケットの2人はフロントマンのゲイリー・オルソンとベース担当のジュリア・ライドホルムでしょうね。
なおここまで出てきた人名はすべて読み方適当シリーズなので間違っていてもご勘弁だぁー。

本作にはサーシャ・ベルのヴォーカルが入っていないせいでゲイリー・オルソンのバリトン・ヴォイスが
全編を支配し 最初聴いた時はこれがまるでお経のように響いてオエー! となってしまいました。
しかしガマンして5回聴いたら 5回目から凄く良く響いてくるからあーら不思議じゃあーりませんか。
まあ女性ヴォーカルがメインに歌う曲は無いけれども曲によってはコーラスで女性ヴォーカルが入り
彼のお経のようなバリトン・ヴォイスを少々和らげてくれてはいるのですけどね。
5回聴いて良く響き出すとなると 10回 20回と聴き続けたらもっと良く響いてきそうなアルバムですよ。

サウンドはギター ベース ドラムス キーボード のロック基本楽器の上にホーンやストリングスが
乗っかるポップなフォーク・ロックで適度にアコースティックな感触もあり相変わらず良く作られています。
レディバグの作品はペット・サウンズ以降のビーチ・ボーイズ風味を感じる事が多いのだけれど
本作には洗練された都市型のポップなフォーク・ロック曲が幅を利かせている印象があります。
うーん 都市型と感じるのはキーボードがエレピの音色で迫る曲が耳に残るからでしょうかねぇ。

前作「The Ladybug Transistor」にもジャッキー・デ・シャノンのカバーが入っていたけど
本作でも3曲目でカバーをやっていて 何と! トレーダー・ホーンのカバーですよ。
いや いくら英国おとぎ話ポップ・フォークの最高峰 トレーダー・ホーンのカバーをやっていても
何と! と驚く程の事では無いのだけれども無駄に驚いてみました。
よーし じゃあもう少し無駄に驚いておくかな 何と! 何と! 何とぉー!
 


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THE ESSEX GREEN 「CANNIBAL SEA」 (2006)
米 MERGE MRG278 (CD)
1 This Isn't Farmlife
2 Don't Know Why (You Say)
3 Penny & Jack
4 Snakes In The Grass
5 Rue De Lis
6 Cardinal Points
  7 Rabbit
  8 Uniform
  9 The Pride
 10 Sin City
 11 Elsinore
 12 Slope Song
 Jeff Baron
 Sasha Bell
 Christopher Ziter

レディバグ・トランジスターの新作にサーシャ・ベルが参加していないので えーい仕方ない! と
エセックス・グリーンの3rdを聴きましょう。 こちらではサーシャ・ベルのヴォーカルがたっぷり聴けるし
フルートも吹いています。 ただエセックス・グリーンは男性のジェフ・バーロンもヴォーカルをとるので
彼女がメイン・ヴォーカルの曲は半分くらいだし演奏方面もキーボードを弾くのがメインの仕事なので
フルートは全曲に登場するっていう訳ではありません・・・っつーかフルートあまり登場しねーなぁー。

エセックス・グリーンは前作の2nd「The Long Goodbye」がヒジョーに良く僕の中では大ブレイクでした。
そんな大ブレイク後の次の作品なので期待値はスーパー・マックスでしたが 期待していたような
あらぬタイミングのハンド・クラップや指パッチンは入らず フルートの登場頻度も低いはで
本作は前作ほどブレイクせずにフィニッシュです。 でももちろん悪くないです。 良いですよー。

前作「The Long Goodbye」の勢いを引きずっているかのようなスピード感のある 2曲目や3曲目とか
可愛らしいアコースティック・ポップの5曲目や10曲目とか ゆったりと流れてどこか懐かしさ漂う
お昼寝フォーキー・ポップの最後の12曲目とか・・・いやぁ良い曲が沢山入っていますねぇ。

エセックス・グリーンはレディバグ・トランジスターと姉妹バンドみたいな位置にあるので
ポップなフォーク・ロック・サウンドもそれ程違いは無いですが エセックス・グリーンの方がロックっぽく
アコースティックな響きもあるのでギター・ポップ〜ネオアコ度が高いのではないでしょうか。

しかしサーシャ・ベル サーシャ・ベル と騒いでいますが実は彼女のヴォーカルは大騒ぎする程の
絶品の歌声では無く松任谷由実系なのですよねぇ。 こりゃーきっと喋ったら田中真紀子声だろうし
一歩間違えるとイヤーな感じのあばずれで下世話でゲロゲーロのカエル声なのです。
それでも僕が大騒ぎしている理由はこの次の項のアルバム紹介で明らかに! ああ明らかに!
 


