ちょっと前の話だけど ル・クプルのコンビ解消というのはショッキングでしたよ。
何といってもル・クプルの女性の方は日本のポピュラー音楽史上でも最もカルトで
計り知れない程の影響力を持っていたグループの内のひとつ
「左卜全とひまわりキティーズ」に在籍していたという凄い経歴の持ち主ですからねぇ。
だからこのコンビ解消には全員ショックを受けたのではないでしょうか。
しかしル・クプルの場合はグループ名をつけてしまったのがいけなかった。
それぞれの名前を「&」で繋げておけば別々で活動しても
ただのソロ活動だなーと思うのでコンビ解消がバレませんからね!
という事で「&」で繋げた男女デュオ・アメリカ〜カナダ編といきますか。
これから男女デュオをやろうという人たちは是非参考にしてください。


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MIMI FARINA AND TOM JANS 「TAKE HEART」 (1971)

米 A&M SP 4310 (LP)

A1 Carolina
 2 Charlotte
 3 Kings And Queens
 4 The Great White Horse
 5 Reach Out (For Chris Ross)
 B1 Madman
  2 In The Quiet Morning (For Janis Joplin)
  3 Letter To Jesus
  4 After The Sugar Harvest
  5 No Need To Be Lonely

いやぁ良いなぁ。 ミミ・ファリーニャ&トム・ヤンス。 出てくる音は1971年という時代らしい
攻撃性の無い穏やかな音で 割とフツーで聴きやすいフォーク〜フォーク・ロック曲が並び
シンガー・ソング・ライター風味の作品を「&」で繋げた男女デュオで仕上げたという感じでしょうか。

まあ特別に凄い!という事は無いのだけれども 疾走感溢れるフォーク・ロックの1曲目から盛り上がるし
終始優しげなトム・ヤンスの歌声と 時に美しく 時に気の強そうに歌うミミ・ファリーニャの歌声の
コントラストもとても良いし のどかなカントリー風味で迫るA3とB3なんてのも効いていますねぇ。
B4は2人のギター・プレイによるインストですが ギターも中々の腕前でこの曲もとても良いですよ。
そんなんで思わず「いやぁ良いなぁ。」って言っちゃうような良いアルバムになっています。

このアルバム以前 ミミ・ファリーニャは旦那のリチャードと これまた「&」で繋げた男女デュオ
「リチャード&ミミ・ファリーニャ」としてヴァンガード・レーベルから素晴らしい作品を発表していました。
ところがリチャード・ファリーニャは1966年に事故で亡くなってしまうのです・・・ああ 合掌。

しかしリチャード&ミミ・ファリーニャを「&」で繋げておいたのがその後 活きてきた!
ほら グループ名だとメンバーそれぞれの名前なんかいちいち覚えられないじゃないですか。
おかげで「ミミ・ファリーニャ&トム・ヤンス」のLPを見ても ん?それ誰?ってならずに全員速攻で
購入するっていうモンです。 僕も中古で見つけて速攻購入・・・購入したのはもう10年位前ですねぇ。

なお本作の相方のトム・ヤンスも1984年に亡くなっています・・・ああ 合掌。
そしてミミ・ファリーニャも2001年に亡くなりました・・・ああ ああ あああぁー 合掌。
皆さん早死にでまったくヒドい話ですが 彼(女)らの残してくれた音楽を聴くのが一番の追悼ですね。

そしてミミはジョーン・バエズの実妹なので もしリチャード・ファリーニャが生きていたら
ボブ・ディランやジョーン・バエズも巻き込んで何か凄い展開があったかも知れないなぁー
・・・と勝手に想像を膨らませて彼(女)らの残してくれた素晴らしい音楽を聴くのもいいじゃないですか。

Richard & MImi Farina 「Reflections In A Crystal Wind」のレヴュー・・・第45号
 


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BILL & TAFFY 「ACES」 (1974)
米 RCA CPL1-0605 (LP)
A1 Late Nite Radio
 2 Richard
 3 Maybe
 4 Be Happy, Don't Warry
 5 Janet From Another Planet
 B1 Dearest Esmeralda
  2 Annie (Say It's Gonna Be Alright)
  3 How Lucky Can You Be
  4 One Another
  5 Thank You
  6 Band Playd On

