1960年代以降のフォークやロックを語る時 ボブ・ディランの影響力たるや計り知れません。
なにしろボブ・ディラン研究家という職業さえあるのですから。
ディランのアルバムを聴くと 俺自身がリズムだ!俺自身がメロディーだ!男だぜ!
っていう感じで 慣れないと体罰にも似たきつさもあるのです。
そんな人はカバー・バージョンを聴いてみましょう。
ディランの楽曲の良さを認識できるはずです。



THE HOLLIES 「HOLLIES SING DYLAN」 (1969) 英 EMI 520 1312 (CD/1999)
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  1 WhenThe Ship Comes In
  2 I'll Be Your Baby Tonight
  3 I Want You
  4 Wheels On Fire
  5 I Shall Be Released
  6 Blowin' The Wind
  7 Quit Your Low Down Ways
  8 Just Like A Woman
  9 The Times They Are A' Changin'
 10 All I Really Want To Do
 11 My Back Pages
 12 Mighty Quinn

美しいコーラスが売りのホリーズ。 前作のButterfly 前々作のEvolution(共に1967年)は
英国サイケを代表する傑作だったのですが グラハム・ナッシュの脱退を経て
登場したアルバムは 全曲ディランのカバーの企画盤です。
収録曲は ディラン作品の中でも有名な曲が多く
ホリーズ・バージョンで聴くディランのベスト盤といった感じです。

ボブ・ディランは歌詞とサウンドばかり注目されがちですが
メロディーもシンプルで馴染みやすい物が多いのです。
これだけ多くのカバーがあるのも納得の 作曲家としても一流なのです。

僕はオーケストラも活躍する11曲目が好きなんだけど
この曲や5などのドラムスの歯切れのいい音は最高ですね。
これはアビーロード・スタジオの録音技術のなせる技なのでしょうか。
ここにはアビーロードのバリバリ サイケな録音を体験したホリーズだからこそ出せる
英国ならではのひねくれたポップスが記録されています。
この時期アメリカ人だったら もっとカントリーっぽくなっていたよな。

この再発盤は 英EMIが創立100周年のうたい文句で発売した
デジパック・シリーズで ホリーズは1964年のStay With The Holliesから
1971年のDistant Lightまで パーロフォン・レーベル時代の英オリジナル・アルバム
全11枚が発売されました。 このシリーズは限定盤らしいのですが
ボーナス・トラックとか入っていないし ステレオとモノラルの録音があるアルバムは
ステレオ&モノラルで同じ曲が2度入っているという体制で出ていて
ちょっとマニアックなので まだ市場からは姿を消していないようです。
しかし めちゃくちゃ音がいいシリーズです。 ・・・買いに走れ!



THE SEEKERS 「A WORLD OF OUR OWN」 (1965) 英 EMI DORIG 122 (CD/1997)
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  1 A World Of Our Own
  2 Don't Think Twice, It's All Right
  3 The Leaving Of Liverpool
  4 This Land Is Your Land
  5 Two Summers
  6 The Times They Are A'Changin'
  7 Just A Closer Walk With Thee
  8 Don't Tell Me My Mind
  9 Allentown Jail
 10 Four Strong Winds
 11 You Can Tell The World
 12 Whistling Rufus

ホリーズと同じくEMIのデジパック・シリーズから登場のシーカーズは
オーストラリア出身 男性3人 女性1人からなるフォーク・グループです。
これは4thアルバムで ディランのカバーは 2と6の2曲入っています。

いやしかし すごいポップなサウンドに仕上がっていますね。
あっけらかんとした健康的な明るさが 典型的なカレッジ・フォークなのです。
爽やかな歌声の女性ヴォーカル入りという点もポイント高いです。
そういうわけで ここでのディラン・ナンバー2曲は
永遠のフォーク・スタンダードとしてのたたずまいです。

ピアノがはじけるインストの12はオールド・タイミーな雰囲気で
とてもいい感じですね。 この異色曲がアルバム中一番良かったりして。

シーカーズのCDはこのデジパック・シリーズからは本作と
Come The Day(1966年) See In Green(1967年)の3枚が出ています。
更に各国から様々なベスト盤が多数出ています。