DestinationGirl.jpg DestinationGirlBack.jpg
FINISHING SCHOOL 「DESTINATION GIRL」 (2003)
豪 LOW TRANSIT INDUSTRIES ltid009 (CD)
1 Reno
2 Hair
3 Destination Girl
 4 New Sensation
 5 Day Is Over
 6 Silent Space
 7 Rowan's Theme
 8 Morning Light
 9 Page 16
 Sasha Bell

こちらはサーシャ・ベルのソロ・プロジェクト フィニッシング・スクールの(たぶん)唯一のアルバム。
彼女の実年齢は何歳か知らないけれどもジャケットに写る彼女は童顔でお人形さんのようですよ。
何か頭も良さそうな顔立ちで・・・それも理数系だねぇ。 この理数系なルックスがたまらん!っつー事で
サーシャ・ベル サーシャ・ベル と騒いでいるのです。 右側のブックレットの裏表紙の写真は
表ジャケットよりも美人さんに写っていて更にああたまらん! たまらん! という事になっていますよ。

サウンド的にはエセックス・グリーンとさほど変わらない音で 曲によってはストリングスなんかも入るけど
基本路線はギターとキーボードをメインに使った素直でポップなフォーク・ロックになっていて
まあギター・ポップ作品と言ってしまってもいいでしょうね。 ただ期待のフルートは8曲目に
入っているだけかな? せっかくのソロ作なのにフルートの登場頻度が低いのは残念ですねぇ。 

そしてソロ作なので彼女のあばずれで下世話な歌声が全編に響き渡ります。
この歌声に拒否反応を示すかどうかが 本作を聴けるかどうかのターニング・ポイントですね。
僕も最初聴いた時はウッ!と嘔吐しそうになったのですが 嘔吐をガマンして何度も聴いていたら
段々心地良く耳に入ってくるようになりました。 聴いてみたい でも嘔吐はしたくない という人は
バックの音はのどかでポップで良いので間奏だけ聴くという特殊な聴き方もいいかもね!

まあ収録時間はトータル約30分しか無いのでガマン聴きもできる時間ですよ。
CD時代になってから1時間超のアルバムもフツーになってしまったけれども
アルバム1枚の収録時間は30〜40分がちょうど良いですよ。 ちょうど良いぞ 良いぞ 良いぞぉー!
 


SundayBridge.jpg
THE SIXTH GREAT LAKE 「SUNDAY BRIDGE」 (2004)
米TUP KEEWAH TK031LP (LP)
1 Old Smoke
 2 The Saint
 3 Everybody Loves
 4 Fool
 5 Downies
 6 Baby Tonight
 B1 House Of Cards
  2 Seven Stripes
  3 Twenty-Three Songs
  4 House Song
  5 Kentucky
  6 Smokin' Joe
 Zachary Ward
 
Michael Barrett
 Christopher Ziter

レディバグ・トランジスターがあってエセックス・グリーンがあってフィニッシング・スクールもあるというのに
サーシャ・ベルの参加しているバンドは更にまだあるよ。 それがこのシックスス・グレイト・レイクだよ。

シックスス・グレイト・レイクの1stではサーシャ・ベルとジェフ・バーロンも加わった5人組だったんだ。
そして本当に本当に素晴らしく感動的なカントリー寄りのフォーキー・サウンドを響かせていたんだ。
ところがこの2ndではサーシャ・ベルが1曲 ジェフ・バーロンは3曲だけ参加という状況なんだ。
うーん この時期2人はレディバグ・トランジスターで忙しかったので1曲だけ参加だったのかしら?