これはビル&タフィーの(たぶん)2ndアルバム。 このビル&タフィー・ダノフ夫妻は
後にスターランド・ヴォーカル・バンドを結成して「アフタヌーン・ディライト」を大ヒットさせる2人で
スターランド・ヴォーカル・バンドはポップ・コーラス・グループといった趣きでしたねぇ。

「&」で繋げた男女デュオ時代のビル&タフィーの本作もポップス度はけっこう高いけれど
スターランド・ヴォーカル・バンドよりもフォーキーでカントリー風味も効いていて中々良いですよ。
オールディーズしまくるA3なんかもあるし ピアノを基調にした曲や ストリングス入りの曲もあり
ホント ポップス度高くて こーゆーサウンドに オェー! となる人もいそうです。

確かに強力な個性が爆発する凄い芸人さんのアルバムとかは聴いていて興奮するけれども
こーゆー強烈な個性の無いフツーなアルバムを聴いてしっくり来る体調の時もありますからねぇ。

2人ともクセの無い穏やかな歌声で 優しげなカントリー・ロック風味の1曲目から心地良く
最後のピアノを基調にした懐かしさに満ちたワルツのB6までずーっと心地良く響きます。
そーいえば1曲目はスターランド・ヴォーカル・バンドでも再演されていました。

2人の名前を「&」で繋げた効果はというと・・・やはりスターランド・ヴォーカル・バンドという
4人組のグループでブレイクしてしまったので2人の名前の認知度は低いのではないでしょうか。
まあそのおかげで離婚しても全然バレませんけどね・・・いやいや実際その後の2人については
まったく知りませんので。 勝手に離婚させてはいけませんよね。

ただビル&タフィー・ダノフはあの名曲「カントリー・ロード」のジョン・デンバーとの共作者として
覚えておきましょう。 きっと困った時に役に立ちます。 あと全然関係無いけれど
「愛と青春の旅立ち」の作者としてバフィー・セント・メアリーも覚えておきましょうね。

Starland Vocal Band 「Starland Vocal Band」のレヴュー・・・第10号
 


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IAN AND SYLVIA 「SO MUCH FOR DREAMING」 (1966)
米 VANGUARD 79241-2 (CD)
1 Circle Game
2 So Much For Dreaming
3 Wild Geese
4 Child Apart
5 Summer Wages

6 Hold Tight
  7 Cutty Wren
  8 Si Les Bateaux
  9 Catfish Blues
 10 Come All Ye Fair And Tender Ladies
 11 January Morning
 12 Grey Morning

カナダの「&」で繋げた男女デュオ イアンとシルヴィアの6th「So Much For Dreaming」は
ドラムスやベースも入るけれどエレキ・ギターを使わないタイプのフォーク・ロック曲が多くて
アコースティックでキラキラした響きがあり 楽曲のメロディーも良いし ホント素敵な作品です。

1曲目からジョニ・ミッチェル作の「サークル・ゲーム」が爽やかな疾走感のあるフォーク・ロックで迫り
2曲目は程良い感じでホーンが入り ポップでイケてる歌い上げ系ナンバーで迫り
3曲目はバックに入るオートハープが効いている のどかなカントリー風味で迫ります。
この冒頭の3曲の心地良さにホントもうメロメロで名盤確定じゃないですか。

3曲目以降ももちろん素晴らしくて この時代らしい典型的なフォーク・ロックの6曲目と9曲目とか
いかにもトラッド曲ですって感じのメロディーを持ったトラッド曲の7曲目とか 
3曲目と同様のオートハープ入りのカントリー風味で迫る10曲目とか アコギ・ガチャガチャで
爽やかな疾走感のフォーク・ロック・ナンバー11曲目とか もう素晴らしいったらありゃしないです。

ただイアンのヴォーカルが渋くてハード・ボイルドなバリトン・ヴォイスで シルヴィアのヴォーカルは
必要以上に嫌がらせのように細かくコブシが回るので この2人の歌声に拒否反応を示す人も
多いかも知れませんね。 ただそれを補って余りあるスンバラしき楽曲の良さが炸裂する名盤です。

