ロックの人の究極の仕事として「若くして死ぬ」というのがありますね。
破滅型芸人の人はクスリをたっぷり使ってラリパッパで死んじゃったり
繊細なタイプの人は色々と悩んで自殺しちゃったりとか色々ですが
とにかく若くして死ぬ要素たっぷりな仕事がロックの人なのです。
しかし近年は誰もが知っているようなメインストリームの音楽が存在しないような状況だし
この究極の仕事の有効性も薄まってきているのではないでしょうか。
若くして死んで伝説になってロック史に名を刻もうと企んでいるそこのロックの人!
いまどき アンタは伝説にならないよ! やめときなさい。



TheDoors.jpg TheDoorsBack.jpg

THE DOORS 「THE DOORS」 (1967)
独 ELEKTRA 42 012 (LP)

A1 Break On Through (To The Other Side)
 2 Soul Kitchen
 3 The Crystal Ship
 4 Twentieth Century Fox
 5 Alabama Song (Whisky Bar)
 6 Light My Fire
 B1 Back Door Man
  2 I Looked At You
  3 End Of The Night
  4 Take It As It Comes
  5 The End


1960年代末から1970年代初頭という ロックの人がみんなブッ飛んでいた時代には
ロックの人の死が相次ぎました。 ブライアン・ジョーンズ・・・ジャニス・ジョップリン・・・
ジミ・ヘンドリックス・・・死せずに再起不能になったシド・バレットという人もいますし
マリアンヌ・フェイスフルやブライアン・ウイルソンなどは死にかけたけどどっこい今も元気。
皆さんロック史のダーク・サイドを彩るというロックの仕事をしっかりとしています。

そんなロック史を彩ったひとり ドアーズのジム・モリソンも30歳前に亡くなりました。
ああ・・・若くして死ぬのが仕事のロック・スター。 彼は確かおフランスで亡くなりました。
彼の死因があいまいなのもまた 死しても話題を提供するというロックな仕事でしょうか。

以前どこかでこんな逸話を読みました。 他のメンバー同士でジム・モリソンについて
あいつどうせ先は長くないから あいつが生きている間にどんどん録音しておこうぜと
言ったとか言わないとか。 ドアーズはジム・モリソンが亡くなるまでの活動期間5年で
ライブ盤も含めて7〜8枚アルバムがあり モリソン以外のメンバーの粋なはからいで
どんどん録音した(させた?)っていうこの話もあながち嘘ではなさそうですね。

本作はドアーズの1stで 他のアルバムと比べても曲の粒の揃い方が素晴らしく
ロック史の中でも重要な位置を占めるスリリングでカッチョ良い彼らの最高傑作でしょう。
聴いているだけで喉が乾く 水分不足なジム・モリソンのヴォーカルも鬼気迫る感じですが
バックの音も緊張感がみなぎり じわりとサイケデリックに攻めてきて素晴らしいです。

ドアーズのサウンドの特徴としてオルガンやピアノが大フューチャーされているのですが
有名曲A6の長ーい間奏のオルガン大爆発なんかを聴いていると頭の中でグルグルと
オルガンが回って現実から意識が遠のいていくような感覚になります。 ホント凄い曲だ!

疾走感があってカッチョ良い最初のA1から 11分超で暗く迫る体罰曲の最後のB5まで
テンションの高さが持続され 歌詞もヤバいらしいし(僕は歌詞についてはよく知らない)
1967年という時代のアメリカン・ロックの到達点と言ってしまっても良い作品ですよ。
この大傑作を作ったというだけで もう彼の仕事は終わっていたのかも知れませんね。
ああ・・・若くして死ぬのが仕事のロック・スター・・・ジム・モリソンに合掌。
 



Tanx.jpg TanxBack.jpg

T. REX 「TANX」 (1973)
独 EDSEL EDCD391 (CD/1994)

1 Tenement Lady
2 Rapids
3 Mister Mister
4 Broken-Hearted Blues
5 Shock Rock
6 Country Honey
7 Electric Slim And
  The Factory Hen
  8 Mad Donna
  9 Born To Boogie
 10 Life Is Strange
 11 The Street And
    Babe Shadow
 12 Highway Knees
 13 Left Hand Luke And
    The Beggar Boys
 extended play
 14 Children Of The Revolution
 15 Jitterbug Love
 16 Sunken Rags
 17 Solid Gold Easy Action
 18 Xmas Message
 19 20th Century Boy
 20 Free Angel


デヴィッド・ボウイと共にギンギラ・グラム・ロックの代表格T・レックスのマーク・ボラン。
彼は車の事故で亡くなったのだけど やはり30歳前に若くして亡くなりました。

T・レックスはマーク・ボランの没後に何かインチキっぽい香りのする発掘音源的なヤツが
激しくリリースされていて同様の音源が激しくリリースされているジミ・ヘンドリックスと共に
死んでもなお遊ばれている印象があります。 この遊ばれ方のおかげで彼の場合は
リアルにロック・スターの最後の仕事として死を選んだなんて事を思わせますよ。
ああ・・・若くして死ぬのが仕事のロック・スター・・・遊ばれ上手のマーク・ボランに合掌。