シーカーズは英米でヒット曲多数。
有名な曲は 車のCMでも使われていたGeorgy Girlでしょうか。
Georgy GirlはCome The Dayに収録されています。

ちなみにプロデューサーのトム・スプリングフィールドがやっていた
The Springfields(ダスティ・スプリングフィールドが在籍していた)も
ポップなフォーク(商業フォークとも言う)です。



THE SILKIE 「YOU'VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY」 (1965)
米 ONE WAY OW 31441 (CD/1996)
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 1 You've Got To Hide Your Love Away
 2 The Times They Are A-Changin'
 3 Mr. Tambourine Man
 4 Close The Door Gently
 5 Dylan's Dream
 6 Girl Of The North Country
 7 Blowin' In The Wind
 8 Blood Red River
  9 Love Minus Zero/No Limit
 10 It Ain't Me Babe
 11 Tomorrow Is A Long Time
 12 City Winds
 13 Leave Me To Cry
 14 Keys To My Soul
 15 Born To Be With You
 16 I'm So Sorry

男3人に女性1人というシーカーズと同じ編成のシルキーは英国のグループ。
アルバム・タイトル曲はビートルズのカバーで その1曲目は
ビートルズのメンバーも録音に参加しているのが このアルバムの売りです。

2曲目以降はボブ・ディランのカバーを中心にした作品で
ディラン・ナンバーは8曲入っています。
彼等のサウンドもコーラス主体でカレッジ・フォーク系ですね。

こちらの女性ヴォーカルはロリータっぽいかわいい声です。
バックの楽器もアコースティックギターだけの物が多く
もし女性ヴォーカル入りでなければ ダメなアルバムになっている所でした。
その女性ヴォーカルを包んであげている感じの
男性陣のコーラスはしっかりとしていますね。
彼等の自作曲も何曲か入っていますが メロディーはイマイチかな。

13〜16はCDのボーナス・トラックで当時シングル盤のみの発売。
シングルの曲は思いっきり商業フォークです。
もちろん僕は商業フォーク大好き。 15 16はすごいポップ。 これはいいぞ。



JOAN BAEZ 「ANY DAY NOW , BOB DYLAN'S SONGS」 (1968)
キング KICP 2381 (CD/1992)
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 1 Love Minus Zero/No Limit
 2 North Country Blues
 3 You Ain't Goin' Nowhere
 4 Drifter's Escape
 5 I Pity The Poor Immigrant
 6 Tears Of Rage
 7 Sad-Eyed Lady Of The Lowlands
 8 Love Is Just A Four-Letter Word
  9 I Dreamed I Saw St. Augustine
 10 The Walls Of Redwing
 11 Dear Landlord
 12 One Too Many Mornings
 13 I Shall Be Released
 14 Boots Of Spanish Leather
 15 Walkin' Down The Line
 16 Restless Farewell

そしてこれがディラン・カバーの決定版。 選曲もマニアック。

フォークの女王ジョーン・バエズも1960年代後半にカントリーに接近。
薄味のカントリー臭が心地良いこのアルバムはLPでは2枚組のボリューム。
楽曲もいいし 曲の並び方もいいので長時間の録音でも
飽きずに最後まで一気に聴く事ができます。
彼女の清楚で伸びやかな歌声も華がありますしね。

このアルバムでの彼女は感情を押し殺して淡々と歌っている感じがいいのです。
アカペラの6が終わって優しげなオルガンの音で7が始まる瞬間がたまらないですね。
この曲の繋がり方で僕は何度昇天しそうになった事か。

まろやかなカントリー風味の7は11分もある曲だけど じわじわと感動を呼び起こし
聴き終えた時は涙と鼻水とヨダレでボロボロです。
ジョーン・バエズの全キャリアの中でも最高の部類に入る1曲です。

7はボブ・ディラン自身のヴァージョンはロック史上初の2枚組アルバムと言われている
Blonde On Blonde(1966年)に収録されています。
こちらも11分以上あり LPの片面に1曲だけ入っていました。
今では何てこと無いけど 当時は前代未聞。 とにかくディランは凄い。


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