そんな残りの男性3人で何とか作ったアルバム的ではあるのだけど これがまた素晴らしいのです。
ポップに弾ける事も無く 全曲スロー〜ミディアム・テンポの曲で構成され 相変わらずフォーキーで
カントリー風味も漂い 何か1970年代の地味なシンガー・ソング・ライター・アルバムのようでもあります。

いや これだけスロー〜ミディアムの曲ばっかりだと一瞬ダラダラ感もあってかったるいのだけど
こーゆーのって何度も聴いているとじわりじわりと染みてきますねぇ。 線路のジャケットを見ながら
聴いていると ゆったりと流れて行く車窓からの風景が思い浮かび 仕事や人間関係や日々の生活の
下らない事から逃れて誰も僕の事を知らない どこか遠い遠い所へ行きたくなりますよ。
そんな ふっと泣きたくなってしまうような素敵なアルバムですねぇ。 音自体は違うけれどこの感覚は
カウボーイ・ジャンキーズの「The Caution Horses」というアルバムに似た感触があります。

えーと このアルバム 僕は下北沢のジェット・セットでフツーに新譜コーナーに入っていた新品LPを
フツーの価格で購入したのですが その後はどこでも見かけた事が無いですねぇ。
そして本作はなぜかLPのみで発売という体制で レコード・プレイヤーを所有していない若いヤングが
圧倒的に多い今どきの時代にLPだけ発売なんてダメでしょう。 そんなの喜ぶのはCDとLPがあったら
何だかんだ理由をつけてCDじゃなくLPで購入しようなんて考える頭のイカれたヤツだけですよ。
僕はかなり頭がイカれているのでLPで購入して喜んでいますけどね! わーい わーい わぁーい!
 


Jeffersonville.jpg
GUPPYBOY 「JEFFERSONVILLE」 (1997)
米 SUDDEN SHAME SS-019 (CD)
1 Washington Square
2 Trable
3 Seventh Avenue
4 The A. M.
5 Avalon Ballroom
  6 Ball In The Sky
  7 Affection
  8 Twisted

  9 Holiday
 10 New Orleans
 11 Cam 2
 12 Snow Song
 13 Wendy
 14 Urbus Lament
 15 Berry Girl
 Jeffrey Baron
 Michael Barrett
 Sasha Bell
 Zachary Ward
 Christopher Ziter

サーシャ・ベルとジェフ・バーロンがレディバグ・トランジスター加入以前にやっていたグッピーボーイ。
クレジットを見ていたら何か謎が解けてきました。 5人のメンバーは前項のシックスス・グレイト・レイクの
1st「Up The Country」(2001)にクレジットされていたた5人とまったく一緒じゃないですか!

そしてジェフ・バーロン サーシャ・ベル クリストファー・ジッターの3人は現在のエセックス・グリーンだし
レディバグがあってそのサイド・プロジェクトとしてエセックス・グリーンやシックスス・グレイト・レイクがある
と思っていたら大間違いでしたねぇ。 このグッピーボーイがまずあって そこからジェフ・バーロンと
サーシャ・ベルがレディバグに参加したという流れが正解なので レディバグの新作からサーシャ・ベルの
名前が消えたのは今後はエセックス・グリーンに力を入れて行こうと思っているのではないでしょうか。
・・・と勝手な想像で書いてしまったのでサーシャ・ベル本人が見ていたら本当はどーなのか連絡下さい。

そんなこんなでこのグッピーボーイのアルバムはエセックス・グリーンとシックスス・グレイト・レイクの
源流を伺い知る事のできる内容なので 今後は重要なアルバムとして位置付ける事にしました。
サーシャ・ベルに関してはメイン・ヴォーカルの曲は無くコーラス中心で フルートは数曲に登場します。

2曲目はバンジョー・ロールが入ってカントリー風味でシックスス・グレイト・レイクへの流れを感じます。
またスロー〜ミディアムのゆったりとしたフォーク・ロック曲を多く収録し それらの曲は
シックスス・グレイト・レイクのアルバムに入っていてもまったく違和感の無いような曲ですよ。
9曲目のララララー・コーラスはエセックス・グリーンにも似たようなフレーズがあったし・・・と思ったら
次の10曲目はエセックス・グリーンのEP「The Essex Green」に再録ヴァージョンが絶賛収録中でした。

全体的にダラダラ感がありアマチュア度も高く完成度も低いけれど のどかで素敵な響きとも言えるので
中古でカス盤価格で落っこちていたら拾ってあげて下さい。 いや拾え! 拾いまくれ! さあ拾えぇー!


レディバグ・トランジスター〜エセックス・グリーン関連レヴュー
第82号 2004/2/18 その筋の業界では大人気、輝く太陽ジャケでドーン!
第90号 2004/9/27 エセックス・グリーンが指パッチンで迫る
 

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