T・レックスの作品はアルバムごとにビミョーな音の違いはあるものの
無駄にカッチョ良過ぎなところが時にダサくも聴こえるロケンローが基本路線です。
どのアルバムを取り上げても良かったのだけど「20th Century Boy」が聴きたかったので
それを収録した「タンクス」を登場させました。 収録されているっていっても
「20th Century Boy」はボーナス曲で入っているんだけどね。

1曲目の出だしの「アウッ!」ってゆー甲高い合の手で「こいつその気だな」を感じさせ
そのまま最後まで一気にブッ飛ばしです。 またギンギラ・ロケンローでありながら
ガチャガチャとアコースティック・ギターをかき鳴らす曲が多いのも良いところです。

そしてT・レックスの音は生活感を漂わせません。 おかげで人工的な響きがあります。
マーク・ボランの風貌・・・ダサくてカッチョ良いロケンロー・・・甲高い合の手・・・
嫌がらせのように細かく震えるヴォーカル・・・変態的なコーラス・・・と どれをとっても
人工的で「近未来」を感じさせてくれるのです。 本作が発表された1973年からすると
すでに2006年の現在が近未来ですが あと10年後 20年後に聴いたとしても
近未来を感じさせてくれるに違いありません。 それって相当凄い事だと思いますよ!

プロデュースはトニー・ヴィスコンティで トニー・ヴィスコンティ・プロデュースらしい
強引なストリングスが被さる曲なんかも最高です。 参加芸人がよくわからないのだけど
もしかしたらトニー・ヴィスコンティ・プロデュース期のT・レックスにはメアリ・ホプキン様が
おしどり夫婦の押し売り状態で参加している曲もあるかも知れませんね。

Tyrannosaurus Rex「Unicorn」第35号 2001/4/15 英国ヒッピー・フォークで五月病を先取り
 



7ParkAvenue.jpg

PETE HAM 「7 PARK AVENUE」 (1997)
ビデオアーツ・ミュージック VACK-1163 (CD/1999)

1 Catherine Cares
2 Coppertone Blues
3 It Doesn't Really Matter
4 Live Love All Of Your Days
5 Would You Deny
6 Dear Father
7 Matted Spam
8 No Matter What
9 Leaving On A Midnight Train
 10 Weep Baby
 11 Hand In Hand
 12 Sille Veb
 13 I Know That You Should
 14 Island
 15 Just Look Inside The Cover
 16 Just How Lucky We Are
 17 No More
 18 Ringside
 bonus tracks
 19 Just A Chance
 20 The Heart That
    Can't Be Understood
 21 Come Come Tomorrow
 22 Blessing In Disguise
 23 Know One Know


アイビーズ〜バッドフィンガーのピート・ハムも30歳前に亡くなってしまいました。
彼はジム・モリソンやマーク・ボラン程のブッ飛びさんでは無く バンドのメンバー内の
ひとりという感じでもあるので 死後 それ程 遊ばれ上手さんにはなっていませんね。

彼はゲーノー界ビジネスに翻弄され結局自殺してしまうのですが もし彼が破滅型の
豪快さんだったらそんな事にはならなかったでしょう。 きっと繊細さんだったんだねぇ。
しかし繊細さんだったおかげなのか彼の作るメロディーはどれも素直で美しく
この未発表音源集に収録された曲の胸の締め付けぶりはハンパじゃありません。

バッドフィンガーで録音した曲も数曲入っていますが 大半が本作で初登場の曲で
バックにロック基本楽器が入る曲と 弾き語りに近いタイプの曲が半分くらいずつです。
こもった録音状態の悪さのおかげでバッドフィンガーには無い儚げな雰囲気もあり
僕は本家のバッドフィンガーよりもこの未発表音源集の方が好きだったりしますよ。

彼の作る楽曲のメロディーもそうですが 歌声もポール・マッカートニー度が高いので
ポールと比較してしまいがちではありますが そんな比較なんて関係無く聴ければ
この胸を締め付けまくるメロディーの良さはホント凄過ぎじゃないですか。
特に前半の 1 3 5 6曲目といったあたりは涙が溢れそうになります。 良いなぁ。

これだけ素晴らしい曲たちがバッドフィンガーで録音される事無く眠っていたんだねぇ。
当時発表できなかったのも又ゲーノー界ビジネスに翻弄された結果だったのでしょうか。
ああ・・・若くして死ぬのがロック・スター・・・繊細なピート・ハムに合掌。

本作は1997年に発売された作品ですが 今回紹介したのは1999年に廉価で
ニュー・マスターで再発されたヤツです。 ボーナス曲は日本盤のみの収録曲です。
しかし2年という短期間でお安くなって再発されてしまうなんて一体どーゆー事?だし
更に残っていた未発表音源を無理にブチ込んだような第2弾「Golders Green」も
出ていて 彼はやはり死んでもなおゲーノー界ビジネスに翻弄されているのかしら。

Ivys「Maybe Tomorrow」第19号 2000/8/7 ナウいぜ!ヤングだ!英国アイドル・ロック
 


表紙へ戻る

inserted by FC2 system