本作のクレジットは「イアン・タイソン」と「シルヴィア・フリッカー」になっているのですか
いつの間にか2人は結婚して「イアン・タイソン」と「シルヴィア・タイソン」になります。
解散後はそれぞれ「イアン・タイソン」「シルヴィア・タイソン」名義でソロ活動をしていますが
ソロになってから2人は一度離婚して再婚していたような・・・これは僕のテキトーな記憶なので
間違い情報だったらごめんなさいね。 でも本当はどーなのかなんていちいち調べません!

いずれにせよ彼らは名前を「&」で繋げた「イアン&シルヴィア」のグループ名だったので
ル・クプルとは違いコンビ解消がバレないシリーズで 男女デュオとして最高にイケているのです。

イアンとシルヴィア そしてイアン・タイソンのソロ・アルバムのレヴュー
Ian & Sylvia 「Ian & Sylvia」・・・第1号
Ian & Sylvia 「Play One More」・・・第49号
Ian Tyson 「Old Corrals & Sagebrush」・・・第7号
 


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DARLING & STREET
「THE POSSIBLE DREAM」 (1975)

キング/VANGUARD KICP-779 (CD/2001)
1 Al Perrin, At The End Of The Month
2 Home
3 The World Is A Music Band
4 The Possible Dream Song
5 Dust Off The Moon
  6 Ride, Ride, Ride
  7 Your Own Song "The Dit Dit Dit Dit song"
  8 You Are Like A Morning
  9 It Doesn't Matter At All If It Rains On Me
 10 About You

ダーリン&ストリートの「ダーリン」の方はエリック・ダーリンで「ストリート」の方はパトリシア・ストリート。
エリック・ダーリンは1960年代に健康的でポップなフォークをやっていたルーフトップ・シンガーズの
リーダーだった人だと知っていたのですが 女性の方のパトリシア・ストリートは知りませんでした。

本盤は日本盤なのでちゃんと解説もついていてパトリシア・ストリートは後期ルーフトップ・シンガーズの
メンバーだった人で この2人の「&」で繋げた男女デュオ名義のアルバムはこれ1枚しか無いけれど
2人での活動はけっこう長くやっていたようです。 ・・・とまたどーでも良い事を知ってしまいましたよ。 

そんなフォーク・グループ出身の2人なのでサウンドはドラムスやベースやエレキ・ギターも入りますが
アコースティックな響きがありますね。 しかしこれはただのフォーク・ロックと言ってはいけないような
ちょっと特殊な音で 全編に軽やかなスイング感があり 何とも形容し難い面白いアルバムですね。
トータルで30分に満たない収録時間もこのサウンドを聴き続けるのにちょうど良い時間ですよ。

そんなスイング感が心地良いので どーしてもバックのサウンドの方に耳がいってしまいますねぇ。
ヴォーカルは2人とも線が細めでコーラス隊向きだし 2人のヴォーカルの絡みも うーん・・・って感じで
バックのサウンドに耳が行くのだろうけれど このヴォーカルのおかげで軽やかなスイング感が
よりいっそう強調されて聴こえて 気持ち良いアルバムとして響いてくれるのかも知れません。

ストリングスが入る2曲目だけは複雑に絡む2人のヴォーカルで聴かせる室内楽ポップ風味なのだけど
この曲調だと更にヴォーカルの弱さが目立ちます。 いやかといって悪くない。 むしろ凄く良いです。

さてダーリン&ストリートが「&」で繋げた男女デュオでアルバムを出したその効果はというと
本作は1975年当時大して売れなかったようだし この日本盤CDもすでに廃盤のようですよ!
つまり名前を「&」で繋げた男女デュオで活動すれば大丈夫って事は無いという事がたった今発覚!
これはいけません。 これから男女デュオをやろうという人たちは是非参考にしてください。
ただ「左卜全とひまわりキティーズ」は覚えておきましょう。 カルトQで出ます。 確実に出ます。
 

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